― 君と出会えた日― 名の無い少女 作者/浜頭.悠希...〆

第24夜
「セリーヌ!!!セリーヌ!!!」
意識が飛んで行く。
声が変になっていくような気がする・・・
「セリーヌ!!しっかりして!!!」
レイリーの声も
「セリーヌ!!!」
アレンの声も
全て、丸まって消え去るように―――。
目を開ければ、蒼白く細い三日月が浮かぶ場所。
何処だろう・・・
思い出せそうで思い出せない、そんな場所。
すると、誰かの泣き声が耳に入った。
「・・・どうして・・・?」
泣き叫ぶ誰かの声。
振り向けば、長い深緑色のドレスを身に纏い、頭に大きなリボンをしている少女。
崩れて水に沈んだ建物の水に沈まり切らなかった建物の片隅にちょこんと座って泣いていた。
「ウウッ・・・ッ・・・」
深緑のブーツは水に流されて片方しか履いていない。
「・・・ファル!!!」
呼んだつもりだった・・・。
「ファル・・・?」
声が出ない。
「セリーヌ・・・レイリー・・・
リリー・・・ラビ・・・シフォン・・・レイア・・・」
エクソシストたちの名前を呼んで行く。
「ファル!!!ファル!!!」
名前を呼ぶ。
声は出ない、ただ口パクだけ――――。
「帰りたいよ・・・帰りたいよぉ・・・」
帰って来たいなら帰って来なよ・・・
「帰れないよ・・・帰れないよぉ・・・」
何故―――?
帰りたいのに帰れない――――?
「助けてぇ・・・助けてよぉ・・・」
ポチャン・・・
涙が水面に零れ落ちた。
「・・・皆ぁ・・・・」
そう言って景色は渦のように歪んだ。
―そして戻るは元の世界―
第25夜
ピッピッピッピッ・・・
部屋に鳴り響く、機械音。
「セ・・・セリーヌ・・・?」
誰かの期待の声。
温かい温もり。
此処は―――――?
私は思い瞼をそっと開けた。
「セリーヌ!!!」
リリーが叫んだ。
何故か視界がぼやぼやとぼやける。
「・・・セリーヌ・・・よかった・・・・・・」
アレンが涙ながらに言う。
「・・・・ア・・・・レン・・・?」
手をゆっくりと動かす。
アレンはその手をギュッと握った。
「・・・本当に・・・よかった・・・」
ベットのシーツに涙が染みる。
「どうしたの・・・アレン・・・」
安心したのか、セリーヌは微笑んだ。
私の手をおでこにやって黙るアレン。
後ろにいるリリーは涙を零していた。
「めっ・・・目が覚めました!!!!」
レイリーが誰かに忙しそうに言う声が耳に入った。
「・・・ねぇ・・・皆ぁ・・・
何で皆で泣いてるのぉ・・・・?
どうしたのぉ・・・?」
セリーヌの言葉にリリーが唇を噛んでアレンを退けた。
「・・・バカッ・・・バカぁッ!!!
セリーヌのバカぁッ・・・!!!
皆がどれだけ心配したと思ってるの!?
一時セリーヌ死んだんだよ!!!
心臓止まって・・・!!!
あの機械の数字が0になったんだよ!!!」
リリーが悲鳴に近い声で叫ぶ。
いや、もう悲鳴かもしれない――――。
「それ・・・どういう・・・こと・・・?」
セリーヌが今にもかき消されそうな声で言う。
「セリーヌが・・・ッ・・・
一時死んじゃったんだよぉ・・・
そんで皆で泣いてたんだよぉ・・・
そしたら・・・
ピッピッピッて機械が鳴り出して・・・
セリーヌが目を開けたんだよ・・・
皆嬉しくて嬉しくて・・・
だから皆セリーヌの為に泣いてたんだよぉ・・・」
リリーの目から滴り滴り涙が零れ落ちる。
「そう・・・なんだ・・・
御免ね・・・皆ぁ・・・・・・」
セリーヌが笑った。
「お話中すいません、体の具合はどうですか?」
覗き込んで来たのは1人の白衣を着た少年。
その顔はまさに美少年と言える。
「・・・はい・・・
とても良いです・・・」
セリーヌは言った。
「そうですか・・・
では、麻酔とってもよろしいですか?」
少年は言う。
「・・・取って下さい」
セリーヌは微笑みながら言った。
しばらくして、麻酔の機械等が外され、セリーヌの周りに機械は何も無くなった
第26夜
麻酔がまだ効いているのか、体が重い。
「まだ麻酔切れてないみたいですね・・・
明日には切れると思いますけど・・・
外に出ますか?」
「・・・出たいです・・・」
セリーヌは迷い無く即答した。
「では・・・
気分悪くなるなど、そんなコトがありましたら医務室においでください・・・」
少年は笑った。
「ありがとうございます」
セリーヌはベットを降りる。
「え?!
もう降りて大丈夫なの?!何処か痛くない!?」
リリーが慌てながら言う。
「大丈夫・・・
ちょっと体が重いけど・・・
まぁペナルティ食らったからなぁ~♪」
セリーヌが涼しい顔をしながらアレンを横目で見た。
「え?何それ・・・ペナルティって・・・」
レイリーが言う。
「あはは♪なんでもなーい♪」
セリーヌが笑った。
「・・・もしかして!?」
リリーが大声で言う。
「・・・・・・?」
リリーとセリーヌ、内緒の対談(ハ
「・・・あったりぃー♪」
「マジで!?
私なんか碌に経験してな・・・」
「2人ともなーに話してんの?」
2人の会話を何気無くレイリーが切り裂いた。
「だーめだめだめだめ!!!
穢れ無き女の子は聞いちゃ駄目!!!」
セリーヌが言う。
「それって僕が穢したって事ですか?」
「穢れなき女の子って・・・
なんか私がセリーヌより年下みたいじゃない?
私セリーヌと同い年・・・」
「いーの!!!」
リリーがレイリーの口を塞いだ。
「わー!!!ペナルティーだぁ~!!」
セリーヌが大げさに叫ぶ。
「わーわー♪」
リリーが楽しそうに両手を挙げて騒ぐ。
「セリーヌ!!」
アレンが突然叫んだ。
「え?な・・・」
私が振り返ると塞がる唇。
「あ!!いーなー・・・」
リリーが2人を指差して言う。
「お仕置きの10分の一です」
アレンが言う。
「え?」
セリーヌが聞き返す。
「後の10分の一は?」
「今日のよ・・・」
「わ――――――――――――ッ!!!!!!!!」
リリーが大声で叫んだ。
「な・・・何よ・・・」
セリーヌがブルブル震えながら言う。
「なんでもなかったぁ♪
いーな・・・セリーヌとアレンさ・・・
そんなーにラブラブで・・・
私なんかラ・・・・」
リリーが口を自分の両手で塞いだ。
ぽっ、とリリーの頬が赤く染まる。
「ラ・・・何!?」
セリーヌとレイリーがリリーに大声で言う。
やっぱり同い年だからか、考えることは同じだった。

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