― 君と出会えた日― 名の無い少女 作者/浜頭.悠希...〆

第33夜
「レイリー!!」
スルリと手を挙げたのはレイリーだった。
「・・・皆行けないでしょう?
皆それぞれ好きな人っていうものが居て・・・
好きな人を残していけないでしょ?
だから独り身の私が行こうと思ったの・・・」
「でも!!!
だからってレイリーが行くことないじゃない!!!」
リリーが叫ぶ。
「・・・いいの・・・
だから・・・お願い・・・
私とファルを入れ替えて・・・」
レイリーが涙ながらに訴えた。
「・・・レイリー・・・」
アレンが涙を流し続けているセリーヌを抱きながら呟く。
「・・・・」
コムイとリナリーはそれを黙ってみていた。
―教団玄関―
「じゃぁ・・・行って来る」
ファルの着ていた服に着替えたレイリーが言う。
「さすが科学班ね・・・
声も姿でさえも全て同じ・・・
尊敬できるわ」
レイリーが自分を見るなり言う。
「・・・生きて帰って来てよ」
リリーが寂しそうに言う。
「大丈夫・・・
もう・・・死ぬ覚悟は出来てるの」
そういうとレイリーは船に乗り込む。
「・・・私が気絶してるふりして船で流される・・・
それをノアが見つけるはずだから・・・」
レイリーが船をこぎながら言う。
「皆!!
私・・・生きて帰ってくるよ!!!
だから・・・!!!
だから皆もそれまで生きててよ!!!」
レイリーはそう叫ぶと暗い闇の向こうへと消えた。
―外―
「あれぇ・・・」
外で傘に乗って飴を頬張っていた少女が気付く。
「・・・あれってぇ・・・
間違いなくティアナだよねぇ?」
「ティアナタマに間違いないレロ!!
・・・・なんで教団の船に乗ってるレロ?」
「・・・アイツ、独りで教団に乗り込んだんだろ・・・」
少女が笑う。
「たっぷりお仕置きしてやろぉーっと・・・・」
少女は再び口を裂かして笑った。
第34夜
パリィィィィィン!!!
医務室のビーカーが割れる。
「うおっ!!!」
その近くに寝ていた少年が飛び起きる。
「・・・うっはぁー・・・あぶねぇなぁ・・・」
そして少年は笑う。
「・・・誰かの身に・・・何かあったっつーことか」
―食堂―
「よく食えるなぁー・・・そんなに」
セリーヌが呟く。
「・・・セリーヌが小食なだけでしょ」
みたらし団子を頬張りながら言うアレン。
「違うもん!!
アレンが大食いなだけだもん!!!」
セリーヌがムキになって言う。
「・・・どっちもどっちだよねー・・・」
リリーが呟いた。
そんな賑やかな昼の食堂での出来事。
「・・・ハァ?!
てめぇ何様のつもりだぁ?!
チビのくせに調子こいてんじゃねーぞ!!!」
声を荒げる独りの男。
「・・・うるせぇよ・・・此処食堂だぜ?
少しは『他人の迷惑』って奴を考えろよ」
冷酷で低い声。
「・・・あれって・・・」
リリーの右手に持ったフォークの動きがとまる。
「シフォン・・・だよね?」
セリーヌもじっとその争いを見る。
「ンだと?!
お前等があーやって任務行けんの俺等のおかげなんだぜ?!
それなのにその態度なんだテメェ!!!」
「・・・別に行きたくて行ってるわけじゃねぇよ・・・
それにお前みたいなデブに誰も『任務行かせて欲しいから情報調べてくれ』なんて頭下げた奴いんのかよ」
冷酷で低く、冷たい態度。
「・・・これってなんかヤバくね?」
ラビが言う。
「・・・さぁ」
アレンが呟いた。
キィ・・・
セリーヌが席を立つ。
「・・・迷惑だから止めてくる」
セリーヌはそういうと2人に向かって歩き出す。
「・・・2人とも・・・ちょっとお時間頂ける?」
そう余裕そうに話しかけるセリーヌの姿は、何処か上品に見えた――――。
第35夜
バサッ・・・・
部屋でドレスを脱ぎ捨てる少女。
「・・・・リボンはそのままでいっか♪」
彼女は笑うと窓を全開にしてそこから外へと飛び降りた―――。
―食堂―
「ハァ?お前何なんだァ?」
体格のいい男が言う。
「・・・何って・・・
決まってるじゃない・・・分からないの?
エクソシスト
適合者に決まってるわ」
セリーヌが笑う。
「ンだと?!
偉そうに名乗ってんじゃねーぞ!!!」
男が拳を振り上げる。
そして容赦なく振り下ろされた―――。
ガツッ・・・!!
鈍い音が響く。
「・・・!!!」
男の顔が青ざめて行く。
セリーヌの長い爪が男の腕に食い込む。
「あ゛ッ・・・!!
いで・・・いででででぁあ!!!」
思いっ切り捻るセリーヌ。
「此処で喧嘩は止めてもらえる?
団員は貴方達だけじゃぁ無いこと・・・
分かってるわよね?」
「ひ・・・ヒイイッ!!!ご、御免なさい!!!」
「分かったならいいわ・・・席にお戻りなさい」
セリーヌはそういうと手を離した。
男は真っ直ぐに逃げ去った。
そしてセリーヌは玄関で呆然としている料理長、ジェリーに向かって、
「取り乱して申し訳ございませんね・・・
どうぞそのまま続けてくだしませ」
セリーヌはそういうと席に戻って行った。
トゥルルルルル・・・
リリーの携帯電話が鳴る。
「・・・あれ・・・?レイリー・・・」
リリーは携帯電話を手に取り、ボタンを押した。
第35夜
「はいもしもし・・・え?・・・抜け出せた・・・・・の・・・?」
リリーの顔に驚きの表情が表れ始める。
「・・・リリーどうしたの?」
アレンに聞くと、
「・・・わかりません・・・
でも・・・レイリーから電話がかかってきたみたいです」
「!!」
アレンの言葉に耳を疑った。
―レイリー・・・・だって?―
「・・・分かった・・・今から行く・・・うん・・・じゃぁね」
そういうとリリーは電話を切った。
「・・・今レイリーが脱獄してドイツに向かってる。
ドイツに私迎えに行く・・・
皆は待ってて!!」
とリリーが走りだす。
「リリー・・・!!」
リリーは食堂のドアの外へと姿を消した。
「・・・待つしかないさ・・・
レイリーとリリーは絶対に帰って来るさ・・・」
ラビはのんびりとしながら言った。
「それもそうね♪」
セリーヌはそういうとケーキを頬張り始めた――――。
―伯爵邸―
コンコン・・・
ティアナの部屋をノックする少女。
「ティアナぁー・・・?まだ寝てんのぉ~?」
そういってドアをたたくのはロード。
「ティアナタマ居ないレロ?」
傘のレロも言う。
ロードはため息をついてドアノブに手をかけた。
カチャ・・・
「ティーアーナー・・・」
ロードが部屋を覗く。
そこには、脱ぎ捨てられた深緑色のドレスだけが寂しく置かれていた。
窓が全開になっている。
「・・・そういうことかぁ・・・・
まぁ・・・・いいやぁ・・・
あんな奴・・・もうどうでも」
ロードは笑った。
-第3章END-

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