― 君と出会えた日― 名の無い少女 作者/浜頭.悠希...〆

第30夜



ラビの力が強くなる。


「・・・・好きさ・・・リリー・・・」


ラビが呟いた。



「・・・は?
 クサイ冗談は止めてよ・・・?」


リリーが頬を赤く染めて言う。


「・・・冗談?
 こんな冗談言ってどうするさ?」


どうやら冗談じゃないらしい。


「リリーはオレの事をどう思うさ?」


ラビが言う。


「べ・・・別になんとも・・・」

「別にとかなんともは無しで」


ラビが付け足した。


その言葉にリリーがプウッと頬を膨らませた。


「・・・で?どうさ?」


ラビが言う。



ガタンッ!!!


リリーは突然席を立った。



その衝撃が机に置いてあった紙コップが倒れ、紅茶が流れ出た。


リリーは涙を零しながらスルリとラビを抱き締めた。


「ラビのばか・・・。
 今頃どう思うなんて聞かないでよぉ・・・

 ラビの鈍感・・・あほぉ・・・」


リリーが涙声を零した。


ポカポカとラビの背中を叩いた。


「・・・御免さ・・・リリー・・・

 だから許してくれさ・・・


 ・・・そんで・・・」

ラビがリリーの肩を掴んで引き離した。




「・・・・もう死んでも離さないさ」


ラビはそういうとリリーの唇に唇を重ねた。



リリーの瞳から一筋の涙が零れ落ちた。




月が沈もうとする、朝方の事だった――――。




―セリーヌside―


シュゥッ!!!


音速で廊下を駆け抜けるセリーヌ。


飛ばされそうになるコートを胸でしっかりと抑え付けて、ただひたすら駆け抜けた。


なんで私の部屋とアレンの部屋は教団で一番遠いのだろうか。


「・・・ッ・・・」


セリーヌは唇を噛み締めて駆け抜けた。



―これから見る物が悲劇だというのも知らずに―



満月の夜 ―アレンside―



コンコン・・・



コンコンコンコン・・・


どんどん強くなって行く音に起こされた僕。


「・・・アレンさん・・・起きてますか?」


外から女の人の声が聞こえた。


「・・・誰でしょう・・・」


アレンは目を擦りながら1人呟いた。




扉を開ければ――――――。




「・・・レイア・・・。」


きちんと団服を着て唇を噛み締めて立っていた。


レイアはぎゅっと唇を噛んでアレンに抱き付いた。



「えっ?!うわぁっ・・・!!」


アレンは抱き締められた反動でベットに倒れた。


ゴツンと壁に頭を打つ。


「・・・痛~っ・・・・」


アレンが顔を歪めながら下を向いた。


レイアは顔を埋めて抱き付いたままだ。



「な・・・何があったんですか・・・?

 とりあえず・・・離してもらえますか・・・?」

アレンが言う。


「・・・嫌」


レイアが膨れた声で言った。


「え?」


アレンが聞き返す。


「・・・私がどうして此処に来たか・・・分かりますか?」


レイアが顔を埋めたまま言う。


「・・・いいえ」


アレンが静かに答えた。




「・・・貴方が好きだからです」


レイアの発言に耳を疑った。


「それはどういうことですか・・・?」


アレンの声が自然に低くなる。


「・・・私ずっと狙ってたんですよ・・・

 セリーヌさんとアレンさんが別れるまで・・・。

 狙ってたって言うと悪いですけど・・・
 アレンさんと出会った時からずっと好きでした・・・。


 付き合ってください・・・」

レイアが顔を上げて言った。


アレンの思考が狂い始める。



〝この子なら良い〟と思ってしまったんだ―――。




―セリーヌside―



シュィィン・・・。



ブーツが速度を落とし、その場に止まった。


アレンの部屋のドアが開き、レイアとアレンが中に居た。



―一体・・・何をしているの?―



2人はセリーヌが居ると気付いていないらしい。



「・・・僕もずっとレイアの事が好きでした・・・

 今はセリーヌなんかどうでも良い・・・


 愛してます」


そういうと2人はキスを交わした。


〝セリーヌなんか〟?



私はそんなに価値の無い人間だったんだ・・・?


ガタンッ!!!



セリーヌの踏んだ後ろの手すりが割れた。


その音に2人が同時に振向く。


セリーヌが涙を零しながら音速で駆け抜けて行く。




―アレンside―


「セリーヌ!!!」


アレンが追いかけようとした。


「行かないで!!」


レイアがアレンの腕を掴んだ。


「・・・愛しているっていうの・・・嘘なの・・・?」


レイアが涙目で言う。



アレンがそんなレイアを抱き締めた。



レイアの団服に雫がポタリポタリと零れ落ちていた―――。


-4章END-