二次創作小説(映像)※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 【お知らせあり】クリエイティヴ・ワールド
- 日時: 2017/03/17 18:20
- 名前: 伊那谷ユウナ (ID: QxkFlg5H)
クリエイティヴ・ワールドへようこそ。
ここは主にメモ書き程度なもの、中編などを載せます。つまりは読み切りですね。はっきり言ってカオスです。パロディもありますとも。連載を諦めた話などもこちらに載せます。
主にオリキャラが中心ですが、サモンナイトシリーズをはじめ、戦国BASARAシリーズ、魔法少女リリカルなのはシリーズなど他にも色々取り扱います。
中にはブツ切りする小説、思いついただけで使う道がなさそうな設定を乗せたりします。どのような場合でも見逃してくださいませ。
では、お楽しみ下さいな。
☆必要用語☆
取り扱いジャンルについて >>39
別理者について >>86
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27
- Re: 【SS集】クリエイティヴ・ワールド ( No.91 )
- 日時: 2016/03/20 19:30
- 名前: 伊那谷ユウナ (ID: PEk4EpeS)
「めんっっっっど、くせぇぇぇ……」
開口一番。そう、客人に対してアルことアルフォンス・ギエーヤーがまず発した一言がそれだった。
「……相変わらずというか、通常運転だな。お前は」
「ちがうよ!にーはいつもじこってる!」
「え、マジで?」
後ろから現れた美女はアルの実妹、イルことイルフィール・ギエーヤーだった。というか、妹の発言に驚く兄というのはどうなんだ。
「妹もいたのかよ。まあいいわ…アル君やい。この二人の相手をしてくれ。訪問者の力量図るのは門番の仕事だろ?」
「ええ、めんどくさ…あ、でも通常より何倍も甘いファントムロール一週間分奢ってくれるなら手を打ってやりますよ」
「よし、乗った!」
「伊那谷さん!?勝手に話を進めないで下さいまし!?」
だがしかし、拒否権はない。伊那谷は瞬時に周囲の空間調節を行い、展開させた。
「これぐらいでいっか…じゃあ1対2でバトルな。制限時間は私の気分次第。棄権もしくは勝負実行不可能の事態になった場合、強制終了。さっきも言ったが、セイロンとポムニットは縛りプレイがあるから注意しろ…はっきり言って、アル君はマジ強えから死ぬなよ?」
「し……死!?」
何故そのような事態になったのだとポムニットは狼狽していた。だが悲しいかな…そんな意思など伊那谷の前では無駄に終わるのだが。
「はいはい、じゃあ私が一回手のひらを叩いたらはじめな。はいよーい…」
パーーーガンッ!!
「…!?」
「セイロンさん!?」
セイロンは叩き終わる前にアルの打撃を受けてしまい、岩壁に叩きつけられた。遠目で見ても彼は瀕死で、呼吸していられる事ですら、奇跡だった。
ポムニットは一瞬怖気がつきながらも、斧でアルに攻撃した。
「はああああああッ!!」
「…っと」
縛りプレイとやらがありながらも、地盤は凹み、クレーターを作ったポムニットの攻撃…しかし、アルはそれをポムニットの斧の二倍は少なくともある三日月を合わせたような斧で受け止めた。
「………お嬢さん。そりゃないぜ」
「ぐ、う…!」
全然ビクリともしない彼から距離を取るポムニット。背後にいるセイロンは未だに動く気配は…ない
「ピンチ、すぎます…っ!」
「いや、それはチャンスにすべきだろ?とにかく頑張れ頑張れ」
「にーが言ってもせっとくりょく?ないよー?」
「マジか」
さっきからマジか?としか言ってなくないかお前…というツッコミは入れず、伊那谷は静観する。
この二人がアルに勝てる見込みなどまずない。だからこそ勝利条件は提示せず、勝負終了の条件だけを挙げたのだ。
(こんなの無理難題じゃねーかって?うるせぇ。こうでもしないとこの先はねーんだよ…あの二人は鍵だ。それも、近い内に起こるであろう次元規模の大事件のな)
だからこそ、成長して欲しい。自分にはもう出来ない成長をーーー
「あ、ひとついいかなポム子ー?」
「なん、ですかっ!?」
「お前ってさぁ…パワーやら潜在能力は高いけどそれを十全に扱えるような技術はないよな」
「………っ!」
その通りだ。確かに、ポムニットは人間と悪魔から生まれた『半魔』故にパワーが高く、父親譲りの生命力を奪う『略奪』の力もあって並の武闘家よりも遥かに強い。
だがしかし、力が弱い故にそれをも利用する技術者もいる訳で。ポムニットは未だに自分よりもパワーがなくてもそれを技術で補って闘う武闘家のセイロンやユーインのようなタイプに勝つ事はあまりなかった。
「つまりお前は、持ち前のパワーに頼り過ぎている。故に技巧派の敵には弱い…それは致命的ともいえるぐらいに。でもな、このまま弱点を抱えたままでいるのは私が困る…つー訳で!この戦いで自分の力の扱いを覚えろ。そのためにちょっとだけ縛りプレイから解放してやんよーーー」
伊那谷はいつもの黄色に光る魔法陣とは違う、妖しい光を発する紫の魔法陣を展開する。そんな伊那谷を見てアルは、えっ?と声を上げた。
「縛りプレイって途中でやめるものだっけ?」
「え?縛りプレイはあるとは言ったが解放しないとは言ってないよな?つかいいだろ、お前が強いのは依然変わりないんだからさ」
伊那谷は水晶玉にも似た紫の光を手に浮かべ、詠唱する。
「我が【傾界なる歌姫】ミルヴァーナの龍名のもとに望む…【略奪の半魔】、彼女から解放すべきは全てを略奪するその力ーーー今ここで、謳うがいい!!」
すると、ポムニットは力が普段と同じともいえるぐらいに戻ったと実感する。
「ポム子、特別にヒントをあげよう。お前の生物の命すら容易く略奪する力は…果たして、それしか使い道がないのかな?」
「え?……あ!」
ポムニットはそれが何か…なんとなく理解した。純血の悪魔ですら脅威に思うパワーを持つポムニットだが、頭はいい方なのだ…だから、即座に思いついた。
自分の略奪がいかに恐ろしく、頼りにもなる力というのが。
「ッでやあああああああああ!!」
「!?…ぐっ」
斧を捨てて放った彼女のパンチは先程とは比べ物にはならず、アルを初めて苦しませた…というか!
(斧がガタついてきた…?まさかこいつ、生物だけじゃなく無機物の寿命すら奪えんのか!?)
ただしどちらも一気に奪う事は出来ないようだが、こうも打ち込まれたら斧が持つ筈がない。武器というのは、例えどれだけ鍛えようと、使い手がいてこその代物…その使い手である人間を超えることなど、実質不可能なのだ。
どちらにせよ、このままだと形勢は不利となる。アルは斧の寿命だけではなく、体力も徐々に奪われていたからだ。アルは仕方なく斧を投げ捨てる。瞬間、斧は真っ二つに割れてしまった。その光景にアルは一筋の冷や汗を流す。
「流石【略奪の悪魔王】…その娘さんってか?」
「父の事はあまり話さないで下さいまし。和解はまあ、それなりにしたかと思いますけど…それでも愉快とは思えないので」
「そーかい。そりゃあすまなかった…なっ!」
するとアルは地面を殴った。地面には亀裂が入り、崩れる。それはポムニットがいた距離まで広がる。
「きゃっ!?」
「俺の体力無くなる前にトドメ、さしてやるよ…!」
「……!?にー!駄目ッ」
先に気づいたイルが声を荒げた。しかし、それは遅すぎた…アルもそれに気づいたようで、ピタリと静止する。
「……チッ。妙に静かと思えば狸寝入りしていたのかよ、アンタ」
「ーーー否。正直に言うと、一瞬だけ意識が飛んでいた。この為に少々無茶をしていたものでな」
アルの背後には無数に浮かぶ赤い刃…それはセイロンが【意思ある道具】である【龍刃針苦】に魔力を通して造った刃だった。
「っかしーな…確かに一発決まったんだが?」
「決まってはいたよ。但し、防御はしていたがな?」
「……まさかとは思うが、お前、俺の攻撃受けたと同時に回復でもしたか?」
「あっはっは…ご名答!この防御はストラを使った所謂裏技というものだ」
ストラ。それは医者でもあるアルも聞いた事がある技術だった。
別名『治癒功』とも言われるそれは気の力で身体本来の治癒力を高める回復術でもあり、極めれば強力な攻撃にも転化する事が出来る、シルターンが発祥の気功術だ。ただし、傷や疲れに効いても病気は治せないし、治癒力を増加出来てもそれに比例して体力を消耗する欠点がある。
「そのため、この応用は即座反撃するには便利…とはいえ、数回しか使えない。急激かつ瞬間的に治癒力を増加させて防御に転ずるには体力的に効率が良くないのでな。しかし、そうでもしないと越えるべき壁を越えられないのだよ」
そう。誰よりも鋭く、美しく、強く、愛しい従者を力で屈服させるにあたって今のセイロンには手段など選べなかった。そして選べないのは自身がまだまだ未熟である証拠に他ならないが。
「さて。番犬殿と言ったか?彼女にトドメを刺すなら刺せばいい。しかし、指一本でも動かせば…針苦の雨が降るがな」
「……それは色とかけてのギャグ?」
「あっはっは。我は、本気だよ?」
周囲の気温ですら下げてしまう彼の声に、アルは思わず心の中で苦笑いする。そしてーーー
「…本気の奴には付き合ってらんねー」
と、言ってアルは。両手を挙げて勝負を投げ捨てたのである。
- Re: 【SS集】クリエイティヴ・ワールド ( No.92 )
- 日時: 2016/02/25 08:53
- 名前: 伊那谷ユウナ (ID: PEk4EpeS)
……えっと、はいそうです備考です。
氷室兄妹が何故母の姓を名乗ってたり、アルの髪色が黒になったのかはまあ先代冥帝との戦い…冥界大戦以降に別理者的な存在になったからですね。いや、厳密に言えば彼は造る役割がある別理者ではなく、造る役割はないけど理から外れてでも使命がある外理者なんですけど。また新しい言葉を作ってすいません。ちなみに、この外理者は意思ある道具も入ります。後は類義語的なもので不理者っつー言葉も私の中にあるんすけど…まあいつか出るでしょ多分。
さて。ポムニットの略奪の力ですが、伊那谷的には角に宿る特殊な魔力によって生命の活力だけじゃなく、無機物の使用できる寿命まで奪えるという能力と解釈しています。ただし、一気に奪う事は出来ずにじわじわと奪う事しか出来ない。一気に奪えるポムニットの父親とは違うって訳ですね。
ポムニットの父親はあの若くして魔王クラスに入る悪魔のバルレルすら戦慄するぐらいにヤバいようです。あとは略奪を司るとしか原作ではそれぐらいしか発言されてない様子。もうね、言っちゃうけどその父親を出す予定は私にはあります。余談ですが今回の中編の時系列はポム子と父親が和解をそれなりにした後の話のつもりです。というかね。もう私の小説の何処かにポムニットの父親である人は既に出してはいるんですよ。本来の姿ではないですがね?とにかく、ポムニットとその父親回を書く日を楽しみにしてます。私が。
セイロンのストラを使った回復防御ですが、あれはめだかボックス7巻あたりでめだかが古賀ちゃんの特異性である超回復を使った防御術と同じようなものです。セイロンも言ってましたが、この防御術はストラの特性でもある体力の消耗が特に激しいので長期戦で多用してはならないので注意。元々この技術は打倒ユーインでの策として編み出した応用技です。どんだけ彼女への勝利に執着してんだよ…というのもいつか語りたいですね、はい
あとセイロンは使える妖術(結界や祓い)は制限されてますけど、魔力量についてはあまり制限されてないようです。だから魔力を消費することによって刃を造る龍刃針苦を余すことなく使える訳です。ちなみに刃が大量に浮かぶイメージはアレです、Fateシリーズのギルガメッシュの王の財宝です。つーか私はzero(しか見たことない)をちょびっと見た程度だから事実知識皆無に等しいけども。ライダーさんマジ好き。
…で、ここからは別の話。
艦これの冬イベのE2(いつも通り丙ですが)がクリア出来ねぇという…!いやね、ゲージはゼロにはなったのよ?でもボス(三つ編みメガネに壊の声がぎゃわいい)が倒せなくてな…良くて残り90か80までは削れるんだが、あと一歩が足りないんだよ!どーすんだこのままだと初月お迎え出来ないじゃないか!!
あ、でもE2で念願の卯月をドロップしました。あと磯風も。ツイッターでも私が荒ぶってましたがリアルでも「ファッ!?」と声上げましたよ…あの喜びはサモンナイト6でセイロン参戦決定以来だよ。やったあ、出ったぴょん!!!!
とりあえず目標はE2クリア。クリアした時点で終わる予定です。パソコンなんて忙し過ぎて日曜しか触れないしね。あとは春雨がお迎え出来たら嬉しいなー…ないだろうけど。
刀剣乱舞も携帯で出来るようになるみたいだし、この際そっちで真面目に審神者業再開、集中するかと決めた伊那さんでした。
では、次回もお楽しみに!!
- Re: 【SS集】クリエイティヴ・ワールド ( No.93 )
- 日時: 2016/02/26 16:43
- 名前: 伊那谷ユウナ (ID: PEk4EpeS)
「えっ、何だって?伊那さんのアドバイスのおかげで強敵を棄権まで追い込んだって?へぇそう。そうなのか!それならベタに当たり障りのないレベルでもいいから褒めたって良いんだぜ?讃めたって好いんだぜ!?」
やたらとしつこい伊那谷にポムニットは笑顔で一言。
「あ、では讃めさせて頂きますね?勿論、非難するという意で♪」
「んな上手いのか分からん罵詈讒謗なんて、聞きたくなかったよ!!!」
ーーー閑話休題。
「一応合格…というか、そんな試練とか大それたモンじゃないけども…通っていいよ」
「かたじけない」
アルはアイスブルーの魔法陣を展開する。するとそれに呼応するかのように門もゆっくりと開いていく。
「ようこそ。遥か地下にて栄える冥界の都市、【獄都】へ」
「ふわぁ…っ!?」
絢爛豪華でいて混沌とした街並み。それは、セイロンやポムニットにとって斬新に映る光景であった。
「いやしかし、一部はどこかシルターンに似ているような…?」
「獄都は様々な時代が交錯する。今と昔、過去と現在…それらが全て、獄都を造っている」
そして同時に獄都は冥界にて空が見える数少ない場所である。
「じゃあじゃあ!ボクが獄都案内するね!いにゃさんにろんろん、ぽむむ、こっちだよ!」
イルはスキップしながら獄都へと入っていく。そんなイルを見てセイロンは疑問を口にした。
「あの名称はともかく、女子なのに一人称がボクとは一体…」
「お前ってそういうところには頭が固いよなー。いいかセイロン、可愛いは正義、本能に勝る煩悩なんざこの世にもあの世にもねえんだよ!!だから気にするな。分かったか!?」
「う、むぅ…」
セイロンだけは少々不満がありながらも、一行は歩き出す。確かこのあたりは意外にも獄都では上位に栄えている明治エリアだった筈だ。と、なると。
「…おや、これはまた珍しい来客で」
現れたのは獄卒の男女二人組だった。しかも上官特有の深緑のコートを二人は着ていた。伊那谷の記憶では確か、現冥帝と閻魔大王の直属にあたる獄卒だったような気がする。名前は確か…
「災藤と悲倉…だっけか」
「はい。私が災藤です」
「!?かかか、悲倉です!」
そう言って帽子の中身は銀髪であろう長身の男性、災藤はお辞儀をした。そして不似合いな大きな本を抱えた幼い少女も慌ててお辞儀した。
「創造神様が直々に獄都へと御出でになるとは…何か事件でも?」
「いーにゃ。武者修行を兼ねた旅行ツアーみたいなもんだよ」
「ほう、武者修行ですか…ということはそちらにいるお二人が対象で?」
「ああ。シルターンの龍人、セイロンと半魔の響界種、ポムニットだ」
と紹介された二人も軽く会釈し、災藤はニコリと笑顔を返す。
「つーか。お前らこそ何やってんだ?……デート?」
「ち、違いますよぉっ!?か、悲倉と災藤君はただ、冥帝様への定期報告の帰りでしてぇ…っ!?」
「……何もそんなに否定しなくてもいいじゃないか、悲倉」
「へぇ…そうでございますか♪」
と言ったのはポムニット。他人事のスキャンダルには敏感な彼女にとって、彼らは都合の良い餌だったようだ…察した伊那谷は話題を変える。
「今日の常闇はどうだった?」
「ええ、まあ…粗方、落ち着いてはいますよ」
「なら大丈夫かな…すまないな、引き留めてしまって」
「いえ。それでは」
二人は去って行った。その入れ違いで先に行っていたイルがやってきた。
「おそいよっ!早くいこーよー!」
「まあ待て。せっかくの獄都だし、楽しまなきゃ損だろ?」
と、面白い悪戯を思いついたかのような笑顔を浮かべる伊那谷。
「獄都商店に行こうぜ。そこには、面白いもんが沢山あるから」
☆
「……で、こんな辺鄙な店にやってきた訳かい」
あの世とこの世を行き交うが為、古今東西どころか生死すら関わる代物が揃う…それが獄都商店である。
そんな商店のカウンターには、煙管を吸う妖艶な獣人店主が佇んでいた。
「まあそう言わないでくれよ姐さんや。今度ルチルにでも頼んで面白いネタを仕入れるよう頼むから…ね?」
「ルチル…ああ、強欲の貴婦人に仕えるサプレスの悪魔商人のことかい?全く、貴女に動かされるあの子も難儀な事さね」
と二人が談笑している間にセイロンとポムニットは物色していた。
「うわぁ…このティーカップ、可愛いです〜♪」
「ふむ…ここはまるでシルターンの妖怪が営む商店のようで面白いのう。しかし伊那谷殿、生憎我らは金銭など…」
「いや、いいよ。目が飛び出るどころか潰れそうな程に高いやつじゃなきゃ、全て私が奢ってやるからさ」
「おお、そうなのですか」
ではこれを…とセイロンが伊那谷に差し出したのは青い宝石がワンポイントとしてついている可愛らしいアスタリスクのシルバーネックレスだった。それを見た伊那谷は戦慄した。
「……もしかして、従者への贈り物だったりする?」
「ええ、その通りです。何か問題でも?」
「い、いや。ただ、無意識だろうとは思うけど、それが怖いんだよ…」
「はい?」
相手にネックレスを贈る意味…それは指輪と同じで強い独占、愛情、誓約といった意味がある。つまり彼は無意識に愛しい従者を束縛したいという気があるのだ…何それ、怖いし強くもあるんだけど。
「まあ人の愛はそれぞれで構わないさ…ポム子はどう?」
「あっ、はい。これでよろしいですか?」
と、差し出したのは中々上等な猫まっしぐらのキャットフードやマタタビ…って!
「ちょっと待てぃ!!贈る相手は何となく分かるが、流石にあのヤローもキレるだろコレ!?」
「え?あの人、食べたりじゃれたりしないのですか?」
「知らねーけどしねーだろうよ!」
「ええ〜…じゃあ、これでいいです」
といって代わりに差し出したのは先程見ていた上品で可愛らしいゴシック調のティーカップにポット、それと上等な茶葉のティーセット一式だった。
「……うん。あいつは確かに紅茶好きだったからな、喜ぶだろうよ。姐さんや、これくれ」
「毎度」
そして店主はゆっくりとした手つきで精算し、包装した。
「龍の兄さんはともかく、半魔のお嬢さんはこのまま店のサービスで贈り主に直接贈るけど…どうする?」
「あ、それならよろしいですか?あの人と会う機会はあまりありませんので…」
それじゃあこちらで預かるよ。と店主は棚に包装したティーセットを置いた。
「…あ、ネックレスもしばらく預けてもいいか?このまま私達は常闇に行くからさ。帰りに取りに来るよ」
「常闇にかい?それはまた…早く行かないとあの霧が濃く出るかもしれない。アタイが言える義理じゃあないけど、気をつけるんだよ」
店主の気遣いをうけながら、三人は店を出たーーー
「………伊那谷殿。質問よろしいでしょうか?」
「ん、なーに?」
「あの店主…もしかしなくてもと思いますが…男、ですよね?」
「そーだよ。あってる」
「ええっ!?」
女性のようなハスキーボイスが透き通っていて、女物の着物を着込んでいた店主だったが、実は言うと【男】だった。まあ何故そのような事をするようになったのかは…乙女の秘密って事で。
「殿方だったのですか…私、てっきり同じでも格の違う淑女だと」
「あっはっは、見抜けぬのも仕方あるまい。我だって半信半疑だったのだから」
と言ったところで、一同はこれまた大きな門にいるイルを見つける。
「おそいよっ!待ちくたびれたよっ!びりびりだよっ!」
「悪いって。で、早速で悪いけど門を開いてくれ」
「ええーっ!おそいひとのお願いきくの、やーよっだ!」
「しゃーない…アイツ用に買っておいた糖蜜飴あげるから頼むよ」
「わーい!いいよ!」
なんという単純。見た目はリシェルより少し年上で大人びた美少女だのイルだが、幼い子供のような中身は過去に何かあったのかと勘繰るぐらいにちぐはぐだ。
そんな事を思っている二人を察した伊那谷は疑問に答えた。
「こいつ、精神的な病気にかかっていたんだよ。だから言動が幼いんだ」
「でもねでもね、にーとにーの友だちがたすけてくれたんだ!だからこーして走りまわれる!」
とアルと同じカラーの魔法陣を出しながらも、忙しなくぴょんぴょんと飛び回るイル。そんな光景を微笑ましいと思いながらも三人は門前に向かう。
「じゃあ、ボクのあんないはここまでだよ。ここからはちょー気をつけてね!」
「ああ。さーて、こっからが本番…安全は私ですら保障出来ねぇ、そんな第二試練の…始まりだ!」
第二試練【常闇】ーーースタート!!
- Re: 【SS集】クリエイティヴ・ワールド ( No.94 )
- 日時: 2016/03/20 19:12
- 名前: 伊那谷ユウナ (ID: PEk4EpeS)
おい誰だよ、今日の常闇はマシつったのはーーーそう思ったのはこの常闇をよく知っている伊那谷である。
【常闇】…冥界の中でも指折りの無法地帯で、亡者を管理する閻魔庁の獄卒すらもその危険性から常闇の先にいる冥帝への用事以外では滅多に足を踏み入ることは無い。しかし、霧や瘴気が少なければ比較的安全ではある。
だが運が悪い事に…伊那谷一行が常闇に入って暫くして霧が現れてきたのだ。
「霧、深くなってきましたね…」
「幸先悪ィ…でも完全に晴れるのを待つのはそれはそれで危険なんだよなぁ」
だからこそ、本格的な視界不良になる前に切り抜けないとならない。
「お前ら、気をしっかり持てよ。じゃねーと奴らに「大変ですぅぅ!!」なんだよ!?」
と、ここでいきなりポムニットが声を上げる。よく見たら涙目ではないか。一体何があっ………てるな、これは。
「セイロンさんが見当たらないんです!どうしましょう?!」
ーーー今この時に奴に怒りを抱いたのは間違いないものだと願いたい。つかどこ行きやがったあいつは。
「やべえな…急いで探し出さないとシャドウに付け込まれたら面倒だ」
「シャドウ、ですか?」
シャドウとは。成長の過程で作られた抑圧されたもう一人の自分の事で、普段自分が意識していない部分、あるいは目を逸らしているコンプレックスや悩み、負の側面が形を持ってしまった存在でもある。
「そのシャドウはとあるテレビの世界にいるんだがな、この常闇にも同じようでちょいと違うシャドウが稀に人を襲って暴走するんだ。この霧はそいつが徘徊している合図ってやつ?」
「それじゃあかなり危ないではないですか!?」
「ま、どの天候にせよ危険なのは変わりない。急いで探すぞ」
☆
途方に暮れたのはいつ以来か。セイロンはどうしようもない目の前の現状に目を向けた。
「何なのだ、ここは…」
気づけばセイロンは広々とした豪邸らしき建物の中にいた。しかも彼にとってここは、見覚えのある場所だった。
「帰ってきた、とは言えぬな…何故常闇とやらに我が家があるのだ?」
ここは自分の家にそっくりだったのだ。もしかすると、という可能性を確かめるべく、セイロンは自分の部屋のある場所へと赴き、ゆっくり扉を開く。
「……っ!?」
部屋には文字の練習で書いた紙が散乱しており、本も所々に積まれたり、開いたまま…お世辞にも綺麗な部屋とは言い難い。しかし、暇となれば結果的にこうなってしまう光景は幼少期のセイロンには当たり前でーーーここは間違いなく、幼少期の自分の部屋そのものだった。
「な、何故…っ」
『何故、若様はあの野卑な龍人を従者にしましたの?』
『そうね。意味が分からないわ』
「!?」
突然、声が聞こえてきた。しかもその声はセイロンやその家族に支えている小間使いの女性たちのものだった。普段は嫋やかな振る舞いを見せている彼女が、どうしてこのような冷たく言い放つのか。それは、すぐに分かった。
『鬼に魂を呪われた龍人なんて、果たして龍と呼べて?』
『ユーイン、だったかしら?あの子を龍人と呼ぶだなんて、それこそ冒涜ですわ。龍人どころか…竜人にすらなれない成り損ないよ』
シルターンにとって、龍と竜は意味が違う。龍を用いれば至竜に近く、竜を用いれば至竜より格下の亜竜に近い。雑音が言っているのは…要するに罵倒。呪われた龍人など、龍の字を使うに値しないと言っているのだ。
『あんな子、いても迷惑だわ』
「やめろ…」
『いっそ、あんな子…』
「やめろ!!」
ーーー生まれなきゃ、よかったのに。
「……全くだよなぁ」
「っ!?」
背後から気配を感じた。見てはいけない…そう本能は告げたのに。
「……!?」
闇から湧き出てきたかのようなどす黒い気配。それは、セイロンに瓜二つの誰かだった。
「誰だ貴様!!」
「!?そ、そんなに怒鳴らないでくれ給え…!怖いではないか我よ!?」
彼は泣きながらも、セイロンに向かい合う。
「っく、だ、だから嫌なのだ…本当は怖いのに、そうやって知ろうとするのは」
「は…?」
「本当は、知っていたのであろう…?あの小間使い達が自分の従者を除け者扱いしているという事実を」
「!?」
なんだ、これは。
まるで直接頭に叩き込まれたような、心臓を掴まれたような感覚はーーー?
「でも何も出来なかった。というよりは、何もしたくなかった。何かをすればその責任を負わねばならぬのだから」
「ち、ちがう」
「ここまで来てよくそんな否定が出来るのう?泣けてきたよ…」
しかしその濡れていた筈の琥珀に光る目は、いつの間にか乾いていた。
「恵まれた身分、か。そんなもの、他人から見た勝手なこじつけ。実際は重い責任を背負う為の掃き溜めだ。自分は弱いのに、若いのに、それだけ与えられて…うんざりだというのに!」
「そんな、事は…っ」
「非道い!非道いものだよ!それは我の想いさえ吐き出してはくれない、周りは諦めろとしか言わない!何故、あの女を好いてしまった?あの女には、既にそれがいたというのに!!」
「やめろ!これ以上…これ以上言うな!」
言われたら死ぬと感じた。それはあくまでそれは例えで実際は死なないだろうけど…何かが壊れそうな気がして、セイロンは裂けるような声で止めた。だけどセイロンに似た彼は…影は、謳った。
「哀れな我。立場を利用してまで手に入れたのに…結局、触れる事が出来なかった。じわじわと奪われて、無くなって気づいた。嗚呼憎い…いっそ奴等、死ねばいいのに」
「あ、ああ…ッ!」
「そして貴様はあの日、奴を見殺しにした!最低だなぁ我よ!」
「きさ、ま、貴様、は…我などっ」
「ははっ!我はそなた、そなたは我…今更、我の本心を隠してどうする!?」
ーーーそして、何かが切れた。
「ーーー黙れ!!貴様など…っ
我ではない!!」
- Re: 【SS集】クリエイティヴ・ワールド ( No.95 )
- 日時: 2016/03/27 10:29
- 名前: 伊那谷ユウナ (ID: PEk4EpeS)
「あハァ…ヒャーハッハハハハ!!?」
影の嗤い声と共に室内には雨が降り注ぎ、影は歪な龍へと変貌する。ギチギチと鳴る鎖に、セイロンは何故か顔を歪めてしまった。
「我は影…真なる我…!」
雨の所為か、嗤っている所為か。影は最早泣いているのかどうか分からない程に狂っていた。しかしそんなのはどうだっていい。それよりも彼を、否定した自分を無性に殺したい…!
「あははっ!ほらほら!喚けぇ、喚けぇ!」
「ぐ、ああっ…!?」
先程の動揺の所為でセイロンは影の鎖に捉われ、締め上げられる。そして影はセイロンを壁に打ち込んだ。
「ぅ、はァ……ぇぶッ!?」
幾つもの壁をきつく鎖で縛った自分ごと撃ち抜かれた代償で、セイロンは血反吐を床にぶちまく。先程の番犬との戦いの傷は癒せど、攻撃受けた時にかかった負荷までは完全に治ってはいない…それも含めて彼の身体は一気に笑えない状況へと追い込まれたのだ。
(あっはっは。これは、参ったな…先程から身体が怠い所為か、いつも通りにはいかない。ストラを使うにもこれ以上体力を消耗するにはちと厳しい。と言えど…最低限でも癒さなければ、立ち回るのは無理か)
セイロンは両腕の赤い腕輪を見やる。魔力を込めても反応はない…どうやら、紋章を見るに、どちらの意思も完全に眠っているようだった。
【龍刃針苦】(りゅうじんしんく)ーーー【意思ある道具】と呼ばれるこの腕輪は、それぞれ二つの意思が宿っており、主であるセイロンの魔力を糧に刃を具現化する武器だった。しかし、彼らの性格は気分屋のそれで。進んで力を貸す時もあれば全く協力しない場合もある…今回の反応は後者のようだった。あまりにも間が悪い龍刃針苦にセイロンは頭を痛めながらも、呼吸を整えて周りを見た。
「ここは…玉座の間、か?」
そこは、現族長であるセイロンの父が居座る場所。龍神イスルギを始祖とする龍人族の象徴ともいえる場所だった。
「悲しいよなァ。いつかはそこに一生、座らなければならないというのは?」
「…!貴様、」
歪な龍の影は重い鎖を引きずりながらやってきた。悲しいと言いつつも、その目は果たして泣いているのか…雨の所為でよく、分からなかった。
「所詮、我が立ち振る舞いなど虚勢。自信がない故の見栄っ張りだ。冷静なのは冷静にならねば正気ではいられないから。またあの日のように嫉妬に狂う自分を恐れているからであろう?」
「……っ、それは」
「どうせ、それを一生背負わなければならないのなら。今ここで、全てを終わらせても良いのだぞ?」
そう、他でもない否定した自分に。
「…答えよ同胞。どの死を望む?」
「……………我は」
『……また、諦めるんかネ?』
ーーーっ!?
『確かにこれは諸刃の剣だけど、姉弟子はそれなりに力を使いこなせてるよ。後は君だけだネ』
『ですが師傅…!』
『師傅だなんてあてん柄じゃないネ。まあそこはとりあえず置いて……とにかく。坊が一番言いたいんは、姉弟子に追いつける自信ないからそうやって言い訳するんだネ?』
…何故だろう。今になって師傅である黒髪の獣人にこうも言われた事を思い出す理由は?
『確かに坊の姉弟子である嬢は強い。あてでさえ久しぶりに恐怖を思い出してしまったぐらいネ。でもあの子だって自信がないからこそ、ああやって強くなれたネ』
『…えっ?』
『自信がないなら他人を信じればいい。あの子は師父…父親を信じていたこそ、強くなれたとあては思うネ』
そう言って師傅はこう質問した。
『坊…いや、霽龍。お前は何を信じて戦うんかネ?』
ーーーバチッ、
「そんな、もの…
自分以外の全てに決まっている!!」
ーーー弾けた。そう、実が熟して弾けるようにセイロンの魔力も、弾けるように膨れ上がった。その感覚を、影であろうがもうひとりの彼でもある影もその正体を知っていた。
セイロンの髪は烏のように濡羽と化し、額や身体、角は血管が浮き出たような紋章が張り巡らされる。そして柘榴のように赤い目は、夕焼けの色に染まっている。
【血壊】(けっかい)。ゲームで全てが決まる世界、【盤上の世界】(ディスボード)という世界に属する種族【獣人種】(ワービースト)…そのごく一部の個体が有する天性の技能。それこそーーー物理限界をも否定出来る、暴力じみた才能の正体だった。
(我は、誰もが全てを赦してくれるとは思っていない。だが、我はあえてその全てを信じる。だからこそ、今ここで全てを賭し…戦う!)
そしてセイロンは薄れゆく理性を揺らしながら、喰らうようにして地面を蹴ったのであった。
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27
この掲示板は過去ログ化されています。