― 君と出会えた日― 名の無い少女 作者/浜頭.悠希...〆

第3夜 ―セリーヌside―
「・・・ねぇ・・・リリー・・・」
セリーヌは涙を拭いながら言う。
「なぁに?」
リリーが微笑みながら振り向く。
「・・・今頃・・・
アレン達はラブラブなんじゃないかなぁ・・・。
私ね・・・
もう諦めようと思う・・・
何度謝ってももう許してくれないもん・・・
だからいいの・・・
アレンと過ごした日々・・・凄く楽しかったから・・・」
セリーヌが涙を流しながら人懐っこく笑った。
「ッ・・・」
リリーはその言葉に思わず涙を零した。
そして黙ってセリーヌを抱き締めた。
「・・・ッ・・・」
リリーの目から滴り滴り目が零れ落ちる。
「・・・どうして?
どうしてリリーが泣いちゃうの?」
セリーヌがリリーの耳元で言う。
「・・・だって・・・だってぇっ・・・」
涙声でだってと唱えるリリー。
「・・・言ったでしょ・・・?
私はアレンが幸せならそれでいい・・・って・・・
いいの・・・いいんだぁっ・・・
私は・・・遠くで・・・笑顔を見れるだけで・・・
幸せだから・・・
だからもう・・・いいの・・・いいのよ・・・」
セリーヌがリリーの団服をクシャリと握る。
「うそつけ・・・。
じゃぁなんで泣いてるの?」
「違うもん・・・これ違うの・・・
勝手に流れて来るんだよぉ・・・。」
涙が団服に滲む。
「・・・後・・・。
私落ち着かないから・・・
先部屋戻ってるね・・・」
セリーヌはそういうとリリーの腕の中から離れる。
「・・・うん・・・。」
リリーが心配そうにセリーヌを見つめる。
「皆・・・有難う。
こんな情けない私の事を想ってくれて・・・。
私・・・とっても嬉しいよ」
セリーヌはそういうと手を振りながら食堂を走り去って行った。
第4夜
パタン・・・
私は部屋に着くと部屋のドアをパタリと閉めて、ドアに寄り掛かった。
「はぁ・・・」
ため息をつくセリーヌの目から一筋の涙が零れ落ちた。
見慣れた広い、正方形の部屋。
壁にフープがいくつも掛けてあり、棚にはいくつものボールが置いてある。
リボンが散らばっていて、ロープがはちきれている。
いつもの見慣れた光景なのに、今は何故か悲しく見えた。
セリーヌは溢れに溢れる涙を拭いながら奥の部屋へと走った。
カチャ・・・
黒いドアの向こうはまた見慣れた光景。
全てが私を睨んでいるような―――そんな気がした。
「・・・怖い・・・怖いよぉ・・・」
セリーヌはそういうとベットにバサッと倒れた。
「何が怖いんだ?」
後ろから声がする。
セリーヌははっとして振り向くが、誰も居ない。
「セリーヌ・・・此処だって」
すると、窓の外から誰かが見えた。
外の小さな足場に座って、此方を見て笑っているシフォンが居た。
「・・・シフォン・・・?」
セリーヌが驚いて窓を開ける。
「気付くのおせーよ・・・。
やっぱり年下は鈍いんだなー」
シフォンが言う。
「に、鈍くないもん!!!
それよりも・・・こんな所に居たら風邪引くよ・・・?」
セリーヌはシフォンに手を差し出す。
「あ?ああ・・・ありがとな」
シフォンはそういうと手を借りて素早く室内に入った。
「あとさぁ・・・。
お前さっきから元気無いけど、なんかあった?」
シフォンが言う。
「え?別に・・・何も無いよ」
セリーヌは目を反らして言った。
「・・・・・ろ?」
シフォンが言う。
「・・・え?」
セリーヌが聞き返す。
「・・・あったんだろ?・・・言えよ」
シフォンが真剣な表情で言う。
「・・・え?
本当に・・・何も無いって・・・」
セリーヌが戸惑いながら言う。
「・・・言えよ」
シフォンの声が低くなった。
「言えない・・・言えないよ・・・。
こんなコト言ったらシフォンにも迷惑かかっちゃう・・・
言わないからねっ・・・」
セリーヌが涙しながら言う。
シフォンはそんなセリーヌを抱き締めて口を開いた。
第5夜
「・・・・好きだ・・・セリーヌ・・・・」
私はシフォンの言葉に耳を疑った。
そして、間違った人の手を借りてしまったような気がした――――。
「狙ってたって言うのはおかしーから・・・
ずっと・・・好きだった・・・」
シフォンの言葉が脳裏でぐるぐると回っていた。
いつのまにか私の腕はおずおずとシフォンは包み込んでいた。
「俺の事・・・
どんなに傷付けてもいい・・・
だから・・・傍に居て欲しい」
シフォンが言った。
その言葉にセリーヌは涙を伝わせていく。
セリーヌはシフォンの腕の中で小さく頷いた。
―バカな私
誰かに欲しいと言われたくて
誰かに必要としてもらいたくて
また誰かの手をとるの
人の手を借りなければ生きれない私なんて
バカな私―
―リリーside―
「・・・だけ・・・・しめる♪
腕は・・・・・・・・となって♪
・・・・絡みついて♪
・・・・たくない♪」
部屋に響く高い歌声。
その歌声に合わせるかのように時計が時を刻んでいた。
「・・・歌・・・
とても綺麗な歌ね・・・」
ドアで呟いたのはレイリー。
「レイリー・・・。
さっきから聞いてたの?」
リリーが歌をやめて言う。
「・・・うん・・・綺麗な歌声だなぁって・・・」
レイリーが笑った。
「あはは・・・またぁ・・・」
リリーがそれに返すように笑った。
「・・・後・・・
リリーに相談したい事があるの・・・
時間ある?」
「あるけど・・・
まぁいいや・・・入って」
リリーはそういうと迷うように言うレイリーを中へと入れた。

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