― 君と出会えた日― 名の無い少女 作者/浜頭.悠希...〆

第9夜 ―セリーヌside―



想ったよりもティアナの走るスピードが速い。


サンダルもヒールが高いし、歩き難いはず・・・



「・・・ねぇ、エクソシストのお姉さん」


ティアナが突然立ち止まった。


どうやら後を追いかけていたのに気付いたらしい。


「お姉さんって・・・
 あんたの方が16で年上でしょ?」

「あら・・・そう?
 貴方背が高いからてっきり20歳かと思いましたわ」


ティアナが笑う。


「・・・貴女の方が高いじゃないの?
 182㌢だなんてねぇ?」


セリーヌが言い返す。


その言葉にティアナが唇を噛んで言った。


「なっ?!
 なんで私の身長知ってるのよ!!!」


「えーとぉ・・・
 性格に言うと182.7㌢でしたかしらぁ?」

セリーヌが言う。


「しかもそんなに小数まで!!!」


ティアナが叫んだ。


「だって正確~に紙ペラに書いてあったもん♪」


セリーヌが笑った。


「紙ペラ・・・!?
 戸籍のことね?!あんた見たわ・・・」

「セリーヌ~!!!」


ティアナの声を掻き消してレイリーが叫んだ。


「レイリー!!!」


セリーヌが驚いたように言う。


「シーッ・・・」

レイリーが人差し指を口元に当てて言う。


ガツゥンッ!!!


レイリーがあっという間に顔面をサンダルで乗られて倒れた。


「私がどれだけ敏感だと想ってんの?」


そういうとまた逃げ出した。


「・・・・・痛~ッ・・・」


レイリーが頭を抑えながら言う。



「あっ!!!まてぇ!!!」


セリーヌが再び走り逃げようとするティアナを追い掛けた。



―さぁ、いつ捕まえられるかな?―



第10夜



「い、痛いよぉ・・・」


鼻血を垂らしながら半泣き状態になるレイリー。


183ぐらいの人の体重って重いんだろうなー・・・



そう考えながら飛び回っていたときの事。



ブチッ・・・!!!



何かが切れる音がした。


「うわぁぁぁぁあぁぁ!!!!!」


そう叫んで1人の男が部屋から出て来た。


「アハハハハハハハ♪」


楽しそうにティアナが部屋から出て来て男を叩きつぶす。


男はその場に倒れた。


「まったぁ~・・・」


セリーヌが仕方なさそうに部屋に乗り込んだ。


「うわぁぁぁあぁぁ!!!
 世界各国との通信回線が切れたあぁぁぁ!!!!」


バタンッ・・・


男が自分の頭をボサボサにしながら倒れた。


「・・・あっりゃぁ~・・・」


セリーヌがごちゃごちゃになって切れている黒い糸を見ながら言った。


ということはファルも・・・



「ぐっ・・・!!ぐるじい・・・
 だずげでぇぇぇぇぁっ・・・・・」


黒い通信回線を首に巻き付けられたファルがもがいていた。


「ふぁ、ファル!!!」


セリーヌは慌てて黒い通信回線を傍にあったハサミで切った。


「・・・ゲホッゲホッ・・・
 あ゛~・・・ぐるじ・・・ゲホッ・・・」

ファルが酷く咳き込んだ。


うまく声が出ないのか、何度も何度も咳き込む。


「はぁ・・・
 いやー・・・あの子には参ったよぉ・・・

 さっさと捕まえなきゃヤバイんじゃな~い?


 あーお腹空いたぁ・・・」

ファルが暢気そうに言った。


「終わったらおやつ持ってくからね!!!

 じゃ!!!」


セリーヌはそういうと部屋を出て行った。


「今度行く先は・・・食堂ね」


セリーヌはそう呟くと一番上のボタンを押した。


「レッツゴー♪」


セリーヌはニヤリと笑うと光だけを発して食堂へと真っ逆さま。



光速のスピードでセリーヌが見える奴は科学班の班員しかいないだろう。


科学班の班員しかブーツの構成を知らないからだ。



「・・・もうこれで鬼ごっこは終わり・・・ ゲーム
 あはは・・・これで自分の足を生かした遊びは終わり・・・」


セリーヌがペロッと舌なめずりをして笑った。



第11夜 ―リリーside―



「・・・ラビ?
 おーい・・・・聞いてる?」


リリーがラビの目の前で手を振る。


「ハハ・・・
 そんなコトしなくてももうリリーしか目には映らないさ」

ラビが笑った。


「・・・?」


リリーが頭にはてなマークを浮べて首を傾げた。


「リリーには難しいさ?」


ラビがいう。


「む、難しくないもん!!!」


リリーが頬を膨らませていう。


「ハハッ・・・首を傾げたと言う事はそういうことさ」


ラビは笑うと立ち上がった。


「セリーヌこれから任務入ってるらしいんさ・・・
 忘れてると思うから、知らせに行くさ?」

ラビが手を差し伸べた。


「・・・・うん!!!」


リリーは満面の笑顔で答えた。



―セリーヌside―



「・・・ハァ・・・疲れたなァ・・・・」


セリーヌがため息をついていう。


相変わらず教団を破壊して行くティアナ。


「・・・もう飽きたよぉ・・・」


「セリーヌ~!!!」


ため息をついた所で私を呼ぶ声が耳に入った。


「・・・リリー?」


セリーヌが膝に手をついて左を見た。


リリーが手を振りながら近付いてくる。


後ろにいるラビはなんだか嬉しそうな顔をしていた。



「・・・2人とも、何かあった?」


セリーヌが訊ねると、


「べっつにぃ~?」


リリーが嬉しそうに答えた。


「任務入ってるんじゃなかったさ?
 俺とリリーとセリーヌで」

ラビがいう。


「そーだったっけ?
 じゃぁー・・・・行こっか♪」

セリーヌが笑って歩き出す。


「セリーヌ!!!」


歩き出したセリーヌを誰かが呼び止めた。


「・・・アレン・・・?」


セリーヌが振り返るとアレンが立っていた。


「・・・任務・・・頑張って下さいね」


アレンがセリーヌの目の前に来ていう。


「あ・・・うん!!!」


セリーヌが笑って返した。


振り返って歩き出そうとした時―――。



「セリーヌ!!!」


もう一度アレンが呼び止めた。


黙ってセリーヌが振り返る。


「・・・いってらっしゃい」


アレンはそういうとセリーヌのおでこにキスを落とした。


「・・・行ってきます・・・」


セリーヌが頬を紅く染めながら言った。


「ラブラブねー♪」

「ほんとさー・・・」


リリーとラビが笑って見ていた。



―笑いが消える出来事になろうとも知らずに―