― 君と出会えた日― 名の無い少女 作者/浜頭.悠希...〆

第15夜



遠くを見渡せば、砂に横たわるレイアの姿。


腕につけている重そうな錆びかけた鎖が切れていた。


「レイア!!!しっかり!!!」


セリーヌは砂に足を滑らせながらレイアの元に駆け寄った。


砂に紅い血が染みていく。


「・・・セリーヌ!!!後ろッ!!」


リリーが叫んだ。


振り向けば、2発目の矢がこちらに向かって来ていた。


カキィィィン・・・!!


今度矢を抑えたのは――――?





「・・・セリーヌ・・・大丈夫ですか?」





アレンだった。




アレンは左手で掴んだ矢を握りつぶした。


ティアナの顔から笑みが消えた。


「・・・フン・・・
 強いのが居るじゃないの・・・

 居るんなら先にそっちを出してくれればよかったのに」

ティアナの顔に笑みが戻る。


アレンは唇を噛んで地面を蹴った。



第16夜



「あ・・・
 でも、あんまり強過ぎるのは嫌よ・・・

 貴方に用は無いわ」

ティアナが口を裂かす。


「!!!」


アレンの表情が変わった。



「風龍召還」


ティアナはニヤリと笑った。


弓から放つ風の力が強くなる。


「終わりよ・・・白髪のエクソシスト」


ティアナは呟いた。


矢から右手を放し、矢は一直線にアレンの方向へと向かった。


ブスッ・・・


鈍い音が響いた。


いくら風の矢とは言えども、刺さらないという事は無いのだから。


悲鳴に近い声でセリーヌが叫んだ。


アレンは虚ろな目をして下に落ちて行く。


私は走って落ちて来たアレンを受け止めた。


胸から出血し、団服が紅く染まっている。


「あぁ・・・
 そういえばもう1人の女もこんな風に死んだわね・・・
 ふざけるなって言い続けて・・・

 最後はロード様に刺されて死んだの・・・

 名は確か・・・

 ミィナ・・・・といったかしら」



「!!!!」


セリーヌの表情が変わる。


「煩かったわ・・・
 ふざけるなふざけるなって・・・

 あんな性格だから早死するのよ・・・

 あの子のお姉ちゃんは幸運よね・・・
 死なずに済んだなんて・・・

 ノアに雇われた者は近いうちに死ぬわ」

ティアナは突然笑い出す。


「私だってそうよ・・・
 でもそのミィナって子の姉は良いわねぇ・・・

 雇われても死なずに済んだんだもの・・・
 いいわ・・・羨ましい・・・」


―イノセンス発動―


私はティアナの話も聞かずにイノセンスを発動した。


               マナー
「・・・話は最後まで聴くのが礼儀でしょう?」

ティアナが弓を構えた。


「第一術法・・・瞬間拒絶」

アレンに手をかざして呟いた。


円のようなものに囲まれ、傷が治って行く。


ミランダの力と似ているが、これは発動しなくてもそのままだ。


簡単に言えば、傷付いた所の時間を狂わせ、怪我する前の状態に戻せる。


発動しても効果は持続される。


セリーヌの術は奇数が治癒、偶数が攻撃。


1,3,5,7,9・・・・は治癒。


数字が大きくなるごとに力は強くなっていく。


2,4,6,8,10・・・・は攻撃。


数字が大きくなるごとに威力が強くなるが、体力を消耗する数値が高くなる。


「へぇ・・・
 貴女は強くも弱くも無さそうね・・・

 私に丁度いいわ・・・」

ティアナは弓を構えた。


「そのイノセンスごと破壊してあげる」


ティアナはニヤリと笑い、矢を放った―――。



第17夜



「・・・第二術法・・・彌勒壱葉」


セリーヌは唱えた。


セリーヌを包み込むのは数えられない程沢山の深緑の葉。


「深緑・・・私の好きな色だわ」


ティアナは余裕そうに構えている。


「・・・攻撃!!!」


セリーヌは手を大きく広げた。



この葉はただの深緑の葉では無い。


刃物のようによく切れる、鋭利な力を持った深緑の葉。





「大丈夫・・・加減はしているつもりだから」


セリーヌはニヤリと笑った。


数え切れない深緑の葉がティアナを包み込む。




ブシュゥッ・・・!!!


深緑の葉が全て消えると、ティアナの体から血が吹き出した。



「ティアナ・・・大丈夫よ・・・
 私が発動を解けば傷は元に戻る・・・


 だけど・・・


 その分心に傷が行くわ」

セリーヌはそういうと発動を解いた。


「・・・ウッ・・・!!!」

ティアナは突然、自分の服の胸倉を掴んでもがき出す。


「・・・何故・・・ッ・・・?
 私は敵よ・・・?何故狙わないの・・・?

 ほら・・・早く切れば・・・?」

ティアナは立ち上がって言う。


「・・・黙れ!!」


セリーヌはティアナの服の胸倉を掴んだ。


「あんたが私達を敵だと思っても・・・
 私達はあんたを敵だとは思えないんだよ・・・

 死にたいなら勝手に自分で死になよ・・・?

 私は死なせないけれど」


セリーヌはそういうとティアナの胸倉を放した。