BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
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- だから私は君に恋はしない。
- 日時: 2017/02/05 23:50
- 名前: コハク (ID: nCjVBvXr)
恋を拒絶する私と、恋をしたい、君。
君と私は巡り逢うべきではなかった。
これは君がよく言う、私の照れ隠しなんかでは無くて。
そうだな、理由がないと君にまた怒られそうだから言い直そう。
私は恋をしたくないし、君のその手の温もりだって受け止めきれるはずがないのだから、私と君は巡り逢うべきではなかった。
゜・*:.。.*.:*・゜.:*・゜*
この小説はGLです。
苦手な方はブラウザバックを推奨致します。
初めまして。コハクです。
少し前から書き溜めていたものを小説にしてみようと思います。最近は寒いのでこたつから抜け出せず、猫と一緒にこたつで作業をしています…。
- Re: だから私は君に恋はしない。 ( No.4 )
- 日時: 2016/11/13 10:35
- 名前: コハク ◆OlDyXgbS0A (ID: nCjVBvXr)
…だめだ。全然頭が理解しようとしない。
今読み終わったのは、小さなメモの入っていたこの本。題名は「人魚姫」といって、ネットで検索すると恋の甘い気持ちから相手を失い自分まで失う切ない気持ちが詰まっている、なんて出てきたから読んだのに全く理解できない。
自分の声を失ってまで、王子と結ばれようと恋い焦がれた人魚姫。それなのに王子は他の人と結ばれて。最後は自分の身を捨てて、海の泡に。
なんて悲劇。好きな人ができるっていう感覚はわからないけれど、欲しいものを自分の大切なものと引き換えにしてまで手に入れようとしたのに、それは逃げて行ってしまう…。
それが恋心だというなら、私は恋なんてしたくない。拒絶に値する。傷つくと分かりながら、それでも相手を求めて裏切られて…理解不能だ。
人魚姫はどんな気持ちで海の泡になっていったんだろう。どんな想いを王子に捧げたんだろう。
恋はしたくないけど、やっぱり恋への理解は必要だ。時間をかけてでも、図書館通いを続けよう。
さて。人魚姫を返して、次の本を読まなくては。
「人魚姫、面白かったですか?」
…?後ろから女の人の声。いや、女の子の声。
「はじめまして。はつめちゃん?」
誰だ。後ろを振り向いて顔を見ても、全く知らない顔が静かに微笑んでいるだけ。…なんか面倒くさいな。
- Re: だから私は君に恋はしない。 ( No.5 )
- 日時: 2016/11/06 09:38
- 名前: コハク (ID: nCjVBvXr)
「私、あなたのことずっと見てました。」
その知らない少女は、私の隣へ来て大きな本棚に背中をもたれて話す。
とても楽しそうに、幸せそうに、私が本棚に戻した人魚姫を手に取って表紙を眺めている少女。
「君は…?」
もし知り合いなら相当失礼な質問なのかもしれない。
でも、何と無く初めて会ったような気がした。
会ってしまった、みたいな。
「はじめまして。はつめちゃん。はじめまして…はつめちゃん!」
私の方を向いて目を潤ませて話す少女。
…なぜこの少女が同じことを2回も繰り返して言ったのかは分からないけれど、少し面倒くさいというか、時間の無駄というか、関わらないほうがよさそうな気がしてならない。
私は本を読みに図書館に来たんだ。
「私は本を読みに来たの。君と知り会うためじゃない。」
すると、両手で持っていた人魚姫を開き私が無視した白いメモを取り出すと、少女は私の手を取った。
振りほどけない、強い力。無理矢理手を取られ、外へと向かって歩いていく少女。
「え、なに?ちょっと、君…?」
私の小さな声での、やめての思いは通じなかった。こんな強い力に勝てるわけもなく、図書館の外へと連れ出された。
大声を出すって手段もあったんだろうけど、そんなことをしたらこれから図書館に通うのに支障が出るかもしれない。
「…痛い。」
図書館を出て、すぐ近くのベンチに向かう少女。伝えようと思ったんじゃなく、身体的な本心からポロッと声が出た。
「あっ、ごめんなさいっ!だ、大丈夫じゃなさそう…です。」
あんなに大胆に手を取ったというのに、今度は申し訳なさそうに私の手のひらをさする。
不思議な少女だ。何がしたいんだろう。
何か、どこか、分からないけれど、その少女は私の中の"面倒くさい"を超えた気がした。
超えたかわりに、少女のことを知りたいと思った。
- Re: だから私は君に恋はしない。 ( No.6 )
- 日時: 2016/11/06 18:02
- 名前: コハク (ID: nCjVBvXr)
面倒くさいを超えた私の好奇心は、その少女へと集中した。
風になびく少女の髪。肩の下くらいまでの長さで濃いこげ茶色をした黒髪。艶やかなその髪は、右側の下の方でゆるく一つにまとめてある。いわゆる横結びというやつか。
顔も、知らない少女、としてしか見ていなかったけどしっかり見直してみると世間でいう"可愛い"に値するであろう容姿。
目は遠くまで良く見えそうな、透き通るような黒い瞳。薄紅色の唇。触れたら溶けそうな顔立ち、というと変だけど、本当にそう見える。
「はつめちゃん…?そんなに見つめないでください…。」
頬をぽっと赤らめて、もじもじと着ている白いワンピースを揺らす少女。
「…照れてるの?」
少女から、まだ目を離さずにまっすぐと瞳を見つめて言う。
「私が誰なのか、気になりませんか?」
照れているのかという質問は完全にスルーし、少女は話を大きく変えた。
それも、私の瞳をまっすぐ見つめたまま微笑んで。
…不思議な子だ。
- Re: だから私は君に恋はしない。 ( No.7 )
- 日時: 2016/11/06 22:23
- 名前: コハク (ID: nCjVBvXr)
「君が誰なのかよりも、なんで君が私の名前を知っててずっと図書館で見てたのかのほうが気になるんだけど。」
「うぅ…素直ですね。」
気になるって言ってるのに少女はまだ私の手を握っている。いや、正確にはさすってただけだったのに、少女はごく自然に私の手を握った。
「気になるんだけど。」
多分ジト目になっているであろう私の目、で少女を見つめる。
そういえば目線がほとんど一緒だ…。見つめやすいわけだ。
どっちかっていうと私のほうが少し高い、かな。
「はつめちゃんが、」
おっと、私の脳が少し話を逸れた瞬間に少女が話し出した。リズムが合わないってこういうことを指すんだろう。
「はつめちゃんが、読んだ本です。はつめちゃんは多分、気づいてないと思うんですけど、私たち…運命なんです。」
うん。全く気付いてない…というか、どうやって気づけばいいのやら。
「私、ずっとくるみ図書館に通い続けているんです。もう…10年くらい前から。本を読むフロアのテーブルの一番隅っこの、誰にも見えないような席に座って読んでいたんです。もうそれは習慣で、勝手に私の特等席だなんて思っちゃってたんです。」
…話の繋がりが見えない。もっと…こう、しゅぱっとまとめてほしい。
「でも、ある日その特等席に座っている人を初めて見て。1日だけかな、なんて思ってたらその日から毎日決まった時間にその人は来て。…嬉しかったんです。いつもなら人の来ない時間帯だから、私と同じ時間に本を読んでいるってことも、その私のいつも座っていた席にその人が座るのも。似たようなことを考えているんじゃないかなって思って。」
少女はずっと私の瞳だけを見つめている。目の前のベンチに座ることなく、握った手を離すことなく。
「それでだんだん、その人のことが気になってきたんです。気づけば目で追ってしまうくらいに。でも話しかけることもできなくて、その人の名前を知り合いの図書館の方に聞いてみたんです。すぐにその人の読んだ本を探しました。そしたら、驚きました。ものすごく胸がぎゅうっとなって、どうしたらいいのか分からなくなりました。だって、私の読もうとする本の読者履歴記載表には必ず、必ずその人の名前があったんです。」
握る手が温もりを帯びて、熱くなっている。
「すごく…ないですか?誰も何も仕掛けていないマジックみたいだなって、思っちゃって。運命ってこういうことなんじゃないかなって。私が読む本には必ずその人の読んだ履歴がある…それはもちろん逆もあって、私の読み終わった本の読者履歴記載表にはその人がいるんです。」
誰も何も仕掛けていないマジックで、それは運命。無理矢理じゃない、けど100パーセント素直に受け止められない定義だ。
「だから、私一つ賭けをしてみたんです。一枚のまるで落書きみたいな、そんなメモを本の中に入れてその人は気づいてくれるのか、どうか。もちろん、その人がその本を手に取った時点で読むっていうことだから、気づかないわけがないんですけどね。…意識してもらいたかったんです。その人が、私のことを少しでも考えてくれたらいいのにって。でも、結局その人は私のことなんて意識しないで本をさっさと読み終わって本棚に返してたんです。…まぁ、あんな紙では意識しようがないんですよね…って今気づきました。」
すぅっと小さく息を吸って少女は頬を染めて、手にはさらに温もりを込めてまた話し出す。
「だから、我慢できなくって…その人に、いや、あなたに、はつめちゃんに…出逢いたくて、今日声をかけてみたんです。」
私の、胸か心臓かもっと何処か別の臓器か何かが、私の中で大きな音を出した。
少女の、まっすぐな瞳と赤く染まった頬と手の温もりが痛いほど伝わってきて。
途中から自分のことだと気づいていたけど、それでも名前を呼ばれて、目を逸らしてしまいたいのに、まるで少女をずっと目の中に入れておきたいような…そんな気分になった。
まだ、知らない、分からない感情が熱を帯びた。
これは何?
まだ持ったことのない、変な気持ち…痛い感情。
きっとそうさせたのは、この、目の前で頬を赤らめるくせに私を見つめ続ける…出逢ってしまった、少女だ。
- Re: だから私は君に恋はしない。 ( No.8 )
- 日時: 2016/11/13 10:38
- 名前: コハク ◆2kGkudiwr6 (ID: nCjVBvXr)
「つまるところ、私ははつめちゃんのことをもっと知りたいんです。」
何処をどうつまって私のことを知りたいんだか。相当変わった少女だな。
「別に教えることなんてないよ。」
「それでもいいんです。勝手にくっついてるので!」
「待って待って。全然理解できない。色々急すぎるんだよ。君は…。」
「そうですか?でも人生急がないとすぐ終わっちゃうので…。」
「君まだ若いんだから。そんなに生き急がなくてもすぐに死んだりしないよ。大丈夫。…だから取りあえず手を離して、君の名前を教えて。」
…どうせもう引き返せない。
出逢ってしまったんだ。
この少女と私は運命的な偶然を重ねて出逢ってしまった。
もう引き返せない。
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