― 君と出会えた日― 名の無い少女 作者/浜頭.悠希...〆

第6章 序章



 ♪♪♪♪~♪♪~~


 踊り狂えば踊り狂う程、何かを忘れそうになる。



 リボンが舞えば舞う程、何かを思い出しそうになる。


 その〝何か〟は分からなくとも――――。



 少女、セリーヌはこの先どんな悲劇があろうとも前に進み続ける。


 彼女は、エクソシストだから――――。



 嫌でも前に進めば先はある。


 前に進まぬならば先は無い。




 そんな世界に生きている――――。



 そして彼女は、どんな疑いをかけられようともかけようとも、心は動かない。



 愛伝わらぬ場所は鼓動伝わらぬ。




 愛在れば、鼓動在りて――――。



 悪に満ちた黒のAlice

 対称的な

 愛に満ちた白のAlice

 勝つのはどっち?



第1夜



「・・・・ねぇ・・・本当に此処であってるの?」


 忍が目の前に建つ屋敷を見上げて言った。


「此処であってますよ!!ほら!!」


 レイアがその屋敷の表札を指して言う。


「大きな家ねー・・・・」


 セリーヌが屋敷を見上げて言う。


 現在、彼女らはセリーヌ、リリー、レイア、ファル、忍、チェリー、アレン、ラビ、神田、シフォンの10人で米国に来ていた。



 今回の任務は普通の人形が動くというらしい。


 そのたくさんの人形の中に、イノセンスの入った人形がある可能性があると聞いて、セリーヌ達は駆けつけて来たのだ。



 朝露にキラキラと耀いた白い壁、太陽の光に当たってキラキラと耀いている青い屋根。


 身長の4倍はあろうかという、高く黒い門。



 屋敷のものが全て、威圧感を張っているようにも思えた。


「・・・・どなた様ですか?」


 ふと玄関から声がした。


 門の奥にある玄関の黒い扉が閉まって、1人の少女が歩いて来た。



 紺色のワンピースに、白いエプロンドレス。



 頭に紺色の布地のヘットドレスをつけている。


 いわゆるメイドの格好だ。



「どなた様かと聞いているのですが・・・

 お聞きになられでしょうか?」


 少女は門越しのセリーヌ達に言う。


「黒の教団です」


 セリーヌはそれに動揺する事無くピシャリと言った。



「黒の教団?
 何処かで聞いた事のある名前ですわね」


 メイドの少女が顔を顰めた。


「ええ。
 あのヴァチカンの軍事施設です。

 調査依頼を受けたので調べさせて頂きたいのですが」


 セリーヌは少女に言った。



 そんなセリーヌに少女は態度一つ変えることなく言う。


「お引取り下さい。
 何処から調査依頼を受けようとも入れはしません。

 お引取り下さい」


 少女はそういうと振り返る。



「あ・・・待ってください!!!」


 去ろうとした少女に、レイアが声をかける。



「何でしょうか?」


 少女は冷たくセリーヌ達を見下ろすような目で見つめながら、振り返った。


「どうしても入れていただけませんか?」


「どうしても入れてはあげられませんわ」


 どんなに言っても彼女の答えはこの一点張り。


「何を言おうが入れません。お引取り願います」


 少女が言ったその時。


「あら・・・何事かと思えば。萌衣、どうしたの?」


 後ろから制服姿の少女が来た。


 メイドの少女よりも10㌢強身長が高い。



「翡翠石様・・・!!」


 萌衣と呼ばれた少女が、驚いて目を見開く。


「この屋敷の主でいらっしゃいますか?」


 セリーヌが翡翠石と呼ばれた少女に聞く。


「ええ、そうですが」


 翡翠石と呼ばれた少女はピシャリと答えた。


「黒の教団です。
 宜しければ中に入れて頂きたいのですが」


 セリーヌは黒の教団のシンボルマークを尊重して言った。


「あら、黒の教団のお方で。
 それはそれはどうも失礼致しました。

 どうぞ中にお入り下さい」


 少女は笑顔で門を開けると、セリーヌ達1人1人を通す。


「萌衣、門を閉めといて頂戴ね」


「畏まりました、翡翠石様」


 萌衣と呼ばれた少女は、丁寧に礼をすると、門の鍵を閉め始めた。



 翡翠石と呼ばれた少女を先頭に、屋敷の談話室へと向かって行く。



 その隣に2人のメイドが姿勢を正して歩いている。


「此処でお待ち下さい」


 翡翠石が言うのと同時に1人の少女が扉を開けた。


「わぁ・・・」


 レイアは思わず声をあげた。


「・・・綺麗な部屋ね」


 忍は辺りを見回しながら言う。


「此処にお座り頂けますか?」


 メイドがそそくさと動いて言う。


「私は着替えて来ます。
 こんな格好では見苦しすぎるので。

 弥はお茶を入れて頂戴。
 もちろんみんなの分もね?

 光姫は皆を呼んで来て頂戴。

 お客様にご挨拶をするの」


「「畏まりました、翡翠石様」」


 弥と光姫と呼ばれた少女ら2人が跪くと忙しそうに動き始めた。



 例えれば

 君等は夜空に耀く星達の様

 耀く星も居るならば

 宇宙の闇も在り

 世界の果てもあるという事

 ホ ン ト の A l i c e は だ ー れ だ ?



第2夜



「でも・・・とてもいい所ね。
 外から見ても綺麗だけれど・・・

 中は隅々と掃除されてて・・・

 この屋敷は内から耀いているわ」


 ファルが嬉しそうに言う。


「私もそう思う。
 こんなに綺麗な所・・・初めて。


 私は今まで穢い世界しか見た事無かったから・・・」


 チェリーが言う。


「え?最後の方聞こえなかったんだけど」


 ファルが言う。


「ううん、なんでもない。

 ただの・・・独り言よ。」


 チェリーはファルに微笑んだ。



 その微笑みは綺麗だけれど、何処か哀しみが感じられた。


「おい、来るぞ」


 シフォンが部屋を静ませると、足音が聞こえて来た。



 カチャ・・・


 数秒して、談話室の扉が開いた。


「お待たせ致しました。」


 違う服を着た先ほどのメイドが礼をすると、ぞろぞろと少女達が入って来た。


 
 少女達の服はそれぞれ違い、中国風のものやセーラー服など、色々なものがあった。



 1人1人がきちんと此方に礼をして、着席する。



 ざっと十数人は居るだろう。



「先程は見苦しいものを見せてしまい・・・
 誠に申し訳御座いませんでした」


 最後に入ってきたのは、さっきの翡翠石と呼ばれた少女だった。


 窓から差し込む日の光に耀いた金色の髪。



 腰まで伸びている長い髪をサイドを後ろで一つにまとめて、薔薇の髪飾りで縛っている。


 白い襟の大きな紺色のワンピースドレスに、白い靴下に黒い靴を履いている。


 さっきの制服の少女とは別人だった。



「ら、ラビっ!!!」


 リリーの小声が聞こえる。


 セリーヌははっと我に返ってラビを見てみる。



 ラビのバンダナにモロタイプの文字が入っていて、目がハートになっていた。



 どうやらストライクらしい。



 そんなラビを翡翠石は不思議そうに見つめている。


「あ・・・いつもの事ですので・・・」


 リリーがラビを殴りながら綺麗に笑った。


 怒りマークを浮べながら。



「そうですか。
 まず自己紹介をさせて頂きます。」


 翡翠石と呼ばれた少女が立ち上がった。


「私は翡翠石と申します。
 今は16ですが、明日で17になります。

 得意な事は裁縫です。


 よろしくお願いいたします」


 翡翠石がドレスの裾を指先で上げて、軽く膝を曲げて微笑むと、椅子に座った。


 順々と自己紹介が進む。



 どれも綺麗で憶え易い名前ばかりで、楽しかった。


 こちら側の自己紹介も終わり、部屋へ案内してもらおうという時の事。



「男子部屋は以上で御座います。
 続いて、貴女方のお部屋を案内させていただきます」


 メイド服の少女、名前はたしか蒼海だったような。


 順々と女子達も自分の部屋を案内してもらい、残りはセリーヌの部屋だけになった。



「あの・・・
 蒼海さん達は幸せですね・・・・

 こんな豪華なお屋敷に仕えられて」


「ええ・・・とても幸せに思いますわ」


 蒼海が歩きながら言う。


「蒼海さんはおいくつですか?
 いや・・・とても美しいので」


「・・・私の歳等御座いません。
 言うならば瑠璃様達と同じで御座います」


 瑠璃・・・確か一番最初に自己紹介した女の子。


「・・・それ・・・どういうことですか?」


「私達がこんなにも小さい理由・・・分かりますか?


 その理由は・・・私達は動かされているからですわ」


 セリーヌは蒼海の言っている事が分からなかった。


「あの・・・それは・・・?」


「私達は動かされています。
 まぁ・・・つまり。

 私達は作られて動かされているだけの・・・


 ドール
 人形なのですわ」