― 君と出会えた日― 名の無い少女 作者/浜頭.悠希...〆

第24夜「前触れ」



「どうしてさ!!!
 何でセリーヌは世界を壊したいんさ?!

 3年前までは伯爵を殺・・・」

「3年前ぇ?
 3年前の僕と今の僕が同じだと思ってんの?
 恐らく、アレンの言う面影は同じかもしれない。

 でも僕はそんな曖昧な考えなんて捨てたんだよ・・・

 たとえ君達と一緒に居ても」

セリーヌは低い声で言い続ける。


ザァァァァァァ・・・


突然雨が降り出す。


世界が壊れる前触れなのだろうか・・・。


「・・・セリーヌ・・・どうして・・・?」

ずっと下を向いたままのセリーヌに縋るリナリー。


セリーヌはリナリーの首を掴む。


「セリー・・・ヌッ・・・?」

リナリーが苦しそうに片目を開ける。


ドンッ!!


その瞬間リナリーを地面に叩きつけた。


リナリーの首を靴で踏んだセリーヌ。


「煩いんだよ・・・
 みんなセリーヌセリーヌってさ・・・

 今頃名前呼ばないでよ・・・
 なんで3年間の間に助けに来てくれなかったの?
 なんで今助けにきたの?

 ねぇ・・・なんでだよ・・・」


セリーヌは足の力をグッと強めた。


「・・・ぐ・・・・あッ・・・」


リナリーの力が段々弱くなって行く。


大きく開けていた目も、だんだん細くなって行く。


「セリーヌ・・・やめろぉっ!!!」

アレンがこっちに駆けてくる。


セリーヌはもっと足の力を強めた。


「ぎゃッ・・・ぐ・・・」


セリーヌの目は虚ろだった。



第25夜「命」



「このまま近付いて僕を殺せばぁ?
 そんなコトしたらリナリーの命は無いけれど」

セリーヌは言う。


「やめろ!!!」

アレンは左手を大きく振り上げた。


ガシッ!!


振り下ろされた左手を空いた手で掴んだ。


「!!!」

アレンの顔色が変わる。


「じゃ、リナリーの命は無いね」



セリーヌはニヤリと笑った。



「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!」


アレンは叫ぶ。



でも、その声はセリーヌに届く事は無かった―――。


「ぐッ・・・ぁ・・・ッ・・・」


バサッ!


リナリーの手がセリーヌの手首からスルリと抜け落ちた。


カクッ


リナリーはカクンと首を右に向けた。


リナリーの頬を一筋の涙が伝った――――。



「リナリ――――――――!!!!!!!」


アレンは叫んだ。



第26夜



「・・・力入れ過ぎちゃったぁ♪
 だってムカつくんだもん♪
 僕の事なーんにも知らないくせにさぁ♪」


セリーヌが両手をパンパンと叩き払いながら言う。


「・・・」


アレンは下を向いて横たわっているリナリーを見つめていた。



「そんなに悲しい?
 仲間が死んじまうのって。悲しい?」

セリーヌは言う。


「セリーヌ・・・・・」


アレンは言う。


「・・・セリーヌ・・・」


顔を上げたアレン。


上げたアレンの顔は怒りに満ちていた。


「あと10分で世界は終わる♪
 今なら時間を全て戻す事が出来るよ?

 僕ならば」

セリーヌは怪しく笑う。


「戻せ!!!
 時間を戻せ!!

 セリーヌ!!目を覚ますんだ!!!」


アレンは叫ぶ。



「うるせぇッ!!!」


セリーヌは叫んだ。


「うるせぇッ!!!
 皆死んじまえッ!!!皆死んでよッ!!!
 何が目を覚ませだよ!!!

 此処まで追い詰めたのは皆なのに!!!

 何で・・・なんでだよッ!!
 皆皆大ッ嫌いだぁッ・・・」

叫ぶセリーヌの声は悲鳴に近かった。


セリーヌの目から涙が零れ落ちる。


そんなセリーヌに向かってアレンはゆっくりと歩いてきた。


ガタンッ!!!


セリーヌは膝を落とす。


カタン・・・


膝を落としたセリーヌの前でアレンはピタリと足を止めた。


そしてしゃがみ込んで、セリーヌを抱き締めた。