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第12話「しぜんこうえんのむしとりたいかい」パート3
ヒビキ現在の手持ち
アリゲイツ、オオタチ、イシツブテ、オニスズメ、メタモン
コンパンと別れた後、むしポケモン探しを再開する。草むらを掻き分けて探していると、
「ねえ、そこの君」
「あん?」
女性の声が聞こえて来た。振り向くとそこには艶やかな一人の女性が自分を見ているのが解った。
淡い青の長髪にふくよかな大きさの胸。黄色のキャミソールに銀のパンツ、その瞳はクールでミステリアスな大人の女性の魅力を醸し出していた。
「ふふ、少し君に興味を持ったの。何をそんなに夢中になって探しているのかしら?」
少し前をかがめて聞いてくるその女性にヒビキはむしとりたいかいのことを話した。
「お姉さん、今俺、むしとりたいかいに参加しててさ、むしポケモンを探してるんだよ」
「あら、たいかいに出てるの?それで、どんな子をゲットするの?」
「何って、たいかいとなりゃあやっぱ強えむしポケモンだろう。その方が点数もいいからさ」
「そう・・・」
嘘のない正直な顔で答えるヒビキに女性は感心するも、どこかがっかりしたような冷めた顔になった。
(やっぱりこの子も強いポケモンだけにこだわる、そこらのトレーナーと同じかしら・・・)
しかし何故かヒビキの近くを放れず、彼を見守っていた。
しばらくしていると、ガサッと草むらが揺れて、くわがたポケモンのカイロスが現れた。
「お、こいつは強そうだ。頼むぜ!」
ヒビキは頭に乗っているメタモンにカイロスにへんしんさせた。へんしんしたメタモンはカイロスのシザークロスをかわすと、その胴体をはさんで投げ飛ばした。
「よし、ここでこいつだ!」
コンペボールを投げてヒビキはカイロスをゲットに成功する。
「いよっしゃあ!捕まえたぜ、これでいい成績になる・・・・あれ?」
するとポケモン図鑑がピピっと鳴り出した。見てみると、
「あれ、もうゲットしてるだって?」
よく見るとカイロスの前にもうポケモンをゲットしてあると言うメッセージが書かれていた。何のことか解らないヒビキだったが、
「君、頭に何か乗ってるわよ?」
淡い蒼髪の女性が何かに気付いて、ヒビキに頭に何かいることを指で差した。
「え、頭に・・・、そう言えや何か頭が重てえと思ったら・・・」
頭に乗っている何かを持ってみると、
「お前だったのか、こいつ、いつの間に!」
その正体はさっき怪我を治してあげたあのコンパンだった。足に巻いた布からすぐに解った。
「そうかお前、あの後、俺に付いてきて・・・」
あの後、コンパンはヒビキにこっそり着いて来て自分の頭に乗っかったのだ。
「お前、俺に恩義を感じて、いやまさかな。なあ、お前俺と一緒に旅がしたいか?」
ヒビキが瞳を見て言うと、コンパンは頷いた。それを見てヒビキはカイロスをボールから出して自由にした。
「あら、逃がしたの?」
「ああ、もうこいつがいるしな」
「いいのかしら、貴方強いのを探してたんじゃ・・・」
「いいんだよ。俺を慕って付いていくって決めたみてえだからさ。もう優勝も成績も関係ねえ。こいつで出来る限り頑張っていくさ」
さっきまで冷めた顔をしていた女性は微笑を浮かべてヒビキの頬を指で押した。
「貴方、素敵ね。いいトレーナーよ。ポケモントレーナーとしてポケモンのことをしっかり考えてるわ」
「それって何だ?」
その女性は空を見上げて語りだした。
「強いポケモン、弱いポケモン、そんなの人の勝手。本当に強いトレーナーなら好きなポケモンで勝てるように頑張るべき。貴方はそれを良く理解している、いいことよ。そうだわ、大事なことを知っている貴方にこれを渡すわ」
その女性はヒビキにある物を渡した。それはどこにでもあるような普通の石だった。
「おねえさん、この地味な石は何だ?」
「それはかわらずのいし、持たせるとそのポケモンは進化しなくなる変わった石よ。進化もいいけれど、世の中にはそのままの姿で頑張る人もいるの。貴方に今のままでいて欲しい子がいたら使ってみて」
そう言うと、その女性はヒビキに手を振ってこうえんを去ろうとした。
「待ってくれよ、お姉さん。名前を聞いてなかったぜ、あんた、名前は?」
「そうね、あたくしはカリン。あくタイプ使いのトレーナーよ。君の名前は?」
「俺はヒビキ、いつかポケモンリーグに挑戦するんだ」
「素晴らしいわね、ヒビキくん、貴方ならきっとどこまでも行けるわよ。今の気持ちを忘れない限りは。それじゃあ、頑張ってね」
カリンは穏やかに手を振ってヒビキと別れるのだった。
「カリンさん、あんたのこと忘れないぜ・・・」
そして、タイムアップになり結果発表が出た。
「優勝は、コンパンを捕まえた・・・・・・・・むしとりしょうねんのヨウタさんです!!!」
見事にヒビキはランク外。三位にも届かず参加賞としてきれいなぬけがらがもらえただけとなった。でも、ヒビキは全く悔しい様子を見せなかった。
「ヒビキくん、残念だったね・・・」
ツクシは捕まえたレディバを抱えてヒビキの所に来た。
「うち、全然捕まえられへんかった・・・」
アカネは一匹もゲット出来ず、ガックシとしていた。
「ツクシくんはどうだった?」
「ああ、僕も参加賞だよ。でもいいんだ。お目当てだったこの子が欲しかったからね。優勝は関係ないさ」
「そうだな、ツクシくん、俺もそういう大事なことに気づいたところさ」
「え?」
「どうしたん、ヒビキさん?」
「さあて、俺達は旅の途中だったよな、そろそろ行こうぜ」
ヒビキ達はしぜんこうえんから出て、次の街へ向かうのだった・・・。