― 君と出会えた日― 名の無い少女 作者/浜頭.悠希...〆

第18夜 ―アレンside―



――――え?



僕は一瞬自分の耳を疑った。


「・・・・ねぇ・・・貴方・・・・誰?」


セリーヌが呟く。


「セリーヌ!!!」


アレンが表情を変えてセリーヌを見つめた。


「・・・そんな怖い目で睨まないで・・・」


セリーヌが悲しそうな目で言った。


「・・・嘘だ・・・・」


アレンの心が絶望へと堕ちて行く。


「・・・嘘?
 こんな嘘ついてどうするの?」

セリーヌの冷たい言葉。


思わず医務室を駆け出した。


「アレン!!!?」


ラビが叫んで後を追った。


―リリーside―



「・・・・セリーヌ・・・?」


しんと静まった医務室でリリーが呟いた。


「・・・空気を乱しちゃったかなぁ・・・?

 あぁ~・・・傷付けちゃったかぁ・・・」

セリーヌが呟く。


「・・・セリーヌさ・・・
 本当にアレンの事、知らないの?」

リリーが訊ねる。


「・・・アレン・・・?御免・・・分かんない・・・」

セリーヌが俯く。


「・・・・そっか・・・」


リリーが微笑んだ。


「・・・ねぇ・・・
 さっきの人・・・名前は・・・アレン・・・・だっけ?

 私とどういう関係だったか教えて欲しいの・・・」

「・・・・いいよ・・・・」


語り始めるリリー。



その話を聞きながら、目蓋からぽろぽろと涙を伝わせるセリーヌ。


その姿はとても痛ましいものだった――――。



第19夜



「・・・・バカだね・・・私・・・
 そんなに大切な人を・・・・傷付けて・・・」

セリーヌは呟く。


「・・・もうアレンに掛けられる言葉なんか無いなぁ・・・
 あ~あ・・・どうしよう」

セリーヌが頭を抱え込んで言う。


「じゃぁ、明日会って来れば?」


「え?」


リリーの思わぬ発言にセリーヌが聞き返す。


「アレンって朝昼晩絶対に食堂に居るからさ・・・
 明日セリーヌ非番でしょ?」

リリーが言う。


「・・・でも・・・」


「迷ってたら何も始まんないよ♪」


リリーが肩を叩いた。



「・・・うん!!!」


セリーヌは笑顔で答えた。



第20夜 ―アレンside―



コッコッコッコッ・・・



廊下を走る音が響く。



「アレン!!待つさアレン!!!」


そう叫んでラビはアレンの肩を掴んだ。


その反動でアレンがクルリと後ろに振り向く。



「・・・・ッ・・・」


目蓋を伝う涙。



「・・・忘れられてるっていう事・・・・そんなに悲しいさ?」

ラビが訊ねた。


「・・・」


その質問にアレンはなにも答えなかった。


「アレン・・・
 俺はブックマン次期後継者。
 名は新しい土地に来るたびにつけ、出る度に捨てた。

 風は止まってはいけない。

 そしてブックマンも同じように止まってはいけないさ。
 何処かで大切な人と出会っても、最後はさよなら。

 どんなに辛く悲しくても止まってはいけない。


 アレンはこれを如何思うか?」


「・・・別にどうも・・・」


「如何思うか??」


ラビは強く言い張った。


「・・・可哀想・・・。
 そんな名や大切な人を捨てるなんて僕には出来ない」

アレンが呟いた。


「そう思うのが普通さ。
 そんなコトが言えるならもう怖がる必要は無いさ」


ラビはそういってアレンの肩を叩くとスキップして去って行った。