― 君と出会えた日― 名の無い少女 作者/浜頭.悠希...〆

第6夜



―30分後―


「ねぇ、リナリー遅くない?」

レイリーが口を開く。


「んな事言ったってよ・・・
 奥の部屋にでも案内されてるんじゃねぇの?」

シフォンが煙草の煙を吐きながら言う。


「未成年って煙草行けないんじゃないんでしたっけ?」

アレンが呟く。


「いいじゃないの・・・

 シフォンは阿保な18歳なんだからさー」

ファルが言う。


「15歳が18歳に言っていいことだと思ってんのか?!」

シフォンが声を尖らせて言う。


「うわー・・・年下に当たってるー」

セリーヌが陰口を言うように言う。


「酷いですね・・・」


レイアもそれに参加するように言った。


バタンッ!!!



そんなとき、司令室のドアが音を立ててあいた。


戸を開けたのはリナリー。


それに、酷く息が切れている。



「・・・リ・・・リナリー・・・?」


リリーが言う。


「大変なの!!!
 ・・・ティアナが・・・部屋に居ないの・・・」


リナリーの声に8人の表情が一変した。


「探さないと・・・大変な事になるわ・・・」


リナリーはそういうと司令室を出て行く。


「・・・え?!リナリー!!!」


「俺等も手分けして探すぞ!?」


そういうと8人はバラバラに散った。


シフォンは医務室に、リリーは科学班の部屋に、レイリーは水路、ファルは通信室、レイアは食堂、ラビは門、アレンはティアナの部屋の周り、セリーヌが廊下。


リナリーもセリーヌと一緒に廊下を探しに出た。


「・・・こういう時は光速か音速がいいんだよなぁー・・・」


何の支えも無く宙に浮いているセリーヌ。


周りの人間が歩きながらザワザワと騒いでいる。


「・・・やっぱり音速でいっかぁ・・・」


セリーヌがブーツについている白い真ん中のボタンを押す。


このセリーヌのブーツは科学班特製のブーツ。


セリーヌが入団した時に作られ、スピードと威力はリナリーの黒い靴も越える。


そのセリーヌのブーツにはリボンが右左とも着いている。


右を解くと対アクマ武器を着用していなくても発動出来、左を解くと己を失ってブーツに操られてしまう。


横に3つのボタンがあり、これは速さを変えるための物。


一番下が早い、真ん中が音速、一番上が光速。


音速と光速を使うには音と光を貯めなければ使えない。


光速は速すぎて光にしか見えず、何にもぶつからない、つまり、障害物が無い状態で移動する事が出来る。



セリーヌが使い慣れているのは音速。


光速なんて使う所なんかほとんど無いのだ。



「・・・♪♪♪~♪~~♪♪~」


セリーヌが突然歌い出す。


音速を使う為のエネルギー補給。


「・・・♪~~♪~~~・・・」


透き通るような歌声が止まった。


セリーヌが進み出す。



第7夜



「わぁっほぉ~!!!」


パリィィィィィン!!!


ティアナが居るのは医務室。


既に医療班の班員は全滅していた。


「止めろ!!!」


シフォンが必死こいて止めようとする。


ガンッ!!!


シフォンの顔面にティアナのサンダルが直撃する。


その反動でシフォンが遠くの棚まで飛ばされた。


サンダルが戻って来る。



「ハッ♪そのまま死んじまえ♪」


そういうとティアナは医務室を逃げ去った。




シュゥゥゥゥゥゥッ・・・


靡く黒髪。


腰下まである艶やかで長い黒髪が香りを届けながら靡いて行く。


その時、医務室からティアナが出て行くのが見えた。



追いかけようと思ったが、先にラビとリリーが居る。


私が追わなくても大丈夫だ。



そう思って私はそのまま医務室へと飛んだ。



シュィィィィンッ・・・


ブーツで浮いたまま医務室を見回す。



「・・・!!!シフォン!!」


私はシフォンの元へと飛ぶ。


額に血の道筋が出来て、目を瞑って気を失っている。


「・・・医療班員も全滅・・・」


私は辺りを見回しながら言う。


散乱したガラス。



零れた消毒液の匂いがセリーヌを包み込んだ。


「・・・セリーヌ・・・・か・・・?」


シフォンが小さい声で言う。


「・・・シフォン!!大丈夫・・・?」


セリーヌが持っていた白いハンカチでシフォンの額に流れた血を拭いた。


「・・・アイツは・・・
 此処をはちゃめちゃにしたからよ・・・

 他も・・・壊して行くから・・・

 だから・・・セリーヌ・・・
 お前等が止めてくれ・・・

 俺はこの怪我で足が攣って動けねぇ・・・

 頼むぞ・・・」


シフォンがハンカチを受け取った。


「・・・分かった、絶対に動かないでね!!!」


セリーヌはそういうと医務室を出た。



第8夜



「・・・ラビ・・・来たよ?」


リリーが言う。


「・・・こういう時はやっぱり直感が一番さ」


ラビはそういうと真っ先にティアナの方へと向かう。


「え?!ラ、ラビ?!」


リリーは慌ててラビを追い掛ける。


ラビがティアナの前に出くわす。


「・・・」


ティアナの顔から笑いが消えた。


にらめっこしている間に私がティアナの後ろに回る。


手首を掴んで捕まえようとした時――――。



「ヒャァッ?!」


ティアナがスルリと横に一歩ずれて、後ろに足を滑らせた。


ラビも前から捕まえようとしてたのか、前に崩れ落ちる。



バサッ!!!



触れ合う肌。


唇に温かい感触を感じた。



目を開けたい。


でも開けたくなくて・・・


その時温かい感触が消えた。


私は驚いて目を開けた。



ペロリとラビが舌なめずりをする。


「・・・ラビ・・・?」


高鳴る胸の鼓動。


何が起きたのか分かってるけど分からないような・・・



「どうしたさ?」


ラビが笑う。


「べ・・・別に・・・?」


リリーがラビと目を反らした。