― 君と出会えた日― 名の無い少女 作者/浜頭.悠希...〆

第15夜



機械の表示は多分心拍数。


機械によればまだセリーヌは生きている。



「セリーヌぅ・・・死んじゃ駄目だよぉ・・・」


リリーが悲痛な声をあげる。


「・・・リリー」


気付けば呟いていた。


「・・・セリーヌは死んだりなんかしません・・・

 いいや・・・・生きなきゃいけません・・・!!」


アレンが言った。



「そうだね・・・頑張れ!!!セリーヌ!!」


リリーの顔に笑顔が戻って来た。



―もしもこのまま目覚めなかったら?―


アレンは脳裏で嫌な想像をした。



第16夜 ―セリーヌside―



ポチャリと響く水音。


その水面に浮かぶ廃墟の建物達。



遠くに座って泣いている誰か。




―・・・・リナリー?―


「リナリーっ!!!」


私は叫んだ。


返事は返って来ない。


聞こえないかのように、ただただ泣き叫び続ける。



ポチャン・・・


再び聞こえた水音。


振り返れば水面からは赤い手が出ていた。


その手は何かを求めるかのように弱々しく動く。


「アレン!!!・・・・アレンなの?!」


セリーヌは再び叫んだ。


その声に反応するかのようにゆっくりとゆっくりと水面に沈む手。


少女の泣き叫ぶ声がだんだん遠くなる。


泣き叫ぶ少女は小さな光の粒となっていく。


「嫌ぁぁっ!!!行かないで!!!行かないでよぉっ!!

 私を1人にしないでぇっ!!!

 嫌ァァァァァァァァアッ!!!」


気付けば誰かを求める声は止まること無い悲鳴へと変わっていた。



そして涙で塗れた手も光に変わって行く。


「うわぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!」


セリーヌはただただ叫んだ。



その叫び声は誰にも届くこと無く、空しく消えた。


フラリと傾げる首。



セリーヌは笑って光になった。



第17夜 ―リリーside―



セリーヌの目蓋から涙が伝う。


哀しく伝った涙はベットのシーツに染みとなって消えた。


「・・・ねぇ・・・泣かないで・・・?セリーヌ・・・」

リリーが次々と伝って行く涙を指で拭う。


その涙に触れる度に自分も泣き崩れてしまいそうで、とても怖かった。


すると、セリーヌの目蓋がピクピクリと動く。



「・・・セリーヌ?」


リリーが言う。


「・・・!?」


アレンがその声に反応してベットにつかつかとやってきた。


それに気付いてリリーが後ろに下がる。


「・・・セリーヌ!!!」


アレンが手を握った。


その手に、想いを乗せて――――。



ただ、目が覚めてと願い――――。



「・・・3人共・・・?」


ベットの周りを囲んでいるラビ、リリー、アレンを見ながら呟いた。


「・・・リリー・・・ラビ・・・どうした・・・・の??

 ねぇリリー・・・どうしてそんな格好をしているの・・・?」


現実逃避しているのか、事故の事を言い出そうとしない。


「・・・そっか・・・
 私・・・・リリーと一緒に・・・馬車に引かれたんだ・・・ね・・・

 それで私が・・・犠牲になって・・・

 今此処で・・・生死を・・・うろちょろと・・・」

セリーヌが微笑んだ。


「ねぇ・・・誰か・・・
 私をバカって言って殴って頂戴・・・

 本物のおバカさんは私・・・

 ねぇ・・・そうでしょう?」


その言葉にアレンの目から涙が溢れ出して行く。



「・・・・・ッ・・・」


アレンは黙ってセリーヌを抱き締めた。


「・・・・・痛い・・・痛いわ・・・・



 貴方・・・・・誰――――?」