― 君と出会えた日― 名の無い少女 作者/浜頭.悠希...〆

第21夜



コッコッコッコッ・・・


廊下を走る音がする。


リリー達はアレンの部屋に駆け込んだ。


ジュゥゥゥ・・・


洗面器に氷と水を張って、タオルを沈め、取り出して絞っているセリーヌの姿があった。


「・・・レイリーはどうしたんさ?」

ラビがセリーヌに向かって言う。


「料理作りに行ったよ・・・」


セリーヌが優しく絞ったタオルをアレンのおでこに乗せる。



「熱も一向に下がらなくて・・・?
 私の奴移らせたかなぁ・・・?

 風邪気味だったしさ・・・」

セリーヌはアレンを見つめながら言う。


「お粥作ってきたよー♪?
 あれ、リリー、レイア、ラビ・・・・?」

昨日と同様、鍋を持ってきたレイリー。


あのお粥は本当によく効く。


「やっと出来たよ・・・
 熱が40度だったからさ・・・

 きっとこれでよくなるはずだよ」

レイリーが微笑んだ。



でも、何でこんなにアレンに付き纏っているの?



自分でも分からない。


他人は何も教えてくれない。



世界が崩壊する寸前。


相手が何故アレンだったのかも分からない。



無意識に君の方向へ向いたから――――。



第22夜



コンコン・・・


カチャ・・・


部屋に入って来たのはリナリーだった。


「・・・リナリー・・・?
 任務は・・・・無いの・・・?」

リリーが言う。


「・・・もう終わったわ・・・
 帰って来たらアレン君が倒れたって大騒ぎで・・・

 教団中に広がってたから・・・
 心配で来ちゃった・・・」

リナリーは言う。


「そっかぁ・・・
 リナリー、毎日忙しいんじゃないの?
 私達が仕事サボッてるせいで振り回されて・・・・」

「私は大丈夫・・・。
 皆こそ・・・体壊しちゃうんじゃない?
 レイリーなんか、今も昨日も料理作ってくれてるんでしょう?
 無理は禁物よ・・・?」

「私達は大丈夫だから・・・だから・・・心配しないで?」


リナリーに向けて笑った。



リナリーにも、ラビにも憧れてる。


レイリーにも、リリーにも、シフォンにも・・・


皆に皆に憧れてる・・・


でも・・・アレンだけは違う・・・



この感情は最早、憧れではない―――。


ただ君が愛しい―――。



―もしも神が時間を止めてくれたなら

  君が愛おしいと言えるというのに―



第23夜



―翌朝


アレンの容態は一刻によくならない。


「熱は下がってる・・・
 明日か明後日には良くなるよ・・・」

レイリーは体温計の表示を見ながら言う。


「そっかぁー・・・
 なら此処はセリーヌに任せておけば安心安心♪」

リリーが言う。


「ブッ!!!」


セリーヌがリナリーから貰った水を吹き出した。


「それを早く言えさ!!!」


ラビがリリーに突っ込んだ。


ザワザワとアレンの部屋から人が出て行く。


「頑張ってねー♪
 何かあったら呼びに来てね♪
 教団内に居るから♪」

レイリーはそういうと部屋を去って行った。


「えっ?!ちょ・・・っと待ってよぅ・・・」


アレンの部屋に残された私は1人呟いた。


「そんなに僕と2人が嫌ですか?」


後ろから声がした。


ビクッと肩が震えた。


「ア・・・アレン・・・」


振り向くとアレンはベットから起き上がっていた。


「駄目じゃん!!
 ちゃんと寝てなきゃよくなんないよ?!」

セリーヌは叫ぶ。


「別に良くならなくてもいいですよ?」

アレンの声に思わず「は?」と聞き返した。


「セリーヌが此処に居てくれるならの話ですけど」

アレンが笑った。


「ふんッ・・・!!
 ちょうどいいわ、水替えてくる」

氷が解けてかさが増えた洗面器の水を持って洗面所へと向かった。


ジャァァァァ・・・


洗面所の蛇口から水が流れでる。


そのときだった。


「?!」

誰かが後ろからセリーヌを抱き締めた。


誰かと鏡を見つめ直した。



見えたのは―――。



満月の夜



「・・・・アレン・・・?」


鏡に映ったのはアレンの姿だった。


「びっくりしましたか?」


アレンが私の頭の上に頭を乗せて笑う。


「さっきの仕返しですw・・・

 それと・・・


 もう一度言いますね」

アレンがいきなり真顔になった。


「な・・・何?」

アレンの真剣な表情に胸が高鳴る。



「好きです・・・セリーヌ」


アレンの言葉にカッと顔が赤く染まった。


「好きです」


アレンが耳元で言う。



「・・・何回も言わないでよ・・・
 聞こえてるよ・・・十分に・・・・・」


絡められた腕に手を当てる。


「そうですか?w
 何かぼーっとしていたので」

アレンは意地悪く笑う。


「アレンの意地悪・・・
 あ~あ・・・セリーヌの王子様何処に居るのかなー」

私はわざと言ってみる。


「此処に居るでしょ?セリーヌの後ろに」


アレンが私の唇を撫でる。



「僕が風邪引いたのセリーヌのせいですからね?
 責任ちゃーんと取ってもらいますよ」

「たとえば?」


パチッ


停電なのか、電気が消える。


「部屋に戻った方がいいみたいだけど」


セリーヌが言う。

「そうですね・・・」


暗い部屋を行く2人。


セリーヌはベットにアレンを座らせた。


「早く復旧するといいねー・・・」

セリーヌが窓から見える月を見て言う。


「僕は復旧しなくていいですけどね」


そういうとアレンはセリーヌにキスをした。



―明るき月の光が2人を照らしていた―


-第2章END-