― 君と出会えた日― 名の無い少女 作者/浜頭.悠希...〆

第18夜 ―アレンside―
―翌朝―
食堂のテーブルで大量の食事の前でぼぉーっと肘をついている。
ぽかんと口を開いて上の空。
「アレン~?どうしたのぉ・・・?」
レイアがアレンの顔を見上げながら言う。
「あ?え・・・いえ・・・なんでも」
アレンは一瞬だけ我に返ったがまたすぐに上の空。
「・・・そんなにセリーヌさんの事が気になる?」
耳元で聞こえた、レイアとは思えない不気味な声。
「!!!」
アレンは驚いて引き下がった。
「・・・あの時の愛してるは・・・嘘なの??」
見ればレイアのうるつく瞳。
「・・・!!」
アレンはその言葉に唇を噛んだ。
―あの時の愛してるの言葉が脅しに聞こえた―
僕はこのままでは君を利用してしまう。
僕には近寄らない方がいいと――心で思ったはずなのに。
「・・・別れませんか」
口に出ていた。
「!!!・・・どうして・・・・?
あの時の愛してるは嘘だったのね・・・!!!」
演技だということは何と無く分かった。
だが、一瞬だけ本当に哀しんでいるようにも見えてしまった―――。
「・・・このままでは・・・
レイアを利用してしまう・・・だから・・・
僕から離れてください・・・」
アレンが小声で言った。
その言葉にレイアは涙目になりながら、アレンを抱き締めた。
「えっ?!ちょ・・・レイア・・・?」
「利用してもいいから傍に居て」
レイアの言葉に耳を疑う。
「・・・は・・・?」
「セリーヌさんに行く為のバネでいい・・・傍に居て」
レイアの低い声。
レイアがレイアで無いような気さえした―――――。
「・・・レイア・・・好きです・・・」
アレンの口が勝手に動く。
「・・・ありがとう・・・
あの愛してるは本当だったのね・・・」
涙声のレイア。
僕は偽りの愛で彼女を包んでいた。
―偽りの・・・愛で―
―愛してるという一言の言葉
それが偽りの言葉ならば
それは刃に
誠の言葉ならば
それは愛へと変わり行く―
―愛しているという脅しでもある愛の言葉―
第19夜 ―リリーside―
ピッピッピッピッ・・・
医務室に鳴り響く、止まらない機械音。
そして開かない、セリーヌの目――――。
ガランッ!!!
勢いよく開いた医務室の扉。
ふと振り返れば、そこにはシフォンの姿があった。
「・・・シフォン・・・?」
呆然とするファル。
「・・・セリーヌは・・・?」
急いで来たのか、酷く息が切れている。
「・・・シフォン・・・!!
どうしたの・・・?いきなりこんな所に・・・」
「決まってンだろ・・・
セリーヌが心配だからだよ・・・」
シフォンが低い声で荒々しく椅子に座る。
「・・・は?!」
「聞こえねぇか?
セリーヌが好きだから心配してんだよ」
2回目の言葉にこそ耳を疑った。
「はぁ?!」
ファルがその言葉に聞き返す。
「はぁ?!じゃねーよ・・・」
シフォンが煩そうに耳を塞ぐ。
ブチッ
ファルの中の何かが切れたような気がした。
「変なヅラ被って良いトコとってんじゃねーぇっ!!!!」
ファルは大声で叫ぶとヒールの高いサンダルでシフォンの顔面を蹴り飛ばした。
「ふぁ・・・ファル!!」
リリーが叫ぶ。
「お前らのせいでセリーヌがこんなんなったのによ!!!
お前は状況も分かんないでよく言えるよな!!!
そういうお前だからこそ今でものん気なコト言ってられんだよ!!!」
ファルは怒鳴る。
シフォンはあっとした表情でファルを見つめていた。
「なんとか言えよ!!」
ファルは声を荒げる。
「ファル!!」
リリーが叫ぶ。
「やめてよ!!!
確かに・・・そうだけど・・・
そうやってシフォンを責めないで!!」
「はぁ?
リリーまで同情してんの?
いい加減にし・・・」
「それはこっちのセリフよ!!!
何回誰に八つ当たりすれば分かるの?!
もうファルなんか知らない!!!」
リリーは泣き叫ぶと、医務室を出て行った。
キィ・・・バタン・・・
公園で使われていないブランコが寂しく揺れるように、医務室のドアが閉まった。
はっと我に帰るファル。
「リリー・・・!!!」
呟いて追いかけようとする。
だがファルはその足を止めた。
第20夜 ―レイリーside―
―2週間前―
「本当にいいのかい?退団ということで」
「はい・・・
私が決めた道なので・・・
前に・・・進みたいです・・・」
レイリーの目は決意に満ちていた。
「・・・そうか・・・。
じゃぁ・・・今日から2週間後にね・・・
今までご苦労様でした」
コムイは立って帽子を取り、礼をした。
「・・・こんなに大変な時に退団なんて言い出して・・・
本当に御免なさい・・・。」
レイリーはそういうとスタスタと司令室を出て行った。
この頃はまだ、コムイしか知らない事実―――。
―現在― ―ファルside―
「しのちゃーん!!!!」
廊下をスタスタと歩いていた忍に突如抱き付く。
「な・・・何よもう・・・」
忍は恐ろしく目を引き攣らせて振り向いた。
「レイリーの事なんか知らないぃ?
もう昨日っからダンボールが!!」
ファルが叫ぶ。
「ダンボールぅ?
そんなのリリーに聞けばいいじゃないの・・・
全く・・・世話が焼ける子ね」
「リリーと喧嘩しちゃったんだもん!!」
「レイリーなら近いうちに退団するわよ」
「え?」
ファルの発言を無視して言う忍。
「そうだよぉ♪知らない?
医療班の奴の子供が出来ちゃったんだってー♪」
チェリーが横から出て来て言う。
「はぇ!?」
「はぇ?!じゃなくてぇ~・・・
ファルも早いとこ会いに行ったら~?
私と忍はプレゼント持って行っちゃったけどねぇ♪」
チェリーはそういうとご機嫌そうにスキップしながら去って行った。
「私任務入ってるから。
じゃぁ、精々頑張りなさい」
「言われなくても頑張るもん!!!」
忍はふっと笑うとスタスタと去って行った。
「はぁ~・・・」
何があるかなぁ~・・・プレゼント・・・
〝薔薇の花言葉って色々あるんだよぉ〟
〝私は薔薇がすきだなぁ〟
前に話した話題を思い出す。
「そうだ!!!薔薇だぁ!!!」
ファルは思わず飛び上がる。
周りに居た団員達が驚いた。

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