複雑・ファジー小説

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失墜  【完結】
日時: 2021/08/31 01:24
名前: 三森電池 ◆IvIoGk3xD6 (ID: bOxz4n6K)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=19157

歪んだ恋愛小説です。苦手な方はご遠慮ください。


>>1 あれそれ

☆この作品の二次創作をやってもらっています。
「慟哭」マツリカ様著 URL先にて
「しつついアンソロ」雑談板にて掲載中 

キャラクター設定集 >>80-81
あとがき >>87


>>99
>>100

Re: 失墜 ( No.55 )
日時: 2016/10/17 02:20
名前: 三森電池 ◆IvIoGk3xD6 (ID: cTS7JEeA)

 僕は、僕が思っていたよりも心も体も弱かったみたいで、次の日目覚めたときに襲われた全身の気だるさにも、負けてしまいそうだった。今日から柚寿はあの時計塔に居ない。アイデンティティーだった一部が無くなるって、こんなことだったんだと今になって実感が湧いてきた。そういえば、今日からテストだったけど、結局あまり勉強も出来なかったな、二週間前から勉強をしていた柚寿を、少しは見習うべきだったのかもしれないな、と、何をしても柚寿の事ばかり考えてしまう。
 次の席替えに、今回のテストが関係するとしたら、僕は窓際の席ではいられなくなるだろう。完璧な僕は、確実に崩れてきていた。まだ寝ている姉さんを起こさないようにと配慮するのも忘れて、荒々しくドアを開け、今やったって何の対策にもならない参考書片手に歩き出す。晴天の下、僕の事情など知りもせず、今日がはじまった。

 「おはよう」
 「……おはよ」

 最近一緒に学校来ないよな、と話しかけてくる柏野をかわして、僕は前の席の柚寿に挨拶をした。柚寿は教科書から少しも視線をずらさなかった。挨拶くらい笑顔で返してくれてもいいのにな。
 柚寿は、最初から僕の事なんか好きじゃなかったのかと思ってしまう程冷静だった。きっとこのテストでも、いつも通り高得点を取ってしまうんだろう。情に欠けている女である。僕がこんなに憔悴しているというのに、柚寿は涼しい顔で座っていて、今日の放課後も、相変わらず酷い顔をしている戸羽さん達とご飯でも食べに行くんだろう。そこで、実は瑛太と別れたんだ、と話して、僕が今まで隠し通していたことを全部バラして、それをネタにして笑うんだ。明日には全員に広まっているのかもしれない。そう考えると、参考書の文字が、一つも頭に入らなかった。
 僕は、柚寿のことを自己欲求を満たすためのものだと考えていたのかもしれない。柚寿がテストに異様な執着を持っていて、今も最後の追い込みをしているのは知っていたけれど、僕は最後まで、自分の身の方が可愛い最低な奴だった。夏服に変わった柚寿の、細い肩を叩く。長くて真っ直ぐな髪からは、甘いシャンプーの匂いがする。僕は、もう笑顔も作れなかった。心底迷惑そうな顔でこっちを向く元恋人に、これから命乞いみたいなことをする。どれだけかっこ悪くて情けないかは、僕が一番分かっている。

 「柚寿。お願い、僕の事、バラさないで欲しいんだけど」
 「……言わないよ。そんな事話してもつまんないし、同格に見られちゃったら嫌だし」

 教室の喧噪の中で、尖ったナイフを向けられているような感覚。柚寿は、僕と付き合っていたことなんて消し去ってしまいたいみたいだ。「バラしてやる」と言われるよりはマシだったけど、心は少しも晴れない。柚寿だって、完璧な彼氏が欲しかっただけじゃないか。僕より頭も悪いくせに、運動もバレー以外はパッとしないくせに、無駄にいろいろ頑張って、周りから評価されたがっている、本当は何も持っていない空っぽな人間のくせに。
 でも、もし僕がそれに気づいていて、「あんまり無理しなくていいよ」と言えたら。柚寿も僕の事情を察していて、ちゃんと受け入れてくれたら、上手くいっていたのかな。そんなことを考えてしまうほどには情は残っていたし、そもそも完璧な人間など居ないのだから、お互いを過信しすぎてしまったのが良くないのだ。すっと前に向き直って勉強を続ける柚寿を見ながら、そんなことをぼんやりと思う。
 矢桐の方を見ると、カロリーメイトを食べながら問題集とにらめっこしていて、まるで僕だけが取り残されたまま、時間がたっていくようだった。
 参考書で口元を隠して、死にたいなあ、なんて呟いてみる。柚寿はこれだし、テストもだめだし、いつ秘密がバレるかわからないし、僕にはもう背負いきれそうにない。なんで、世界はこんなに僕に冷たいんだろう。こんなに一気に突き落とすこともないのにな。



 テストは惨敗で、自己採点の点数は、隣でソーダを飲んでいる矢桐にすらも及ばなかった。僕は今まで、自分の頭の出来は人並み以上だと思っていたけれど、自頭で勝負してみても全然ダメだった。明日の科目は頑張らないとなあ、なんて絵空事を描いても、家に帰ったら柚寿や僕の社会的立場の事で頭がいっぱいになってまったく進まないのは、もうわかりきっていた。
 翔の事は親友だと思っていたけれど、あいつは簡単に裏切った。最初から柚寿が目的だったのか、僕はしょせん、柚寿に近付くための手段だったのだろうか。遊んだ時の事とか、パーティーを抜けたこととか、楽しい思い出ばかり浮かんできて、嫌いにはなれないのに、生理的な嫌悪には苛まれて、もう翔とは仲良くできないだろうな、と思う。もう僕がいっさいの飾りを無視して本音で語れる人間は、矢桐くらいになってしまった。僕って、友達いなかったんだなあ。
 公園のブランコに乗るのは何年ぶりだろうか。隣の矢桐は、「僕ブランコで乗り物酔いするから」とかなんとか言って、微動だにせずソーダを飲んでいるけれど、僕はなんだかむしゃくしゃして、さっきまで年甲斐もなくゆらゆら揺れていた。団地の公園にブランコはないから、小さいころの僕は公園にブランコを見るたびに、姉さんに怒られるまで乗っていたっけ。

 「……別れたんだっけ? ご愁傷さま」
 「……うん」

 言葉を交わしたのはそれっきりで、沈黙が流れる。テストが終わったのは十二時だから、まだ小学生すらいない時間帯だ。誰も居ない公園で、僕らは時間を潰している。明日もテストはあるけれど、矢桐が帰ろうとしないのは、きっと僕に言いたいことがあるんだろう。そう思っていた矢先に、「僕も失恋したんだ」と口を開いた矢桐を見て、ああ、ビンゴだな、と心の中で小さく呟いた。

 「……瀬戸さんは、お前の事が好きみたいだ」
 「……ごめん」
 「お前なんか、ただのクズなのに、瀬戸さんは青山が良いって言って、僕に笑うんだ。お前の事だいっきらいなのにさ、瀬戸さんがあんなに嬉しそうにお前のことを話して笑うから、僕は」

 矢桐が立ち上がる。ブランコが揺れる。泣きそうな顔を見上げる。ポケットから乱暴に取り出された小さなものが、僕に思いっきり投げつけられる。それは風鈴みたいな涼しい音を立てて、黒いコンクリートに転がった。

 「青山なんか、死ねばいいのに」

 そう言い放って矢桐は、目元を両手で思いっきり抑えて、嗚咽をこぼしはじめた。僕が返す言葉もなかった。
 僕は、矢桐のこんな反応が見たくて瀬戸さんに手を出したはずだったのに、状況が状況だから、つられてしまいそうになって本末転倒である。泣き出してしまった矢桐から目を逸らして拾い上げる、無様に転がっているピンクの物体は、僕が柚寿にプレゼントしたストラップだった。

 「瀬戸さんさあ、お前の事が好きで、小南さんっていう彼女がいても好きで、自分の物にしたかったから、小南さんのストラップ盗んじゃったんだ。で、罪悪感に耐えきれなくなって、僕に相談してきたんだ。協力しない訳ないだろ」

 そんなことを、嗚咽交じりに矢桐は吐き出す。そして、ふざけんな、死ね、と叫ぶみたいに言い散らかして、それでも目元は抑えたままで。僕はどうすることもできなくて、ごめんとも言えなくて、汚れたストラップを見つめていた。
 青山なんか死ね、僕が殺す、小南さんもレイプして埋めてやる、僕には瀬戸さんしかいなかったんだ、それなのに、こんな奴に惚れるなんて、と矢桐は、ぼろぼろ泣きながら喚いている。しょうがないから、「落ち着けよ」って言って、ストラップを投げ捨てて、しゃがみ込んでしまった矢桐の背中をさする。僕の手を払いのける矢桐の言っていることはめちゃくちゃで、今の僕の頭の中に、とてもよく似ていた。

Re: 失墜 ( No.56 )
日時: 2016/10/20 00:23
名前: 三森電池 ◆IvIoGk3xD6 (ID: cTS7JEeA)

 矢桐にかける言葉を探していた。背中から伝わる体温は酷く熱くて、あの公園で酒を飲んだときみたいだった。気が動転したとき、体内の温度がぐっと上がったり下がったりするような感覚を覚えることがある。今の矢桐はまさしくそれで、僕はそれなりに心配してるっていうのに、矢桐はこっちを見もせず顔を伏せたまま、時々鼻をすするだけだった。
 午後一時を回り、母親と手を繋いで散歩をしている小さな女の子が、不思議そうにこっちを見ている。
 そろそろ痺れを切らしてきたころ、矢桐は鞄を手繰り寄せて立ち上がり、「帰る」と一言だけ僕に言い放ち、乱暴な手つきで目元を拭って、そのまま背を向けて歩き出してしまった。一瞬だけ合った目は赤く腫れていて、僕が泣かせたんだと思うと、とてもやりきれなかった。女の子を泣かせないのは得意だったし、柚寿は人間離れして涙を見せない子だったから、生身の人間が目の前で泣いている、という体験を久しぶりにした。
 泣かせたいわけじゃなかった。むしろ、僕は矢桐の手助けでもしてやればよかった。瀬戸さんも馬鹿だな、僕みたいなのに引っかかって。瀬戸さんの事が泣くほど好きで、僕よりずっと金持ちの矢桐とくっついてれば、彼女は幸せになれた。僕は、いったい何人の幸福な生活をぶち壊してしまうのだろうか。……いや、人生に最初から負けていた僕が、誰かを幸せにできるわけがなかったというわけか。
 父さんや母さんが悪い。生活保護でしか暮らせないのなら、子供なんか作らなければよかった。僕だって普通の中流家庭に生まれていたら、自分の金だけで遊んでいたと思うし、金持ちに変なコンプレックスを感じて、高い服や高い食べ物にばかり手を出したりしなかった。僕は何も悪くない。矢桐のお兄さんとか、翔とか、悪い奴等に利用されて、ちょっと地位は落ちてしまったけれど、僕はまだ僕のままだ。違うとしても、そう思いたかった。僕が青山瑛太を演じられなくなったとき、残っている物は何もないだろう。それを痛いほどわかっているからこそ、さっきの矢桐みたいな気持ちにもなったりするんだ。
 こんな時、無条件で僕の事を好きと言ってくれる、盲目みたいに恋をしている瀬戸さんみたいな子が居てくれたらいい。寂しくて死んでしまいそうだから、適当に温め合えたらそれだけでいい。柚寿の代わりにもならないけれど、「僕の事が好き」という確証がある瀬戸さんだけが、こんな時は愛おしく思えるのだ。ただ何も考えずに、愛されたかった。
 矢桐に申し訳ないな、なんて一瞬思うけれど、もうなんにも考えないことにした。この生ぬるい夢が醒めてしまう日は近い。聞きたくない言葉を無視して、一時の幸せにだけ手を伸ばす、それだけでいい。自分で作った底なしの沼に嵌っていくような、どろどろになった気持ちだけぶら下げて、彼女に会いに行こう。



 「瑛太じゃん! 元気? 元気じゃないか、すっげー疲れてんな、あ、テストだっけ? 聞けよ、翔くん今日ガッコ休み。土曜日創立記念式典だったから、振替休日なんだぜ」

 瀬戸さんに「時間ある?」とラインを送ったその直後、駅前で翔に会ってしまった。金髪に薄く入った銀のメッシュ、女子が使うようなヘアピンで留められた前髪、ホストの私服みたいな、モノトーン調のブランドで固めた恰好。遠くに見えるガラの悪そうな奴をとらえた瞬間に、あれは翔だ、と本能で悟ってしまった。そのまま見なかったふりをして立ち去ろうと思ったのに、向こうは僕と目が合った瞬間、何事もなかったかのように話しかけてきたから、運が悪いな、と思う。
 僕はもう癖になってしまった愛想笑いを浮かべて、「そんなに元気ないかな」と言う。目の前の男は、僕が好きだった、僕だけの物だった、柚寿の味を全部知っている。それだけで具合が悪くなってきて、正直、一秒も顔を合わせていたくなかった。抱かれちゃったのよと柚寿はさらっと言ったけど、どんなことをしたんだろう。僕が秘密にしてきた事を話して、突然の事に頭が追い付かない柚寿をホテルに連れ込んで、なんの愛も無いキスをして、僕が買ってあげたワンピースのボタンをひとつずつ外して、そこまで考えたところで、本当に頭が痛くなってきたのでやめた。矢桐もこんな気持ちだったのだろうか。
 駅の中のスターバックスで二人、いつもの甘い飲み物を頼む。瑛太っていつもそれだよな、と言う翔とこの店に来るのは、これで最後にしたい。二週間くらいで彼女が変わる翔とは違って、僕は矢桐を犠牲にして、柚寿を幸せにしてきたつもりだった。コーヒーの香りが漂う。
 席に座って、改めて翔を見ると、クマ一つない白い肌を引き立てているグレーの瞳に、爛々とした光をたっぷりと宿らせて、すごく元気そうだ。何にも考えないで生きている奴はいいな。隣のサラリーマンが吸う煙草の煙に咳き込みたくなるのを抑える。

 「もう別れた?」
 「……翔のせいでね」
 「最高だったよ、柚寿ちゃん」

 上手いし綺麗だし性格も控え目で最高、好きになっちゃったなー。翔はそう言って、テーブルに片肘を乗せて、僕に笑いかける。身構えていても、やっぱり襲われる生理的な気持ち悪に、もう飲み物すら口に入れる気にはならなかった。つい最近まで僕と柚寿は付き合っていたっていうのに、わざわざこんなことを言う翔の気が知れない。僕はこんな奴とずっと、親友と言う間柄で、つまり、こいつと同程度だったわけだ。

 「最初から狙ってたんだろ、柚寿のこと」
 「バレた? まあ、瑛太ならすぐ次いけるって。あんまり金に執着しない子ならすぐ落とせるよ。ああ、でもバイトくらいはしとけよ。生活保護はまずいって」
 「……僕だって、好きで貧乏なわけじゃないのに」
 「貧乏な家に生まれちゃったんだから仕方ないだろ! 俺の紅音はいつでも貸すから、瑛太もいつまでもヤギリくんに甘えてないで、自分で稼ぐってことを覚えないと……」
 「うるさいなあ」

 やっとキャラメルマキアートを口に運ぶ。早く飲んで帰ろうと思った。瀬戸さんからの返信もあるかもしれない。崩れたメイクを施して、毎日大きな笑い声をあげている戸羽さんよりは、馬鹿で夢見がちなだけの瀬戸さんの方が百倍くらいマシだ。そして柚寿は、それより一億倍は魅力的な女の子である。人間の情に欠け、長く付き合った恋人を一瞬で切り捨てる点以外は、なんだかんだで、好きだったんだ。

 「でも、前も言った通り、俺は瑛太のこと仲良い友達だと思ってるし、困ってんなら金貸すよ。親友だからこそ、お前と柚寿ちゃんの、完璧すぎて一切弱みを見せない関係に疑問盛ったわけでさ」
 「だからって、人の恋人奪わなくてもいいのに」
 「ごめんって! 今度焼肉奢るから、な」

 柚寿は焼肉ごときとは釣り合えない存在だっていうのに、翔はいつだって軽すぎる。今回のは自業自得だと思いなよ、と笑う翔を、金輪際許せはしないけれど、僕も合わせて笑っておくことにした。思えば僕だって、矢桐や瀬戸さんからしてみると、搾取する側の人間なのだ。



 「柚寿と別れたって、ほんと?」

 シャワーを浴びてきた瀬戸さんが、ベッドの上でスマホを見ていた僕に問う。安いラブホテルの一番安い部屋で、誰のものでもない瀬戸さんは真っ白のバスタオルに身を包み、濡れた遅れ毛を頬にぺたりと貼り付け、無邪気な表情をしていた。照明も相まって、いつもより五割増しくらいで可愛く見えてくる。
 そうだよ、少し前に別れたんだ、と僕は言って、スマホをベッドの縁に置く。瀬戸さんは、嬉しさを無理やり抑えたみたいな表情になる。

 「じゃあ、私にも、ちょっとはチャンスあるかな」
 「……今はさ、まだ柚寿と決別できてないし、他の子と付き合うとかは考えてないんだ。でも僕、瀬戸さんの事好きだよ」
 「……嬉しい」

 彼女はついに、口元を緩めて笑う。意外と大人っぽい表情も出来ることに気付く。僕はと言うと、また嘘をついてしまったなと、ぼうっとする心の中で、そんな事を考えていた。
 柚寿よりも幼い体を抱き寄せる。ふんわりと甘い匂いがする。こういう子はそこまでタイプじゃなかったけれど、本気で照れながら僕に「すき」って囁いて、僕のためならなんでもしてくれそうな彼女は、今だけは、いちばん可愛かった。このまま、どこまでも堕ちていこう。寂しさも、悔しさも、全部全部、瀬戸さんが受け止めてくれる。一瞬だけの幸せに、いつまでも浸っていたかった。

Re: 失墜 ( No.57 )
日時: 2016/10/31 02:40
名前: 三森電池 ◆IvIoGk3xD6 (ID: cTS7JEeA)

14 あまい
 買ってもらった服を、全部売りに行った。ケイティとか、エニィシスの服を大量にレジに積んだとき、古着屋の店員は凄く不思議そうに私を見ていた。私が高校生だと告げると更に驚いていた。別れた彼氏に買ってもらったんです、それも全部人の金だったんですけど、とは言えなくて、「もう着ないんですか?」と、余計なお節介をかけるかのように聞いてきた店員に、愛想笑いだけ返した。明日にはみんな、店に並んでしまう。ピンクのワンピースも、白のスカートも、思い出がたくさん詰まっているけれど、それは私や瑛太のものではない。
 十二と書かれた小さな板を渡された。査定が終わり、番号が呼ばれるまで、古着屋の中をぶらついていようと思ったが、何年振りかに来た古着屋は、ざっと見ても私に布の集まりという印象しか与えなかった。瑛太が高い店にばかり連れていくから、ブランド品と名を掲げているワンピースも、百円のペラペラなスカートも、同価値に見えてしまう、私もかなり汚れている。
 しばらくして、端金と言うには多すぎる紙幣が、私のもとへ帰ってきた。茶髪を無造作にまとめて、そんな手抜きを今風だと主張しているような店員は、最後まで私に「いいんですか?」と聞いてきた。面倒になったので、いいんです、これは私のお金じゃないので、と笑う。茶封筒に入ったこの重みは、私じゃなく、彼のものだ。

 「……小南さんって、律儀っていうか、ばかだよね。返してくれるんだ」
 「当たり前じゃない、悪いことしたんだから」

 店の前に立っていた矢桐くんに、封筒を渡す。彼は酷く冷たい目で私を見て、それを受け取った。
 瑛太は、アーバンリサーチかユナイテッドアローズか知らないけれど、いつも洒落た服を着ていた。読者モデルの仕事をしていたから、例えばクラス会なんかで、全員私服で集まった時、他の男子とは違って異様に大人びていた瑛太に、やっぱり似合うなあと笑いかけていた柏野くんを思い出す。思えば、その時から矢桐くんは、瑛太をこっそり睨みつけていたのかもしれない。恋人としてそこに気付けなかったのは盲点であり、もし私が早い段階で瑛太を止められていたらとも思うが、問いただしてみたところ中学三年生からこのような関係は続いていたらしいので、既に私の入る余地はなかったし、私にはどうしようもできなかった。
 ずっと追い求めてきた絶対的な関係は、私とは別な場所で存在していたのだ。

 「小南さんが謝る事でもないのに。全部悪いのは、青山だし。気付かなかった小南さんも相当アホだと思うけど」
 「うん。もっと早く気付いてればよかった。お金、これじゃ全然足りないよね。私が使った分だけでも、全部返すわ」
 「いいよ。服と違って、食事代なんかは返しようもないだろ。ゲロって返金してもらうつもりなのかよ。金もないくせに、そんな約束したところでさ」

 意外とよくしゃべる子である。そして、口が相当悪い。私は矢桐くんを見縊っていた。もう少しおどおどした感じの気弱な少年だと思っていたし、そんな感じだから瑛太に金を奪われていたのだろう、と勝手なイメージがあった。だけど、不愛想に、黒のパーカーのポケットに両手を突っ込んでいる矢桐くんは、なんだか不良少年みたいである。
 長い前髪の奥に覗く黒目がちの大きな瞳は、真っ赤に腫れている。白い肌と相まって気になってしまい、私は話題を逸らすように、彼に問う。

 「……もしかして、昨日泣いたりした? そこに薬局あるけど、目薬くらいなら買うよ?」
 「……んなことないよ。僕より青山の心配しろよ」

 ちっ、と舌打ちをひとつ鳴らして、矢桐くんはごしごしと目元を擦る。そういう事をするからさらに充血するのだ。私は夜遅くまで勉強して、寝不足で目が腫れがちな日が多いので、こういった症状に関してはその辺の人よりも詳しい。素直に従っておけばいいのに、矢桐くんは学校に持ってくるものと同じリュックに封筒を無造作に入れてチャックを閉め、私の先を歩き始めてしまった。
 いつも車道側を歩いてくれる瑛太とは違って、彼はばっちり歩道側を歩いていた。今頃、瑛太は瑛太なりに私を気遣ってくれていたのだと知る。そう考えているうちに随分先へ行ってしまった矢桐くんは振り返り、ほとんど私と変わらない位置にある目線をばつが悪そうに合わせ、「行かないの、小南さん」と言う。私は慌てて駆け寄った。まだ熱があるのか、ふらつく体をなんとか支える。
 公園まで歩き、ブランコを通り過ぎ、自販機で矢桐くんはソーダを買い、私は麦茶を買った。今日の目的は服を売って金を渡すことだけれど、もう一つだけ用事があるから公園まで来てくれないかと、矢桐くんに頼まれていた。
 それで、用事って。私が言い出す前に、彼はポケットからピンクの光るものを取り出し、私に押し付けるみたいに渡した。よく見ると、それは私がスクールバックにつけていた、瑛太から貰ったストラップだった。無くなっていたことにも気づかなかった。なんでこれを矢桐くんが持っているのだろう。

 「……拾った。青山に渡そうとしたけど、小南さんに返してくれって言われたから、返す」
 「ごめんなさい。こんなの、持ってたくなかったでしょ」
 「ほんとだよ、いつから僕は伝書鳩になったんだよ、ほんとに」

 割とマジで意味わかんねえ、と矢桐くんは繰り返すように呟いて、ソーダを四分の一くらい、一気に飲んだ。六月、もうすぐ夏が来る。外は暑く、矢桐くんはパーカー姿だけど、私は安物の薄いワンピースを纏っている。この気温では喉が渇くのも当たり前で、冷たい麦茶がきん、と体の芯を冷やしていくと、思わずため息が出そうになるくらい、体力が回復していくのを感じた。高級店で飲むシャンメリーより、公園のベンチで飲む麦茶の方が美味しいと感じてしまう私は、やっぱりどこまでも庶民派で、そっちの方が性に合っている気がした。

 「……ごめんね、瑛太が」
 「……だから、小南さんは悪くないって」
 「悪いと思ってるから謝ってるのよ。さっき渡したお金じゃ、全然足りないでしょ? 私、お小遣いから削って、ちゃんと矢桐くんにお金返すから」
 「金なんか要らないよ」

 矢桐くんの声が、午後のまどろみに小さく響く。金なんか要らない、その言葉は、私が逆の立場ならば絶対に言えない。
 なんで、と問おうとして、矢桐くんが何か言いたそうにしていることに気付く。さっきまでずばずば私に毒を吐いてきた彼とは違って、言いにくいことを言うような、本当は言いたくないことを無理やり述べるような、そんな表情をしていて、私も少し身構えてしまう。
 やがて、さっきよりも格段に小さくなった声で、彼は言った。

 「……ここでキスしてよ。僕の好きだった女の子も、そうやって奪われたんだ」
 「……え?」
 「金なんか要らないから、お願い」

 あまりのことに、私は瞳を見開いて、なんで、どうして、という事ばかり、矢桐くんに聞く。好きな子が居るのに、私なんかとそんなことをしていたら、それこそ渋谷くんと一緒だ。渋谷くんが異常で、それ以外が正常だと思っていた私としては、好きでもない女と唇を重ねたがる意味が解らない。でも矢桐くんは本気の目をして、じっと私を見つめている。
 金を渡さなくてもいいのなら、と揺らぐ。矢桐くんのことは好きでも嫌いでもないけれど、それで彼が満たされるのなら、一回くらい良いか、という気にもなってしまう。あんなに謝っておいて、「それはちょっと」と断ることも出来ないし、瑛太の事で引け目を感じずにはいられなかったから、私は「わかった、一回だけね」と言い放ち、こういう時は瞳を閉じるものだという認識に倣い、目の前を真っ暗にさせる。
 ほんと、ラブドールみたいな女だな。暗闇の中で、彼が吐き捨てる。従順でなんでも言う事を聞くだけの女になってしまったことを知る。今までしてきた努力は、と考えると、本当に私は精神を保っていられなくなりそうだったので、がんばって、がんばって、その矢桐くんの言葉を頭の中でかき消した。
 小さく息を吸う音が聞こえて数秒、洗剤の香りと一緒に、唇に柔らかいものが触れた。そして、私のワンピースの袖がぎゅっと握られる。酸素が足りなくなるたびに、少し離して息を吸って、また重なる。一回だけって言ったのになあ。私の背中を抱いて吐息を漏らす彼を見ていると、瑛太とする時みたいに舌でもねじ込んでやったらどんな反応をするんだろう、とか思ってしまう私は、たぶん意地悪なんだろう。
 ここがホテルなら確実に次に行っていたんだろうな、と思いながら、ぷは、と唇を離した。矢桐くんは、初めてこういう事をしたのか、酷くとろけそうな、甘いものを欲しがるような瞳をして、柔らかすぎ、とうわ言のように呟いた。瑛太も渋谷くんもやけに手馴れていたから、こういった反応は逆に新鮮である。面白い子だなあと思うと同時に、ばかなことをしたなあ、と罪悪感もこみあげてくる。
 あの子もこれくらい柔らかいのかな、と心の声を零して、白い頬をピンク色に染めて、パーカーの裾を引っ張っている矢桐くんは、そんな私の胸中を知る由もなく、上気しそうなほど、ほわほわしていた。馬鹿はどっちよ、と言いたくなるのを抑えて、私は悪びれもせず、麦茶のボトルを開けて、三分の一くらい一気に飲みほした。矢桐くんは最後まで、それ以上ソーダには手を付けず、私をちらりと見ては、何かを言おうとしてやめていた。
 瑛太も言っていたけれど、男というものは、中途半端に許されてしまうと、その先をどうしても期待してしまう。愛のないただの下心だとしても、その時だけはその女が世界一可愛く見えてくるのだ、と冗談のように笑っていた。私はいつもその被害に遭う側の人間だった。渋谷くんとまた会う約束をしていたことを思い出し、吐きそうになる。それに比べたら、矢桐くんとキスしたことなんて、全然大したことないのに、全然大したことないとは少しも思えない。私って、結局なんなんだろうか。私という人間は、こうやって、手が届かない誰かの代わりとして消費されていくことしかできないのだろうか。

Re: 失墜 ( No.58 )
日時: 2016/10/23 03:25
名前: 三森電池 ◆IvIoGk3xD6 (ID: cTS7JEeA)

 矢桐くんは、さっきまで私を馬鹿だのアホだのラブドールだの言っていたのが、まるで嘘のような表情をしていた。男というのは実に簡単で、たぶんこれが私じゃなくても、彼はこうなっていたんだろう。矢桐くんを本当に満たせるのは、その誰かに奪われた好きな子だけであり、私じゃない。それなのにこんな顔をするのだから、なんにも信頼できるものなんかない。
 私は最後まで誰かの一番にはなれなかった。瑛太だって、矢桐くんだって、渋谷くんだって、みんな、私の裏に誰かを見ていた。それこそ手軽なラブドールと同じで、私はなんでもいう事を聞くだけの人形。またね、とやけに友好的に、変な笑顔を作る矢桐くんを見ていると、こっちも半笑いしか返せなかった。
 次は渋谷くんのもとへ向かわなければいけなかった。死にたい、とついに口に出してみる。渋谷くんとも関係を持っている以上、紅音に相談することはできなかったし、私を出し抜いて紅音に気に入られようと企んでいる優奈やみちるにも言えなかった。いつも瑛太と待ち合わせをしていた時計塔の下に渋谷くんを見つけて、彼が大きく手を振る。私がゆっくり溶けていく。もう、どうでもいい。なんにもなくなってしまった私の残骸は、頭の悪い奴等に最後まで食い散らかされ、そのまま消えてしまうんだ。私は完璧な小南柚寿にはなれなかった。渋谷くんは無邪気な笑顔で私の手を取り、ラブホテル街に向かって歩き出した。さようなら、私。

 「……柚寿?」

 目を伏せて、カップルが多くなってきた道を歩いていたとき、一人で歩いてきた男の子に声を掛けられた。瑛太より少し低くて、どこか懐かしいような、今、一番聞きたくない声だった。ばっと顔を上げると、予想通り、制服姿の幼馴染が居た。
 私は今、渋谷くんと手を繋いでいる。視線はしっかりお互いをとらえて、私は思わず彼の名を呼んだ。

 「え、なに、椿って、シャンプー?」

 渋谷くんが振り返る。そして、足を止めた椿と私にやっと気付く。「え、知り合い?」と、渋谷くんは面白そうに私たちを見比べ、舌にたくさん刺さった銀色のピアスを見せて笑った。椿は、そんな私たちを見て、繋がれた手もちゃんと見て、「いえ、別に」と吐き捨てて、そのまま人混みの方へ歩いていく。私は何もできずにそれを見ていた。
 ふと我に返って、なんだかとても辛くなった。昔からずっと仲の良かった幼馴染に見捨てられたのだ。瑛太と別れて数日もたたないうちに、新しい男とラブホテル街へ向かっていく私は、彼の目にどう映ったんだろう。考えたくもない。誤魔化しも出来ない。渋谷くんは、なにあれ、へんな奴、とへらへら笑って、ぐいっと私の腕を引っ張った。早く行こうよ、あのホテル風呂超豪華なんだぜ。渋谷くんはいつも楽しそうに笑う。お風呂なんてどうでもいいし、早く帰りたい。そのまま沈むように眠って、朝も来なければいい。私がそんなことを思っているのも知らずに、「奪う側」の彼は、私という人間を完全にダメにして、それを楽しんで、笑っている。
 だいたい優しくしてくれた瑛太と違って、この人は痛いし雑だしやってらんないな、と思いながら、白いシーツを握りしめて、自分でも気持ち悪くなる嬌声をあげていた。「綺麗にすましてる子ほど、ぼろぼろにしたくなるよね」ととんでもない性癖を暴露し、風呂が豪華だのほざいておいて、部屋に入るなり押し倒してきた渋谷くんの目に私は、都合のいいラブドールにしか映らない。椿の軽蔑したような顔を思い出しては、痛くて泣いている私を、渋谷くんは快感で涙を零していると勝手に勘違いして、私の名前を呼んでは、じっとり濡れた体を抱いていた。「好きだよ」の言葉に、なんの意味も込められていないことを私は知っている。だから、私も何の意味も無い「好き」を返す。悲しくてつらくてどうにかなりそうで、それでも必死に抱きついている私は、一体誰なんだろう。死にたい、このまま飛んでいきたい、唾液と一緒に流れる涙でシーツにいっぱい染みをつくって、私は嗚咽交じりの酷い声をあげていた。
 ……その、十分後の話である。渋谷くんは部屋にあった小さな自販機からチューハイを購入し、「柚寿ちゃんも飲む?」と勧めてきたけれど、断った。ベッドの上でぐしゃぐしゃになったシーツだけ身にまとって、放心したように私はそこにいる。豪華だという風呂には渋谷くんが先に入ってしまい、ベッドの上に投げ捨てられているコンドームを見ては、一応避妊してくれたんだなと心底安堵した。どこまでも堕ちた私は、そんな些細なことでさえ、最後の救いのように思えたのだ。

 「やっぱさ、よく言われるけど、俺のほうが上手いだろ? そんなしけた顔してないで、瑛太のことはもう忘れなって! あんな奴より、柚寿ちゃんは俺の方があってるよ」

 瑛太は生活保護で最低、と渋谷くんは、流行りの歌に乗せて歌う。その妙に上手い歌を聞きながら、私や渋谷くんだって同じくらい最低だよなあ、と思う。死にたい。消えてしまいたい。そうやって呟いてみると、楽しそうにしていた渋谷くんは歌うのをやめて、「わかるー、ほんと死にたいよな、親友があんな奴だったとか、恥だよな」と、またけらけら笑う。
 だから、そういうことじゃないんだってば。私はホテルを出る支度を始める。床に落ちていたブラジャーを拾い上げて、ばかみたいね、とホックを留める。そういえば瑛太は、私の服を脱がせるとき、これをほとんど一瞬で外していたことを思い出して、ああいうのってどこで習うんだろうな、とふと考える。こんなに手馴れている瑛太や渋谷くんみたいな人も居れば、矢桐くんみたいな人もいる。なんだか面白いけれど、こんな面白み、知りたくもなかったわ。渋谷くんが全額出してくれるという言葉に甘えて、一人でホテルを出た。幸せそうなカップルと入れ違い、あいつらはちゃんとした恋人同士なのだろうかと思うと、また泣きそうになってきた。
 私はもう、私が誰なのかわからなくなってきた。家に帰ったらまず体重計に乗り、四十五を越えたら夕食を抜き、友達と通話をしつつ勉強もこなして、美容のサプリを飲んで、そうやって作り上げてきた私はもう、どこかへ消えてしまった。今思うと、なんであんな盲目的に努力できたんだろう。あれは誰のためにしてきたんだろう。少なくとも、こんな私になりたかったわけではない。
 夜道を歩く。夏なのに、薄いワンピースを透かす風が冷たく感じて、気持ち悪い。仙台駅前は人で溢れ、手を繋いで歩く男女、仕事帰りのサラリーマン、ベビーカーを引く若い女の人、いろんな人間が、それぞれの道を歩いていく。私はどこへも行けずに、人気の少ない路地の裏をめざして歩く。
 限界だった。コンクリートに手をついて、ついに全部耐えきれなくなった。明るい街がすぐそこに見える、薄暗い建物と建物の間の、何のために存在しているのか解らない狭い空間で、私はおもいっきり、嘔吐する。何も食べていないせいで胃液しか出ないけれど、この気持ち悪さは未来永劫、ずっと消えない。矢桐くんとしたことも、渋谷くんが笑っていたことも、ぜんぶぜんぶ、もどす。触れられた感触、漏れた言葉、すべて汚いアスファルトにぶちまける。うずくまる私を、明るいところからのぞき込むように見ていた人間と目が合った。見てはいけないものを見てしまった顔をして、そいつは賑やかな方へと消えていった。最悪。私は呟いて口元を拭う。そして、さらに暗いところへ向かって歩き出す。家に帰る気にはなれず、誰にも縋れはしない。さようなら、私。私は私と繋いでいた手を離して、ふわふわと、まるで意識を失ったように歩いた。

Re: 失墜 ( No.59 )
日時: 2016/10/23 23:12
名前: あわきお ◆e0cUq7WYf6 (ID: Uxa2Epx7)



 初めまして、あわきおといいます。同じく複雑・ファジー小説でスレッドをたててちょこちょこと恋愛小説を書いている素人野郎です。普段そんなにコメントを残さないので、内心ちょっと、すごくドキドキしてます。拙い文章で申し訳ありません。

 失墜……。拝読しました。「歪んだ恋愛小説ね……ふむふむ」と読み始めた数時間前の自分に言いたい。おい私、と。これは私が思っているような歪んだ恋愛小説なんかじゃないんだぞ、と。歪みすぎてる。報われている人間が誰もいない(渋谷くんとか瀬戸さんとか気づかない人は別として)。
 報われてほしい!! 矢桐くん! 矢桐くんはすごく優しい人なんでしょうね。彼の「殺したい」「死ねばいいのに」等々、本音で言っているんでしょうが、いつもどうやったって瑛太に流されてしまう。その優しさは絶望からきているのか、お人好しだからなのか。どちらにせよ私、彼のこと大好きになりました。
 それと、渋谷くんと瑛太の会話の気持ち悪さにいつの間にか鳥肌が立っていました。特に柚寿と別れた後の彼の会話。あ、なんだ、渋谷くん普通に瑛太と話してるじゃん? と疑問符が止まらずに読み進めている途中での「もう別れた?」の渋谷くん。ズバッといくな〜。きっと彼にとっては普通なんでしょうね。瑛太がどれだけ柚寿に嫌われたくなかったか考えたこともなさそうで、そのときばかりは瑛太のことを庇いました、全力で。この二人気持ち悪いな〜胸糞悪いな〜と思いながらエクサイティングしてました。いいんですよ、私の方が気持ち悪いって言ってくださって。こういうお話大好きです……。

 それよりなにより瀬戸さんの気持ち、超分かるー! 瀬戸さん視点の話はほとんど「うんうん、そうだよね、分かる分かる」って読んでました。個人的に、彼女には幸せになってほしいです。きっとこれからも報われなくて必死になっちゃう彼女が目に浮かびますが……。

 みんな歪んでボロボロで、すっごく汚いのに、文章がすごく綺麗で、もう、やられました、虜です。
 繰り返しますが、感想なのかも分からないくらい拙い文章で申し訳ありません、更新頑張ってください!


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