二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 【お知らせあり】クリエイティヴ・ワールド
- 日時: 2017/03/17 18:20
- 名前: 伊那谷ユウナ (ID: QxkFlg5H)
クリエイティヴ・ワールドへようこそ。
ここは主にメモ書き程度なもの、中編などを載せます。つまりは読み切りですね。はっきり言ってカオスです。パロディもありますとも。連載を諦めた話などもこちらに載せます。
主にオリキャラが中心ですが、サモンナイトシリーズをはじめ、戦国BASARAシリーズ、魔法少女リリカルなのはシリーズなど他にも色々取り扱います。
中にはブツ切りする小説、思いついただけで使う道がなさそうな設定を乗せたりします。どのような場合でも見逃してくださいませ。
では、お楽しみ下さいな。
☆必要用語☆
取り扱いジャンルについて >>39
別理者について >>86
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- Re: 【SS集】クリエイティヴ・ワールド ( No.101 )
- 日時: 2016/04/15 19:08
- 名前: 伊那谷ユウナ (ID: O0NjrVt8)
昨日から九州は大変な事になってますが、私は無事です。備考です。
いや、あのね…九州は地震、滅多にないから昨日はマジ驚きましたよ…ウチの県は4でしたけどヤバい事態に至らなくてよかったです。もし被害があったらマジでヤバいんですよ…あまり言いたくないけどあの施設があるんでね…うん。ツイッターでは言っちゃってますがこっちでは詳しくバレる言えません。言ったら住んでる県とかバレるんで。
ちなみにその時は久しぶりにゲームかちかちやってた。地震が起きてそっからは集中できなくてツイッターやらテレビのニュース見てました。しばらくまた揺れる事が度々ありまして…とりあえず言えるのは私が住んでいるところは無事です。向こうの方々も無事を祈ります。
さて、暗い話は今は置いといて。小説の話ですよ。今更ですがセイロンのシャドウの説明です。
『自身の決められた立場に対しての苦悩』と『弱い自分故に感じる自信のなさ』から生まれたセイロンのシャドウ。性格は泣き虫で他人に強く嫉妬する。アルカナを与えるとするなら『剛毅』とかそのあたり。
本性を覚醒、暴走するとエリア全体に雨が降る。姿も鎖に縛られた形の歪んだ龍となる。歪んでいるのは嫉妬するあまりの結果。鎖はセイロンは立場に縛られている、といった具合です。
まあこんな感じのシャドウが出来たのはひとつ目はいつかspiralで語るんですけど過去の出来事から彼は自信を持つ事が難しくなっているし、二つ目は自分の信念すらも貫けない場合のある立場…地位についても苛立ちというか悩んでいた。
二つ目についてはサモンナイトシリーズの公式小説、『サモンナイトU:X』の5巻で今まさにそのような場面に直面しているんですよね…親神に逆らえない彼の生き様は見ているこっちも苦しくなるんですよ。ちなみにU:Xはweb限定エピソードや試し読みあるからね…是非。
シルターンの龍神とその眷属である龍人は下手したら召喚術の誓約よりも強い結びつきがあって、龍人は親神である龍神が持つ力や秘術、知識などの恩恵を賜る事が出来るんですが、その代わり親神には逆らえず、それどころか親神が和魂(いわゆる善の心)を忘れて荒魂(いわゆる悪の心)に走れば眷属である龍人も影響を受けざるをえないんです。それは鬼神と鬼人の関係性も同じ。なんとも世知辛い…
つーかね、セイロンって4と6の最終夜会話はどちらも弱音を吐いてるんですよ。だから私の中じゃあ無理してでも虚勢張って、偉そうに笑っている時があるんだろうなって思いました。彼の立場はいつも責任重大だからね、泣きたくても泣けないかもしれない…うわ辛い
まあそんなこんなでセイロンのシャドウは出来ました。最終的な結論はセイロンはとんでもなくハイスペックって事です(えっ)
で、最新話。魔力やら魔法やら魔術やら語りましたが、あれは『魔法使いの嫁』を参照にしました。あれに出てくるキャラクター達はマジ可愛い。師弟夫婦可愛すぎか。一番好きな奴と言われても悩むんすけど…師弟夫婦は勿論、シルキーやルツ好きです。裏表紙のシルキーはヤバい(いい意味で)
異世界侵略あたりの話も視点小説の歪んだ世界で語りたいなとは思ってます。特にサプレスは過去から現代に至るまでマジ面倒くさい事ばっか起こしてるからね…主に悪魔のせいですけど。メイトルパの魔獣侵食とかは触れる可能性は高いかと。意外とメイトルパってサプレスの関連性強いからねー。自己解釈を多々に含んでお送りしたいです。
さて、門前ではポムニット、常闇道中はセイロンのターン…と来たら、次は誰のターンかは分かるな?まあそういう事なんで、次回は冥帝さんとゆるりと話を進めようかと思います。もう終盤に近い…かな?お楽しみに。あと感想下され…
- Re: 【SS集】クリエイティヴ・ワールド ( No.102 )
- 日時: 2016/04/18 08:01
- 名前: 伊那谷ユウナ (ID: RnkmdEze)
冥帝と名乗った彼女はゆっくりと伊那谷達へのもとへ向かった。
「とりあえず、久しぶりです伊那谷さん。元気でしょうか?」
「あはは、元気だぜ。大抵は空の方だけどな!」
「や、それは良うないでしょ…おっと」
冥帝は岩に躓いたのか転びそうになる…しかしそれを最初から察していたのか、彼女を咄嗟に受け止められた者がいた。
「おい。私が居ない時に、無闇に歩くなと言った筈だぞ」
「!あ…みっちゃん。おおきに」
全体的に細く、整った銀髪と翡翠に光る眼が真剣の如く鋭い男性はいつの間にかそこにいて。冥帝の手を取り、三人の元へと誘導させた。
「おーおー、凶王三成じゃねえか。相変わらず他人には厳しく、彼女には甘そうだな!」
「その名で呼ぶな!今の私は【木刀・視吉】(もくとう みよし)…冥帝の意思ある道具だッ」
「意思ある道具…!?となると」
『あーっ、お仲間だぁぁぁっ!!』
やはりか…とセイロンは溜め息を零す。と同時に両腕の腕輪が光り、二人の幼年幼女が具現化される。
幼女は龍刃、幼年は針苦。二人でひとつの【龍刃針苦】が二人揃って具現化するのは珍しい事だった。
「うわあ、なんというか…ハシビロコウみたいな人だぁ〜」
「ぶはっ!?」
「き、貴様…首を刎ねられたいか!?あとうたも笑うな!!」
「い、今はうたやなくて、め、冥帝言ってるやろ…くくっ」
ツボに入ったのかお腹を抱えながら笑っている冥帝。見た目だけならフェアやリシェル達よりほんの少し年上に見える女性なので、こうして見ると外見相応の雰囲気がある彼女があの世を束ねる人物とは信じがたいポムニットは安心して笑みを零す。そんな中、口を開かずにいた針苦がセイロンに向かってこう言った。
「…ぼくら、いままでずっとお父様の工房かシルターンの蔵の中でずっと眠ってた。だから二代目の方は、あまり知らない」
「ほう、そうだったのか…ん、二代目?」
「こいつは二代目なんだ。先代が色々やらかしてな…事実上能力は殆どを剥奪。今はどっかの次元をふらふらしている筈だ」
伊那谷は針苦の話を聞いていたのか言及をする。それを聞いた辛苦もまた、少々おぼつきながらも言った。
「それって…二代目の目が見えない事、関係ある?」
「「!?」」
セイロンとポムニットは驚愕する。まさか、そんな事があるのか。
「…その子の言う通り、私は目が見えへん。その…先代冥帝との争いの所為で」
冥帝はその見えない目を伏せる。視吉もその出来事を思い出しているのか、苛立っていた。
「…伊那谷さん。あの事をお話しても?」
「ああ、構わねぇ…あの戦いは悲惨だったが、それでも話さないとならない。二度と、あのような事にならない為にも…な」
伊那谷もかつての出来事に憂いているのか、声が弱々しく感じる。冥帝はひとつ息を吐きながら、一同を門の向こうへと案内したのであった。
☆
冥帝が住んでいる場所は意外とこじんまりとしており、それこそ一般の一人暮らしするには少し広い程度の家だった。冥帝は視吉の力を借りつつ、お茶を注ぎながら話をする。
「…かつての私は才能っていう力が根強く、それを扱えんのが当たり前の世界で生きてた。けども、私と仲間はある日を境に異世界へと飛ばされてしもうて…そこで生きる事を余儀なくされたんです。まあ、後にそれは伊那谷さんがやらかした事やって分かったんだけども」
「し、仕方ないだろ…あの時は緊急事態だったんだから」
「緊急事態…?」
曰く、ある人物が全次元世界へ向けて一斉攻撃をし、窮地に陥ってしまった。そこであまりにも雑に聞こえてしまう措置だが、伊那谷は戦力になるであろう希望をある世界に送り込んで、避難させたのである。
「それが冥帝。で、全次元の世界に喧嘩を売った張本人ってのが…」
「先代冥帝様…でしょうか?」
「せや。ちなみにみっちゃ…視吉とはこの異世界で出会ったんです。覇王・豊臣秀吉に仕える左腕、石田三成。それがかつての彼…」
「勝手に私の過去まで語るな!…だが確かに私は石田三成ではあった…が、それも先代の所為で全てを喪った」
あれはーーー関ヶ原の戦いが始まりだった。
視吉…三成は亡くなった秀吉の仇である徳川家康とケリをつける為、戦場を疾った。しかし、突如地面が割れ、空が裂き、それどころではなくなったのだ。
「割れた大地から湧き出たのは、亡霊だった。伊那谷が最低限の戦力を逃した事に気付いたんだろう…私達は先代の追っ手に襲われたのだ」
それからは、見るに堪えない光景だった。
亡霊だからかまともに反撃は出来ず、何とか技が通用する婆娑羅者以外はされるがままに殺され、戦場は一気に処刑場へと変わってしまった。三成は伴侶である皎月院と親友である大谷吉継、そして部下の島左近を連れて逃げた。しかし、それでも多勢の追っ手が途切れる事はなく…結果、大谷が留まり、命を落としてまで足止めを全うしてくれたおかげでやっと逃げ切る事が出来たのだ。
「…刑部を失った私達に待っていたのは、伊那谷の部下である和束の二人から告げられた真実だった」
このままでは、全次元が壊れてしまうーーーそれは嘘だとは思えない真実だった。同じく逃げ延びていた武将達もただ言葉を失っていた。
「でも、それじゃあ拉致があかんって利世さんが言って…皆は力を合わせて先代に挑む事にしたんです」
「結果…先代に辛勝。しかし、戦いの影響で世界は全て塵同然となった」
「そして伊那谷さんは先代との戦いで既に限界だった筈なのに…力を使い果たしてまで、全次元の機能を回復させたんです」
枯らした喉を震わせて、全てを賭けたその歌声は、全次元だけではなく視力を失ってどうしようもなかったかつての冥帝…皎月院と、左近と共に死んでしまい、魂だけの存在となってしまった三成の心に響き渡った。
「それからの私は一時期眠る事になっちまって、全次元の空間は不安定になるわ、サプレスどころか【絆樹の庭園】(インデンクルム)まで行く事も出来なかったのさ」
「インデンクルム…?」
「ああ、お前らには馴染みない言葉だったな。インデンクルムってのはリィンバウムを始めとしたロレイラル、シルターン、サプレス、メイトルパ、そして名もなき世界、地球…それらが存在する次元の領域の名称をインデンクルムと、私達別理者や始竜は呼んでいるんだ」
伊那谷ユウナ…もとい、幽始竜ミルヴァーナの活動停止はインデンクルムも少なからず影響を受けてしまった…その結果、無色の派閥の大幹部であるオルドレイク・セルボルトにサプレスのエルゴの欠片を難なく奪われていたのだ。
「それが目を覚まして暫くしての話だった。やべえと思っていた矢先に知り合いが行方不明になるわ、緊急措置で新しい誓約者を立てないといけなくなるわ、これでやっと少しは一息つけるかな?と思ったら今度はあの大馬鹿が傀儡戦争をやらかすわで…全次元は私を殺したいのかとすら思ったわ、ちくせう」
「お疲れ様です」
伊那谷はその事を思い出しているのか、ずずずと茶を飲み干す。
「今もまあ…バタバタしてるけど、新人ちゃん達も頑張ってるからねー。それなりに楽させてもらってるからインデンクルムの事に集中出来てる…冥帝ちゃんは彼奴らに会ってるのか?」
「ええ、たまに…私はこの世界を離れる事が出来んので、ここでお茶会でも開いとります」
「そうか。それはよかった」
そして話は変わるけど、と伊那谷は言った。
「冥帝ちゃんよ…私らにいっちょ稽古をつけてくれねーか?」
「稽古、ですか…私はいいですけど」
「私は反対するぞ」
過保護と化した凶王が反対しない訳がなかった。セイロンとポムニットはその姿にギアンを重ねてしまい、冥帝も大変だなと心の中で同情した。
「せやけどみっちゃん…私も腕鈍らせとうないし、稽古したいわ」
「駄目だ。私抜きで戦うのは事実上不可能だろう!?」
「…そんならみっちゃんも一緒にやればええやん」
「何故このような者達の相手をせねばならない!?」
揉めに揉め、騒ぎ出す二人。元々夫婦だったからか、なんというか二人が言い合うのは違和感がない。暫くすると話がまとまったのか、ピタリと言い合いは止まった。
「……伊那谷さん。提案があるんですけど、ええですか」
「内容によるわ」
「私自身が稽古をつけるんゆーのは無理ですけど、私が作った分身を相手にする、は駄目ですか?」
「うん。いいよそれで」
「ただし、だ!」
そこに視吉が割って入る。今度は一体何だろうか?
「伊那谷…貴様のみで分身の相手をしろ」
「………………………え、」
「見た限り、そこん龍人は酷い魔力運用で満身創痍だし、対する半魔の娘さんも慣れない冥界の空気の中でエナジードレインしたから疲れとる。そもそもここは生者がおれる場所じゃあないし…せやから伊那谷さん、現時点で何もしてない貴女が相手をするべきかと」
冥帝の意見に唸る伊那谷。でもまあ確かにそうだ…二人はーーー特にセイロンはまともに戦えない筈。それなら自分だけで相手にするのがマシだろう。伊那谷は冥帝達の提案を了承したのだった。
☆
記念すべき100スレですよ。備考は後日!
- Re: 【SS集】クリエイティヴ・ワールド ( No.103 )
- 日時: 2016/04/21 21:13
- 名前: 伊那谷ユウナ (ID: O0NjrVt8)
やっとこいつを更新できるよ…備考です。
オリジナル用語の【絆樹の庭園】…インデンクルムについてですが、ラテン語で絆、繋がりという意味を持つウィンクルムと、ガーデンのデンを合わせたのがインデンクルムです。ちなみに絆樹は『ばんじゅ』と呼んでもOKです。なんつーか、リィンバウムっぽい響きとか樹とか自然的なアレとかは入れたいよなーとか色々探してたらこうなってた。
で、二代目冥帝の正体は皎月院…姫川愛で間違いないです。でもって視吉は戦国BASARAの石田三成。先代冥帝との話…冥界大戦については『戦国Poker Fece』で書く予定…でしたが!あまりにも指と脳が動かなさ過ぎて現在はフリーズ状態です。もう面倒だったのでこっちに引っ張ってきました。やだ、無茶苦茶過ぎる。
何故愛が冥帝となったのか。私的にそのあたりは少し触れる程度になってもいいから絶対書きたい部分なのです。
で、もう分かってる方もいるかもしれませんが、別理者や意思ある道具などは別理者になる前と容姿…というか髪色とか目の色とか大なり小なりは変わるようです。変わらないやつなんて稀です、稀。実際、二代目冥帝は目の色は変わってないけど髪色は変わってるし、視吉も髪色は変わってないけど目の色が二代目と同じ色になってます…面倒くせえ!!
余談ですが習志野時和の生前の髪色は黒かったです。死の寸前なんてリアル貞○状態でした。やべえな!まあ心中中毒者だったしねぇ…マジで伊那谷のキャラってばどうなってるんだよ…作った本人ですらこんなだからね…?ノートにはあまり書き留めない派だからもう初期設定とか曖昧ですわ…まあ、気にしたら負けですわな。
次回はなんやかんや真面目にバトルはしようぜ的な。それとspiralも進めないとヤバい。この中編とspiralって繋がってるからはよ進めないとやばいんだよなぁ…でも気分が乗らない。やばい。
まあとりあえず…うん、次回!!!
- Re: 【SS集】クリエイティヴ・ワールド ( No.104 )
- 日時: 2016/05/01 14:25
- 名前: 伊那谷ユウナ (ID: O0NjrVt8)
前回→>>85
まだ少しだけ続きそうです。申し訳ない…
☆
【結】
後日談、というよりは次の日。まずユーインは部屋にあった真っ白なローブへと着替え、朝一に食堂にて正座をした。そう、正座。靴を脱いで裸足となり、ど真ん中に位置するテーブルの上に座り、そして目の前には短刀を置いていた。
「…いや、何やってんの」
それに気づいたのはフェアだった。フェアはいつものように仕込みの為、早起きしたのだが、なんというか…間が悪かった。否、例え誰が来てもこの異様な光景に遭遇したくはなかっただろう。
「…ああ、おはようございます店主。見ての通りだけど、私は皆が来るのを待っているのよ」
「うん、それはなんとなく分かるのよ?分かるのだけど!せめて普通に椅子に座ってくれないかな!?テーブルは料理を堪能する場所であって、短刀とか携えて座る場所じゃないから!」
「あら、堪能と短刀ってなんだか響きが似ていて面白いわね。わざとかしら?」
「わざとじゃない!むしろそっちがわざとらしさ全開で反応に困るんだけど!?」
テーブルの上に座っている時点でわざとではない、とでも言えば彼女の説得力なんて最初ないようなものだ。フェアはどうせ何を言ってもどく事はないだろう、と思いながら何をしているのか、何がしたいのかを問いただした。
「それは勿論…切腹よ?」
「………えっ?」
セップク。聞き慣れない言葉だった。でもなんだろう…どう足掻いても良い意味とは思えないのだが。
「所謂シルターン流のけじめのつけ方、ってやつかしら。短刀で自分の腹を切って、介錯人に首を斬って貰う…中々すっきりとした落とし前でしょう?」
「落としてるのは首と命だけだよね?落ちてないのは腑ぐらいのものだよね!?」
「あら、そこには気付くの?」
まあどちらにせよ、切腹は若様がいないと無理だから一旦座り直しましょうか…と彼女は意味深にそう言いながら椅子に座った。
「そういえばまともな自己紹介はしていなかったわね。私はユーイン…龍人族次期族長であらせられるセイロン様の従者よ」
「私はフェア、この宿屋を切り盛りしてるの。にしても、セイロンって本当に偉いんだ…なんかさ、態度とか胡散臭いからいまいち信用出来なかったのよね」
「ああ…」
言われてみればそうかもしれない。セイロンは生まれた時から多くの里の民達に傅かれていた環境もあってか、大仰かつ偉そうな態度を取る。普通に育ってきた人々には奇怪かもしれないが、彼にとっては当たり前であり、そのつもりはないのだ。
「不愉快かもしれないけど、まあそこは許してあげて?あの子…あのお方にとってはそれが当たり前なの」
「…さっきから思ったんだけど、私の前でセイロン様ーとか、あのお方とか無理に呼ばなくていいんだよ?」
だって二人は幼馴染なんだから普段は気兼ねなくお話してるんでしょう?その言葉にユーインは指で頬をかいた。
「……駄目。無理してでも区別したいの。理由は聞かないで」
「そ、そう…?」
「そうなのよ」
彼女は拒絶しているようだった。多分、何かしらの地雷かもしれない。フェアは出来るだけそれに触れないよう、話題を変える。
「そういえばさ!ユーインってリィンバウムに来てからどれぐらい経つの?」
「四年ぐらいかしらね。最初に唯一の手がかりである場所に行ってみたものの、何もなかったから幾つかの山を越えながら旅をしていたわ」
一度は聖王国のあたりまで行ったらしい。それからは帝都にあるシルターン自治区を尋ねたり、港がある街でそれらしき情報を集めていたが、てんで成果は出てこなかった。
「そうだとするなら!何故セイロンがこの宿屋にいるって分かったのよ?四年経っても情報は集まらなかったんでしょ?なのに今更やっと見つけるだなんて、偶然にしては出来すぎてるよ!」
「そうね。本当にアレは偶然だったわ」
「……えっ、」
フェアは嫌な予感がした。まさか、もしかしなくても…ッ!
「若様がこの宿にいるというのはある男に聞いたの。名前は確か…ケンタロウ・ダイバ。貴女の父親だと聞いているわ」
ーーーやっぱりか、と。フェアは膝から崩れ落ち、拳を固めた。そして…
「あんっの…
ダメ親父ィィィィィィーッ!!!」
どこかで豪快に笑っているであろう父親に向けて叫んだのであった。
☆
「成る程成る程。つまり、ユーインは店主殿の父親に我がこちらに向かっていると聞き、山を越え、遥々とこの辺鄙な宿屋へやってきたと」
「辺鄙っていうな!!」
フェアの叫びを聞いて起床した一同は食堂へと集結していた。セイロンが簡単にまとめたがそれで合っているとユーインは言った。にしても面倒事をよく娘に押しつけるものだと、フェアは深く溜息をついた。
「町外れの宿屋だし、切り盛りしている店主殿は白髪の童と聞いていたからすぐに場所は分かったわ。で、庭まで来たら若様が幼子に何かやっているからこれはまずいかなーという具合に飛び出した次第よ」
「待て、その言い方だと我が御子殿に破廉恥な事を行っていたみたいではないか!?」
「え、違いますか?」
「断じてない!!!」
あまりにも酷い会話だったため、アロエリは無言でミルリーフの耳を塞いでいた。ミルリーフはというと「アロエリーっ、聞こえないよーっ」とじたばたしていた。
「全く…御子様の前でそのようなを事言うな!!」
「…分かったわよ、善処する」
「善処しても完全にはやめないんだ…」
「今更性格なんて変えられる訳ないじゃない。あ、そういえば忘れていたわ」
「…えっ?」
ユーインはテーブルにあった短刀を取り出し、そして鞘を抜き取って捨てる。
「今から迷惑かけたお詫びに切腹するので、若様は大人しく斬られて下さい」
「な…っ!?」
「どうしてそうなっ…やめい!?」
セイロンは間一髪避け、逃げる。その様子に呆気を取られてしまう一同。本当にどうしてそうなった???
「多分、彼らが住まう地域の切腹法に基づいてかもしれませんわね。シルターンの一部地域では切腹の別名を『剖腹』と呼ぶのですが、自分の腹を切って内臓を出し、自分の体内に惨殺された自分の主君の肝臓を入れて絶命するという行為が人々から忠勇を讃えられるらしいですけど…」
まあだからって自分が切腹する為に主人を斬る必要あるのか、という。
「ねえねえっ、耳と目の手を離してーっ!」
「御子様には教育上よろしくないので…」
「申し訳ありません、御子様」
「うーっ、うーっ!」
ミルリーフに悪影響を与えないとリビエルとアロエリは全力で彼女の耳と目を塞いで死守していた。対するフェアは何とか二人を止めようとする。
「開店準備前に喧嘩しないでくれる!?」
「ならば此奴を止めてくれ!?」
「止めるのは貴方の息だけで充分よ!」
「切腹をするだけの為に主人である我を殺すなぁぁぁ!!」
…こうして、いたちごっこは騒ぎを駆けつけたグラッド達に止められるまで続けられたという。
- Re: 【SS集】クリエイティヴ・ワールド ( No.105 )
- 日時: 2016/05/03 00:42
- 名前: 伊那谷ユウナ (ID: O0NjrVt8)
ユーイン中編、やっと終わるよ!!いやでも、こいつを最後まで読んだ物好きとかいないだろうけど…!けど、終わるよ!後書きらしいものは後日に。ではほんへ
☆
【論】
「………む?」
本日、修羅場と化している宿屋【忘れじの面影亭】…その厨房。セイロンはいつもの装束を脱ぎ、動きやすい着物姿でフェア達が使用するものより重いフライパンを片手に調理をしていた。しかし、なんとなく嫌な予感がし、一瞬だけ手を止めてしまう…が、フェアの怒号に似た呼びかけと同時に我へと帰った。
「セイローン!春雷炒めはまだー!?」
「はっ…!?も、もう暫く待たれよ!それと魚菜薬膳二つ、出来ておるぞ!!」
「了解!エニシア、お願い!」
「は、はい!」
今日も客の出入りが激しく、途絶える事はない。繁盛するのはいい事だが、宿屋ではなく食堂だけが繁盛するのは少々複雑でもある。だが、それすらも考える暇などなかった。
「こんな事になるならせめてユーインを休ませるんじゃなかったわ…ッ!」
「うだうだと考える暇はないぞフェア!三彩コロッケ三つ追加だ!!」
「あーもー分かってるー!」
流石のフェアも泣きそうだった。こうなれば猫の手を借りたいものだ…と思っていた時だった。
「ママー!お手伝いに来たよー!」
「ミルリーフ!それにリビエルやアロエリも…!」
「…待て、ラウスブルグはどうした?」
「留守はクラウレとユーインに任せて来ましたわ。料理はまあ…アレですけど、お手伝いしますわ」
「クラウレとユーイン、だと?」
そうか、嫌な予感はそれか。そうと決まれば急いでラウスブルグに向かわなければ…と、思ったが。
「ちょっと…こんな時に抜け出すだなんて、考えてないわよねぇぇぇ…?」
なんと、鬼の形相で包丁を突きつける店主殿がいた。そのおぞましさにセイロンは思わず、後ずさりをする。
「あ、あは、あはは…っ!?か、考える訳が、なかろう…?」
「だったらさっさと働けぇぇぇ!!!」
こうしてセイロンは夜の営業が終わるまで料理をするのであった…
☆
「まあ、そんな感じだったわ」
「そうか。とりあえずお前は事あるごとにセイロンをからかうのはやめた方がいいと思うぞ…」
【呼吸する城】(ラウスブルグ)。ここはかつてひとりの男が復讐の為に襲撃し、最終的には竜へと堕ちた場所。その庭園にてユーインはクラウレと話をしていた。
【浮遊城事件】が終結してから一か月はとうに越えている。セイロンは御使いの座を辞してからというもの、長らく停滞していた人探しを従者であるユーインと共に行っていた。しかし、ある占い師に捜索を頼んだ為、現在は二人共にトレイユへと留まり、宿屋の手伝いをしている。
そんな中、ユーインはひとりで久しぶりにラウスブルグへ訪れ、クラウレにフェア達との出会いについて話していたのだ。
「そもそもいいのか?このような場所に来て」
「いいの、今日は休んでいいって店主に言われているから。若様は今頃、厨房に駆り出されている筈よ」
料理が出来る人材はフェアにとって大助かりの存在だった。セイロンは主にシルターン料理を担当し、たまに手伝いにくるポムニットも料理を作っている。あのエニシアとギアンだって調理補佐、配膳係としてフェアを助けているのだ。そしてユーインもエニシア達と同じく配膳係を担当していた。
しかし、ミュランスの星で取り上げられてからというもの、前よりも大忙しとなった宿屋はそれでも人手は少なく、かといって人手を増やす余裕もなく…たまに休みを設けたりして皆を倒れさせないようにしているのが現状だ。
「…近々ね、店主が前々から誘われていた帝都へ修行に行くんですって。若様も丁度良い機会だからもう暫く宿屋の手伝いをしてからまた旅をしようって言ってきたの」
「人探しは占い師に頼んだのではないのか?」
「今回は見聞目的。折角、窮屈な立場を殆ど忘れてリィンバウムにいるのだから、これを機会に世界の事をもっと知るのは悪くはないだろう…と若様に言われてね?それならシルターン自治区にいる知り合いを尋ねようって私は提案したのよ。もしかすると、探し人の情報を持っているかもしれないし」
「と、なると…ここに来る事は無くなるんだな」
「あら、寂しい?」
それはない、とクラウレは否定する。いずれ来ると分かっていた別れだ…それなりに覚悟はしていた。だから心配するな、とユーインへ言った。
「そう言われると少し複雑よ。何せ、貴方と遊ぶ事が出来ないのだから」
「…あのような情事を遊びを称するとはな。俺は、本気だったんだぞ?」
「貴方の事は男として好きよ?でもね、貴方のややを作りたい程に愛してはいないの…ごめんなさいね」
なんという支離滅裂な理由だろうか。まあ彼女らしいといえばらしいのだが…
「その言葉を受け入れよう。だが、今日がお前と過ごす時間が最後となると…これからお前が言っていた『遊び』とやらをじっくりするのも面白いと思うが…どうだ?」
「あら、確かに面白いわね。でも…それは私を無理矢理組み伏せる男気を魅せるぐらい強くなってから、言いなさいな?」
「……今回ばかりはお前に乗られず、俺がお前の上に乗りたいものだな」
そして二人は距離を取り、ユーインは拳を、クラウレは槍を構えたーーー足音を合図に、二人は動く。
「「いざ!!」」
【害】
海よりも深く、夜よりも影を落とす…そんな一室の冷たい床に、横たわる人物がいた。
それは心地良いけども、どこか不気味な声を垂れ流す。
嗚呼ーーー
「……………………くい
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い
………憎い」
早く
●●したいものだ
………完
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