― 君と出会えた日― 名の無い少女 作者/浜頭.悠希...〆

第12夜 ―セリーヌside―
「ふわぁ~!!!」
セリーヌが思い切り伸びをする。
「今回の任務って以外に簡単だったねー・・・」
リリーが呟いた。
「セリーヌ、イノセンスは何処さ?」
ラビがふとセリーヌに問う。
「ここだよぉー?」
セリーヌがポケットからイノセンスを取り出して言う。
「そこ危なくない?」
リリーが笑った。
「だーいじょうぶだってぇ♪
此処から教団って汽車で一直線じゃぁん?
だからポケットに入れても大丈夫だって♪」
セリーヌが笑った。
「アハハッ♪此処から駅まで鬼ごっこね?
よーい・・・どん!!」
リリーがフライングして道路に飛び出す。
バタッバタッバタッ・・・
何かが走って来るような音が後ろから聞こえる。
その音はどんどん大きくなって行く。
セリーヌはさり気無く後ろへと振り返った。
「!!!」
セリーヌの表情が変わる。
脳裏で嫌な想像をした。
バタッバタッバタッ・・・
「ヒヒーン!!」
白馬を2体引いた黒の馬車がリリーに向かって一直線に走って行く。
「リリー!!!」
セリーヌは思わず叫んで駆け出した。
走るセリーヌを目にしてやっと気付いたラビ。
「リリー!!セリーヌ!!」
ラビが叫んだ。
セリーヌとリリーの距離がだんだんと近くなる。
そして、リリーと馬車の距離もだんだんと近くなる。
「うっ・・・うわぁぁぁ!!!」
リリーが思わず叫んだ。
リリーと馬車が触れ合う瞬間――――。
リリーの体をセリーヌが抱き締めた。
キキィィィィィィィィッ・・・・!!!
第13夜
ブシュゥッ!!!
藍色の星空に紅い鮮血が飛び散った。
「!!!」
ラビは声も出さずに目の前の光景を見つめている。
そこでリリーがふと目を覚ました。
「・・・・・!?
・・・セ・・・・セリーヌは!?」
リリーが辺りを見回しながら言う。
額が血で汚れ、頬に切り傷を作って口から血を流している。
「・・・セリーヌ!!!」
リリーは遠くで横向きに倒れているセリーヌを見つけた。
足を引き摺って遠いセリーヌに向かって歩きだす。
「・・・はぁ・・・」
リリーがセリーヌの傍に来た。
リリーが通った道には血がべっとりと付いていた。
「・・・セリーヌ・・・」
リリーの顔に笑顔が戻る。
しかし、セリーヌの返事は無い。
「・・・セリーヌ・・・?」
リリーの表情が不安の表情へと変わって行く。
不安に満ちた目から涙が零れ落ちた。
「・・・セリーヌ・・・!!セリーヌってばぁ!!!」
冷静だったリリーがセリーヌの体を揺さぶり出す。
「止めろ!!!リリー!!」
そこにラビが止めに入った。
リリーはラビの手を振り払って叫び続ける。
「セリーヌ!!セリーヌゥッ!!!」
リリーが悲鳴に近い声で泣き叫ぶ。
「・・・・・しろ・・・」
ラビが低い声で呟く。
「セリーヌ!!!起き・・・」
「いい加減にしろ!!!!」
ラビが低い声で怒鳴った。
その声にリリーの手がビクリと反応して止まる。
「そんなに揺すって何かあんのかよ!!!
それで目ぇ覚ますんだったら永遠に揺すれよ!!!」
ラビが怒鳴る。
「・・・・じゃぁ・・・ラビはどうしろって言うの・・・?」
リリーの悲痛な泣き声にラビはハッと我にかえる。
「・・・私だって・・・どうしたらいいか分かんない・・・
こんな仲間を見て困らない人なんて居ないじゃない・・・」
リリーが言う。
その後、3人は轢いた馬車で教団へと運ばれた。
―アレンside―
ザワザワザワ・・・
今日はやけに騒がしい。
「急げ!!!致命傷だぞ!!」
忙しそうにベットで誰かが2人運ばれて行く。
「・・・・!!!」
僕が見たものは、セリーヌの変わり果てた姿だった―――。
第14夜
ガラガラガラガラ・・・
あっという間に遠ざかって行く。
アレンは慌ててベットに乗せられたセリーヌを走って追いかけた。
ちっとも縮まない距離。
縮む所かどんどん遠ざかって行く。
2台のベットと医療班の人だかりは曲がり角を曲がって消えた――――。
それでも必死で追いかけて行く。
―医務室―
アレンは息を切らして医務室のドアノブに手を掛けた。
だが、自然と力が入らない。
手が酷く震えている。
「・・・?」
アレンは左腕のせいかと思い、右手で再びドアノブに手を掛ける。
これでも力は入らない。
「危篤だ!!!注意しろ!!」
叫ぶ声が聞こえた。
・・・・危篤?
アレンは耳を疑った。
その原因は?そしてその言葉の真相は?
知りたい・・・でも知れない。
このドアノブが握れない限り、それは永遠にしれないだろう――――。
アレンは目を瞑ってドアノブを捻ろうとする。
スルリと力が抜けて手が滑り落ちた。
「・・・何故だ・・・?どうしてだっ・・・」
アレンの目から雫が滴り落ちる。
握ろうとすれば握れない。
握りたくても握れない。
「・・・アレン・・・」
誰かが低い声で名前をそっと呼んだ。
「・・・ラビ」
アレンが振り返った。
「・・・こんな所で何やってるんさ?」
ラビが笑った。
その笑った顔に涙の跡があった。
「・・・ラビ・・・?一体何が・・・」
アレンが言う。
「・・・」
そういうとラビは黙り込んだ。
そして口を開く。
「・・・駅まで3人で鬼ごっこしようとしてリリーが道路に飛び出したんさ・・・
そこに猛スピードで馬車が一直線に来て・・・
それに気付いたセリーヌは飛び込んでリリーの犠牲・・・
まぁ・・・この通りさ」
ラビはそういうと医務室のドアを開け放った。
目の前の光景にアレンは言葉を失くしていた。
沢山の機械に繋がれ、麻酔をかけられているセリーヌ。
ギブスをして頭に包帯を巻いて横で静かに涙しているリリー。
全てがスローモーションの映像の様だった。
忙しそうに走る医療班員の姿でさえも―――――。

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