― 君と出会えた日― 名の無い少女 作者/浜頭.悠希...〆

第12夜



「ファル・・・ファル・・・?」

「お菓子持って来たよぉ♪」


思い出せそうで思い出せない何か。


パリィィィィン・・・!!!


飴が床に落ち、粉々に砕け散る。


「・・・ティアナ・・・?」

ロードが顔を覗き込む。



体が小刻みに震え出す。


「昔の何かを思い出したんでショウ♪
 そのままにしておいてあげなサイ♪」

伯爵が言う。


やがて奇妙な卵の形をしたようなものが運ばれてきた。


「取り乱してしまい申し訳ございません・・・」

小刻みに震えながら言うティアナ。


「チッ・・・甘くねぇ」

大柄な男がゆで卵を見て言う。


「ンだよ、ゆで卵ぐらい食えよ」

背の高い男が言う。


「おいロード・・・
 こいつマジで大丈夫か?

 泣いてんぞ?」

デビットが言う。


「ありゃぁ~・・・
 昔の思い出したくない物を思い出させたんだねぇ」

ロードが席を立ってティアナの席に向かう。



「大丈夫だよぉ~ティアナぁ・・・
 そんな思い出なんか時が立てば忘れるよぉ・・・?」

ロードが本物の人形のようにティアナを抱いて言う。


ティアナの深紅色の瞳から涙が零れ落ちた。



第13夜 ―セリーヌside―



「此処ぉ・・・??
 今回の任務の場所って・・・」

リリーが辺りを見回しながら言う。


「そう・・・なんじゃないんですか?」


アレンは言う。


「そんなはずないんじゃねぇ?
 こんな何も無い所にイノセンスなんかあるわけねぇだろ」

シフォンが聞き返した。


「・・・・待って・・」


セリーヌが1人、目を瞑って言う。


「セリーヌ・・・?」

アレンが聞き返す。


「・・・ノアが・・・来る・・・!!!」


セリーヌがそっと瞳を開けた。


「・・・!!!!」

皆の目の色が変わる。


ザァッ・・・!!!


恐ろしい程生暖かい風が吹いた。


恐る恐るセリーヌは振り向く。


「・・・御機嫌よう・・・エクソシストさん」

首をかしげて不敵に笑う人形のような少女が立っていた。


「誰だ・・・?面影すら分からない・・・」

アレンが呟く。


突然少女の目が虚ろになった。


そして再び首を傾げて微笑んだ。


動く度に揺れる長い深緑の髪。


人形のような深緑のドレスを着て、ブーツを身に纏っていた。


彼女は右手を真横に出す。


ゆっくりと手を広げていく。


シュワァァァァァ・・・


風と光が彼女の右手の平に集まり、大きな弓状のものが出来上がった。


光を帯びて強い風を放っている。


「何さ・・・あれは・・・」


ラビが呆然とその姿を見ていた。


そして人形のような少女の口が開いた。



「イノセンス・・・発動・・・」



第14夜



「イノセンス・・・??」


アレンが呟く。


「ファルッ!!!!」


セリーヌが叫んだ。


その声に反応するかのように首を傾げて笑う少女。



「ティアナ・・・コールよ・・・
 よろしく」

ティアナと名乗る少女は口を裂かして笑った。


シフォンは咄嗟にイノセンスを発動する。


バンッ!!


シフォンは銃で一発、ティアナを目掛けて撃ち放った。


「シフォン・・・!!!」


レイリーが叫ぶ。


シュゥンッ・・・


シフォンの放った弾が風に吹かれて消えた。


「!!!・・・なんだと・・・!?」


シフォンの顔に焦りの表情が出る。


「弱い弾ですこと・・・」

ティアナは笑うと、一発の風の矢を、セリーヌ目掛けて打ち放った。



セリーヌは風の矢にあたる直前に気付いた。


「キャァァァァァァァァッ!!!」


発動も出来ずに頭を抱えていたその時―――。


ジャリッ・・・


鈍くて重いそんな音が響いた。


何も痛みを感じない。



私はそっと目を開けた―――。


「セリーヌさんッ!!
 早く逃げてください!!!

 もう耐えられない・・・ですッ・・・!!!」

レイアが自分のイノセンスで攻撃を持ち堪えていた。


私は素早く横にずれた。


パリィィン・・・


眩しくて分からなかったが、何かが割れてレイアが遠くに飛ばされた。



「レイア!!!」


セリーヌは叫んだ。