― 君と出会えた日― 名の無い少女 作者/浜頭.悠希...〆

第18夜「面影」



僕の名前を呼んだ少年―――・・・。


「僕です!!セリーヌ!!
 アレン・ウォーカーです!!憶えてますか!?」

太い鉄の棒を揺さぶりながら言う。


「・・・なんで・・・僕が分かるの・・・?
 僕は昔と性格も外見も何もかも違うのに・・・

 なんで・・・僕が・・・
 セリーヌだって・・・分かるの・・・?」

震える声で訴える。


「それは・・・
 貴女の、「セリーヌ・レドリア」としての面影が在るからです」

とアレンは微笑んだ。


「おも・・・かげ・・・?」


「そう・・・貴女の、『面影』です」

私はアレンの言葉に、思わず涙が零れ落ちた。


「・・・今貴女を此処から出します。
 後ろに下がってください」

アレンは左手を僕に見せた。


昔見た赤い左手ではなかった・・・。


―イノセンス発動―


ジャキッ


発動してすぐに太い鉄の棒を斜めに切った。


そして中に入り、私を抱いて、走り出した。




「何してんのぉ?アレン、ユリア」


その声にアレンは振り返る。


「・・・ロード・・・」


飴を舐めたロードが立っていた。



第19夜「追いかけっこ」



「・・・ロード・・・
 なんで此処に居るの・・・???

 任務だったはずじゃぁ・・・」

「バーカ♪
 今日は僕任務入ってないんだよねぇ♪
 邸にエクソシストが入ってきたからだよぉ♪♪

 アレンが入って来ると考えて牢空けてたんだよぉ♪

 ずーと監視室で見張ってたんだよぉ♪」

とロードが笑う。


「・・・セリーヌ」

アレンが小声で呼ぶ。


「・・・僕は此処で足止めをします。
 だからセリーヌは走って此処から逃げてください。」

「嫌!!・・・そんなこと・・・」

「僕も後から追います。
 早く、逃げてください・・・」

そういうとアレンは僕を地面に降ろした。


「絶対来てよ!」


私はそう言うと、走りだす。


「あっ!!」


途中で何回も転んだ。


3年近く歩いたことが無いからだ。


「・・・こんなときにっ・・・」

私はひたすら走った。



そのときだった――――。


「ウー・・・・」

うなり声を上げて影から虚ろな目をした人間が出てきた。


「ヒッ・・・!!!」


今の私は発動も何も出来ない。


その虚ろな目から、アクマだとすぐに分かった。


「アー・・・」


奥からも次々と出て来る。


私は怖くて思わずしゃがみ込んだ。



第20夜「助け」



一斉に人間がアクマ化した。


そして一斉に此方へ向かってくる。


「いやぁぁぁぁぁっ!!!」


僕は叫んだ。


目を強く瞑った時――――。


ドォォォォン・・・!!


パラパラパラ・・・


物凄い揺れと粉が落ちて来た。


「・・・ふぅ・・・
 それにしても・・・凄い数さ・・・」

と汗を拭った赤毛の少年。


顔を上げれば、少年と目が合った。


「久しぶりさ・・・セリーヌ」

と少年は笑った。


「・・・ラビ・・・」


人懐っこい笑顔。


でも何処か大人っぽさがあって・・・


孤独さがある。


「次が来ないうちに早く行くさ!!」

ラビは僕を抱いて走りだす。


皆皆、僕が歩けないコト知ってるの?


神経が麻痺してるの・・・・・・


「新手が来たさ・・・」


とラビは槌を出す。


「伏せろ!!!」

とラビは叫んだ。


私は思わず伏せた。


ラビは槌で低い天井を壊した。


天井に大きな孔が開いて、星空が見えた。


「行くさ!!!」


孔に向かってラビは飛び出した。



「此処からはグロテスクだから、しばらく寝てろさ♪」


とラビは僕の後頭部を強く叩いた。


そこからの僕の記憶は飛んでいる。