― 君と出会えた日― 名の無い少女 作者/浜頭.悠希...〆

第12夜



「こうすりゃいいだけだろ!!!」


ピストルの丸い穴に指をはめてピストルをぐるぐると回すシフォン。


15回ぐらいまわしてピタリと動きを止めた。


やがてピストルが光りだす。


――イノセンス発動。


「俺はコイツ等を片付ける・・・
 他は散らばれ」

シフォンが構えて1匹のアクマ目掛けて一発撃った。


「・・・私も!!」


レイリーが目の前に右手を翳す。


「私もやるわ」

続いてリリーも右腕についている腕時計のような丸い円をクルリとまわす。


レイリーは手をヒラヒラとさせる。


目がだんだん充血していく。


リリーは回して取った小さな丸い物体をそのへんに放り投げた。


――イノセンス発動―


発動した瞬間、リリーは光に包まれる。


白い花がヒラヒラと舞い、光は消える。


レイリーは顔の前で両手を交差させていた。


両手を下に下げ、赤く充血した目でニヤリと笑う。


「ウー・・・」


アクマ達が唸り出す。


ラビもアレンもとっくにイノセンスを発動していた。



発動もせずにゆっくりと戦いを観戦していたとき。


「いやぁぁぁッ!!!」


リリーがレンガの地面に叩き付けられた。


運悪く、あたったのはLv2だ。


セリーヌは怪しげな笑みを浮かべ、コートのファスナーに手を掛けた。


「セリーヌ・・・!!!
 貴女が相手するほど強くないわ!!!」

リリーが起き上がって言う。


「ボロボロになった可愛い女の子が言うセリフじゃないでしょう?


 ボロボロにした奴はぶっ飛ばさなきゃいけないじゃないの」

セリーヌはそういうとコートのファスナーを一気に下げた。


下に着ているのはノースリーブ。


「・・・私を怒らせたのがいけないんだよ・・・
 アクマ達・・・」

セリーヌは笑いながらコートを脱ぐ。


「セリーヌ・・・!!駄目ッ!!!」


バサッ!!!


リリーの声を無視して、セリーヌは長いコートを脱ぎ捨てた。


―イノセンス発動―


リリーがセリーヌを止めようとする理由・・・


―発動したセリーヌを止められる人は誰も居ないから―



第13夜「Let's showthyme♪」



セリーヌのイノセンスは、力が強すぎて適合者にも上手く操作することは難しい。


セリーヌの精神自体がイノセンスに操られて発動すれば正気を失ってしまう。


「・・・セリーヌ・・・」


リリーは後ろに近付いてくる気配を感じ取る。


グッと唇を噛み締めて後ろを振り向いた。


「ウー・・・」


アクマが唸り声を上げてこちらを見つめている。


アクマが地面目掛けて思い切り殴る。


レンガの地面が砕け、リリーは吹き飛ばされる。


そしてまた後ろを振り向けば―――。



「・・・ウー・・・」


別のアクマが唸っていた。


挟み撃ちにされて、どうしようも出来なかったときの事―――。


シューッ・・・


アクマの身体から光が飛び出す。


「!!!・・・」


リリーは驚いた。


「・・・大丈夫ぅ?


 リリー」

光を浴びながらアクマは砕け散る。


アクマの後ろに不敵な笑みを浮べたセリーヌが居た。


気が付けば、6人はアクマに囲まれている。


住民達は唸り声を上げてどんどん円を小さくしていく。


セリーヌは深く息を吸った。


前から後ろまで円を作るように手を広げて行く。


指先は住民の方向へ。



「Let's showthyme♪」


セリーヌは笑みを浮べながら言う。



パチン♪


指先で音を鳴らした。



第14夜



シュワーッ・・・


ペットボトルから弾けるコーラの泡のように光が差し込む。


やがて見えるのは操作しているセリーヌだけになった。


眩しい光が消え、そっと目を開けたアレンたち。


「・・・!!!」


驚いたのは、全てのアクマが居なかったから。


「あはは・・・♪」


セリーヌは笑う。


ガンッ・・・!!!


セリーヌは赤いレンガの地面に膝を付いた。


バサッ・・・!!


虚ろな目をしながらも微笑みながら、セリーヌは倒れた。



「セリーヌ!!!」


アレンは叫ぶ。


セリーヌの体力はさっきのあの技によって全て削られてしまったのだろう。


セリーヌの武器は元々は治癒専用だが、改良して攻撃が出来る様にしたもの。



こんな荒技を使って倒れない奴は恐らく居ないだろう。



実は、セリーヌのイノセンスは誰にでも適合するイノセンスだ。


だがセリーヌは普通の人間と違い、攻撃をしても死なずに済むという事が分かり、セリーヌが適合者となっている。



普通の人間がこのイノセンスを使って攻撃すれば、間違いなく死に至るであろう。





「・・・あ・・・あの・・・」


後ろから弱々しい声がする。


「貴方達は・・・


 エクソシストですか・・・?」


白いブラウスと紺色のチェックスカートを身に纏って座り込んでいる女の子が言った。