― 君と出会えた日― 名の無い少女 作者/浜頭.悠希...〆

第21夜 ―セリーヌside―
―翌朝―
キィィィィィ・・・
蒼白い月が沈みそうなのが見える晴れた日の朝、誰かが医務室のドアをそっとあけた。
見える蒼白い月を見るように窓の方向を向いて寝ているセリーヌの姿があった。
ドアがキィと音を立てて閉まり始めた。
ガチャン・・・
医務室には再び、静まりが戻って来た――――。
―4時間後―
コンコン・・・
「失礼しまぁ~す・・・」
朝の7時ごろ、医務室の扉を開けたのはリリー。
「・・・まだ寝てるなぁ・・・」
リリーは医務室の壁に掛かっている時計を見て自分のポケットを探り出す。
取り出したのは長方形で薄い、小型の黒いミュージックプレイヤーだった。
巻きつけてあったコードの先には丸いイヤホン。
セリーヌは安らかに規則正しい寝息を立てていた。
イヤホンの片方を耳に当てて音楽を視聴してみる。
リリーは確認したように頷くと、イヤホンを外してセリーヌの亮耳に取り付けて、プレイヤーの再生ボタンを押した。
♪~♪♪~♪♪♪♪~♪♪~
小さく聞こえて来る音楽。
セリーヌの麗しい青い瞳が姿を現していく。
「・・・うわっ!!!」
セリーヌがパッチリと目を開けて飛び起きた。
「・・・あれ?」
セリーヌは付けられているイヤホンに気付いたのか、耳に手を当てた。
「・・・どう?」
リリーが訊ねる。
「・・・いい曲ね・・・。
まるで私を慰めてるような・・・優しい曲・・・」
セリーヌは緩く目を閉じた。
・・・・ように♪・・・・・・君♪・・・・・・なんて♪・・・
そっと聞こえてくる歌が傷付いて荒れたセリーヌの心を癒やして行く。
そして音楽は止まり、セリーヌはイヤホンを外した。
「・・・有難う」
セリーヌはイヤホンをリリーに差し出した。
「いい曲だったでしょ?」
リリーがイヤホンをプレイヤーに巻きつけながら言う。
「うん・・・この曲どうしたの?」
「私の好きな曲なんだ・・・。
いい曲だから、セリーヌに聞かせたくて・・・」
リリーがそういうとプレイヤーをポケットにしまった。
「へー・・・今何時?」
セリーヌが言う。
「今は7時10分だよ・・・?
そろそろ食堂行った方がいいんじゃない?
8時ぐらいだと混むし」
リリーが呟いた。
「うん・・・そうだね」
セリーヌは射し込む太陽の光で明るく照らされている白い床を見つめた。
「後・・・
アレンと話すとき・・・その音楽プレイヤー貸して貰えない?」
セリーヌがベットから降りて言う。
「・・・いいよ?はい」
リリーがポケットからプレイヤーを出してセリーヌに差し出す。
「ありがと・・・」
セリーヌがそれを両手で受け取り、大切そうにポケットにしまった。
「・・・頑張ってね」
リリーが明るく微笑む。
「うん!!」
セリーヌがそれに答えて笑った。
第22夜
ザワザワザワ・・・
食堂は結構な賑わいを見せている。
あいている席がちょこちょことあるだけ。
「・・・居た!!」
セリーヌはアレンを見つけて足を引き摺りながら走り出す。
「・・・アレン・・・ッ!!」
セリーヌは叫んだ。
その声に振り向く白髪の少年。
「・・・なん・・・・」
言葉が止まり、アレンの表情が変わった。
「リリーからもらった曲なんだけど・・・
とってもいい曲なの・・・聴いてみて!!」
セリーヌがそう言ってイヤホンを差し出した。
「・・・」
その言葉にアレンは下を向いて黙ったまま。
食堂に緊張感が走る。
「・・・アレン・・・?」
パシンッ!!!
セリーヌはあっという間に反動で壁に叩き付けられた。
アレンの手は止まったままだ。
一瞬何が起きたのか分からず、アレンを見つめた。
隣には白い傷がついた黒いプレイヤーとイヤホンが落ちていた。
「・・・アレンって呼ばないでくれますか?」
アレンが低い声で言う。
「アレン!!!」
その言葉にリリーが怒鳴った。
それに反応してレイリーがセリーヌに駆け寄って、横たわって弱々しそうに息をするセリーヌを抱き起こした。
「・・・どうして・・・?どうしてなの・・・?」
リリーが呟く。
「どうしてアレンは近付こうとしないの?!
どうしてもどってこようとしないの!?
どうして許そうとしないの?!」
リリーが泣き叫んだ。
「セリーヌはアレンに許して貰いたくて必死で頑張ったのに!!!
話を聞いて元に戻りたくて必死だったのに!!!
こんな致命傷を負って、記憶を失くしても記憶を元に戻したいとか・・・ッ・・・
そんなコトばかり言ってたんだよ・・・?」
リリーの声が高く高くなっていく。
「僕の気持ちも分からないくせに言うなぁっ!!!」
アレンが叫んだ。
その叫び声にレイリーが肩を震わせる。
「僕はそんな下手な気遣いなんか要らない!!
大切な人に誰って言われて後から許せなんて言われて許すわけ無いでしょう?!」
パシッ・・・!!
その言葉に反応して、ビンタが飛んで来た。
「・・・ファル・・・」
リリーは呟いた。
「綺麗事ほざいてんじゃねーよ」
ファルが壁に叩き付けられたアレンの首を鷲掴む。
「そんな事言って結局は逃げてんじゃねーかよ・・・
綺麗事ほざいて誤魔化してんじゃねーよ!!
もっと素直になれっつってんのが分かんねぇのか!!!」
ファルが叫んでアレンを投げ飛ばした。
「・・・逃げてる人はね・・・
誰にも愛されないし愛す資格も無いんだよ」
最後にファルは涙ながらに訴えた。
「・・・酷い!!!」
それにレイアが叫んでアレンに駆け寄った。
「・・・レイア??」
リリーが聞き返す。
「・・・そんなコトしなくたっていいじゃないですか!!!」
レイアの発言に皆が表情を変えた。
第22夜
ザワザワザワ・・・
食堂は結構な賑わいを見せている。
あいている席がちょこちょことあるだけ。
「・・・居た!!」
セリーヌはアレンを見つけて足を引き摺りながら走り出す。
「・・・アレン・・・ッ!!」
セリーヌは叫んだ。
その声に振り向く白髪の少年。
「・・・なん・・・・」
言葉が止まり、アレンの表情が変わった。
「リリーからもらった曲なんだけど・・・
とってもいい曲なの・・・聴いてみて!!」
セリーヌがそう言ってイヤホンを差し出した。
「・・・」
その言葉にアレンは下を向いて黙ったまま。
食堂に緊張感が走る。
「・・・アレン・・・?」
パシンッ!!!
セリーヌはあっという間に反動で壁に叩き付けられた。
アレンの手は止まったままだ。
一瞬何が起きたのか分からず、アレンを見つめた。
隣には白い傷がついた黒いプレイヤーとイヤホンが落ちていた。
「・・・アレンって呼ばないでくれますか?」
アレンが低い声で言う。
「アレン!!!」
その言葉にリリーが怒鳴った。
それに反応してレイリーがセリーヌに駆け寄って、横たわって弱々しそうに息をするセリーヌを抱き起こした。
「・・・どうして・・・?どうしてなの・・・?」
リリーが呟く。
「どうしてアレンは近付こうとしないの?!
どうしてもどってこようとしないの!?
どうして許そうとしないの?!」
リリーが泣き叫んだ。
「セリーヌはアレンに許して貰いたくて必死で頑張ったのに!!!
話を聞いて元に戻りたくて必死だったのに!!!
こんな致命傷を負って、記憶を失くしても記憶を元に戻したいとか・・・ッ・・・
そんなコトばかり言ってたんだよ・・・?」
リリーの声が高く高くなっていく。
「僕の気持ちも分からないくせに言うなぁっ!!!」
アレンが叫んだ。
その叫び声にレイリーが肩を震わせる。
「僕はそんな下手な気遣いなんか要らない!!
大切な人に誰って言われて後から許せなんて言われて許すわけ無いでしょう?!」
パシッ・・・!!
その言葉に反応して、ビンタが飛んで来た。
「・・・ファル・・・」
リリーは呟いた。
「綺麗事ほざいてんじゃねーよ」
ファルが壁に叩き付けられたアレンの首を鷲掴む。
「そんな事言って結局は逃げてんじゃねーかよ・・・
綺麗事ほざいて誤魔化してんじゃねーよ!!
もっと素直になれっつってんのが分かんねぇのか!!!」
ファルが叫んでアレンを投げ飛ばした。
「・・・逃げてる人はね・・・
誰にも愛されないし愛す資格も無いんだよ」
最後にファルは涙ながらに訴えた。
「・・・酷い!!!」
それにレイアが叫んでアレンに駆け寄った。
「・・・レイア??」
リリーが聞き返す。
「・・・そんなコトしなくたっていいじゃないですか!!!」
レイアの発言に皆が表情を変えた。
第23夜
「・・・なんでも暴力で済ませるなんて最低です!!」
レイアが叫んだ。
「・・・レイア・・・?何言ってるの・・・?」
レイリーが呟く。
「それはこっちのセリフです!!!
貴方達こそこんな事して楽しいの?!」
レイアは何か誤解している。
皆そう思っているだろう。
「・・・」
ファルは下を見て立ち上がる。
そして操られた人形のようにレイアへと歩き出す。
そしてファルは高く後ろに足を振り上げた。
ファルの足がレイアを蹴り上げようとした時――――。
「・・・止めて!!!」
セリーヌが叫んだ。
その声に反応してファルがゆっくり足を下ろす。
「セリーヌ!!!」
リリーが怒ったように叫んだ。
「・・・皆有難う・・・。
私が言えない事をアレン君に言ってくれて・・・
私・・・とっても嬉しかったよ・・・?
アレン君・・・
勝手に年上なのに呼び捨てしてしまって御免なさい・・・
もしも好きな人が居たら、その人に向かって笑って下さい・・・
私なんかもう居ないのと同じです・・・
皆・・・御免なさい」
セリーヌがピンと立って礼をした。
「セリーヌ!!!何言って・・・」
レイリーの叫び声をリリーが止めた。
「・・・・」
リリーは黙ってレイリーを見つめた。
その視線に耐えられず、レイリーは目を反らした。
「・・・ねぇ3人とも・・・
この後任務入ってたよね・・・
もうそろそろ行った方がいいよ・・・ね・・・
司令室いこ?」
セリーヌが笑う。
目には涙が溜まっている。
自分はとても悲しくて苦しいのに、笑う。
笑うことしか出来ない。
悲し過ぎて・・・。
―哀しい気持ちに
勝てる勇気も気力も無く
ただただ笑っているだけ
その哀しさは何処か優しくて
どこか哀しい―
ファル、リリー、レイリー、セリーヌの4人は司令室に向かった。
ファルはろくにセリーヌを見ようとしなかった。
泣きたくてしょうがないのに
苦しくてしょうがないのに
死にたくてしょうがない
そんなはずなのに
セリーヌは笑って生きている
それが痛ましくて、切なくて、じっと見ればもらい泣きしてしまいそうだったからだ。
自分が一番辛いのに泣かないセリーヌ。
―自分が泣けば迷惑だと分かっているんだね―

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