二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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{Fate}異端者は槍を構え運命を笑う{短篇集}
日時: 2016/01/13 09:18
名前: 明星陽炎 (ID: RGCZI60V)

初めましてないしはお久しぶりです!
この作品はFateシリーズの二次創作SS集です。Fate好き増えて下さい。

以下、この作品に登場するオリキャラ達。


無銘ムメイ/異端者シリーズ/本作メインシリーズキャラ。
ななし(七紙新)/しにたがりのななしさん/無銘の派生キャラ。
リュムール(噂屋)/腐れ外道と厭世作家/腐れ外道な情報屋。
七紙時雨/人間未満と亡霊/鉄パイプ系微少女。


どのキャラもルーを入れ過ぎて溶け残った塊が浮いているカレー並に濃ゆいです。


>>83 「FGO風ステータステンプレート」 ご自由にお使いください

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Re: {Fate}異端者は槍を構え運命を笑う{短篇集} ( No.91 )
日時: 2016/02/25 16:04
名前: 明星陽炎 ◆EaZslsthTk (ID: RGCZI60V)

とうらぶ×うちの子Fate
※書きたいとこしか書いてないよ
※目も当てられない自己設定だよ
※刀剣破壊描写あるよ
※検非違使=アラヤの抑止力
※うちの子=アラヤの抑止力
※つまり……わかるな?


 血と瘴気と噴煙と焔と煤と、とにかく禍々しく赤黒いその場に、その銀色は酷く酷く不釣り合いに映えていた。ふわりとした銀の髪、誂えは雪にも映える白の色でありながら、その瞳は暗く濁った月の色。刀剣男士のそれと似た、斬るモノの気配を持ちながらもその身より神気が零れることはなく、またその華奢なおなごの姿からは質量があると錯覚してしまいそうなほどに重く濃密な覇気が漂っている。
 あなや、蒼い狩衣の口元に充て、表情を隠す。アレに焦燥を嗅ぎ付けられてはならぬ。刀として、いや妖としての本能が告げている。アレは、そうして魔を喰らうケモノ──否、ケモノであればどれだけよかったか。アレはそうあるだけの絡繰り装置だと気付いてしまった。

「──あー、あー……こほん」

 銀の娘が口を開く。甘ったるく響く童らしさを含む声。高過ぎず、低すぎず、耳障りはいいもののその言葉は質量を持ってこの空間を支配する。

「えー、時間軸への介入、世界軸への干渉──んー、後なんか諸々の行動。これらがどういうことを指すかおわかりですか?」

 至ってのんびりと告げられたその台詞に、通信機器から聞こえる主は息を呑む。学者気質の主のことだ、もしかしたらこうなることが分かっていたのやもしれぬ。

「──分かっていてなお続けるとは良い度胸。いえ、貴方個人ではなく、そこの妖もどきどもでもなく、ただただあなた方と言う集団に、その集団を纏めあげる群れの長に、私は呆れを禁じえません」

 はーやれやれ、肩を竦めて安い喜劇のように大仰な反応をした、娘の姿のソレは一度だけ深く息を吸い込んで。

「では、人類と言う種の保存のために、お掃除を始めます」

 凄絶な笑みを浮かべたそれが、三日月宗近の見た最期の光景だ。

Re: {Fate}異端者は槍を構え運命を笑う{短篇集} ( No.92 )
日時: 2016/05/16 17:38
名前: 明星陽炎 ◆EaZslsthTk (ID: 3w9Tjbf7)

友人となんやかんや話してるうちに出来上がったネタメモ


生前ディルと前世時雨のネタを練ってみる

前世時雨

名前はバーシュタハ(雨の意)。ごく親しい相手からはシュティと呼ばれる。
夜色の髪を持ち、瞳は淡い銀灰色をしたドルイド。妖精憑きであり、またその性質により妖精よけや妖精の力を借りるような術、或いは呪いに長けている半面、予知の力などは殆どない。
長い前髪で目元を隠しており、また普段は深くフードを被っているため口元しか見えない。その口元も大概は妖しく弧を描いている。

来歴
ごく幼い頃に名もない集落にて生誕。両親は戦渦に巻き込まれ早々に死亡。
妖精憑きであるがために迫害され、雨の日に老年のドルイドに拾われた。ドルイドによりバーシュタハの名を受け、以降はそのドルイドに師事。
老師が妖精王の城に出入りする身分であったため、同行していた。其処で武者修行中のディルムッドと出会い友人になる。(なお、当時のディルムッドはバーシュタハの性別は知らないし新種の妖精だと思っていた)
後にバーシュタハの性別を知るが、互いに友人以上の関係には至らず。その後も彼の友人として仕える。
老師の死とディルムッドのフィオナ騎士団入団を機に、自らもフィオナ騎士団の傍仕えのドルイドとなる。
その後は妖精除けの呪いや妖精の加護でフィオナ騎士団をサポートしていたが、旧知の仲であるが故に主にディルムッドの面倒を見ることが多かった。
彼がターラにてグラニア姫に迫られた際には、彼にゲッシュをまもらせるために真っ先に逃亡を勧めた。その後自身も妖精王からの要望を受け逃亡を手助けする。
フィンと彼が和解した後はディルムッドの領地に屋敷を持つ。(グラニア姫との仲はそれなりに良好)
最期は、晩年の彼がフィンと狩りに出かけた際に、グラニア姫から頼まれてゲイ・ジャルグとモラルタを持ち、彼の元に推参するが、巨大な猪に殺される。

性格
良くも悪くも素直ではない性格。少々すれた性格で、あまり口は良くない。自身が妖精憑きであることに負い目は感じているものの、妖精そのものに関する禍根はない。むしろ好き。
現世における時雨とは違い、根本的な思想の歪みはないが、長く妖精と過ごした為か忠節などは深くない。
訛りの強い独特の話し方をするため、間延びして聞こえる。が、物言いはきつい。
師の教えで常に微笑んでおり、あまり感情を激しく発露しない。ポーカーフェイスだが、マジギレした時も綺麗に微笑んでいるため若干恐れられている。
常に瞳を隠しているため、瞳の色はディルムッドを含む数人のみしか知らない。

粗雑な物言いと全身を覆うローブのために、性別を正しく認識されないことが多いが、これは意識的に行っていた。性的に触れらることに酷い嫌悪感を示し拒絶する。この為、フィオナ騎士団の仲間からは触れられたことは無い。が、処女ではない。

Re: {Fate}異端者は槍を構え運命を笑う{短篇集} ( No.93 )
日時: 2016/09/12 08:38
名前: 明星陽炎  ◆4fD6znnZvI (ID: YiQB1cB2)

呪文メモ


時雨/ドイツ語
1.硬化
2.硬化(武器投擲)
3.硬化(防御)
4.暗示(忘却)
5.降霊
6.暗示(認識疎外A)
Aushartung──!(硬化せよ)
Ein Schwert reist den Hals.(刃は喉を裂く)
Die solide Schild.(強固なる楯よ)
Es kann schlafen. Sie wurden alles vergessen.(安らかなる眠りよ、忘却の霧に沈む)
Eine Stimme klingt. Ein schlechtes Ding Annaherungen.(我が声は彼方へ。悪しき同胞の足音を奏でよ)
Jeder Hinweis in den Schatten.(我が影は全てより隠れる)

シュティ/アイルランド語
1.暗示(認識疎外A)
2.妖精召喚
Ni feidir le mo scath a fheiceail duine ar bith.(我が影は全てより隠れる)
Eist. Iarraim chugat.(聞き届けよ、我は汝に語り掛けるもの)

ドイツ語もアイルランド語も文字化けするの何とかならんもんか。

Re: {Fate}異端者は槍を構え運命を笑う{短篇集} ( No.94 )
日時: 2016/11/21 16:51
名前: 明星陽炎 ◆4fD6znnZvI (ID: YiQB1cB2)

視線は逸らさない。眼前の相棒に呼吸を合わせれば、相棒と同じ景色を見ているような気分になる。相対する敵はこちらに捕えられまいと落ち着きなく身体を動かしているが、そんな状態がいつまでも持つ筈が無い。現に、始めに比べて今の動きはだんだんと緩慢になっているのだから。けれどまだ、その時ではない。好戦的な相棒は少しそわそわしているけれど、自分のすべきことを見誤ることなく耐えている。だからより注意深く、一挙一動も見逃さないように目を凝らす。ほら、今右に足を踏み出して、それから次は左へ──そして。

「ゴースト、」

相棒の名を呼べば、彼から発せられるのは待っていましたと言わんばかりの咆哮。掲げられたそのてのひらの中に収束していく影の塊は純粋なエネルギー弾として完成し──

「『シャドーボール』」

ただ正面を指差してその技名を唇に載せれば、示された指の先にまっすぐとそれが放たれる。相対していた相手が、その意図するところに気づいたところで既に遅い。先程から駆け回っていた身体は勢いよく飛び出したそのエネルギー弾の軌道に吸い込まれるように飛び込んでいくしかないのだ。
そうして、暗転。

とす、と軽い音を立てて地面に伏したヒトモシ。念の為近寄っては見るが、見たところただ目を回しているだけのようだ。この様子ならばあと数刻もすれば目を覚ますだろう。蹴飛ばされないようにだけ気を使い、ゴーストに物陰へと運んでもらって、ついでに傍らに『オレンのみ』を置いておく。これはバトルに付き合ってもらった事への、ほんの気持ちがわりのようなものだ。そういう感傷は薄いとはいえ、罪悪感とかを持ち合わせぬ訳では無い。謝意を示す行動は何があったか、気分的に胸の前で十字を切ったところで後ろから頭が叩かれた。

「やめんか」

視線を向ければ、見慣れた顔。くしゃくしゃの黒髪と金色の目が責める様に此方を射抜き、その口元はひくりと引き攣っている。なるほど、これはとてもご立腹だ。だが生憎と、其処で引き下がるほど性格は出来ていない。反論の為に口を開く。

「いてえよ、なにすんのディアル」
「後半部分をそっくり返してやろうか、シグレ」

謝意を示しただけだ、と声を荒げた少女──シグレに、今度こそディアルと呼ばれた少年は雷を落とすのだった。

シグレとディアル。それが彼らの名前だ。ホウエン地方、『おくりびやま』の麓にある教会出身の彼らは、オダマキ博士の助手として各地でポケモンの分布や生体の調査を行う、フィールドワークのスペシャリストである。その特徴は何といっても息の合ったコンビネーションと掛け合い。揃いの衣装に身を包むその姿はまるで双子のようでいて、見る者には微笑ましさすら与える。だが侮るなかれ。各地に派遣されるだけの実力は確かで、個々の実力は勿論のこと、タッグバトルとなると並のトレーナーでは太刀打ちが出来ない。互いに互いの不足を補い合う戦い方、絶対の信頼を以って初めて成立する豊かな戦略。それこそが彼ら、『助手コンビ』の神髄である。
尤も、普段の彼らは割と、至って一般的な子供たちなのだけれども。

さておく。彼らはポケモンの分布や、それに伴う生体の変化を調査するフィールドワーカーである。バトルの腕は確かで、そして順応力も高い。だからこそその活動範囲はホウエン地方だけに留まらず、他の地方へと派遣され調査の幅を広げることもある。そして、まさに今回もその例に漏れない。二人の現在地はカロス地方──15番道路。荒れ果てホテル、と呼ばれる廃墟の中だ。ちょっとヤンチャなオニイサンやオネエサンが屯するこのホテルに、珍しいポケモンがいるという噂がある。その真相を確かめに来たのだが、どうにも旗向きがよくない。先程から此方を驚かそうと飛び出してくるのはヒトモシやクレッフィ、或いはコマタナなどのこの近辺に縄張りを構えるポケモンばかりなのだ。その上先程からやたら威張り腐ったヤンキーに一定周期で絡まれるとくれば、彼らの機嫌が降下の一途を辿るのも不思議ではない。野生のポケモンならばいざ知らず、力量を弁えないトレーナー相手にする加減はないとばかりに張り倒した、既に何人目か数えてもいない不良が立ち去ったところで、シグレは叫ぶようにして本音を漏らした。

「もー、どうせこんな廃墟なんだからもっとゴーストタイプの子とか出てもよくない?」
「先程から荒くれ連中の相手ばかりしているしなあ……」

さしものディアルも声に疲労を滲ませてシグレに同意する。否定や説教が飛んでこないところを見ると彼もこの状況に辟易しているのだろう。交代で相手をしているとはいえ、連戦連撃である。縄張り意識が強いだの、仲間意識が強いだの、強者に挑みたがるだの、そういう矜持は出来れば捨ててほしい。いや、ディアルが言えたことではないのかもしれないけれど。
しかし、すでに廃墟もほぼ一周したと言ってもいい。余りにも危ない場所(崩れかけた廊下やなんか)には流石に立ち入れないが、それ以外は粗方歩き回った。それが証拠に、付近を徘徊する不良たちは此方を見ると気まずげに視線を逸らし、足元にある落書きの施されたゴミ箱は、既に何度か見たものである。
ホロキャスターに内蔵された時計を見れば中々にいい時間になっている。今日はこの辺りで引き揚げてまた明日にでも出直すか、と入口に向かって歩み始めたその時。ふいに、カタン、と音がした。不自然にもほどがあるそれに、二人が勢い込んで反応すれば、その視線の先──落書きが施されたゴミ箱が倒れている。成程、先程の乾いた音はこれが倒れた音らしい。安心したディアルは視線を逸らすも「待って、ディアル」何かを感じ取ったシグレは彼を制止する。

「どうした、シグ──」

その言葉が終わるか終わらないかのタイミングで、ゴミ箱がカタカタと揺れる。思わず身じろいだその眼前に躍り出たのはオレンジ色の影──ビ、ビビ、と微かに電磁波のような音を発しながら慌てたようにばたばたと飛び回る。

「……ろ、ロトム……!?」

Re: {Fate}異端者は槍を構え運命を笑う{短篇集} ( No.95 )
日時: 2016/11/21 16:51
名前: 明星陽炎 ◆4fD6znnZvI (ID: YiQB1cB2)

ロトム、と呼ばれるポケモン。電化製品の中に潜み、人を脅かすこともある。が、個体数は決して多くない。過去にシンオウ地方で確認されたことはあるが、その他の地方で見かけたという話はあまり聞かないポケモンだ。それが何故こんなところに居るのだろうか。
しかしそれどころではない。野生のポケモンが人の前に飛び出してきたときと言うのは大概、住処を荒らす相手を追い払うべく襲い掛かってくるものだ。即ち、バトル開始の合図。ディアルは腰のホルダーに手を伸ばし──たところで留まる。眼前のロトムは相変わらず慌てた様子で飛び回っているだけで此方に攻撃を仕掛ける気配がない。

「怯えてるねえ……なんかいるんかな」
「はぁ?」

あっけらかんと零されたシグレの台詞にディアルは思わず振り返る。しかしそう言われてみれば納得だ。落ち着きなく彼方此方に視線を向けるその姿は怯えの気配が強い。

「相変わらず、ゴーストタイプの機微については鋭いな……」
「顔見りゃわかるよ、あのくらい」

呆れたような言葉に顔を顰めながら、シグレは周囲への警戒も兼ねてゴーストをボールから呼び出す。ケケケ、と小さく鳴いた彼は、ボールの中から状況を見ていたのか、シグレの指示を受けずとも周囲を見回し臨戦態勢をとる。流石にシグレの手持ちにおいて古株ともいえるだけはあり、意志疎通は完璧だ。
奇妙な緊張感が走る。静寂は暫しの間──そして瞬間。在る方向に突進したゴースト。それを見たシグレは、瞬時にロトムの小さな身体を自身の後ろに隠す。

「ゴースト!」

鋭い声でその名を呼べば、彼女のゴーストが何かともつれあうようにして暗闇から躍り出る。トレーナーの視界に入ったのを確認したゴーストが彼女の指示に従う為にその何者かから離れたところで、その姿が露わになった。バヂバヂと威嚇する様に静電気を放つ球体──

「──マルマイン!」

バクダンボール、そう渾名される彼のポケモンは不機嫌そうにゆらゆらと転がっている。どうやら、あちこちにある配線や自動販売機の残骸から電気を食べていたこのポケモンが、迷い込んだロトムを追い回していたらしい。ロトムは電化製品に潜むポケモンであるが故、その身はプラズマで出来ているともされている。そんなロトムから発せられる電気はマルマインにとっては極上の餌だろう。見れば、そこそこの修羅場をくぐったことがあるのか、ロトムよりもレベルは高そうだ。抵抗空しく追い掛け回されていたと言ったところか。だが、シグレは思案する。

(んー……レベル差は3〜5、ってところかな。そのくらいならば立ち回りで何とでも埋められるか。どうしようもないほど差が開いてる訳でも無いし……)

つまり、ロトムでも頑張れば勝てなくはない程度の相手なのである。ゴーストとマルマインのレベルの差があればほぼ一撃で雌雄は決する。しかし此処で撃退したとて殺す訳ではない、これからもこの荒れ果てホテルでこのロトムが暮らすと言うならば撃退法くらいは学ばせておいて損はないのだ。

「ねえ、ロトム」

シグレの声に、彼女の背後で震えていたロトムが反応する。ガタガタと奮えていたその視線がシグレを捉えて、小さく鳴いた。

「キミさあ、あんなのから逃げ続けるだけでいいの?」

視界の端で、ディアルガ頭を抱えているのが見えたが、それは気にしない。お人好し、と口元が動いていたが止めない時点で彼も大概お人好しである。

「一回でいい、ぼくの言うとおりに戦ってみない?──でかい顔してる奴に一泡吹かせてやろうじゃん」


──震える身体を必死で動かして、マルマインの目の前に躍り出る。小さいその身体からすればマルマインは充分に強大だ。ばぢ、ばぢりと電気を跳ねさせるその姿は、ロトムを怯えさせるには十分すぎる──が、今のロトムはひとりではない。背後で腕を組み、にたりと笑うニンゲン。なぜだか、そのニンゲンの言う通りに動けば大丈夫だという不思議な安心感が今のロトムにはある。

「『おどろかす』だ」

ニンゲンの声が響く。高く飛び上がり、相手の頭上から勢いよく鳴き声を上げればマルマインは大げさなほどに跳ね上がり、その拍子に体勢を崩した。ひるんだためか攻撃のタイミングを失ったらしい。更に声は続ける。

「どんどん行くよ。『あやしいひかり』」

指示に従い、不規則に身体を明滅させれば、此方を注視していたマルマインはあっという間に目を回し、錯乱状態に陥っている。ふらふらとあられもない場所へ視線を向けながら無意味に突進を繰り返す。その度にガラクタや壁に衝突しては自らダメージを蓄積する姿に、ロトムは呆然とした。あれほど恐れていた相手が、こうも簡単に惑わされている。弱い自分の手によって、簡単に追い込まれていく。それは純粋な驚きであり、そして一種の野望をその胸に抱かせた。

「さて、だいぶ削れたかなー……?『ほうでん』してから勢いよく下がって」

このニンゲンの指示に従えば間違いはない。ロトムは迷うことなく自身の中で練った電気エネルギーを放出し、ニンゲンのすぐ目の前まで一気に後退した。強い電気を一気に浴びたマルマインは錯乱状態のままにただその電撃を喰らい尽くす。

「マルマインはね、雷や電機のエネルギーを好んで食べる。けど、ちょっとおばかでさ、自分が消費しきれない量の電気エネルギーまで取り込んじゃうんだよね。で、どうなるかというとね……」

くすくす、笑いながら囁かれる声は大きく響いた爆発音に途切れた。


「──マルマインは空気中の電気エネルギーを食べる。雷の落ちる日は電気を食べ過ぎたマルマインがあちらこちらで大爆発する……」

黒焦げになって目を回すマルマインに憐れみの視線を向けたディアルが嘆息する。嘗て、ホウエンで研究用の資料を纏めていた時に見つけた図鑑の文面を覚えていたこともそうだが、如何せんあまりにあんまりな戦い方だとディアルは思う。勿論、この少女の性格の悪さと言えば並大抵でないことくらい、ディアルはよく知っているのだけれども。

「本当に、えげつない勝ち方をするな、お前は」
「勝てばいいのよ、勝てば」

うふふ、と笑うシグレ。その肩の辺りをロトムがゆらゆらと漂っている。どうやら先の戦闘ですっかり懐いたらしく、彼女から離れようとしない。どうにも押しに弱いシグレが、この小さな電気幽霊を旅の仲間に入れるのは時間の問題だろう。それでもまあいいか、とディアルは肩を竦めた。

後日、特殊技にすっかり嵌ったロトムの、性格の悪いバトルスタイルに頭を悩ませることになるのを、ディアルはまだ知らない。


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