― 君と出会えた日― 名の無い少女 作者/浜頭.悠希...〆

第21夜 ―レイアside―



人間に感情が無ければ・・・



こんな思いはしないはずだけど・・・



こんな愉快な仲間達に出会えた事も・・・・






無いんだよね――――。



「レイア!!!レイアってば!!!」


私の名を呼ぶのはリリー。


どうして?



どうして・・・私を追いかけて来るの?


「ついてこないでよッ!!!」


悲鳴に近い声で叫ぶ。


というより、泣き叫んでいたかもしれない・・・



「嫌よ・・・
 レイアが止まるまで・・・私は追い続けるわ!!!」

リリーが負けじと叫んだ。


ずっと教団内を鬼ごっこしていた。



廊下を駆け抜け、食堂を駆け抜け、誰かの部屋の前と駆け抜けて――――。





最後に着いたのは、リリーがいつも居る、教団のすぐ下にある花畑だった――――。


「・・・どうして・・・なんで・・・?
 なんで・・・なんで此処に着くの・・・??」


バサッ・・・!!


柔らかい新緑の草の地面に膝を落とす。


奪うつもりは無い、奪うつもりはないの―――。


でも、奪ってしまうような・・・そんな気がして・・・


―リリーside―


「・・・レイア・・・!!
 どうしてあんなコトをしたの・・・?!」

リリーが息を切らしながらいう。


「決まってるわ・・・
 セリーヌ・レドリアから奪いたいものがあるんだもの・・・」


レイアは驚くほど低い声で言った。


「・・・奪いたいもの・・・?」


「そう・・・
 あんな奴は気楽で・・・本当にいいわ・・・

 何も感じてないように見えるわ・・・私には・・・
 そんなアイツが憎い・・・憎い・・」

レイアの声がだんだん悲鳴に近くなって行く。


「だって・・・だって・・・!!!
 私も好きなんだもん・・・!!

 感情に勝てないんだもん!!!

 奪いたいって感情・・・抑えられないんだもん・・・!!!」


レイアが泣き叫ぶ。


「恋愛感情・・・
 リリーさんにはそんな感情・・・ないんですか・・・?」


あるといえばある・・・



―――――ラビ――――。





「・・・あるといえばあるよ・・・?
 抑えきれないけれど・・・抑えてる・・・

 誰かが自然に抑えてるよ・・・

 だから奪おうとなんて思わない・・・
 ただ、その人が笑っているだけで私はいいの・・・」


リリーが呟いた。


「・・・私にはそんな事無理・・・
 好きな気持ちを抑える・・・そんなコト無理・・・

 私の方がずっと・・・辛かったのに・・・」


レイアの目から滴り滴り涙が零れ落ちる。


「私は過去に何があったか分からない・・・

 だけど・・・
 誰も人を好きになっちゃ駄目なんて言ってないじゃない・・・

 だから・・・抑えるだけ抑えて・・・
 後は開放していていいんだと思う・・・


 私だって・・・そうだから・・・」


リリーは少し遠い目をした。


「・・・私・・・
 アレンさんがすきなんです・・・

 奪うつもりは無いけれど・・・」


レイアが言った。


「!!!」


私の聞き間違いかと思った。



でも、何回確かめても聞き間違いじゃぁ無かったんだ・・・・


「あはは・・・
 私は私で頑張ります・・・

 だからリリーさんも頑張って下さい・・・」

レイアが涙を拭って笑った。



―ラビ―


愛しい君の顔が浮かんだ。



今手を伸ばしたら君に届きますか―――?



ねぇ―――ラビ・・・。



第22夜 ―ティアナside―



「あ~あァ・・・
 ・・・新米くんを出すのが悪かったかなぁ~?」


ロードはぐったりとしているティアナを担いだ。


「・・・違うかぁ・・
 コイツが『能ナシ』なだけかぁ・・・」


ロードが口を裂かして笑った。






―気が付けばそこは伯爵邸。―


「!!」


私は気が付いてふと体を起こした。


隣の机には綺麗にたたまれたリボンが置かれていた。


私はふと頭を触る。



カールは解けてリボンがない。


「・・・あぁ・・・そっか」


リボンつけてると寝れないから取ったんだ・・・



リボンを手に取り、正面の鏡に向かって歩く。


身長を軽く越した大きな鏡が私の姿を映す。


サラリとカールの掛かっていない深緑色の髪にそっと触れてみた。


光を帯びた長い髪。



私ははっとしてリボンで髪を結ぼうとした。


だが掴んだリボンはスルリと手から抜け落ちる。



床に落ちたリボンを拾い上げて髪に結んだ。





部屋を出て、皆が集まる部屋へと急いだ。


廊下に歩く音が響く。



コンコン・・・



キィ・・・


私は大きくて重い扉にそっと手を掛けた。



「来たぞ千年公」


ティキが言う。


私を迎えたのはノア達の冷たい視線だった―――。



第23夜 ―セリーヌside―



「・・・落ち着きましたか?」


アレンが言う。


「・・・うん・・・
 でも・・・離さないから・・・///・・・」

セリーヌが照れながら言う。


「こっちだって・・・
 離す気なんかありませんよ」

アレンが耳元で言う。



「すいませーん・・・・お2人さ~ん」


レイリーが会話を切り裂く。


「レ、レイリー・・・」


セリーヌが恐る恐る言う。


「ラブラブ中の所すいませんがー・・・
 セリーヌのその怪我・・・いい加減に治療したら?」

レイリーがセリーヌの怪我を指差して言う。


「あ・・・そうだね・・・」


「でも医療班の人居なくないですか?」


アレンが辺りを見回して言う。


確かに医務室はしーんと静まり返っていた。


「・・・ハァ・・・ハァ・・・」


すると、ドアの方から息が切れた女の人の声が聞こえた。


「ふぅ~・・・」


リリーが額に流れた汗を拭いながら笑った。


「リリー!!」


セリーヌは叫んだ。


「あはは・・・
 レイア追っ掛けてたらいつのまにか此処に・・・」


そう証言するリリーは何か隠している様にも見えた・・・



「・・・医療班の人・・・
 みーんなあっち行っちゃってたよ・・・?」

リリーが言う。


「あっち・・・?って・・・」


レイリーが首を傾げる。


「なんかぁ・・・
 任務から帰って来たシフォンが・・・

 血だらけで血の道筋作って歩いてたんだって・・・

 そんでなんか突然廊下で血噴いて・・・
 倒れちゃったらしい・・・

 そんで動かすのは危険だからって・・・
 医療班の奴等全員掛かりでシフォン手当てしてた・・・」


リリーが言う。


「それ大変じゃん!!!
 私達も行かな・・・」


ズキリと頭が痛んだ。


「・・・痛ッ・・・」


私は頭を抱えて膝を落とした。


「セリーヌ!!」


アレンが叫ぶ。


「大丈夫・・・大丈夫だよ・・・ッ・・・」


血が滴り滴り落ちて行く。


どうやら傷口がまた開いたらしい。


「・・・痛ッ・・・」



バサッ・・・


ゆっくりと前に倒れた。