― 君と出会えた日― 名の無い少女 作者/浜頭.悠希...〆

第3夜
コッコッコッコッ・・・
賑やかな店内を静かに歩いていく。
「・・・おい」
目の前に独りの店員が現れた。
「・・・お前等は何者だ」
と低い声で言った。
「・・・こういうものですが」
セリーヌが左胸の教団のマークを指差した。
「・・・・・失礼いたしました。
こちらへどうぞ」
店員のさっきの声とは裏腹に、高くも低くも無い声で言った。
「有難うございます」
リリーが一言言った。
歩くこと10分。
「ずいぶん長い通路ですね・・・」
アレンが呟く。
「はぁ・・・
店長がそりゃまた大金持ちでしてね・・・
部屋は使っていないのもあわせて数え切れないほどあります」
「とても大金持ちな店主さんなんですね・・・」
レイアが辺りを見回しながら言う。
「・・・着きましたよ」
店員が一つの部屋の前で足を止めた。
コンコン・・・
店員がドアをノックする。
「店長!!
お客様がいらっしゃいましたよ!!」
店員が大声で言う。
「・・・あら・・・
急なお客様ですわね・・・
いいわ・・・お入りなさい」
ドアの向こうから淑やかな声が聞こえて来た。
「失礼いたします」
カチャ・・・
店員がドアを開けた―――。
「・・・ええっ!!!」
レイアが叫んだ。
「・・・レイア!」
リリーが小声で言う。
「・・・店長、お客様が8人ほどお見えになりました」
店員が頭を下げて言う。
「此処まで送って来てくれて有難うね・・・
貴方は仕事にもどりなさい」
そういうと店員は素早くドアを閉めて去った。
「・・・私に何の御用かしら?」
畳に座って紅い着物を身に纏っている少女。
此処はドイツだというのに。
何故日本文化?
「・・・はぁ・・・
ティアナ・カロリーナさんでいらっしゃいますか?」
アレンが言う。
「・・・そうですが?
私に何か御用でしょうか?」
そういって少女が振り向いた。
蒼白くメイクされた顔。
まるで歌舞伎役者のようだ。
「美味しそうな人が来ましたわね・・・」
彼女はニヤリと笑い、座敷から姿を消した。
プシュッ・・・
0.1秒も立たずにアレンの首筋から流血する。
「?!」
アレンは何が起きたのか分からず、後ろに振り返った。
彼女はペロリと舌なめずりをする。
口周りが紅く染まっていた―――。
第4夜
「想像していたのと遥かに違うわ・・・
エクソシスト
さすが適合者様・・・」
彼女は笑う。
身長が異常に高いため、余計に怖く見える。
「い・・・今・・・血吸ったよね・・・」
レイリーの顔が真っ青になる。
「わっ、私!!トイレ行ってきます!!!」
リリーはそういうと部屋を飛び出した。
「あっ!!!ずるいわリリー!!」
レイリーは後を追わずに叫んだ。
{見た奴を逃がすんじゃないわよ}
店員達に指示を送った店長。
もちろん店員以外誰にも聞こえるはずは無い。
「・・・この白髪の下僕がこれだけ美味なのね・・・
エクソシストがどれだけ美味か底が知れるわ」
彼女はそういうと座敷にもどる。
「・・・特に貴女と貴方が」
彼女がセリーヌとリリーを指差す。
「・・・阿保ね・・・貴女」
セリーヌがそれに答えるように言う。
「な、何ですって?」
「貴女は阿保ねって言ってるの・・・
貴女も『適合者』なんだから自分の血吸えば?」
セリーヌが言う。
「・・・プッ・・・
アハハハハハハハハ!!!!」
彼女は突然笑い出す。
「自分の血を吸えばいい?
バカみた・・・・」
「詳しい説明は後にしてもらえる?」
リリーが言う。
ジャランッ・・・!!
金属が掠れあう音がした。
彼女は驚いて後ろを見ると・・・
「な、何コレッ!!!」
手首に銀色の鎖が巻き付けてあった。
「と、取れないじゃない!!!」
じゃらじゃらと鎖を鳴らして取ろうとする。
「・・・無理に取ったら肉が剥げますよ」
鎖で手首を固定したのはレイア。
イノセンスを発動していたのだ。
「・・・ヤリィ♪」
レイリーがレイアに言った。
「此処まで出来たら連れてくしかねーだろ」
シフォンが呟く。
「連れて行くさ・・・」
ラビがシフォンに追い討ちをかけるように言う。
「・・・連れて行く・・・?何処に・・・?」
彼女、ティアナは言う。
「・・・教団・・・
黒の教団によ・・・。
貴女がイノセンスの適合者だと分かったのよ・・・
間もなく貴女を黒の教団に連行するわ」
レイリーが言う。
「はぁ?!
冗談じゃないわ!!!
私がエクソシストになれっていうの!?
ふざけんじゃ・・・・」
カクンと首を落としたティアナ。
「・・・気絶させましたぁ♪」
そう笑っていうのはセリーヌ・・・
「じゃ連れて行こうか」
リリーがそういうとセリーヌもレイアもイノセンスを元に戻した。
第5夜
「ふざけんじゃないわ!!!
私が16歳?!私は11歳なのよ!!!」
縛り付けられたティアナがバタバタと足をばたつかす。
「でもこの戸籍に書かれた年齢は16歳・・・
そして・・・一昨日で17歳ということになるわね・・・」
リナリーが戸籍の紙を見て呟く。
「・・・17歳なのに12歳?」
ファルが呟く。
「・・・多分ですけど・・・
ティアナさんはなにか大事故とかにあって・・・
一部の記憶を無くしてるんじゃないんでしょうか?
そしてその取り戻すはずの記憶を偽造されて・・・」
レイアが自分の考えを述べる。
「それが一番考えられるだろうね。
というより、原因はそれしかないさ」
コムイが言う。
「・・・はぁ?!
そんな事故経験した覚えないわ!!!」
ティアナが怒鳴り声を上げる。
「ティアナ・カロリーナ・・・
君は今日から12歳から17歳として生きて貰おう・・・
そして君は今日からエクソシスト。
この服を身に纏って今日から働いてもらう」
リナリーが一着の洋服を持って来る。
一見着物のような袖。
締まった黒いミニスカート。
左腕にエクソシストの証である、十字架のマーク。
靴は下駄の様なサンダル。
「着物を着ていたって聞いたものでね・・・
着物モチーフに作らせたんだが・・・」
コムイがメガネを上にあげて言う。
「・・・その洋服・・・
有り難く貰わせて頂くわ・・・
着替える場所は?」
ティアナが口を開いた。
「今日から君の部屋となる場所だ。
それに着替えたらすぐに司令室に来てくれ。
リナリー、部屋に連れて行って上げなさい」
コムイが言うとリナリーは黙って歩き出す。
「私に着いて来て」
と。

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