複雑・ファジー小説
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- 失墜 【完結】
- 日時: 2021/08/31 01:24
- 名前: 三森電池 ◆IvIoGk3xD6 (ID: bOxz4n6K)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=19157
歪んだ恋愛小説です。苦手な方はご遠慮ください。
>>1 あれそれ
☆この作品の二次創作をやってもらっています。
「慟哭」マツリカ様著 URL先にて
「しつついアンソロ」雑談板にて掲載中
キャラクター設定集 >>80-81
あとがき >>87
>>99
>>100
- Re: 失墜 ( No.40 )
- 日時: 2016/09/21 17:08
- 名前: 三森電池 ◆IvIoGk3xD6 (ID: 0K8YLkgA)
10 従属ふりったー
六月。雨で濡れた通学路を辿る。曇っている日は空が低い。この町全体にかかる圧力のようなもやもやに、私は疲れ果てていた。
渋谷くんと待ち合わせをしていた。瑛太に内緒で来てよと言われた。きっと、なにかサプライズの企画の相談とかなんだろう。誕生日でもないのにな、と思う。すごく偏見だけど、渋谷くんのような派手な人間は、突然のサプライズが大好きだ。周りを盛大に巻き込んでプロポーズしたり、飲食店を全部貸し切ってしまったり、そういう事を平気でする。私としては、普通にやってもらえたらいいんだけど。瑛太もそっち側の人間だったら困るな。そう思いながら、ぼんやりと街を眺めていた。
「柚寿ちゃん、おまたせー」
いつも瑛太と待ち合わせをしている時計塔の下。向こう側からやってくる、着崩した学ラン姿の男の子。今日はバイトも無いのか、耳や口元にはピアスが光っている。
私は手を振る。少し駆け足でやってきた渋谷くんは、ごめん、待ったでしょと八重歯を見せて笑った。恋人同士みたいなやりとりである。
「とりあえず、どっか店入ろうぜ。柚寿ちゃんにさあ、とっておきの話があるんだよ」
「……え、なんだろー」
渋谷くんは、瑛太よりも五センチくらい身長が高い。きっと、百八十センチくらいだろう。私が百六十五だから、ちょうどいい身長差である。私の視線も、心なしか上にあがる。渋谷くんはモデルなだけあって顔もかっこいいから、すれ違う女子たちも絶対に彼をちらっと見る。そして隣の私を見て、何事もなかったかのように目を逸らすのだ。そんな顔しなくたって、私達は付き合ってないのにな。
隣に並んで歩いてくれる瑛太とは違って、渋谷くんは少しだけ前を歩く。紅音はそういうところに、愛が無いと感じたのだろうか。そうしているうちに連れていかれた店はマックで、自動ドアが開いたとき、あまりに久しぶりだったから、私は少し笑ってしまいそうになった。やる気の無さそうな店員さんも、赤と黒の制服も、長らく見ていなかった。
「瑛太はいつも、もっといいお店に連れて行ってくれるんだっけ? いやー、ごめんねマックで。俺は高級店でもマックでも味の違いとか分かんねーけどな」
「……私も別に、高いお店に行きたいわけじゃないの。公園でしゃべってるだけでも十分楽しいのに」
「へえ、あいつ、柚寿ちゃんの事なんにもわかってないんだな。……柚寿ちゃんも、あいつの事全然わかってないけどね」
「……え?」
窓側の席に向かい合う。ナゲットにバーベキューソースをたっぷりつけて、渋谷くんは不敵な微笑みを浮かべる。グレーの瞳の奥は、新しい悪戯を思いついた子供のように怪しく光っている。
嫌な予感がした。浮気かな、と悟る。一瞬で張り巡らせた想像だけど、渋谷くんは、他の女の子と一緒にいる瑛太を見たのかもしれない。私は目の前のファンタにストローを差すのも忘れて、渋谷くんに「どういうこと?」と問う。
「……あいつ、金持ちでもなんでもねえよ。家は生活保護で市営住宅に住んでるから友達も柚寿ちゃんも呼べないし、クラスの陰キャラから奪った金で、柚寿ちゃんにいろいろ買ってあげてたんだって。真面目な話だから、これ」
「えっ、なにそれ。それって誰?」
「俺は知らねえけどさ、ヤギリくん、って子じゃない? 前その子と電話してた。いや、ほんと、知らねーけど」
ナゲットを頬張る渋谷くんと、次の言葉もリアクションも思い浮かばない私。
正直、浮気よりも最悪だった。今までの瑛太の不可解な点が、渋谷くんの主張で全部つじつまが合うから怖かった。認めたくはないのに、認めざるを得ない。今まで一度も家に入れてくれなかったし、場所すら教えてもらえなかったし、バイトもしていないのにやたら金があるし、私にも沢山物を買ってくれる。全部全部、他人から奪ったお金だった。私は偽りの幸せだけを見せられていた。
気持ち悪くなってきた。ファンタを飲めそうになかった。
「……どうしよう、信じたくないけど、信じるしかない気がする」
「だよな、俺も前からちょっとおかしいと思っててさ。真剣にバイトで稼いでる身の俺から言わせてもらうと、ありえねえんだわ、あーいうのは」
だからさ、と渋谷くんは、テーブルに頬杖をつく。グレーの瞳が輝く。
「別れなよ。そんで、俺と付き合お」
□
ラブホテルの一番安い部屋で、天井を見つめる。酷いくらいの虚しさしか残らないのは知っていたし、そういうことをする精神状態でもない。だけど、脆くなった私は簡単で、引きずられるようにしてこの部屋のベッドに倒れこんでいた。
瑛太を信じたいのに、疑う要素しか浮かばない自分が嫌だ。そして、ここまで努力してやっと釣り合っていた恋人の正体があんなのだった自分も嫌だ。私は私が大嫌いだ。どうしてだろう、なんでこうなったんだろう。私は何のために頑張ってきたんだろう。渋谷くんの手頃な相手になる気はないし、不当なお金で飾り立てられて喜びを感じたいわけでもない。いっそのこと消えてしまいたい。だけど、泣きそうな私の肩を抱いて、「あの程度だったんだって思いなよ」と笑う渋谷くんは、すごく嬉しそうだ。
「あいつも、どーしよもないクズだよなー。彼女一人幸せにできなくてどーすんだよ」
「……渋谷くんだって、紅音のこと」
「あんな女、どうでもいいよ」
真っ白のシーツに、いくつも皺を作ってしまった。
もう紅音とは正式に別れたんだろう。おめでたいことである。笑う渋谷くんは子供みたいで、また虚しくなった。私もどうでもいい女の一人になってしまった。それを自覚するころには遅くて、ぐちゃぐちゃの感情だけがそこに残っていた。
「てゆーか、話には聞いてたけどやっぱ柚寿ちゃん上手いよね。瑛太と別れたらさ、真剣に考えてよ、俺とのこと。俺なら絶対幸せにするから」
頭に手が置かれる。渋谷くんの乾いた笑い声が聞こえる。
あふれ出る虚無感に耐えられない。頭の中を支配するおかしい電波にやられて、思考すらまともにできない。この人の言っていることは最低で、瑛太も私も同じように最低だ。だから、もういっそ、どこまでも最低でいよう。「考えとくね」と言う私の声は震えていた。渋谷くんはやっぱり嬉しそうだった。
もう一切信用してはいけない瑛太に電話したくなった。まだ恋人として彼を好きなんだと思うと、苦しかった。
- Re: 失墜 ( No.41 )
- 日時: 2016/09/19 16:59
- 名前: 亜咲 りん ◆1zvsspphqY (ID: fOW/FHMu)
「セトキョンはっぴばーすでーとぅーゆー☆」
ぱーん、と盛大にクラッカーを鳴らしておきましょう。
こんにちは。またまた来ちゃいました。50レスのところで来ようと思ったのですが、セトキョンのお誕生日ということもあったので。でも、だいぶ進んだね、色々。
それではまたまた、登場人物たちにツッこんでいくどー!
>>27……わかる。古文とかオチが無いから私も嫌い。あ、でも、私は理系だけど本が好きです。国語の教科書は1日で読み切った。えへん。
人間合格www
>>28どんだけ金持ちなの笑 私も行きたかったわ笑 僕より数学笑 やばい、笑いが止まらない。道端に落ちてるガムは、本当に嫌な目で見ますよね。……吉野家出てきたぞ笑 パーティ抜け出すなあああ
>>29お姉さあああん、なんて良い人なんだ(><) それなのに、アイツはなぜあんな風になっちまったの……
兄は変態だ。でも、美人ってお得だなって思いましたーわはは
>>30生きている以上、最高を目指すのは当然のこと、なんて言われたら自分が恥ずかしくなってきました。紅音が可哀想だ……渋谷ぁぁぁぁぁ
あーあるある。カーストっていうのには逆らえない……
>>31ここでやっと思った。みんな、帰りにファミレス行きすぎじゃね? 学生だよね? そんな金があるの……!? あ、バイト?
柚寿は努力家ですね。頑張りすぎな気がするけど。
矢桐はただの根暗じゃないぞ。犯罪者予備軍だぞ。根暗だって生きてる!
>>32渋谷が学ラン着てるとこ想像したら、なんとなくヤンキーっぽいと思いました。なんでだろ笑
ケンカしないから仲が良いわけじゃないですよー。思いをぶつけ合えるのが仲良いってことですよー
渋谷って、クズだけど努力家だよね。
>>33私はスタイルが悪いので、柚寿を恨みます。ええ、恨みますとも。
セトキョン、柚寿に勝てる要素、パーリーピーポーなところしかありませんね。どんまい。
この回は、そんなにツッこむとこなかった笑
>>34そんなセトキョンに、校則違反を伝えたい。スカートは膝丈が優等生だぞ。君の足が太いのか細いのか知らんが、柚寿にはかなわんだろう。みたいなことを思ってました笑 セトキョンごめんね。私、君のことあんま好きじゃないんだ……
そう。パーリーピーポーな君じゃ、少女漫画の主人公にはなれない。
ストラップを盗るんじゃねえええ瀬戸おおおおお
>>35わかる。マネキンが着ているときはすっごい魅力的なのに、家に持って帰って私が着たら、残念なことになるの笑
青山がくっそムカつく。どうしてこんな軽い男に惚れるの、セトキョン。
好き=付き合ってってことじゃない? と思うのは私だけ?笑
>>36あ、柚寿以前にもいたんだ……まあ、健全な男子高生なら当たり前か。
セトキョンとしたのかああああ。最低ですね、青山。
え、柚寿、初めてじゃなかったの? さ、最近の女子高生は怖いね……
みんな、自分の身体大切にしてよ。
青山、そんなに言うなら死んでしまえ。私からのお願いだ。
それで、他の女の名前で呼んじゃうとか最低。処刑だ処刑だ。
そういえば、矢桐の出番しばらくなかった気がする。それにしても、3万返すなら、はじめに矢桐に2万渡せば良かった気がする笑
>>37やっぱり矢桐兄と矢桐はそっくりなんだ。
ついに。兄が明かしましたね。
変態兄貴に死を。あの善良なお姉さんを、お前には渡しはしない。……私の名にかけて。笑
>>38青山、そんなに柚寿綺麗なの? ベタ惚れじゃないか笑
お、ここに来て、失墜ワードが。
この映画、まさか……?
「面白かったけどさ、あんなにきれいな恋愛、僕らにはできそうもないね」
↑ここですっごいぞくぞくっとした。構成が上手いね。さっすがりちうむちゃん。
>>39……2回だぞ? 1日2回ラブホとか、ツッコミどころ満載だぁ。
月9? まさかそれは……好きn((
家のせいにしちゃダメよ、青山。家があれでも、お姉さんは立派に育ったじゃないか。まあ、親戚は悪悪だけど。
人を簡単に信じちゃダメだ、青山よ。連中は、簡単に秘密をばらすんだぞ。
>>40渋谷あああああ、お前最低だな。頑張り屋と見直していたのに。
柚寿もそんなのを簡単に信じちゃうなんて、なんなんだ。君たちの間に愛は無かったの?
柚寿もセトキョンも、簡単に身体を明け渡さないで。ね?
勢いよくツッコませていただきました。まだあったりするけど、もう限界だから……ふらふら。
失墜がいよいよ失墜らしくなってきた。本当に、一部除いてみんなクズで叩きのめしたくなるけど、みんなちょっとずつ失墜してってる感じがする。
まずは青山かな? というか、もう大分失墜してる。柚寿にバレた時点でもう……ご愁傷さまです。
セトキョンが意外と大胆で、あれっ? って思ってました。みんな、もっと身体を大切にして……(´;ω;`)
青山と柚寿は本当に恋人同士かっていうくらいお互いのことをわかってない。というか、決めつけてる節がある。そこでズレが生じて、青山の秘密がバレたところで、崩れ去った感じ。元に戻るのかな?
渋谷は良い人かも、と見直した私が馬鹿だった。でも、この人が1番可哀想かもしれない。なぜかはわかんないけど。
矢桐兄……矢桐優。どうしてこうもクズなんだろう。もし、お姉さんに何かあれば、私は彼を許さない……
紅音は、良いように躍らされてる。もう壊れてっちゃうのかな。健気に生きて欲しい。
球技大会でどのような波乱が巻き起こるかはわかりませんが、非常に楽しみにしておりますます。
みんな仲良く失墜☆
これからも頑張って!
長文失礼しました……m(_ _)m
- Re: 失墜 ( No.42 )
- 日時: 2016/09/19 23:50
- 名前: 三森電池 ◆IvIoGk3xD6 (ID: 0K8YLkgA)
>りんちゃん
またきてくれてありがとう(ハートマーク)
本日9月19日は、本作のヒロイン(気取り)の瀬戸京乃の誕生日。ツイッターでたくさんの人に祝われて、きっと彼女もご機嫌なことでしょう。
レス数は進んでないのに、ここにきて謎の急展開だからね笑。 伏線だけは盛大にばらまいているから、ゆーっくり回収してきたいと思います。
りんちゃんと、ここを見ているかもしれない読者さんのために、私も一レスずつ解説いくぞー。
>>27 青山は理系だけど、あのクラスは、実は文系の選抜クラス。なぜあいつが文系に居るのか、もしかして柚寿か矢桐と同じクラスになりたかったのか。そういう謎な設定がある笑 一応文系なんだから、人間失格くらい読んでおきなさいよね!ってかんじ。
古文はつまんないよね、あれは素直な私の気持ち。国語の授業は、物語なら楽しいけど説明文の時は爆睡してるw
>>28 すっげえパーティだよねあれ。主催者はたぶんモデルの中でも最上位で、それに加えて超金持ちなんだと思う。青山と渋谷なんかただの数合わせで呼ばれただけ。結局最後までこの時のお金を返すシーンとかはないんだけど、捕まってしまえってかんじだ笑 ここの青山さんはちょっと拗ねてるよね。僕より数学の方が大事なんだって。
深夜の吉野家に読者モデルの男が二人来たらびびるな。
>>29 青山の姉だけは、失墜における聖人のポジションを最後まで崩さない。こんなに出来た姉がいるのに、弟どうなってんだ、あれww 失墜は良心的なので、良い人はちゃんと幸せになるから、青山姉に関しては心配しないで。そして逆もしかり。こいつの弟とか、あの頭ぶっとんだ兄弟とか、某ラブドールとか、パリピとか、悪い奴はとことん落ちる。お楽しみに!(謎)
>>30 そこちょっと狂気だよね。私は普段の学校とかバイトとかじゃなくて、家に帰って小説を書くときとか、みんなと話してるときとか、そういう時に意義を感じながら生きていて、つまり趣味こそが人生みたいなところがある。小南の場合、人生に休憩や心の癒しが一切ない。悪い意味で人間離れした生活を送っている訳だ。さすがラブドール。
渋谷と紅音(とくに紅音)も、本当の幸せは掴めないだろうなー。
>>31 瀬戸と梓も、小南グループも、ファミレス大好きだよね。暇かよ。金はたぶん、ドリンクバーだけで粘ったり、ピザを全員で分けたりしているんだと思う…。ちなみに大金持ち青山さんは、「ファミレスに彼女を連れていくのは恥ずかしい」と豪語し、お洒落な喫茶店にばかり連れていく。僕は瀬戸さんと一緒なら、コンビニのおでんを公園で食べるだけでも幸せだろう。金を使うことが愛ではないと、あいつはいつ気付くのだろうか。気付く前に、僕が殺してしまうかもしれないな。
>>32 渋谷は普通にヤンキー系だよね笑 ピアスいっぱい開けて髪染めてって、超こわいよ。青山と小南はケンカしないけど、お互い過剰に気を遣ってるからなんだよなあ。理想の恋人かっていうと、絶対違う気がする。
渋谷はアホだけどちゃんと自分で稼げるし、自分のお金しか使わない子。当たり前のことだけど、それができない奴がいるからね。誰とは言わないけどね。
>>33 この回は平和だね。瀬戸回は平和な時と物騒な時の差が激しい。
>>34 まさかのりんちゃん瀬戸好きじゃない発言笑った。柚寿と比べてしまうとやっぱり、いろいろと足りてないしお花畑だもんね。だからと言って小南並みにいろいろやるのがいいってわけでもないけど。校則違反だしストラップ盗むし瀬戸もなかなかのクズである。このストラップ伏線もちゃんと回収するよう。
>>35 それも私の率直な気持ち笑 店で可愛いと思って買ったものは、持ち帰ると魅力が減っている。照明とかでうまく見せてるんだろうね。おそろしや。
青山がムカつくのは今に始まったことではないけど、この回は特にむかつくなあ笑 小南さんかわいそう(他人事感)
>>36 青山さんの初恋は中学二年の時で、お姉さんのお友達の女の子。その子がなかなかの遊び人で、彼氏持ちだったから、青山さんは遊ぶだけ遊ばれてあっさり捨てられるの。ウケますね。同じことを瀬戸きょんにしてるわけで、それなりに罪悪感はあるんだけどね。アホかよ。
りんちゃんだけじゃなくて矢桐も同じこと思ってるよ。他の女の名前で呼ばれても、まだ好きだって思える瀬戸きょんの精神状態が個人的に結構やばいとおもう。
瀬戸は矢桐にまったく興味が無いから、矢桐の出番はしばらくなかったの笑
>>37 久々に書いてて楽しかった回。いやあ調子乗ったやつをボコるのは楽しいね(だめなひと)。矢桐のお兄さんは、作中一番のクズ。もう更生のしようがない。青山のお姉さん、逃げて超逃げて。
>>38 失う直前だって本能で悟ったんだろうかってレベルの褒めっぷり。今更褒めたりしても遅いのにね(笑) 失墜というワードは、今のところ矢桐回と青山回でしか出てきてないけど、もう一つの重要ワード「絶対的な関係」はけっこー出てきてるよ笑
あの映画のタイトルは決めてないけど、流行ってる映画ってことだから、「君の名はゴジラの形。」みたいなタイトルなんじゃないですかね。逆に見てみたいぞ。
ありがとう(*'ω'*)そこはなかなかうまくいったとこだと思ってる笑 行くとこはラブホテルなのにな?
>>39 一日二回ラブホ行く系ボーイ青山さん絶好調である。ここでやっと昔の話がちょっと出たけど、そんなの理由にならねえよって感じだ。お姉さんを見習え。
>>40 そして渋谷のこの裏切りである。一レスで裏切られる青山さん哀れ。渋谷くん、要領が良いというか、運とタイミングがいいというか、うまく生きてる。彼は結局、特に失墜もしないから、利益だけかっさらっていく。
ツッコミありがとう、面白かった笑
タイトルの意味がやっとはっきりしてきたね。ほんとみんなクズだよ頭おかしいよ。ちゃんと失墜するから、楽しみにしててね(ハートマーク)
青山柚寿瀬戸矢桐の順で落ちるかな……まあ引きずられるようにして、ほぼ同時期になりそうだけど。起承転結で言う、転まであと少し。転落だけにね(うまくない)
あの人たち軽率に体あげちゃうからアホだなーって。それくらい好きなんだろうけど、それほどの相手?って感じだよね。(笑)
青山と小南は修復不可能な感じはあるけど、本音で話せたらワンチャンあるかもしれない。おおかたの予想通り、これから別れるけどね!
渋谷も矢桐兄も、メインキャラに負けず劣らずのダメ人間。どうしてここまでダメな奴ばっかりなのか、それは私の性格が悪いから(._.)
紅音もこれから結構クズ発揮してくるからお楽しみに(何を)
球技大会は、青山と矢桐コンビと、瀬戸と小南コンビに別れて話が進む感じです。わりと平和かな。
でもそれが終わったら、みんな仲良く失墜☆
私もりんちゃんの小説楽しみにしてます。しっちゅい一話、よかった笑 そしてガラスの靴。めっちゃ楽しみ。
コメントありがとう(*'ω'*)今度、りんちゃんの小説とまた雑談スレに顔出しに行きます。
- Re: 失墜 ( No.43 )
- 日時: 2016/11/09 03:10
- 名前: 三森電池 ◆IvIoGk3xD6 (ID: cTS7JEeA)
ついに雨が降り出した空を見上げた。灰色の雲と濁った空気と、疲れ切った私。スクールバックから取り出した、ピンクの折り畳み傘を広げる。
これからバイトだからまたね、と渋谷くんは繁華街の方へ消えてしまった。伝えるだけ伝えて、奪うだけ奪って、涼しい顔でいなくなってしまった。ここで寂しいなんて思ってしまうことは、まんまと彼の策略にはまることと同じだけど、それでも瑛太に電話せずにはいられなかった。
駅の中で待ってても良いよ、と電話の向こうで瑛太は言っていたけれど、私は外に一人立っている。そんな気分だった。傘をささずに雨に打たれるのは、意外とすっきりするし、いっそのこと、そうしたかった。これからの事が何も見えない、どうしていいかもわからないまま、良いように扱われている自分に嫌気がさして、全部洗い流したかった。
「……駅の中で待ってて、って言ったのに。風邪ひくよ」
珍しく呆れた顔をした瑛太が、改札の前で傘を閉じようとしている私に言う。私は何も言わずに、通り過ぎる人たちが持っているビニール傘を見ていた。
すべてを知ってしまったからには、聞き出さなくてはいけない。信じたくはないけれど、瑛太が本当に、矢桐くんからお金を奪っていたとしたら、私はどうすれば良いんだろう。渋谷くんの言う通り、別れたほうが良いのか、彼女としてちゃんと更生させてあげればいいのか。生憎私は、自分の事で精一杯だ。完璧な恋人の瑛太と釣り合うために、並々ならぬ投資を自分に対してしてきた訳だけど、その恋人が完璧ではなくなったとき、無理して一緒にいる必要なんてないと感じてしまう自分は軽薄だろうか。
愛なんて、最初から無かったのかもしれない。恋人という、手頃で、周りに自慢できる、自己顕示欲と身体的な寂しさを満たすためだけのアクセサリーが欲しかっただけなのかもしれない。それなら別に、瑛太じゃなくてもいい。私も渋谷くんと同じで、愛とか情とかが薄い人間なんだろう。
「電話してくるなんて、珍しいじゃん。今日はどこ行こっか」
「ファミレスでいいよ。近いし」
ぶっきらぼうな言い方になってしまったかな、と思いつつ顔を上げると、予想通り瑛太は「もしかして、機嫌悪い?」って、にっこり笑って聞いてきた。いつ見ても、端正な顔立ちをしている。透き通るみたいな瞳も、肌も、全体的に色素の薄い髪も、女の子の好きそうなポイントを確実に突いていると思う。どこか中性的な雰囲気は柔らかく、紅音たちが揃って羨むのもわかる。
一年も付き合ったんだから、私だって曲がりなりにも瑛太のことは好きだし、信じてあげたい。デートの時に奢ってくれなくても良いし、高いプレゼントもいらないから、矢桐くんからお金を奪ってるなんて、嘘であってほしい。
「……そんなに言うならファミレスでもいいけど。僕、この近くに良いお店見つけたんだけどな」
「いいってば。お金とか、いつも奢ってもらってばっかりで悪いし」
女の子に出させる方が悪いと思うよ、と瑛太は笑う。結局、適当に入る予定だった駅前のファミレスを通り越し、連れていかれたのは小奇麗な喫茶店だった。それほどお腹は減っていなかったので、コーヒーとショートケーキだけ頼もうとしてメニューを見て、軒並み千円を超えることに愕然とする。さっき行ったマックのアイスコーヒーは百円だったのになと思いながら、雨に濡れた窓ガラスと、色とりどりの傘を差して街を歩く人を見ていた。
「……ねえ、矢桐くんとどんな関係なの?」
なんでもない話をするように切り出した。例えるなら、月九ドラマの行方を予想するみたいな、そんな軽い話のように。でも、それを聞いた瞬間、コーヒーカップを持とうとする瑛太の手が止まったから、やっぱりそうなんだ、と思った。
私は不思議と冷静だった。いちど椅子に座り直して、改めてもう一度聞いてみる。瑛太から説明してほしかった。
「……なんで、そんな事聞くの?」
顔を上げて、大きな瞳がまっすぐ私を見据える。薄く口角を上げるいつもの笑顔が、なんとなく引きつっている。
もはや、腹の探り合いだった。私を最後まで欺こうとしてポーカーフェイスを演じているであろう瑛太と、正体を暴こうと当たり障りのない言葉から攻めていく私。心理戦は苦手だけれど、そうも言っていられない。雨の音が一層大きくなる。
「渋谷くんから聞いたの」
「へえ、あいつ口軽いもんな」
話した僕が馬鹿だったなあ。私から目を逸らして、自嘲するように笑う。認めたようなものだった。信じたくないと最後まで思っていたけれど、それは揺るぎのない事実だった。私も視線を逸らす。続きは聞きたくない。最後の最後まで、渋谷くんが嘘をついていると思いたかった。
「……あのさ、今までごめん。僕、中学校が矢桐と同じだったんだけど、その時から、たまにお金取ったりしてて、まあ、そんな大金でもないし、今後も柚寿には絶対迷惑かけないから。ごめん」
「私じゃなくて、矢桐くんに謝りなよ。高いお店に連れて行ってくれなくても良いし、豪華なプレゼントもいらないから、これからは撮影のギャラを矢桐くんに返すとか、すればいいんじゃないかな」
「……僕んち、生活苦しいから、僕が矢桐から金奪わないと、ご飯も食べられないんだ」
「じゃあなんで、こんな高いお店にばっかり連れていくの? 私、ファミレスでも良いって言ってるし、奢ってくれなくてもお金くらい自分で払えるわ」
「だって、僕に金が無いってみんなにバレたら、」
みんな、僕から離れていくだろ。そう言う声はとても小さく、雨の音に消えていく。口をきゅっと結んで、俯く瑛太を見て、こんな表情もするんだ、と思った。いつも私の前では、柔らかい笑顔を浮かべていたから。私と同じように、瑛太も完璧でいようと必死だったのかもしれない。
だけど、瑛太が取り返しがつかないことをしているのは事実だ。「柚寿に迷惑はかけない」なんて言っておきながら、私はついさっき渋谷くんにほとんど無理矢理抱かれてしまったし、万が一矢桐くんが何かアクションを起こしたら、私にまで被害が及びかねない。恋人のためにここまで親身になれるかと言われると、迷ってしまう。瑛太のやっていることは犯罪だ。それを見て見ぬ振りするのが、恋人かと言われたら、絶対に違うだろう。それはわかっているのに、目の前でそんな顔をされると、私は躊躇ってしまう。一年も付き合った大切な恋人だ。悲しそうにしているのを見ると、優しく抱きしめてあげたくなる。
どうにも救えない、私には手の施しようのない瑛太とは、これで最後にしようと決めた。笑い合うのは、恋人でいるのは、今日で最後だ。だから、今だけは私も共犯でいさせてほしい。
「……私の家で話そうよ。とりあえず、落ち着いて? 私は、離れないから」
子供に話しかけるように、私は笑う。離れないなんて嘘だけど、少し安心したような表情になる瑛太を見ると、私の心配もいくらかは和らぐ。
初めて、お代を割り勘で払った。「これからは、こうしよっか」と照れたように笑う瑛太に、これからなんかないよ、今日で最後だよとは、まだ言えなかった。
- Re: 失墜 ( No.44 )
- 日時: 2016/09/22 03:28
- 名前: 三森電池 ◆IvIoGk3xD6 (ID: 0K8YLkgA)
玄関で傘に付いた雨粒を落としながら、私は家に誰も居ないことを確認して、ドアの向こうにいる瑛太にオッケーサインを出した。湿気が多いなあ、と感じながら靴を脱ぎ、揃えて、先に階段を登る。私の部屋は二階の一番廊下側で、そういえば、テスト勉強用のテキストが机に上がったままだった事を思い出す。もうこれで最後だし、どうでもいいんだけど。
後ろから、階段を登る音が聞こえてくる。私はドアを開けて部屋に入り、荷物を投げてベットに座り込んだ。外の雨は強くなるばかりで、窓を閉めて出かけて正解だったと考える。
私は自分の事で精一杯だから、お母さんの家事を手伝うなんてことは、生まれてこの方したことが無い。だから、外に干してある、雨で濡れていくばかりのタオルとか、衣類とかを見ても、どうにもできない。勉強ができていい大学に入ったとしても、これじゃあいつまでたっても親不孝な娘のままだ。
少しは手伝ってあげたいけれど、そんな時間があったら、英単語の一つでも覚えていたほうが、なんて思ってしまう私は、時々何と戦っているのかわからなくなる。こんなことが起きると、特にそう思う。私がいろんなものを捨ててまでしてきた努力は、一体誰のためだったんだろう。
「……柚寿」
入り口で立ったままの瑛太が、怪訝そうに私を見ている。私はいつもみたいに微笑んで、「どうしたの」と言う。
なんでもないよって、つられるみたいに笑って瑛太は、私の隣に座る。二人で一つの傘に入ってきたから、少し濡れてしまった右側の髪に手を伸ばす。甘い香りがする。香水でもなくて、制汗剤でもないその匂いにくらくらする。
ごめんね、と小さく呟くその声は、誰も居ない私の部屋にはちゃんと響いた。脆くて、すぐに崩れてしまいそうだった。支えるように抱きしめる。これからの事に責任はとれないけれど、今だけでもこうしてあげるのが、恋人としてしてあげられることだと思った。今だけは、安心して笑っていてほしかった。
「今日は、何もしなくていいから、ずっとこうしてよっか」
「……うん。ありがとう」
私の体にもたれかかって、いつもより強く抱きしめる。瑛太の表情は見えないけれど、きっと私よりも追いつめられていることは確かだろう。背中を撫でながら、私は「気付いてあげられなくて、ごめん」と言葉をかける。首を振る瑛太を窘めて、冷たい手を握る。雨に濡れて、体も随分冷えてしまった。
落ち着くまでいくらでも待とうと思っていた。手を握ったまま、どんな話でも聞いてあげるつもりだった。楽になるまでこのままでいいよ、と言うと、顔も上げずに弱々しく頷かれる。こんな瑛太を初めて見た。本当は、すごく弱くて、簡単に壊れてしまうんだな、と今更知った。
ここで情に流されてしまえたら、私は瑛太を許して、このままずっと抱きしめていただろう。本気で愛する人なら、相手がどこまで失墜したとしても、一緒に地獄までついていける。だけど、強欲な私は、今までの努力が無駄になってしまった気がして仕方ないのだ。高級店でのディナーも高いプレゼントもいらないけれど、人から奪った金が無いと生きていけないような人も嫌だ。手に入れるのは普通の幸せで良かったのに、私が死ぬ気で頑張っても、普通にすらなれない。
ベッドの上には、瑛太から貰ったぬいぐるみがたくさん置いてある。苦手だと言っていたユーフォ—キャッチャーで取ってくれたうさぎも、誕生日に家まで持ってきてくれた大きなくまも、白いシーツに並んで座っている。壁にかかったハンガーの、お気に入りのピンクのワンピースだって、瑛太から貰ったものだった。これらは全部、瑛太じゃなくて、矢桐くんのお金で買ったものだ。私が持っていたらいけないものばかりである。正気になれと自分に言い聞かせる。私と瑛太は立派な共犯だった。抱きしめるその腕を、優しく振りほどいた。
不安げに瑛太は私を見る。瞳の奥の光が揺らぐ。これで本当に、最後の最後。私は小さく呟いて、そのまま瑛太にキスをした。
触れるだけのキスなんて、いつぶりだろうか。潤んだ瞳は、私を見つめたままだった。そして、何かに縋るように、助けを求めるように、吐き出した。
「柚寿は、僕から離れないよね。ずっと一緒にいてくれるよね」
ざあざあと、外の雨だけが強くなる。私の心の炎は消さなければいけないのに、そんな風に言われると、揺らいでしまう。だけど私は、私と決別がしたい。繋いだ手を離す。もう触れられない。触れてはいけない。笑顔を作って、言葉を並べた。
「ちょっと、考えさせてほしい」
□
「……久しぶりじゃん。どうしたんだよ、こんな天気の日にわざわざ来ることないだろ」
テスト勉強をする気がなかったので、すごく久しぶりに、幼馴染の中川椿の家に来てしまった。こんな日に来られても迷惑だってことは解っているけれど、聞いてほしいことが山ほどあった。椿は優しいから、嫌そうにしながらも、タオルを渡してくれる。その優しさにいつも、頼りたくなってしまう。
私は小学校も中学校も椿と一緒だったし、女の子の友達がいなかったから、ほとんどの時間を椿と過ごしていた。だから、学校の友達には話せないことも、なんでも話せる気がしたし、今回の瑛太の件も、こっそり聞いてもらおうと思った。あまりにも事が大きすぎて、紅音達には相談できない。ひとりで抱えるのは、とても辛かった。
傘をさしていたのに、それなりに濡れてしまった自分にやっと気付く。白いタオルで肌と髪を拭きながら、帰りは面倒だなとぼんやり思う。いっそ、今日は家に帰らなくてもいいや。なんて思ってしまうくらい、私は上手に思考が出来なくなっていた。
「あ、借りてた漫画。今度持ってくるね」
「まーた忘れたのかよ、アホ柚寿。俺全部読んだし、別にいいけど」
男の子の部屋に上がったことはない。椿の部屋を除いて。今思うと、当たり前である。生活保護で暮らしているという瑛太は、自分の家が貧乏だという事を何があっても知られたくなかったのだから、私を家に上げてくれる訳が無かった。
椿の部屋は、物が多いから狭く感じる。パイプのベッドの上には読みかけの漫画が置いてあるし、テーブルには食べかけのお菓子が広げてある。ふと目に留まった小型のダンベルを見て、「鍛えてんの?」なんて、どうでもいい話を振ると、そんなんじゃねえよと返される。瑛太もよく渋谷くんとジムに行くらしいから、男の子も色々と大変なんだと思う。体系を維持するために努力をするのは、女の子だけではない。
「んで、今日はどうした? エータくんとケンカしたんだろ。なんとなくそんな感じする」
「……ケンカっていうか、もう別れるんだと思う」
あはは、と私は笑う。椿は驚きもせずに、床に落ちた雑誌を拾い上げる。「そんな事だろうと思った」と、瑛太よりも低い声が部屋にこぼれて消える。
細かい事情は話せなかった。だけど、私が瑛太のためにしてきた努力と、空白になりそうなこれまでの一年間を思うと、急に空しくなってきて、私はぼろぼろに泣いていた。 私はこんなふうになりたかったんじゃない。憔悴しきった私に漬け込んで、ホテルに連れ込んだ渋谷くんも、すごく馬鹿だった瑛太も、何も知らなかった私も、みんなみんな、最低だ。消えてしまいたい。言葉になんてなりきれない思いをそのまま吐き出す。嗚咽が、雨の音に絡まる。
椿はついに、私に何があったのかを悟ったのか、作業を止めて私の隣に座った。そして、ぽん、と頭を叩く。
「……だから、柚寿に恋愛とか向いてないって言っただろ。めんどくせえな」
視界が曇って何も見えない。声をあげて泣く私の隣に、椿はずっと居た。まるで、さっきの瑛太と私みたいだったけれど、体を預けられなかったのは、やっぱり、私たちは幼馴染という関係だったから。今横に居るのが、渋谷くんみたいな適当な男だったら、理由を付けて抱かれていただろうし、私も寂しさを無理に埋めようとしていた。椿はそれさえできないのに、心は不思議と楽になる。次付き合うとしたらこんな人が良いけれど、しばらくは恋愛なんかしたくもない。
しばらく、私たちはそうしていた。雨の音だけになってしまった部屋で、何にも寄りかかれず、行き場のない思いをぶつける宛てを必死で探していた。
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