複雑・ファジー小説

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失墜  【完結】
日時: 2021/08/31 01:24
名前: 三森電池 ◆IvIoGk3xD6 (ID: bOxz4n6K)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=19157

歪んだ恋愛小説です。苦手な方はご遠慮ください。


>>1 あれそれ

☆この作品の二次創作をやってもらっています。
「慟哭」マツリカ様著 URL先にて
「しつついアンソロ」雑談板にて掲載中 

キャラクター設定集 >>80-81
あとがき >>87


>>99
>>100

Re: 失墜 ( No.76 )
日時: 2016/12/11 03:56
名前: 三森電池 ◆IvIoGk3xD6 (ID: cTS7JEeA)

 暗闇に包まれていた僕らの空間に、金色の眩しい光が注がれている。警察だ。僕はこういう事が起きる可能性を考えていたけれど、青山の方は何が起きているか解らないという様子である。君たち、何してるんだ。警察官のよく通る声が、僕の完璧だった舞台を崩していく。ずがずがと、僕が何年も考えてきた、失墜劇に土足で踏み込んでいく。やめろと叫ぶ僕の声も、足もさすがに震えてくる。
 地面に転がっている青山のスマホに表示されている「閲覧者数」は、ゆうに万を超えていた。物騒なタイトルにつられた馬鹿が、まだコメント欄をにぎわせているのだろう。ただの読者モデルにそこまでファンがいるとも思えないし、きっと、ほとんどの奴が、ただの興味本位で僕と青山を見ている。今まで底辺だと見下していた男に脅迫されて、惨めに泣いて許しを乞う動画が、現在進行形で何万人にも配信されていて、これからも電子の世界に一生残る。もしかしたら、クラスの柏野とか小南さんも見ているかもしれない。僕らは伝説になった。そして、僕らの人生は終わった。僕は逮捕されるし、こんな動画を配信された青山が、これから普通に生きていけるとは思えないし、プライドだけはアホみたいに高い青山の事だ、下手したら自殺するかも。そう思うと笑えてきて、僕は、両腕を違う警察官に掴まれて、泣きながら笑っていた。さよなら青山、さよなら僕。どっちの人生もぶっ壊れた、これで完全におあいこだ。
 僕から解放されて、壁に寄りかかって座り込む青山の肩は震えていた。過呼吸を起こしているらしく、警察の人がなにか優しげな言葉をかけている。そのどれにも応えないで、僕だけ見上げて、壊れた機械みたいに、ごめんなさい、ごめんなさいと繰り返している青山の、焦点のあわない目と、僕の目が合う。その瞬間、もう一度首にカッターをかけた時のような心臓の高鳴りを感じた。ああ、僕はずっと、青山のこんな顔が見たかったんだ。いつも女子どもにかっこいいだなんだと持て囃されて、瀬戸さんの純粋な恋心を奪って、ついでに小南さんまで不幸にした、この調子に乗っている男を、ここまで僕は堕とした。最高な気分だ。今この場で死んでもいいとさえ思った。
 当たり前だけど、警察は僕より力が強い。僕はすぐに取り押さえられて、近くにいたパトカーに強制的に乗せられた。一向に落ち着かない青山が、何もない場所に向かって謝り続けている光景も見たかった。動き出したパトカーと、僕の腕を掴んだままの警察官。「これから署まで行くからね。まったく、仕事増やさないでくれるかな」と愚痴を言う運転手を見て、こんなもんなのか、興ざめだなと、ただ思った。それ以外の事は考えらえなかった。
 暗闇の中で、僕のスマホの画面に光が灯る。僕の荷物は全部回収されてしまって遠くにあったのでよく見えなかったけれど、メッセージの差出人は小南さんで、「まさか本当にやるとは思わなかった」という文面には、絵文字も顔文字もなかった。動画を見てくれてありがとうと返信したかったが、生憎僕は、しばらく小南さんとは会えないし、メールの返事も出来ない。



 こういう場面でカツ丼が出てくるのは都市伝説だと思っていたが、今、僕の目の前にはおいしそうな匂いを放つカツ丼が置かれている。僕の前には二人警察官が座っていて、僕の方は黙秘権を行使していた。通っている学校や本名は、財布に入っていた学生証でバレてしまい、親は別室で違う警察と話している。「ここ、それなりに頭いい高校なのにな」と吐き捨てた警察は、まあ普通に学校にも連絡したし、ついさっき、いつも怒ってばかりいるのが嘘のように、腰が低くなった担任がやってきて警察に謝罪をし、なにか話した後、僕を睨みつけて帰っていった。こんな夜中に呼び出してしまったから、怒るのも仕方ない。ただでさえ忙しい教職だ、家に帰ったあとくらいは、生まれたばかりという娘と、奥さんと水入らずな時間を過ごしたいに決まっている。だけど、これはすべて、僕に殺意を抱かせた青山瑛太が悪いのだから、僕じゃなくて青山にあたってほしいものである。

 「うわっ、トレンド一位ですよ! 明日の朝には全国ニュースですねえ!」

 髪の茶色い、若い警察官が、黒いスマホをのぞき込んで、楽しそうにしている。その横の、三十代後半くらいの別な警察は、呆れてはいたが、それを止めることはしなかった。どちらも、何もしゃべらない僕に痺れを切らしているのだ。
 前島と呼ばれたその若い警察官は、ツイッターのトレンドを見ていた。読者モデル殺害配信、なんて言葉が、かれこれ五万件以上ツイートされているらしい。殺害未遂をインターネットで配信したこと、もとは僕がいじめられっ子で青山がいじめっ子の立場だったこと、青山のルックスのこと、家庭環境のこと、学校のことまで、とにかく話題性に溢れていたから、こうなるのも、前島に言わせると「仕方ない」みたいだ。面白がって少し見せてくれたが、ネットの意見は見事に賛否両論だった。これからの人生どうするんだ、この子はもう死んだようなものだと、青山を擁護する声もあれば、それだけの殺意があったんだ、加害者は悪くない、という意見もあった。最近、いじめに耐えかねて学生が自殺するニュースが多発していたから、よくやったと、僕を称賛する声さえあった。青山が泣いて僕の名前を呼ぶものだから、僕の名前ももうネットでは広まっていた。トレンドの三位にある「青山くん」も、その少し下にある「ヤギリくん」も、違う世界の出来事みたいに感じた。僕らは確かに伝説になった。
 僕は自由で幸せだった。警察を無視して、置いてあるカツ丼を食べるために箸を取る。この世から完全に消すことは出来なかったけれど、青山が今後僕の人生に関与してくることは、二度となくなるだろう。青山は学校を辞めるだろうし、僕は退学して留置所に入るか、それとも父さんが金を積んで、遠くの学校に転校するか。青山が居ないなら別にどっちでもいいし、それほど幸せなことはない。
 だけど、瀬戸さんに会えなくなることだけが、残念である。これからの僕は恋愛も出来ないから、たぶん、あの子に生涯最後の恋をした。最後があの子で良かったと、もそもそ、ふわふわした卵のカツ丼を食べながら思っている。瀬戸さんも少しは僕の事を覚えていてくれたらいい。トレンドから消えても、みんなが僕や青山を忘れて幸せに卒業していっても、矢桐くんっていう子が、自分の好きだった男を殺そうとした、という事実を、瀬戸さんだけは覚えていてほしかった。
 僕は面倒になって、カツ丼を一口食べて、水を飲んで、そして小休止を挟む、その時に少しずつ、警察に話をしはじめた。僕は青山瑛太に金を取られ続けていて、ずっと恨んでいた。あんな奴死ねばいいと思っていた。だから僕は、青山を最高に、この世で一番不幸にしてやりたいと思って、殺人を決行した。後悔も反省もしていない。これでよかったと思っている。僕は、僕の正義を僕の方法で遂行したのみだ。
 年な方の警察官は、やれやれと言いたそうに、僕を見ていたが、若い方の前島という男は、どこかキラキラした目をしていた。違う、幼いころから才能や人望に恵まれていて、運動もできて、社会的に充分勝っているであろう、警察官なんかには僕の気持ちがわかるわけがない。それ以上は話さなかった。取り調べって、こんなに面倒なんだなと思いながら、時間稼ぎのためにすごくゆっくりカツ丼を食べた。
 やっと、顔面蒼白になった両親が、僕と直接顔を合わせるころ、日付はすでに変わっていた。地獄のような時間がまだまだ続くのだろうと思うと億劫で、今病院で安静にしているという青山が、ここにきてもなお、恨めしく思えた。


Re: 失墜 ( No.77 )
日時: 2016/12/17 21:12
名前: 三森電池 ◆IvIoGk3xD6 (ID: cTS7JEeA)

 やはり全国ニュースにはなっていて、二時間だけ寝て目を覚ますと、朝のニュース番組で僕の学校が取り上げられている最中だった。被害者はどんな生徒でしたかと質問されているのはクラスメイトの柏野だった。柏野は青山を立てるようなことを言い、反対に僕を「目立たなくて大人しい奴」と評した。お調子者で目立ちたがり屋の柏野だが、この時ばかりは粛々と質問に応答していた。学校では今朝から保護者説明会が開かれており、僕のせいでいろんな人間が迷惑を被っているらしかった。
 僕はと言うと、非常に清々しい気分で満ちていた。
 少年法が適用されるのは十四歳までなので、僕にはなんらかの刑罰が下されるのだと思っていた。しかし、青山がほとんど軽傷だったこと、僕が未成年であることから、刑事裁判にならずに、家庭裁判所で裁判が行われ、保護観察処分になるらしいことがわかった。だけど、そんなにうまくいかないことは、公民を習っていれば知っている。十四歳を越えれば大人と同じように懲罰を受けなければいけないし、「殺害配信」なんてタイトルで全国に流してしまったのだから、今更殺すつもりはなかった、は通用しない。これから受けるであろう精神鑑定でも、僕は普通の人間と変わらない結果を出すだろう。
 つまりは、僕の親が金で解決したのである。この時ばかりは、金をたくさん持っている両親に感謝した。きっと、僕の親は青山家に、慎ましくすれば一生暮らせるかもしれないほどの慰謝料を払う。見たこともない金額に、これまで必死に働いて、それでも保護を受けて暮らしてきた青山のお母さんは、喜んでそれを受け取る。青山にまた金が行くのは嫌だったけど、僕が殺人未遂を犯したことをなんとかしてもみ消したい僕の両親と、人から奪う程金が欲しい青山家で、綺麗に利害が一致するのだから、仕方なかった。

 「……しばらく、お父さんの実家で暮らしましょう。気付いてあげられなくて、ごめんね」

 泣いている母が僕を抱きしめる。何に気付けなかったというのだろうか。青山の事も、瀬戸さんの事も、小南さんの事も、一度も話したことが無いのだから、気付かなくて当然だろう。僕は何も言わずに、立ったままでいた。ただ、この灰色の生活が終わることが嬉しかった。僕ら以外誰も居ない取調室で、しばらく母は昔の話をした。小学生の時の僕は、人並みまでとは言わないけど今よりはずっと明るくて、友達と放課後庭で走り回ったり、ゲームで遊んだりしていたらしい。友達のうちの一人が、家の庭で迷子になった時も率先して助けに行ってくれたし、当時は頭も良かったので、授業参観で難しい問題を答えるたびに、母は誇らしい気持ちになっていた。

 「私は、晴に期待をしすぎたのかもしれないわ。優秀じゃなくても、晴は晴らしくいてくれたら、それでいいのに」

 薄いピンクのハンカチで目尻を拭う母の姿をまじまじと見るのはいつ以来だろうか。気付けば随分老け込んだ気がする。兄さんが大学を辞めて、僕がこんな事件を起こして、迷惑をかけてばかりだ。ただ、これまでお手本通りの真面目な人生を歩んできた母に、僕の何が解るんだ。そんな風にいつも夢見がちなことばかり言うから、僕や兄さんのような人間ができるんだ。
 昔話はどれも退屈だった。早くその、お父さんの実家に行きたかった。担任と顔を合わせ、正式に退学処分を食らうまではこの街を出れないことを辛く感じる。僕はもう一秒たりとも、僕を苦しめた地にいたくない。瀬戸さんの存在だけが惜しいけれど、青山も小南さんも、もう顔も見たくないのだ。新しい場所で、誰にも殺意も好意も抱かず、静かに暮らせたら、今の僕にとっては、それが一番、この上ない幸せなのである。

 「……こんなこと言うと、警察が何言ってんだって感じだけどさ、君、大人しそうに見えてやるじゃん。かっこいいよ」

 署を出る数分前、同伴する予定の母が公衆電話でタクシーを呼んでいる間に、茶髪の警官が話しかけてきた。昨日の前島である。もう二度と会う事も無いかと思っていたが、わざわざ僕に会いに来てくれたらしい。勤務時間中だろうに、警察のくせに不真面目な奴だと思った。
 前島はにかっと白い歯を見せて笑った。屈託のない、子供のような笑顔だった。

 「いやあ、俺も昔、いじめられててさ。馬鹿高校だったから、先輩に目つけられてさぁ、何万取られたかわかんねーよ。復讐してやろうと思ったけど、足がすくんで出来なかったんだ。あの時の俺みたいな、弱い奴を助けるために警察目指してここまでやってきたけど、思えばあのいじめっ子たちにはなんの復讐もできてないんだよな。なんか、虚しくなったよ」

 まだ知り合ってから一日も経っていないのに、らしくもないセリフだと感じてしまう。それほど、彼はいじめや恐喝と言う単語からかけ離れた爽やかな外見と性格を持っていたのだ。
 また、退屈な話をされたな。青山に言わせれば僕は「聞き上手」らしいが、僕の立場からしてみると、興味のない話をされて、うざったいこと限りない。だから、僕は前島と目を合わせずに、こう述べることにした。

 「……人間って、いつもないものねだりばっかりですね。僕だって、足がすくんで何もできないほど弱気になりたかった」
 「ん? どういうこと?」
 「あいつは僕の人生をめちゃくちゃにしたクソ野郎で、そして僕の青春のすべてだった。これから一生苦しんでくれれば、僕はそれだけを糧に生きていけるんですよ」
 「へえ。 ……なんか、宗教みたいだね」

 やっぱり話しかけなければよかった。前島の微妙な表情がそう語っている。僕は踵を返して、その場を立ち去った。ちょうど母と合流して、こんなに早く警察署から解放される。昼のニュースでも少し僕らの話は出ていたけれど、大物タレントの不倫が発覚し、さらにはその相手との子供まで身ごもっているというニュースが飛び込み、世間の注目はおおかたそこへ流れていた。気持ちはいくらか穏やかになった。
 証拠としてスマホのデータをすべて引き抜かれ、返しては貰ったものの母に預けたままなので、タクシーの中で僕は何もせずぼうっとしていた。青山瑛太は何をしているのだろう。僕の事を思い出すたびに体の震えが止まらなくなって過呼吸を起こしていればいいのに。会いたくて震えるなんて歌詞のラブソングがあるくらいなのだから、会いたくない、思い出したくもないメーターが振りきれたら、あいつはどうなるんだろう。そう考えると幸せで、僕はふふ、と小さく笑いを零す。すると、横の母は、「やっと笑ってくれた」とつられたようににっこり笑った。今日は、晴の好きなものを食べようね。そして、荷造りを早めに済ませて、お父さんの実家でゆっくりしましょう。静かな車内で、母は優しく声を紡ぐ。
 外は雨が降り始めていた。六月十一日、ニュースをお送りしますと車内のラジオが告げている。一番最初に報道されたのは、その例のタレントのことで、家に着くまで僕らの事件には少しも触れなかった。所詮世の中と言うのはそんなものなのだ。
 タクシーを降りて、一日ぶりに家の敷地をまたぐ。どん底のはずなのに、これからの未来には一筋の希望があった。
 僕は、清々しい気分に満ちていた。

Re: 失墜 ( No.78 )
日時: 2017/01/04 05:52
名前: 三森電池 ◆IvIoGk3xD6 (ID: cTS7JEeA)

20 13番目の彼女
 矢桐くんが逮捕された。朝起きてテレビを見ると全国ニュースで私の高校が出ていて、まったく落ち着かない気持ちで登校したら、予想以上の事態になっていたらしく、真剣な面持ちで大きなカメラに向かって話すアナウンサーや、数えるのも大変なほど大勢のマスコミが詰めかけていた。クラスの柏野くんが生徒代表のインタビューに答え、私たちは混乱のまま、すぐに下校することになった。
 矢桐くんと瑛太くんの間には、「知らなかった」では済まされない、重大な問題が発生していた。ふつう、こんな事件が起きると、学校側は事を穏便にするために、なるべく多くを語らないらしい。しかし、矢桐くんはツイッターのアプリを通して全国に瑛太くんとの確執をバラしてしまったのだから、臨時で開かれた全校集会で校長先生は、何も嘘をつかなかったし、私たちのクラスには他クラスや他学年の生徒が何人も野次馬に来ていた。だけどさすがに、瑛太くんの友達を自称する人はいなかった。柚寿は最初から学校に来ていなかった。
 何が起きているかわからず、目まぐるしく状況が二転三転するなか、私たちは一斉に校舎から吐き出されるように下校した。それでも、帰りの電車で「早く帰れてラッキー、数学やりたくなかったんだ」と笑顔で話す男子二人組は見かけたし、近所のおばさんも、挨拶を交わしたとき事件には触れてこなかった。

 「逮捕されたの、京乃のクラスの子でしょ? 気を付けなさいね、物騒な世の中なんだから」

 帰宅すると、出かける準備をしているのか、洗面台に立って髪を結んでいるお母さんに、鏡越しに声を掛けられた。「おかえり」も言わずに飛んできたその言葉に返事をして、さっき腕を通したばかりの、制服のベストを脱ぐ。
 お母さんはこれから、わざわざ仕事を休んだお父さんと、学校で開かれる保護者向けの説明会に出席するらしい。過保護だなあと思う。スーツ姿のお父さんが、新聞の一面を眺めながらコーヒーを飲んでいる、その横を抜けて私は自室を目指す。「出かけないほうがいい」と学校にも家族にも言われているけれど、私は今日、これから梓と会う予定がある。
 昼ご飯を食べに行くことになっていたが、あまりにも早く帰されたので、まだ昼と言える時間ではない。梓もそう思ったらしく、私がベットに寝転んで通知を確認したら、梓からの連絡が入っていた。一時に駅で待ち合わせという約束を交わして、私はその時間まで仮眠をとることにした。しかし、事件のことが頭から離れず、目を閉じても大勢のマスコミとクラスに向けられる奇異な目線ばかりが瞼の裏に浮かび、眠ることは出来なかった。そして、その代わりにスマホを手に取り、事件について調べることにした。
 久しぶりにツイッターを開く。さすがにトレンドからは消えていたが、検索にうちの高校の最初の一文字を打ち込むと、サジェストに「殺人未遂」と出てきた。ああ、やっぱりこれは現実なんだ。震える手でその文字をなぞる。架空の名前を持つ他人の、打ち出した無機質な文字が、瑛太くんと矢桐くんの話をしている。怖くなって、すぐに画面を閉じた。そして、個人の感情が絡まない、ニュースのサイトで直に確認することにした。ご丁寧に、高校名まできちんと掲載されていた、「恐喝被害を受けていた少年が殺人未遂」の見出しを開く。矢桐くんが配信した内容も記載されていて、瑛太くんの家は生活保護を受けていて、満足にご飯も食べられていないことが分かった。あんなに毎日綺麗に着飾っていたのに。あとで梓は、この件についてどんな対応を見せるのだろう。そして、梓は、どっちの肩を持つのだろう。
 私は、この二人と、少なくとも友達以上の関係だった時期がある。瑛太くんとは何度も一線を越えて戻れなくなったし、矢桐くんは私の思い上がりでなければ多分、私の事が好きだった。配信では一切語られなかったらしいけれど、私はこの事件と、まったくの無関係ではないのだ。そう思うと怖くなって、ついに耐え切れずに梓に電話をかけた。梓は思っていたよりも冷静で、「わかった、じゃあ今から駅」と言ってため息をつく。梓が居てくれてよかったと思った。そして、急いで支度をして、もう出て行った両親の後に続くように、私は家を出た。



 「……梓は、どっちが悪いと思う?」

 喫茶店は昼時なのに空いていた。いつも賑わっているのになぜだろうかと考えて、今日が平日なことに気が付いた。私服姿の梓は、メニューも見ずに、運ばれてきた水にだけ、淡々と口を付けていた。だから私から話を振らなければいけなかった。午前十一時のゆっくり流れるまどろみの中で、とろけて無くなりそうになる前に、私は何か話さなければならない。そんな焦燥感があったのかもしれない。
 梓は私の方を見たけれど、何も答えはしなかった。でも瞳は、「なんでそんな事訊くの?」と言いたそうにしていた。私が言葉に詰まると、梓はまた大きなため息をついて、ついに私に言った。

 「青山が悪いに決まってんじゃん。あいつの金でディズニー行く予定だったのに。生活保護だって、笑っちゃった」
 「……そういえば、お金渡してもらうの、今日だったね。瑛太くん、払ってくれるって言ってたけどな」
 「払うわけないでしょ。矢桐も青山も退学確定だってさ、もう二度と会わないんじゃない? 京乃はそうじゃないかもしれないけど、私はせいせいした」

 そう言って梓は、また冷たい水に口を付ける。
 私は黙り込んで、それを見ていた。
 私は梓を信頼しているし、梓も梓なりに私の事を思ってくれている。それはわかるのだけれど、梓の声の温度は、インターネットで事件を語る全くの他人のように冷めている。それが悪いことではないし、むしろ、私以上に動揺されると私もさらにパニックになってしまいそうなので、これくらいどっしり構えてもらった方が良い。だけど、やっぱり私はおかしいんだという疎外感は消えなかった。梓に、優しく慰められることを期待していた。そりゃあ私もディズニーランドには行きたかったけど、「妊娠した」という嘘をついてまでは行きたくなかったし、瑛太くんだって私の言う事なんて嘘だと思っているに違いない。それでも「払う」と言ってくれたのは、私に対する慰謝料のようなもので、私も瑛太くんもそれによって気持ちが軽くなるのなら、それでいいと思っていた。だけど、もうその慰謝料が払われることはない。一生このモヤモヤした気持ちと付き合わなければいけない。
 めんどくさい事になったなあ。私はあきらめ気味に、スマホを手に取った。まだメニューも見ていないけれど、気にも留めなかった。喫茶店のカウンターでは、何も悩み事が無さそうな看板猫が早めのシエスタに入っていて、厨房では奥さんが呑気にフライパンを動かしている。急いで決める必要はないと梓も判断したのか、私の行動を止めることはしなかった。
 知らない人からメッセージが届いていた。きちんと確認すると、それは中学時代同じクラスだった男の子だった。渋谷くんと言ったか、目立たない感じの、例えれば矢桐くんのような子だったと記憶していたが、この前会ったとき、彼は信じられないくらい垢抜けていた。あまり話したこともなかったはずだが、なんで今連絡してきたのだろうと思いながら、そこそこ長い文章を読み進める。「自分は青山瑛太の仲のいい友人だ、話は聞いているから、金を払わせてほしい。いつ合流できるだろうか」という内容の物だった。
 

Re: 失墜 ( No.79 )
日時: 2016/12/26 02:34
名前: 三森電池 ◆IvIoGk3xD6 (ID: cTS7JEeA)

 梓は嫌そうにしていたが、私は渋谷くんをこの場に呼ぶことにした。梓と居ると、私は更に自己否定感を募らせてしまう。この空気が変わるのならば何でもいい。
 今日は平日で、渋谷くんは学校があるはずなのだが、これからすぐ来てくれることになった。そういえば、前会った時、「俺の学校は規則がゆるくて、休んでも支障はない」と言っていたっけ。うちの学校は、進学校と言う程でもないけれど、休めば授業や課題に支障が出るから、こんなに環境が違うんだと軽くショックを受けたことを覚えている。ついこの前まで同じ教室で過ごしていたのに、渋谷くんはいつの間にかモデルみたいにかっこよくなって、私は人並みのつまんない高校生になって。高校に合格したときは嬉しかったけれど、特にやりたいこともないし、私は英語以外に勉強ができるわけでもないので、渋谷くんのように好きなことだけをして過ごすのも良かったのかもしれない。矢桐くんや瑛太くんだって、勉強しか将来の道が無いと考えているから、あんなに追い詰められて他人を傷つけたりするんだ。梓が何も話してくれないから、私はずっとそんな事を考えていた。
 かたん、と秒針が動く音が、静かな喫茶店に響いた。それを合図のようにして、やっと梓は口を開いた。

 「……その渋谷って男は、信頼できるわけ?」
 「しばらく会ってないし、仲が良かったわけじゃないからわかんないけど、瑛太くんの友達っていうのは確かだと思う。見た目、モデルさんみたいだし……」
 「うっわ、一番嫌いなタイプ。あんたさ、また青山みたいな男に自分から引っかかろうとしてるの? そんな奴信頼しちゃダメに決まってんじゃん」
 「……でも、わざわざお金渡してくれるっていうんだよ。会うだけでも会おうよ、ディズニー行きたいじゃん」
 「……もう、わかったわよ。やばそうだったら、すぐ撤退するからね。荷物見ときなよ」

 梓は心配性だなあ、という言葉を飲み込んで、私は笑う。ちょうど同時期に、渋谷くんらしき人が喫茶店に入ってきた。絶妙なタイミングである。学校は休んだのか、駅前のおしゃれなセレクトショップの店員のような恰好をしていて、それがとても似合っていた。典型的なモデルさんのようで、梓は嫌がりそうだなあ、と横目で見たら、案の定、梓は汚いものを見るかのような目をして彼を見ていた。渋谷くんはそんなことも気に留めずに、ドアを開き、壁側に座っていた私達に向かって手を振る。軽やかなベルの音と共にドアがゆっくり閉まっていき、厨房から出てきた奥さんが、珍しいお客さんに少し目を見開いて、いらっしゃいませと少し遅れた笑顔を浮かべる。
 近くまでやってきた渋谷くんは、軽く私たちに挨拶をして、梓が座っている方の席に座ろうとした。梓は男嫌いの性質でもあるのか、さっきよりもさらに顔をゆがめて嫌そうにするので、こっちに座っていいよと私が渋谷くんを誘導した。ふわっと香水の匂いが漂う。いかにも地味な女子である私たちの輪に、ひとりだけモデルのように整った男子がいるのだから、周りも不思議なことだろう。渋谷くんは本当に外見が整っていて、纏うオーラも、瑛太くんと同じくらい、いやそれ以上に周りとは違っていて、この寂れた喫茶店でさえも、格式の高い場所のように思えてくる。中学生の時は地味で、女子の恋バナにも名前が出たことが無かったのに。高校デビューって凄いな、なんて、思わずにはいられなかった。

 「瑛太の件、あれヤバいよね。俺、瑛太の家庭事情は知ってたけどさ、そのヤギリくんって子がまさか復讐するとは思わなかった。しかも配信って」
 「そうだよね、クラスから恐喝犯と殺人未遂犯が同時に出るって、私ちょっとまだ頭追いつかないかも」
 「俺らだって混乱してるよ。瑛太の事ネットでは大騒ぎになってるし、同じ雑誌のモデルとして恥ずかしいな」

 横で渋谷くんは照れたように笑う。その時にぱっと視線が交わり、慌てて逸らされる。あ、中学校の頃と同じ。見た目はこんなに変わっても、中身は昔の渋谷くんのままだ。
 梓の方は、まだじとっとした瞳で私たちを見ていた。渋谷くんは、「きょうちゃんの友達? はじめまして」と、丁寧にあいさつをして、時折話も振ってあげているのに、梓は不機嫌そうに二言三言返すだけだった。
 渋谷くんと、「矢桐くんがクラスでどんな子だったのか」について話して、少し盛り上がってきたとき、梓は「ねえ」と氷のように冷たい声で言い放った。その空気を読まない冷めた声に、私はついにイライラしてきたのだけれど、梓は、そんな私を他所に、ふうっと息を吸って、渋谷くんに言った。

 「お金、払ってくれるんでしょ。中絶費用。青山の代わりに、責任取ってくれるんでしょ?」

 梓はじっと渋谷くんを見ている。渋谷くんから、さっきまでの笑顔が消えた。

 「……もちろん払うよ」
 「じゃあ、早く払って消えてよね。私、青山だいっきらいなの。京乃に酷い事してさ、許せないの。友達なんだったらあんたも同じよ」
 「……あはは、ごめんって、梓ちゃん。こんなこと言っても信じてくれないだろうけど、俺も青山の事は心から軽蔑してるよ。正直ヤギリくんに刺されて死ねばよかったんじゃねって、思うもん」
 「あんた、友達じゃないの?」
 「好きだった女の子を、あいつに取られたことがあるんだ。初恋の子。他の女と付き合ってみたりもしたけど、ちゃんと好きになったのはその子だけなのに、あいつ簡単に取ってったし。好き勝手やって、妊娠させちゃうし、さいてーだよな」
 「……ねえ、それってまさか」

 梓が、私の方を見ている。渋谷くんは何も言わなかった。「あんたたち、中学でクラス一緒だったんでしょ? 初恋の子って京乃なの?」と、焦ったように、私と渋谷くんに交互に聞く。私も驚いている。渋谷くんが、私の事を? まさか、そんな訳はないと思いつつも、次の言葉を待ってしまう。

 「……俺はもう、別に本気になれる子を探すけど、梓ちゃんみたいに心配してくれる子もいるんだから、きょうちゃん、もうあんな男に引っかかんないでよ。俺にできることは、金払うくらいだけど、今度はちゃんとした男と幸せになってよ。じゃあ」

 この場に居づらくなったのか、渋谷くんは手書きのメニュー表に視線を泳がせながら言った。持っていた高そうなリュックから、札が数十枚は入っているであろう封筒を取り出して、テーブルに置き、これで足りるはずだから、と付け足して、渋谷くんは席を立つ。そのまま立ち去ろうとする。

 「待って」

 それを止めたのは、梓だった。
 渋谷くんはその強気な声に、ぱっと振り向く。その時、初めてそのグレーの瞳をしっかりと捉えた。きれい。本能でそう思ってしまうほど、透明でまっすぐな視線に、私は何も言葉が出なくなる。
 だけど、私よりずっと意志が強い梓は、とん、とテーブルに手をついて立ち上がる。そして、驚くことに、頭を下げて渋谷くんに謝った。

 「ごめんなさい、京乃が妊娠してるなんて嘘。青山にムカついたから、金でもとってやろうって、思ったの」

 今まで見たことのない、梓の真剣な声が、静かな喫茶店に響く。続くように、私も立ち上がった。梓にだけ謝らせるわけにはいかない。

 「そう、瑛太くんはお金もあるだろうし、ちょっとならいいかなって思って。ごめんなさい」

 また、かたん、と秒針の音が響いた。渋谷くんの、控え目な笑い声が聞こえて、私たちはゆっくり頭を上げる。
 渋谷くんは、心から安心したような顔をしていた。

 「よかった」

 気が抜けるほど、ふやけた笑顔を浮かべた渋谷くんが、私たちを見ている。騙されたことに怒っているわけでは無さそうだった。梓が、テーブルの上の封筒を持って渋谷くんの元へ向かい、渡そうとしたけれど、「いいよ、瑛太からの慰謝料だと思ってよ。大丈夫、あとでちゃんと、あいつには金返してもらうし」と、無理やり押し付けられてしまった。
 梓は封筒を持ったまま、酷く動揺していた。本当に貰っていいのか、と何度も渋谷くんに聞いていた。
 渋谷くんは、無邪気に、子供のように笑う。さっきまでの張りつめたような笑顔ではなく、心からの笑顔に見えた。私の妊娠が嘘だったことが、よほどうれしかったのだろう。

 「その金で、二人でディズニーでも行ってきなって。じゃあね、梓ちゃん、きょうちゃんをよろしく」

 手を振って、渋谷くんは今度こそ店を出る。一緒にご飯でも食べていけばよかったのにな、と思う。
 ぽすん、と梓が席に座った。まだ放心状態の私に封筒を差し出して、珍しく、柔らかい笑顔を浮かべている。

 「……京乃って、あんたが思ってる以上に、周りに好かれてるのね。きっと、これからも、なんだかんだで幸せになるんだろうな」

 私を羨ましがるその声が、少し寂しそうに思えた。だから、私は梓に笑いかける。

 「何言ってるの、私、梓も幸せになってほしいよ。早く予定立てようよ、夏休みなんてさ、すぐに終わっちゃうんだから」

 喫茶店は変わらず閑古鳥が鳴いていた。その一角で、私たちは笑い合う。
 現状は悪くなる一方だ。瑛太くんと矢桐くんの事件は、今も頭の片隅にある。柚寿の事も心配だ。三人とも、今の自分の立ち位置を失ってしまった。それがどんな恐怖なのかはわからないし、この先彼らがどんな運命をたどるかなんて、私には知る由もない。
 だけど、ここで私たちの、小さな夏が始まろうとしていること、それは確かに希望だった。

Re: 失墜 ( No.80 )
日時: 2016/12/27 04:26
名前: 三森電池 ◆IvIoGk3xD6 (ID: cTS7JEeA)

参照7000記念にキャラクターの設定とかまとめたものをあげます。
失墜も、あと2話で完結です。よろしければ、あと少しだけお付き合いください。

矢桐晴/やぎり はる
身長 164cm  血液型 B型
体重 58kg  誕生日 6月1日
好きな食べ物 ハンバーグ、炭酸飲料、スナック菓子
嫌いな食べ物 鶏肉
得意教科 現代文(小説が好き。意外と森見登美彦作品を読んでる)
苦手教科 数学、体育
好きなタイプ 自分とは真逆の、明るくて心優しい子。年下派。
趣味・特技 猟奇的なゲーム、妄想
苦手な物 運動、クラスの中心に居るような男女、実兄
家族構成 父(医者)、母(大学教授)、兄(浪人生)
交友関係 青山瑛太(宿敵)、瀬戸京乃(片想いの相手)

主人公的立ち回りをする人。大人しいので目立たないけれど、気が強く一度決めたことは曲げない。
やや中二病の気がある。クラスメイトの瀬戸京乃に片想いしているが進展の気配はまったくない。
好き嫌いが非常にはっきりしていて、好きな人とそうではない人で態度の差が激しい。基本、小南以外の女には優しく接するが、瀬戸は目に見えて別格だし、逆に男相手では途端にそっけない態度になる。また、小南に驚かれるレベルで口が悪い。
運動が出来ない事、コミュニケーションが下手なこと、身長が低いことがコンプレックス。外見だけは青山になりたい。
女慣れしていないので、特に瀬戸と話すときは挙動不審になることが多い。初恋の相手は小学生の時隣の席だった女の子だが、一言も話さず終わっている。
小学四年生以来、友達が一人も居ない。

「言いたいことも言えずに、やりたいこともできずに、終える人生なんて、そんなのゴミだ」

☆コメント
 一番、読んでくださっている方々に好きと言ってもらっているキャラな気がします。初っ端から殺す宣言してるのに。
 自分がどうしてどうなりたいのかがすごくはっきりしているので、とても書きやすくて私も好きです。クラスメイトの男に殺意を抱いているその横で、ある女の子に一途に片思いしている、そのギャップが魅力という事になっているので、書き分けが上手くできていたらいいなあ。個人的には小南と絡んでいる時の矢桐が、一番ストレートに感情を表現してくれる気がして気に入っています。
 理解してもらえるかな、と不安だったのは、「青山のために僕の青春を全部かけてもいい」と言い張るところ。そんなつまんない男を殺すより、大好きな瀬戸と恋仲になるために頑張ればいいのに。ひねくれてるから、瀬戸のことは早々に諦めて、恋仲になるよりも確実に目標が達成できる殺人に及んでしまう。その、後ろ向きでいながら信念を貫き通すところが読んでくださっている方にウケたので、結果オーライって感じかな。
 名前は「中二病で友達少ないインキャで、でも気だけは強くて周りを見下してそうな感じ」をイメージしてるんですけど、全国の矢桐さんと晴さんごめんなさい。
 それはそうと、青山といい、兄といい、周りにクズしか居なくて可哀想になりますね。完全なる偏見だけど、神聖かまってちゃんとか絶対好んで聴いてると思う。


青山瑛太/あおやま えいた
身長 174cm  血液型 A型
体重 54kg  誕生日 3月12日
好きな食べ物 いちご(幼少期、親戚から年一で送られてくるいちごが最大の贅沢だったので)
嫌いな食べ物 セロリ
得意教科 数学(成績クラス一位。大学は経済学部志望。)
苦手教科 古典
好きなタイプ 顔が美人、余裕があって主導権握ってくれる、適度にエロい、あと料理が上手い。年上派。
趣味・特技 カラオケ
苦手な物 雷、年上の同性
家族構成 母(ラブホの清掃員)、姉(大学生)
交友関係 小南柚寿(恋人)、矢桐晴(宿敵)、矢桐優(嫌い)、瀬戸京乃(浮気相手)、渋谷翔(親友)、柏野秀一(友達)

矢桐が主人公ならこっちは悪役。ツイッターでは「青山殺す」でおなじみ。
貧乏な家庭に生まれ、生活保護で暮らしている。物心ついたときに父親は蒸発済み。ほとんど家に帰らない病弱の母親と、血が繋がっているとは思えない聖人の姉と暮らしている。
男性ファッション雑誌の読者モデルであり、ツイッターのフォロワーが三万人いる。自分の外見がすぐれていることはとっくに自覚済みで、外見に対して否定的なことを言われると動揺する。
自身の性格を「寂しがり屋」と形容している。思ったように手懐けられない小南に不安を感じて瀬戸と浮気してみたり、状況に応じて矢桐に対する態度を変えたり、周りを困らせては追いつめられている。小南や矢桐さえ絡まなければ、立ち回りが上手く周りに溶け込みやすい性質。校内にも校外にも友達が多い。
生活保護で暮らしていること、矢桐から金を搾取して生きている事は一生の秘密。周りはみんな自分の事を金持ちでなんでもできる完璧な男だと思っている。完璧だからこそ、抜け落ちた最後の部分にいつまでも執着し、矢桐から奪った金は軽く数十万を超えている。
行っている行為に対して罪悪感はそれなりにあるものの、それを他人や環境のせいにする癖がある。

「金だって、矢桐なんかより、僕に使われた方が嬉しいよなあ」

☆コメント
 昔から私の作品を読んでくださっている方や、私ととても趣味が合う方は、たいてい青山が好き。こんなにもクズでゲスなのにありがとうございます。元ネタはゲスの極みの人なんですけど、本人より先に不倫も未成年飲酒もやらかしてちょっと笑えません。
 そして、小南が好きな人にも、わりとウケているというか、ネタにしていじってもらえているという嬉しい事実。青山は青山なりに、小南の事は好きだったはずなので、許してあげてくださいね(誰) 
 私とあまりにも持っている物が違うので、書きにくかったなあ。特に瀬戸とのリア充パートは、「モテる男子ってどんな風にエスコートするんだろう」なんてことをかなり悩んだ記憶があります。小南が掴みどころなくて、一筋縄ではいかない女だからか、小南とのパートを描写してる時はやりやすかったんですけど、瀬戸とのああいう少女漫画みたいなのはすごく苦手です。数年前まで少女漫画みたいな、プラトニックな恋愛小説書いてたくせに。
 矢桐にしか本性は晒せないので、絡ませると、内面の脆さと無駄に高いプライドが露わになって超超楽しかったです。意外とすぐ泣くし、追いつめられると何も言えなくなる。でも、「寂しがり屋」という言葉で済まされない程にはクズなので仕方ない。本当は誰かに心の底から愛されたいんだと思います、生憎失墜にその誰かは出てこないけど。
 余談ですが、この人たまに「死にたい」って言いますけど、これはもともと渋谷翔の口癖で、本人には死ぬ勇気も決断力もありません。
 

小南柚寿/こみなみ ゆず
身長 165cm  血液型 AB型
体重 45kg  誕生日 8月23日
好きな食べ物 ステーキ
嫌いな食べ物 野菜全般、甘いもの
得意教科 地理、生物
苦手教科 数学
好きなタイプ 周りに対しての優越感が持てるようなスペックを持った人
趣味・特技 無趣味
苦手な物 過干渉、機械類
家族構成 父(サラリーマン)、母(パート)
交友関係 青山瑛太(恋人)、渋谷翔(浮気相手)、中川椿(幼馴染)、戸羽紅音(友達)

とてつもない努力厨。家に帰ればまず体重を測り、増えていたら軽く近所をジョギングして、夕食を抜いて、美容器具でマッサージをしながら午前一時まで明日の予習をして、という人生を送っている。すべては自分のため。
中学時代は周りから少し浮いた個性派だったが、幼馴染の椿と高校が離れてしまったことにより、「一人でも生きていけるように頑張る」と決める。絶対的な完璧主義者で、一ミリたりとも努力を惜しんだらすべてが終わると思い込んでいる。
周りから褒めてもらえること、評価されることが最大の喜び。周りに生かしてもらっている。たまに、それに疲れると幼馴染の椿の家に入り浸る。
友達らに対しては、一歩引いた目線で接することが多い。紅音に逆らえない他メンバーとの仲介役をしている。元は目立たない側の人間だったので、紅音の発言や行動について難色を示すときがある。
見た目が作り物のように整っていて、なおかつ感情をあまり顔に出さないので、渋谷翔からは「人形」、矢桐からは「ラブドール」と形容されている。
成績のよさ、運動神経、外見の良さ以外に、周りに自慢できる点はほぼ無い。

「……甘いものが好きな、可愛い彼女でいたかったの」

☆コメント
 謎の人気を誇るキャラ。明確に人気が出てきたのは、ゴミ捨て場で紅音に暴行され始めたあたりでしょうか。高飛車で努力が大好きな女の子、というイメージから、一気に転落する感じ。失墜でぜひやりたいシーンだったので、ここを通じて小南が好きな人が増えて、すごく嬉しいです。
 モデルは私が考えた理想の私。残念ながら、ふらふらして自分の尊厳を傷つけられるとどうでもよくなっちゃって、ただただ堕落していく思想以外、全く追いつけていません。これから追いつけるとも思いません。だた、こんなに悲惨な目に遭うんなら、小南さんになるのはちょっと勘弁したいです。
 全体的に書きやすかったです。鬱屈としていて、いつもどこかに陰りがある。恋人のことは、理解しているようで、まるで他人のように扱っているかのような。思いの強さは青山の方が上です。こっちは「愛されたい」じゃなくて、「優越感と余裕を持ちたい」なので、青山以上に恋人をアクセサリーとして見ている。そんな感覚だから、理不尽に暴行されるのもまあ、当然の報いって感じがしますね。一人の人間を最後まで書ききりたいと思っている以上、彼女も立派なクズなんだよ! ということを今一度確認して、今後の動向を見守っていただければ嬉しいです。あと少しだけお付き合いください。
 余談ですが、髪を切断された際に、ショートカットになった小南のイラストをいくつか頂いて、失墜で出したかった欝々しい雰囲気がどれも見事に再現されていて、毎日目の保養にしています!


瀬戸京乃/せと きょうの
身長 155cm  血液型 O型
体重 46kg  誕生日 9月19日
好きな食べ物 グラタン、カルボナーラ、トルティーヤ
嫌いな食べ物 きのこ
得意教科 英語(英語の技能が評価されて推薦で高校に入れるほどには優秀。)
苦手教科 物理
好きなタイプ 少女漫画に出てくるような王子様
趣味・特技 お菓子作り、英語関係の資格を取る事、バトミントン
苦手な物 協調性のない人
家族構成 父(サラリーマン)、母(専業主婦)、妹と弟(中学生)
交友関係 青山瑛太(浮気相手)、矢桐晴(友達)、相沢梓(親友)

少女漫画の世界に生きている、夢見がちで恋に恋する女の子。
明るい性格で、困っている人は放っておけない優しさも持ち、誰とでも分け隔てなく接する。そのため友達が多く、孤立していた相沢梓とも、親友と言えるほど仲良くなる。
特に異性に対して、無意識で思わせぶりな態度をとることがある。そのため、中学時代の渋谷翔の初恋を奪ったり、矢桐に熱狂的に片思いされたりと、主に目立たない系の男子に好かれる傾向がある。
青山を運命の相手だと信じ込み、相手に簡単に弄ばれ、捨てられる。自分の立場や、小南のことも理解しているはずなのに、少女漫画の完璧な恋愛こそが世の恋愛の当たり前だと信じていたため、梓に止められるまでずっと一途に思い続けていた。小南にも嫉妬のような情を抱き、お揃いのストラップを奪うが、後になって矢桐を通して返却している。

「うん、わかってたよ、私、好きだったけど」

☆コメント
 いやあ、書きにくかった。他三人とはまるでタイプの違うキャラなので、非常にやりにくかったです。天真爛漫、裏表がなく、恋に一直線で、弄ばれてもなお、相手を思い続ける。設定としては、(うまく書くことができたら)かなり魅力的になると思うんですけど、梓との百合展開の方がなぜかウケています。私も瀬戸は梓と幸せになれば良いと思います。
 茶髪の二つ結びで童顔というキャラデザがとても気に入っています。他三人が、典型的な「地味な男」と「少女漫画の王子さま」と「クールビューティー的女の子」なキャラデザなので、まあ瀬戸もありがちといえばありがちなんですけど、自分で絵に起こしてみた時、いちばんしっくりきたのは彼女でした。
 モデルは昔の大馬鹿だった私。今ではいい思い出です! なんて言えるほど性格良くないので、小説に起こすという形で恨みをぶつけ続けています。私は瀬戸のように性格も明るくないし、周りに優しくもないし、梓みたいな頼れる親友も居ないけど。
 余談ですが、彼女は将来保育士になります。けっこう向いていると思います。


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