― 君と出会えた日― 名の無い少女 作者/浜頭.悠希...〆

第27夜



「・・・セリーヌはいつもそうですね」


アレンはセリーヌの肩越しに言う。


「僕等の何が嫌なのか・・・
 何が気に入らないのか・・・

 教団に居た時もずっと言わないで・・・」

アレンは微笑んだ。


そんなアレンの肩を掴んで、セリーヌはアレンの肩から顔を離した。


アレンの首の後ろに手を絡めて、アレンの唇にキスをした。


そして何も喋るコト無くアレンを離し、後ろの空へと飛んでいく。


アレンは驚いて後ろを振り返る。



「セリーヌ!!!」


名前を呼んだ。



「あはは・・・♪

 アレン、私世界を変えて来るよ・・・
 私はもう無くなっちゃうかもしれないけど・・・」

セリーヌは笑いながら言う。


「!!!」

アレンの顔色が変わる。


「私が居なくなっても・・・
 アレンは伯爵達に立ち向かい続けて・・・?

 そして・・・

 リナリーも目を覚まさしてあげる・・・
 なんなら髪を元に戻してあげてもいーんだよ?」


セリーヌはもう一度笑う。


「やめろ!!!・・・セリーヌ!!!」


「あはは♪
 すぐに帰ってくるよ・・・

 次は会えないかもしれない・・・・だけど・・・

 大好きだったよ・・・アレン」

天使のように白い羽を舞わせてアレンに近付く。


もう一度優しくキスをした。


「じゃーね・・・

 また会えたら・・・会おうね・・・



 さよなら・・・」

セリーヌの目には涙が浮かんでいた。


セリーヌは空の大きな光の中に姿を消した。



第28夜



光の中で少女の髪が戻っていく。


長い茶髪が抜け落ち、短い黒髪に染まっていく。


そして両手には淡い光を放った丸い物を持っていた。




―セリーヌ・レドリア


彼女はたった1人の少年の言葉によって世界を変えた女。


少年の想いを彼女が受け止めたからでこそ、出来た事なのかもしれない――――。


光の中でスルリと靴が融けて消えた。


透き通るような白い肌。





白く淡い光は彼女を包み込む――――。



アレンはそれを黙って地上から見つめていた。



満月の夜「少女の帰り」



眩しい光は全てを包み込む―――。





淡い光の中。


中心に居る少女はゆっくりと目を開けた。


「セリーヌ!!」


叫んだつもりのアレンの声は誰の耳にも届かなかった。


「・・・セリーヌ・・・」

口パクだけで、何も聞えない。


そんなアレンを見て少女は此方を向いた。


彼女はニコリと笑いながら、遠い眩しい光の中に消えた。


彼女が通った道筋には、白い羽が舞っていた。



アレンは少しずつ眩しくなっていく光に目を開けて見ていられる事が出来なくなった。






気付けば、そこは元の場所。



大空が少年達を見下ろしていた。


丸く寝転がる少年少女達。



アレンの左隣はラビ、右隣はリナリー。


でも、大切な誰かが居ないことに気付いた。



「セリーヌ!!!」


アレンはハッと起きて言う。


遠くにセリーヌが仰向けになって寝ていた。


アレンは起き上がってセリーヌの元へと走る。




「セリーヌ!!しっかり!!」


アレンはセリーヌを抱き起こす。


「・・・ん・・・」


セリーヌは青い瞳をゆっくりと開けた。


「セリーヌ・・・!!」

アレンは言う。


「あはは・・・戻って来ちゃった・・・
 ただいま・・・アレン・・・」


セリーヌの目から一筋の涙が零れ落ちた。


そしてセリーヌはすぐに目を閉じた。


「セリーヌ!!!」


彼女は白いツヤのある手をパタリと地面に落とした。


「・・・ッ・・・
 お帰り・・・セリーヌ・・・」


アレンは握っても返らないセリーヌの手を握りながら、セリーヌを強く強く抱き締めた。


「・・・セリーヌ・・・」


セリーヌの白い頬にアレンの一粒の涙が零れ落ちた。


-第一章end-