複雑・ファジー小説

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失墜  【完結】
日時: 2021/08/31 01:24
名前: 三森電池 ◆IvIoGk3xD6 (ID: bOxz4n6K)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=19157

歪んだ恋愛小説です。苦手な方はご遠慮ください。


>>1 あれそれ

☆この作品の二次創作をやってもらっています。
「慟哭」マツリカ様著 URL先にて
「しつついアンソロ」雑談板にて掲載中 

キャラクター設定集 >>80-81
あとがき >>87


>>99
>>100

Re: 失墜 ( No.35 )
日時: 2016/09/10 00:28
名前: 三森電池 ◆IvIoGk3xD6 (ID: 0K8YLkgA)

 恋をすると、学校に行くのがほんの少しだけ楽しみになる。曜日感覚がめちゃくちゃになってしまって、目が覚めた今日が土曜日だと気づいて、もう一度ベッドに倒れ込む。浮かれた気持ちは能天気な雲みたいにぷかぷかして、かと思えば泡みたいにぱちんと消える。「もしかしたら叶うかも」と、「柚寿には敵わない」が交互に押し寄せて、二度寝も出来ずに、醒めてしまった体を起こした。
 いつもより、十五分ほど早く目覚めてしまった。眠い瞳を擦って、つけっぱなしだった部屋のテレビのニュースに目を向ける。有名なタレントが、酒に酔って一般人を恐喝して、逮捕されたらしい。私にはまるで関係のないことだらけのニュース番組は退屈で、ベットを降りて、洗面所へと向かうことにした。
 予定のない週末は好きだった。都市部の方へ出て、雑貨を買いに行こうかと考えてみたり、今日は一日寝て過ごそうかと思ったりするうちに、いつも終わってしまうのだけれど。
 鏡に映る私は、いつも通り冴えない。まっすぐじゃない髪も、気を付けているのに荒れてしまう肌も、あまり大きくない瞳も、全部全部コンプレックスだ。柚寿は毎日、鏡の前に立つのが楽しくて仕方ないことだろう。私は高校生だから化粧も出来ないし、両親に何か言われても困るので美容器具を買う事も出来ない。大学に出たら、一気に垢抜けてみたいけれど、今の高校時代だって楽しみたい。わがままだろうか。柚寿みたいに、なんでも持っている子がいるんだから、これくらい望んでもいいでしょ、と、私はドライヤーを持つ。久しぶりに、服を買いに行こうと思った。ちょっとでもいいから、可愛くなりたかった。

 「うわ、人多いなあ」

 地方政令都市の駅前は、殺人的に混んでいた。学校へ行くときも遊びに行くときも、必ず経由する仙台駅。土曜日はさらに人が多くて、私は一番賑わっているところから離れて、控え目なセレクトショップに入ることにした。駅から出るバスに十五分ほど揺られれば、そこはもうショッピングセンターや飲食店が数店並ぶだけの通りに入る。アウトレットにまで行く元気はないから、適当に済ませて、帰って寝よう。まだ来たばかりなのに、早くもそう思ってしまっていた。
 友達の梓は、今日は学校で英語のテストの追試を受けなければいけないらしい。クラスで一番頭が悪いはずの私が合格して、紅音や梓や柏野くんが落ちているというのもおかしな話だけれど、私はやればできるタイプだと自負しているから、勉強さえすればそれなりに良い点数は取れるのだ。買い物に梓も誘いたかったが、仕方ない。
 入ったお店の中の服たちは、真っ白のマネキンに着せられていたり、ハンガーにゆるくかけてあったり、店頭に飾られていたりして、可愛い。でも買って家に持って帰れば可愛さが半減しているのはいつものことで、マネキンが着ていればこんなに似合うのに、私が着ても、なんだか服に着られているみたいになる。慎重に選ばなければいけないのに、色や形が可愛らしい服にばかり目が行ってしまう。前に梓が言っていた。ただ可愛いと思ったものを買うんじゃなくて、手持ちの服と合いそうなのを選ぶのよ、と。今日着ている、白のブラウスと青のプリーツスカートにも合うような、シンプルだけど甘さもあるような、ああ、考えれば考えるほど、思考回路がショートしそうである。

 「……あれ、瑛太くん?」

 外に居る人が、目に飛び込む。服屋のすぐ前にある公園のベンチで、電話をしている彼は、私の二・〇の視力に狂いが無ければ、間違いなく瑛太くんだった。読者モデルをやっているだけあって、私服もかっこいい。
 私は買い物かごを戻して、店を飛び出す。チャンスだと思った。ここで距離を詰めたい。またキスしてくれるかもしれない。そんな淡い期待を抱いて、こっそり電柱の隙間から覗く。お昼時も近くなっていたから、周りに人はほとんどいない。噴水の周りを散歩している老夫婦と、離れた場所のベンチで談笑している若いカップルが見える以外には、目立った人はいないようだった。
 二時によろしくね、と残して、瑛太くんは電話を切ったようだった。それを見計らって、私は公園に入っていく。できるだけ偶然を装って、声をかける。頭の中で何度かシミュレートしたシチュエーションだから、ここまでは完璧だった。
 瑛太くんは少し驚いたようだったけれど、すぐにいつもの笑顔に戻ってスマホの画面を閉じて「偶然だね」って言って、隣の席に座らせてくれた。こんな風に優しいところも、大好きだ。

 「瀬戸さん、一人?」
 「うん。服を見に来たんだけど、もうすぐ帰るとこ」

 本当は、今来たばかりなんだけど。そんな言葉を掻き消すように笑う。次に言いたかった、「よかったら、一緒に昼ご飯食べようよ」は流石に言えなくて、私は瑛太くんの次の言葉を待つ。そんな間にも、胸のドキドキは加速していく。
 休みの日は、いつもよりも特別だ。瑛太くんはこれからデートでもするのか、モノトーン調でまとめられた私服には皺一つない。固すぎず、柔らかすぎずの印象を与える彼は静かな公園でもどこか違ったオーラを纏っていて、隣に座っている私まで、通行人たちの視線を浴びているような気がする。
 そんな瑛太くんは、私からちらっと目線を逸らして、申し訳なさそうに言った。

 「……ごめん、この前。僕、ちょっと軽率すぎたよ」

 この前とは、瑛太くんが私にキスしたときのことだろう。
 そんな顔しないで、って言いたかった。私は何も手がつかなくなるくらい嬉しかったんだから。大きな目をふっと伏せて、瑛太くんはもう一度、ごめんと付け足す。謝ってくれなくてもいいから、私をここまでした責任を取ってほしいな。
 もちろん、そんな直接的なことは言えない。でも、私はもう止まれなかった。その柔らかい髪も、細い指も、全部私の物にしてしまいたい。お願い、柚寿と付き合ったままでいいから。私は二番目でもいいから、ねえ。
 そう思いながら吐き出した言葉は熱く、六月のアスファルトにじんわり染みていく。

 「い、いいの。私、好きだから。瑛太くんのこと」

 顔を見れない。私なりの、精一杯の告白のつもりだったけど、本気になってくれるだろうか。
 付き合ってって、言ってる訳じゃないの。こうやって話してるだけでも幸せだから。それだけ伝わればよかった。瑛太くんは、「そっか」とだけ、私に返す。表情は怖くて見ることができない。でも、その優しい声色に、私はまたどうしようもなく、溶かされていくようだった。びくびくしながら顔を上げる。優しく微笑んでいる瑛太くんは、私の身勝手な思いを伝えても、私の大好きな瑛太くんのままだった。

Re: 失墜 ( No.36 )
日時: 2016/09/11 09:49
名前: 三森電池 ◆IvIoGk3xD6 (ID: 0K8YLkgA)

9 星降る夜に花束を
 今僕は最高に落ち込んでいる。ベッドの上に寝っ転がって、柚寿とか翔から着ている連絡を返しながら、どうしてこんなことになっちゃったんだろうな、なんて考えていた。土曜日。そろそろ矢桐との約束の時間だけれど、どんな顔をしてあいつに会えばいいんだろう。テーブルに置いてあるコーヒーを流し込んでも、考え事は尽きない。砂糖とミルクを死ぬほど入れたって、僕は死なない。
 僕は自分勝手で最低だ。向こう側から聞こえてくるシャワーの音、乱れた布団、二人分の形跡、床に落ちている瀬戸さんが着ていた青のプリーツスカート。小さく流れている、誤魔化しにもならないBGM。ラブホテルの一番安い部屋で、僕らはついさっきまで抱き合っていた。柚寿よりも小さくて、体温が高かった瀬戸さんの、表情も反応もほとんど覚えていないという事は、やっぱり、どうでもよかったんだろう。
 今日は、一四時に矢桐に会って金を取り、一八時から柚寿と夜ご飯を食べに行く予定だった。矢桐も柚寿も二つ返事で了承してくれた。どこで時間をつぶそうかと思っていた時にやってきたのが瀬戸さんで、いきなり告白なんかしてくるものだから、僕は困ってしまって、曖昧な返答しか出来なかった。
 二番目でもいいの。瀬戸さんのその台詞が、なんだか健気で、可愛かった。付き合えないよと僕が言っても彼女は、それでもいいと首を振った。昔の僕に似ていた。姉さんの友達に恋をしていた昔の僕は、とにかく彼女のそばに居たくて、どんな欲求でも気安く呑んでしまっていた。結局その人には他に彼氏がいて、僕の事なんか遊び相手だった訳だけど。僕が必死に貯めた二千円で買ったネックレスをプレゼントしたとき、「そんな関係じゃないでしょ、私達」と笑われたときのあの気持ち、あれを瀬戸さんは最初から背負うつもりらしい。
 ホテルに連れ込んだまではよかったけれど、瀬戸さんが処女だと思うと、行為に及ぶ気はしなかった。僕は処女が苦手だ。痛がるし、怖がるし、反応も良くないし、面倒だ。柚寿くらい上手い女じゃないと嫌だった。例の姉さんの友達のせいか、年上にばかり恋をしてきたから、処女にあたったことは数えるほどしかないのだけれど、「わたし、初めてなの」と頬を染めてカミングアウトする女が可愛く見えたことは一度もない。
 適当に口でしてもらって終わろうと思った。それでさえ罪悪感を覚えるのだから、この前みたいにキスして終わりでもいいや。ベットに座って、AVのチャンネル案内を見ながら、どうして彼女らはこんな仕事しかできないのだろうかと真剣に考えてしまう。そんな間にも、少し離れた場所に座る瀬戸さんは僕をちらちら見ている。なんか飲む? って聞こうとして、話しかけようとしたとき、いきなり白いベットに押し倒された。女の子もけっこう力があるんだな、と思った。

 「お願い。こういう事したら、好きになってくれるんでしょ?」

 倒れ込んだ僕の膝の上に乗って、必死に顔を赤らめて、僕の革のベルトを解き始める瀬戸さんを、不覚にも可愛いと思ってしまった、その時にはもう遅くて。細い腰を抱き寄せる。キスをする。舌をねじ込む服を脱がす、そんな一連の流れさえもどかしくなってしまいそうだった。
 痛がらないわけではなかったけれど、瀬戸さんはとても健気だった。僕を見る瀬戸さんの目はとろけそうなほど甘くて、多分僕も同じ目をしていた。罪悪感はもう無かった。

 「……あー、死にたいな」

 終わってしまうともうそこには、罪悪感しか残らなかった。シャワーの音がしたり、かと思えば止まったりする。女の子はお風呂が長い。柚寿とホテルに行った時も、だいたいこんな感じだ。
 翔がよく言うせいで、死にたいと吐くのが癖になっているような気がする。もちろん本気で死ぬ予定などないけれど、どこか遠くに逃げてしまいたい、そんな気持ちはいつでもある。人間関係をすべて切って一からやり直せたら、そう思って眠ることもあった。柚寿みたいな女の子と恋をして、金も自分で稼いで、本当の幸せが欲しかった。
 柚寿からラインが入っていた。柚寿は瀬戸さんと違って淡泊なので、ラインの返信にほとんど絵文字や顔文字を付けない。そういうところも可愛いのだけれど、僕に対する温度が低い気がしてならない。友達と話すときは、もっと文面も楽しそうなのだろうか。ツイッターもインスタグラムもやっていない柚寿は、他の友達とどんなことを話して、どんな映画を見て、どんな本を見て、何を思ったのか、わからないままだった。
 浴室の扉が開く音がする。青いスカートが床に落ちたままだったから、様子を見て届けに行こうと思った。衣擦れの音が消えて、今ちょうど困っているだろうな、というタイミングで僕は立ち上がる。脱衣所に向かい、彼女に言う。

 「柚寿、スカート忘れてたよ」

 無意識だった。言い終えた後、バスタオルを巻いている瀬戸さんと目が合った。時が止まる。今一番出してはいけない人の名前を、恋人の名を呼ぶように、軽々と呼んでしまった。
 ごめん、と咄嗟に謝る。僕は瀬戸さんに謝ってばかりだ。瀬戸さんは弱く微笑んで、青のスカートを受け取り、僕を見上げる。濡れた髪が白のバスタオルに絡みついている。

 「……いいの。瑛太くんのいちばんは柚寿だって、私はわかってるから」



 「ごめん。一万しかない」
 「……別にいいよ」

 なんで矢桐は謝るんだろうと思ったけれど、そんな言葉を吐く矢桐は驚くほど無表情だったので、たぶん矢桐には、僕に対する「ごめん」なんて気持ちはまったくないのだ。
 人のいない喫茶店で、封筒を僕に渡す矢桐は、今日も相変わらずユニクロの服に全身を包んでいる。いつも通り、日課のようなやりとり。ひとつだけ違うのは、僕が矢桐の大好きな瀬戸さんを奪ってしまったという事。だんだん思い出してきた瀬戸さんの感触を、ここで僕が全部語ったら、矢桐は僕をどんな目で見るんだろう。
 僕はもう、僕と手を繋いで生きていくという事ができなくなりそうだった。
 矢桐は先ほどやってきた紅茶に、インクの切れたボールペンを見るような目線を向けている。僕は、そんな矢桐の着ているパーカーのポケットをじっと見ている。あの中に今日もカッターが入っていたらどうしよう。殺されちゃうかもよ、いつか姉さんはそう言って笑った。姉さんは頭が良い。僕よりも、ずっと。

 「矢桐。お前まだ、瀬戸さんのこと、好きなの?」
 「……なんで?」

 質問に質問で返す、矢桐はこういう奴である。中学から一緒だったから、僕にはわかる。

 「瀬戸さん、僕が言うのもあれだけど、可愛いじゃん。他に狙ってる男いるかもよ」

 例えば、僕とか。冗談交じりに言ってみる。狙っているどころか、逆に瀬戸さんに狙われているのだけれど、これを矢桐に言ったら僕は本気で殺されかねない。また秘密が増えてしまった。またむやみに親密な人を増やしてしまった。それがどんなに悪いことなのか、僕が一番よく分かっている。

 「……小南さんは? 大事にしろよ、彼女だろ」

 すごく嫌そうな顔で、矢桐は僕を見る。まったくもって正論である。
 僕は「冗談だよ、本気にするなよ」と言ってなだめる。矢桐も、僕と瀬戸さんが親密にしているところなど予想できなかったのか、またいつもの表情に戻る。そして、「つまんないこと言うなよ」と小さく呟く。瀬戸さん関連の話題になると途端にわかりやすくなる矢桐をからかうのは楽しい。でも、ほどほどにしておかないと、ふとしたきっかけで全部バレてしまいそうだ。
 やっと矢桐は紅茶を口に運んだ。それを見て僕もミルクティーのコップを持つ。柚寿や友達と居る時はコーヒーしか頼まないけれど、本当はいつもミルクティーが飲みたかった。今さら矢桐の前でかっこつける必要性をまったくもって感じないので、こういう時は心置きなく好きなものを飲める。

 「矢桐」
 「……え?」

 受け取った一万円をポケットに押し込む。これで今の所持金は五万になる。柚寿とデートするくらいなら、これくらいあれば十分だろう。
 僕は鞄から、白い封筒を取り出した。これには三万円が入っている。この前翔とパーティーに行ったとき、途中で抜けてきてしまったから、余ってしまった金だった。

 「……返すよ。使わなかったんだ。なんか、好きな物買えばいいじゃん」

 なにが買えばいいじゃんだ、これは僕の金だ。矢桐はそんなことを言いたそうにしながらも、おずおずと封筒を受け取った。そして、僕の前で平然と封筒の中身を覗いて、福沢諭吉が三枚あることを確認すると、今度こそ不思議そうに顔をしかめた。

 「なんで、また」
 「だから、使わなかったんだよ」

 ぶっきらぼうに言い放つ。何回言わせるつもりなんだろう。僕が矢桐に金を返すのは、これが初めてだった。瀬戸さんの処女を奪ってしまったお詫びだと心の中で付け加える。矢桐はその金を地味な鞄にしまって、まだ疑っているような目で僕を見て、数秒の沈黙の後、聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で言った。

 「……ありがとう」

Re: 失墜 ( No.37 )
日時: 2016/09/11 23:26
名前: 三森電池 ◆IvIoGk3xD6 (ID: 0K8YLkgA)

 暇そうな矢桐を誘って、柚寿と会うまでカラオケでもしていようかと思ったが、よく考えると僕と矢桐は友達でも何でもない。この前の公園の時みたいに、楽しく話ができるとも思えなかったので、喫茶店を出たらすぐに別れた。
 繁華街にゲームでも買いに行くのかと思ってしばらく見ていたけれど、普通に駅に入っていった矢桐は、きっとこのまま家に帰るんだろう。つまんねえな、と思う。暇だから付き合ってやろうと思ったのにな。僕はくるりと振り返って、反対方向に歩き出そうとして、思わず「うわ」と声に出してしまった。

 「……君、青山くんだよね?」

 矢桐がいた。うそだろ、矢桐は今向こうの駅に入ったばかりだ。少し冷静さを取り戻した僕は順番に今まであったことを思い出す。この矢桐は、さっきの矢桐とは違う服を着ているし、ちょっと背も高い。思い出した、矢桐には兄がいた。僕の前に立っていたのは、矢桐が公園で倒れた時、外車で迎えに来たお兄さんだった。
 彼は胡散臭い笑顔を浮かべて、僕を見る。そして、こう言った。

 「やっぱり青山くんだ。晴と一緒に喫茶店入っていったから、やっぱりなって思ってたんだ」

 僕、待ち伏せとか得意だからさ。矢桐にそっくりな奴が楽しそうに笑っているというだけでも薄気味悪いのに、こんなことを言われると、はっきり言って気持ち悪い。さすが矢桐の兄だ、いや、矢桐の方が全然マシだ。僕の本能が、こいつには極力関わりたくないと告げている。
 沢山の人が歩いている街の中、僕らだけ切り離されたように、張り詰めた空気の中にいた。僕はようやく口を開く。無理矢理にいつもの柔らかい笑顔を浮かべる。

 「……何の用事ですか?」
 「ちょっとだけ、話したいことがあるんだ。君、晴からお金取ってるんだってね」

 もう笑えなかった。
 足元がふわふわして、一瞬で具合が悪くなる。咄嗟にこの場から逃げ出そうとしても、鉛みたいに動かなくなった身体が言う事を聞かない。ついにバレた。きっと、僕の姉さんが何らかの手段でバラしたんだ。そんなことを考える余裕さえないのに、僕の頭はなんとしてでもこの現実を受け入れたくないのか、酒を飲んでちょっと饒舌になった矢桐とか、僕に向かって笑いかける柚寿とか、余計なことばかり頭をぐるぐるする。そのせいで、どうやって切り抜けようか考えようとしても、ちっとも頭が回らない。「そんな顔しないでよ、せっかく綺麗な顔してるのに」と、投げかけられる言葉に、全身がこわばる感覚を覚える。冷汗が背中を伝う。もう嫌だ、この人は、僕に次、どんな事を言うんだろう。

 「やっぱり、心当たりあるんだ。……読者モデルだっけ? 近頃のガキは生意気なことしてんなって思ってたけど、まさか高校生にもなって自分で遊ぶ金も稼げないなんて、ガキすぎて笑っちゃうよなあ」
 「……」

 矢桐が、僕を笑っている。そんな気がして、僕はついに視線を落とす。視界が歪む。こんなこと言われたのは初めてで、全部僕が悪いのに、なんでそんな事言うんだよって言い返したくなる。ここが人の少ない路地裏なら、殴り飛ばして逃げていただろうに、そういうわけにもいかなくて、ニヤニヤしている彼を直接睨みつけることさえできない。
 あからさまに言葉に詰まった僕に、矢桐のお兄さんは優越感を覚えてしまったようで、捲し立てるように話し出す。

 「いや、晴も確かにダメなんだよ? あいつクソ暗いし、友達も居ないし。だからって、金取ったりしていいわけないじゃん。青山くん、せっかく今全部うまくいってるのに、僕が警察にチクったら、彼女も友達も全部失うってわかってんの?」

 わかってるから、これ以上何も言わないでくれ。僕は、今度から絶対にやめるから、そんな事を消え入りそうな声で呟いても、届くはずもない。こいつだけは許さない、そう思いながら、僕は頭を下げた。

 「……ごめんなさい」
 「僕は別に謝ってほしいわけじゃないんだ。そんなさ、泣きそうな顔しなくたっていいじゃん。僕が悪いみたいだ、全部青山くんが悪いのに」

 だから、謝るなよ。そう言って彼は手を振っている。
 彼の目に映る僕は、瞳を真っ赤にして、何も言葉が出てこなくて、がたがた震える足でなんとか立っているだけなのだから、ひたすらに惨めなんだと思う。それでも僕の中の最後のプライドみたいなやつが邪魔をして、言いたい言葉を必死に探し求めてしまう。
 そんな僕に、彼は言う。

 「そんな、青山くんに朗報なんだけどさ。君の今までやったこと、チャラにしてあげるよ」
 「……え?」

 コンクリートの一角をずっと睨みつけていた僕は、その優しい言葉に、反射的に視線を上げてしまった。ぱちりと目が合う。やっぱり矢桐にそっくりで、そんな奴にここまで追い詰められたのが恥ずかしくて、すぐにまた視線を逸らした。

 「……見返りは?」
 「よく聞いてくれたね。やっぱり頭良いんだね、青山くん」

 もったいぶらないで、早く言えよ。僕は心の中で言い捨てる。彼は、とても気持ちの悪い表情で、こう述べた。

 「君のお姉さんを、一晩だけ貸してよ。それで、全部無かったことにしてあげるよ」

 いいだろ、青山くん。彼は僕をのぞき込むようにして、まだ笑っている。背筋がぞくりとした。人間のクズだと思った。身内に対してこんな感情を向けられているって、こんなに気持ち悪いことだったんだ。
 絶対に呑みたくない欲求なのに、それでもなお自分が一番可愛い僕は、「わかりました」と頷いて、連絡先を渡し、逃げ出すようにその場を後にしてしまった。あとから、死ぬほど後悔することなんて、この時点で解っていたのに。速足で中心街を離れていく僕は、とにかく矢桐のお兄さんから逃げたかった。

Re: 失墜 ( No.38 )
日時: 2016/09/14 16:23
名前: 三森電池 ◆IvIoGk3xD6 (ID: KVjZMmLu)

 事情を何も知らない柚寿は、待ち合わせ場所にやってきた僕に優しく笑いかけた。「大事な彼女も失うんだよ」と言っていた、矢桐のお兄さんを思い出して、また頭が痛くなる。彼女とのデートくらい、気楽にこなしてしまえたらいいのに、今日はどうしても矢桐のお兄さんの存在が付いて回る。
 柚寿はなんでも似合うから、今日着ている花柄のワンピースも、ため息が出るほど可愛い。今年はこの柄が流行っているみたいで、僕と同じ事務所の女の子とか、駅前をうろついている女の子も似たような服を着ているけれど、誰も柚寿には敵わない。夕暮れの中に立っている、幻想的なくらい綺麗なこの女の子は、何があったって僕のものだ。
 もし、彼女が僕のもとから離れてしまったらと思うと、とても耐えられないだろう。無駄に勉強や運動を頑張りすぎたり、それなのに人形みたいにつんと冷めていたり、ちょっと変わっているけれど、可愛い恋人である。僕は、所有物を横取りされるのが一番嫌いだ。ここまで必死に繋ぎ止めてきた柚寿を失うって、矢桐のお兄さんは笑って言っていたが、僕にとってそれは、考えただけで息が出来なくなりそうになるくらいの大問題なのだ。築き上げてきた周りからの評価や地位が一瞬にして崩れていく、失墜しきったそのどん底で、僕に残っている物はあるんだろうか。

 「行こっか」

 柚寿が手を伸ばす。縋るようにその白い手を掴む。どうか、離れていかないように祈った。
 映画を見に行く約束だった。土曜日の夕方という事もあって、駅に一番近い映画館はとても混んでいたけれど、事前にチケットを予約していた僕らはすんなり席に座ることができた。ポップコーンを持った柚寿が、楽しみだねと小声で言う。シャンプーの香りがする。
 話題の恋愛映画のチケットを、無音のカメラアプリで撮影して、あとでツイッターに載せよう、と思いつつ保存した。これから見るのは僕の周りでもかなり多くの人が絶賛している映画で、感動するとか、こんな恋がしたいだとか、みんな口を揃えて言っているのを何度も聞いた。柚寿もきっと見たがっているだろうなと思って誘ったけれど、なんだか柚寿は、さっき宣伝されていたホラー映画の広告を見た時の方が、瞳を輝かせていた。僕は絶叫系は一切苦手なので、できれば友達と行ってほしい。女の子はこういう純粋な、よくできた恋愛映画が大好きだろうに、僕は時々柚寿のことがわからない。
 パッと照明が点いて、視界が一気に明るくなる。
 結論から言うと、退屈な映画だった。エンドロールが終わって立ち上がる人々の中には涙ぐんでいる人もいるが、僕は終始矢桐のお兄さんの言葉と、姉さんになんて説明しようか、そればかりが気になって、全然集中できなかった。でも、隣の柚寿が、「面白かったね」って言うから、僕も合わせて笑うしかない。
 恋愛が、あんなに上手くいくわけがない。平凡なヒロインが、同じクラスの男に恋して、紆余曲折あったあとに結ばれて、最後は結婚するという、なんともありがちな話だ。完璧なカップルが、完璧なタイミングで成立して、ままごとみたいな喧嘩だけして、最後はライバルでさえも二人を祝福する。馬鹿らしい話だ。もし僕が男のポジションだったら、ヒロインと付き合っていても、いかにも性格が悪そうな顔をしているライバルキャラに言い寄られた瞬間浮気しているだろう。あんなにプラトニックな、絶対的な関係だけ見せられて、幸せを語るなんて、僕には理解しえない。……そう思ってしまうという事は、僕はあまり素直な恋愛をしてこなかったんだろうな。現に今僕は、隣で瞳いっぱいに照明の光を宿した柚寿を、早くホテルに連れ込みたくて仕方なかった。

 「面白かったけどさ、あんなにきれいな恋愛、僕らにはできそうもないね」

 映画館を出た。さっきとは違うホテルで、一番高い部屋を借りた。そういえばさっき瀬戸さんも抱いてしまったことを、この時やっと思い出した。向こうにとっては一生に一度の経験だっただろうに、と消えていた罪悪感がまたこみ上げてくる。今日は厄日なのかもしれない。
 電気も消さずに、柚寿を白いベットに押し倒す。嘘も秘密も、今日あったことも何一つとして柚寿には話せないから、こんな形でぶつけるしかない。甘い香りがする唇に触れると、もう、制御は効かない。僕の腰に腕を回す柚寿が、愛おしい。好きだよと耳元で囁く。頭を撫でて、そのまま強く抱きしめる。潤んだ瞳で、「私も、好き」と僕を見上げる柚寿だけが、僕を無条件で愛してくれる。このまま溺れてしまってもいい、ずっと永遠にこうしていよう。花柄のワンピースに手を伸ばす。恋愛の行きつくところは、いつもこれだ。そのひらひらしたスカートの中にだけ、絶対的な関係がある。

Re: 失墜 ( No.39 )
日時: 2016/09/16 00:24
名前: 三森電池 ◆IvIoGk3xD6 (ID: 0K8YLkgA)

 疲れ果てて眠そうに瞼を擦っている柚寿に、無理やり服を着せる。着せ替え人形と遊んでいるようで、少し虚しかった。それでも僕は柚寿と一緒に居たかったから、もう遅いからと言って家まで送ることにした。
 いつもなら一緒にシャワーを浴びて、柚寿の好きそうな飲食店でご飯を食べた後、ゆっくり話をしながら家まで向かうのだが、今日はいろいろなことが重なりすぎて、僕は柚寿の手を握ったまま、すぐ電車に乗ってしまった。ほとんど無言だった。柚寿は特に気にした素振りは見せず、電車の窓に反射して映る自分の前髪を直したり、月九ドラマの話を振ってきたり、いつも通りだったのだけれど、隣に立つ僕は、普段より三割増しくらいで暗い顔をしていた。

 「……じゃあね、また明日」
 「うん、また明日」

 白い街灯に照らされて、柚寿は笑う。その上では赤や黄色の星たちが、夜空でいくつも光っていた。明日は晴れるだろう。
 柚寿の家は閑静な住宅街の一角にあって、茶色の屋根と白い壁が特徴的な、どこにでもありそうな家だった。お母さんもお父さんも働いていて、収入もたぶん、人並み以上にはあるから、柚寿は東京の私立大学に進学することを目標にしているみたいだ。僕も同じ目標を掲げたかったけれど、家計の事情でとても東京へは行けないし、姉さんみたいに、学校でも指折りの成績をとって、奨学生に選ばれない限り、大学へ行くことも不可能である。
 僕だって、柚寿のような普通の家に生まれていれば、矢桐から金を取ることはなかったし、瀬戸さんに手も出さなかった。僕は何にも悪くない。すべては、子供を育てられないくらい貧乏だったくせに姉さんと僕をおろさなかった母さんと、知らない女と駆け落ちして突然いなくなった父さんが悪い。
 母さんも父さんも居なかった、僕がまだ小さかった頃の夜。十年に一度と呼ばれる豪雨がこの街を襲い、僕は家で一人、毛布を被って怯えていた。雷が家を壊してしまうのではないかと思って、大事な荷物を全部ランドセルに詰めて、絶対に離さなかった。こんな時に限って姉さんは、手当たり次第に親戚に電話をかけて、「このままじゃ私も瑛太も避難できなくて死んじゃう」って泣き叫んでいて、僕の相手をしてくれなかったから、僕は怖くなって、雨の音が聞こえないように耳をふさいでいた。それでも頭に直接響くような雨の音はいつまでも鳴りやまなかった。
 僕の両親は親戚の間でも煙たがられていたから、僕らを避難所に連れて行ってくれる親戚は、とうとういなかった。姉さんは諦めたように座り込んで、そのまま電池が切れたみたいに眠ってしまった。テレビも無い僕らの部屋には、雨の音だけが響いていた。何事もなかったかのように晴れた朝はやってきたけれど、この世の終わりを見たかのような姉さんの表情は、きっと生涯忘れられない。
 あの時の寂しさを、今でもまだ、僕は引きずっている。だから、必死で柚寿や友達を繋ぎ止めようとしているのだ。僕は、僕が思っている以上に、他人に支えられなければ生きていけない。みんなに囲まれて、幸せを感じるために、僕は今日も明日も、青山瑛太でいなくてはいけない。それなのに、矢桐のお兄さんにはとうとうバレてしまったし、連絡先さえわかればこのまま柚寿や柏野にも簡単に僕の秘密をバラすことができる。また具合が悪くなってきた。
 僕は、僕の終わりを確かに感じていた。

 「ごめん、翔? 今暇?」

 限界だった。住宅街を引き返しながら、僕は翔に電話をかけていた。話を聞いてもらいたかった。お互いを信頼しきっている僕らは、学校も違うから、踏み込んだ話も軽いノリでできるだろう。すぐに出た翔の声を聞いて、安心する。
 時刻は午後十時で、翔のバイトがちょうど終わったくらいの時間帯だろうと思う。電話で十分だから、話聞いてくれないかな、と僕は笑いながら言う。すると、電話越しの翔は、急にまじめなトーンになった。

 『今どこ? 会えるんなら会おうぜ、瑛太が電話してくるの珍しいし。なんかあった?』
 「あー、大したことじゃないんだけど。ちょっと聞いてほしいことあって」

 暇だし今から行くわ、と翔が言うから、僕らは急遽、駅で会うことになってしまった。いつだって、すぐに物事を決めてさっさと行動してしまうのは、翔の長所であり短所でもある。僕は、呆れたように笑ってため息を吐いた。
 電話を切って、少し歩を早める。嬉しかった。バイトで疲れているのに、僕のために時間を割いてくれる友達がいる、それだけで、いくらか満たされる気がした。
 駅は酔っ払いが闊歩していて、柱にもたれ掛って倒れているサラリーマンに、警察が声をかけている。その横を、スーツ姿のOLと、定職に就いていなさそうな派手な髪をした男のカップルが通り過ぎていく。僕はいつも翔と待ち合わせをする、切符売り場の前に立っていた。姉さんから入っている「何時に帰るの?」という連絡を無視して、切符を買っている中学生くらいの女の子を見た。家出少女だろうか。僕だって、遠くに逃げることができたらいいのにな。
 人の多い中央口方面からやってきた翔は、直前まで居酒屋でバイトしていたのか、酒の匂いがした。店員と言う立場上飲んではいないだろうけれど、散々すれ違った酔っ払いと同じ匂いを漂わせていて、笑ってしまいそうだった。そんな僕をよそに、黒地に金ラインが入ったジャージ姿で、やはり大量にピアスをつけている翔は、「マック行こうぜ、マック」と僕の肩を叩く。
 一人で歩いている酔ったお姉さんに話しかけられたり、女子大生集団に逆ナンパされそうになったりしながら、なんとか駅を出て隣接しているマックに入った。ここもまた世紀末と言った感じで、死んだ目でスマホを見つめる女の人や、パソコンの画面に突っ伏して寝落ちしているサラリーマンがいたりして、ガラガラの店内をよりいっそう哀愁漂うものにしていた。僕らは窓側の席に座り、すぐに運ばれてきたハンバーガーのパッケージを開いた。
 久しぶりに、こういったファストフード店に来た。柚寿と居る時は、ファミレスやファストフード店は極力避けていた。金が無い男だと思われたら嫌だし、女の子の好きそうな洋食店や話題のお店を調べるのは結構楽しい。結果として柚寿も喜んでくれるから、自然とこういった店からは足が遠のいていた。懐かしいな、と思いながら、夜中だというのに忙しなく働いている、制服姿の店員を見る。
 ダブルチーズバーガーを食べつつ、翔はさっそく切り出した。「聞いてほしい話って、なんだよ」と。
 僕は、少し迷った後、言った。

 「……僕の家、実は生活保護で。貧乏なんだ、すごく」

 消え入りそうな声だった。昔から、僕は都合が悪くなると、相手と目を合わせられないし、普段通り話も出来ない。嘘を吐くのは上手い方だと思っていたのに、これほどまで重大な問題になると、とっさの誤魔化しも出来ない。
 きょとんとしている翔に、僕は続ける。全部を話す気はなかったけれど、一度話してしまうと、止まらなくなりそうだ。吐き出すみたいに言葉を述べる僕を、翔はただ見ていた。

 「それで、かなり前から、クラスの金持ちの男からカツアゲしてたんだけど、ついにそれがそいつの兄さんにばれちゃってさ」

 どうしよう、僕ってこんなダメな奴だったっけ、そう言って、僕は笑う。黙ったままの翔が、ついにそこで口を開いた。怒られるかと思って身構えたけど、彼の言葉は優しかった。

 「……そっか、まあ、そういうこともあるよな! 俺だって昔はいじめとかやってたし、瑛太もそういうことくらいするよな!」

 まるで当たり前のように言って、翔は笑っている。その言葉に、ほだされてしまったらどれだけ楽だろうか。みんな同じことをやってるから、僕だって矢桐から金を取っても良いし、瀬戸さんを奪っても良いし、それでもなお、柚寿の事が好きだと寝言を言っても良い。とにかく許されたかった僕にとっては、こんなに薄っぺらい言葉でさえも薬になる。衝動的に喋ってしまったが、間違いではなかったのかもしれない。

 「あんまり気にすんなって、なんかあったら俺に話してくれていいよ。俺、できるだけ協力するし」
 「……ごめん、ありがとう」
 「俺と瑛太の仲だろ、いまさら遠慮とかいらないって。まあ、俺も頭悪いから、やりすぎんなよ、くらいのアドバイスしかできないけど」

 白い八重歯を見せる翔が、この時は救世主のように思えた。僕がどん底に落ちた時、翔なら、一緒にまた戦ってくれるかもしれない。その確証を得られた気がした。
 僕はもう一度礼を言う。僕は最後まで、僕という人間を生き抜こうと思った。そのために犠牲になる矢桐や瀬戸さんの事を考える余裕は、とっくの昔になくしていた。


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