― 君と出会えた日― 名の無い少女 作者/浜頭.悠希...〆

第15夜「涙」
僕はもう、絶対に放してはもらえない。
そんな気がする―――。
僕は鎖を銜えて、鏡をずっと見つめていた。
涙は涸らしてしまった。
もう涙は出ない。
悲 し す ぎ て 。
僕は何をしてしまったの?
ああ・・・そうか。
僕はもうそろそろ世界崩壊の為に爆発するんだ・・・
そうだよ・・・きっとそうだよ・・・
忘れてはならない事を忘れてしまった。
―僕は人として在るのではなく、
物として在ると言う事を忘れていた―
僕はこれから生きても人に振り回され、心をズタズタにされるだろう。
だから、
だから、
僕はもう、こんな死に方で死んでも構わない―――
「・・・だえは・・・はふへへ・・・」
(誰か助けて)
もう僕の命なんかどうでもいいはずなのに、
何故か助けて欲しいと嘆く自分が居る――――。
そんな自分を殺したい。
そんな自分が憎かった。
第16夜「解放」
「・・・・い~・・・起きろよぉ~」
ロードの声がする。
「・・・ん・・・」
私はゆっくりと目を開けた。
起き上がれば、牢の入り口にロードが立っていた。
「あはは♪
鎖とかは全部捨てといたからぁ♪
でも君の拘束はまだ終わらないよ♪
君は僕等のタメに生まれてきた、
『万年珠』なんだからさぁ~」
ロードは飴を舐めながら言う。
「・・・それは・・・承知の上です」
僕は答えた。
「御免ねぇ~♪
でもさぁ・・・千年公の命令だからさー・・・
従いたくなくても従わなきゃいけないんだよぉ~
僕だってこんな事をしたくは無いよぉ?
君みたいな子には」
ロードが不敵に笑った。
「任務入ってるからじゃーね♪」
ロードは笑顔で手を振り、去った。
ふと窓を見れば細い鉄の棒の間から朝の白い月が見えた。
「・・・今夜は上弦の月・・・だ・・」
とふと呟いた。
目を瞑る。
そしてまた目を開ければ、白い粒粒が目を覆ってきた。
目を擦れば、また数は増える。
テレビのノイズのようだった。
「嫌・・・何これ・・・」
第17夜「幻」
蒼白い右手を差し出した白髪の少年。
「・・・君は・・・誰・・・?」
僕は弱弱しく呼吸をしながら言う。
「僕はアレンといいます。
僕等の行く先に、君を必要としている人が居ます。
僕達と一緒に来ませんか?」
白髪の少年は笑った。
「行こう?セリーヌ」
横から黒髪のツインテールの少女が来た。
「・・・どうして?
どうして・・・私の名前を知ってるの・・・?」
「俺達と一緒に来い。
セリーヌ・レドリア」
そしてさらに横からポニーテールの女顔の少年が出てきた。
「・・・だぁれ・・・?」
僕は意識が戻らないうちに教団へ・・・
連れて行かれたと・・・
「いやぁぁぁ・・・っ!!!!!!」
僕は叫んだ。
あの時にめちゃくちゃにしたのはアレン・ウォーカー。
あの時の白髪の優しい少年。
心を滅ぼそうとしたのはリナリー・リー。
あの時の優しい笑顔。
全部思い出せる、団員達・・・。
神田、ラビ、クロウリー、ブックマン、コムイ、リーバー班長・・・。
どうして・・・全員忘れたはずなのに・・・
仲間を思う心なんか・・・捨てたはずなのに・・・
「どうして・・・」
僕の目から涙が溢れた。
「セリーヌ!!!」

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