ダーク・ファンタジー小説

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人魚 終焉無き白夜
日時: 2012/11/16 02:18
名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: ???)  

序章

今からお話しするのは遥か、遥か昔……
この国が、まだ中世と呼ばれる時代に始まり。
今でも続いている数多の……
そんな、物語の内の一つで御座います。



ーー その若者は決して、
交錯する事の無い流れを
ただ、ただ、見て来ました。
幾つかの戦で倒れた戦友。
度々あった流行り病や飢饉で…世の中の不条理で、
酷く痩せて、米の一粒も無く息絶えた子供達……
みんなの最後を、彼は見届けてきたのです。

彼はその度に涙をこぼしました。
その終着点おわりが見えない……
孤独と苦痛の地獄を噛み締めて…………

Re: 人魚 終焉無き白夜 ( No.37 )
日時: 2013/04/18 06:20
名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: NTjRWWeg)  

第拾四ノ巻 惨憺なるもの

その二人は言った。
我々が残酷で悪と言うのならば、汝ら人間は何だ?
四世紀近くも、狂気を生み出し続ける
「魔女へ与える鉄槌」が支配する時代だけではなく。
いつの時代でも、どこの国でも…
絶え間ない欲望や不条理や思惑が常に渦巻き、
平安の世ですら、決して幸せとは言い難い
この世界の真実。 或いは真理を。
汝らは拒絶して嘘を付き、さらなる嘘で塗り変えていく。
実に強欲で悲しく、愚かな、浅ましい種族なのだと。
最早、底は割れているのだと…
人間の方が余程、残忍で悪意を孕んでいるのだと語った……。

ー いずれにしても……
  人間は、忘れたものへの対価を支払わねばならぬ。
 それが、いつなのか…… ー

ー そして、どんなものを代金として支払うのかは秘密。
  てか。 具体的なところはオレらも知らねぇし ー

あの、全てを見透かしたかのような冷たい眼差しと、
挑戦的で嘲笑っているかのような眼差しは、
今でも、この老いた脳裏に焼き付いて離れない程、
あまりに恐ろしく、死を覚悟した程に印象的であった。

そして、彼ら自身ですら預かり知れない。
等価交換とやらは? 忘れられた何かとは?
それが、何なのか?

その答え真実を彼らが隠していたとしても、
決して、それを語る事はあり得無いだろう。

そして……
彼らは今も世界のどこかで、
わしらを嘲笑っているのやもしれない。
きっと、どこかで……

1642年 6月12日 ミュンヘンにて

我、マテウス助祭 ここに記す

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


1945年4月30日 ベルリンの地下壕

「あっけない幕切れだな。
 画家志望だった……閣下? 」

「ふん。
 よくも、ぬけぬけと言いおってからに…… 」


のちに二十世紀最悪と呼ばれる独裁者は、
忌まわしげに声だけがこだまする虚空を睨みつける。
しかしながら、そこには誰一人として存在せず
ただ、如何にも怪しげな呪文が記されただけの羊皮紙が中に浮かんでいた。

「……悪いが、この紙に書かれたこと以外は喋んねぇぞ。
 小僧…… 」

「それぐらい、わかっておるわ!
 それで……
 お主は余を嘲笑う為に“コレ”をよこしたのか? 」

「悪いのか?
 ……じきに死ぬが、気分はどうだ? 最悪だろ?
 だから、言っただろう?
 何かを得る為の対価と契約内容は、
 それ相応のものを料金として支払わねぇといけない…
 故によく考えろ、とな 」

「そうやって……
 貴様らのけん属は我々、人間を嘲笑いながら葬り去ったのか? 」

「……それは、運命という必然だ。
 画家になれたとしても。 軍人のままだろうと
 いずれにしても。
 てめぇは今日、死ぬのが定めだった……
 …ま、ようは寿命だ 」

「終焉か……。
 それが、運命と言うのなら仕方ない… 」

「じゃあ、地獄の女王様ん所に行けば?
 三日くらいは、忘れねぇでやるから 」


いい加減で適当な口調で喋る羊皮紙は、
投げやりに「あばよ 」と言うと、
ふぅ…とインクが水に溶けるかのように文字が空気の中へと消えていった。

「まったく、最後まで悪質な嫌がらせか。
 あの忌々しい悪魔め!!
 ……エヴァ。 すまん、今そっちに行くぞ 」


タンッ!!


続く


後書き

お久しぶりです。
最後に出て来たのは史実の……
名前を呼ぶのも恐ろしい 例のあの人ですね。

Re: 人魚 終焉無き白夜 ( No.38 )
日時: 2013/04/29 22:48
名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: NTjRWWeg)  

幕間 独裁者の契約

まず、私の実体験から「奴ら」は間違いなく
当たり前に、この広い世界に有り。
当たり前に、跳梁拔こ(ちょうりょうばっこ)しているのだ。

かの者らは人間社会に紛れ込む事を好む。
何故ならば、七つの大罪とさえ言わるる人間の欲望に漬け込み、
相応の差し出す対価による等価交換で取引と契約を成し。
奴らは何らかの利益を得ているからだ。

その契約や取引きも個々によって異なるが、
奴らにも、可能と不可能も存在しており。
契約そのものも、魔女狩りの時代に信じられてきたそれではない。

その内容は、至って単純である。
何を強く願い。
その願いに応じた対価を差し出せるか。
それで、可能な限りの欲望を叶えるという。


若かりし頃、私は願った。
「世界に私を認めさせ。
 このアドルフ・ヒトラーの名を歴史に残せ 」とな……

それを聞いた奴は言った
「その願いの対価として、支払うのは何か? 」

私は答えた。
「平坦でつまらない日々を支払う 」

そして……
如何にもあやしげな羊皮紙に血印を押した。

「契約整理だ。
 ただし、行き着く道は自分で選べ。
 結果次第では、幸福か不幸かのどちらかになるだろう 」

確かに、世界に私の存在を轟かせれた。
そして、歴史にも残るであろう……
ナチスドイツの総督として、非難の声を浴びながらな……っ!

「ーー よくも、ぬけぬけと言いおってからに…… 」

何という様だ……っ!
何故、私がこんな目に!?
このような幕切れは、あってはならん……!!

「ーー 運命という必然だ 」

それが予め決められた命……
奴とかかわらなくとも。
どうこうしようとも、今日の此の時間に死ぬ。
それが、私の運命であり寿命なのか……

それなら、仕方ない……
さあ、エヴァ……
お前のとともに地獄巡りでもしよう。

タンっ!


続く

後書き

お久しぶり?です。

Re: 人魚 終焉無き白夜 ( No.43 )
日時: 2013/05/08 19:02
名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: tVCgD/M1)  

今、思えばあの人間達は実に哀れな者らだと思う。
己の存在を認められる事を願いながら、
それを誠に正しい事に使えなかった事。
多くの人間を死に追いやった事が、己の最大の失敗だった事に気付けなかった事。
それこそが、願いの使い方を誤った……
利己的な感情に流されて身を滅ぼした者の末路だと知りもせずにな。

第拾伍ノ巻 願いの使い方

August1638.13(1638年8月13日 )
ドイツ さる平原にて ーー

「ーー さあ、選ぶが良い……
 己の犯した罪を償い。 僧侶らしくつつましく余生を暮らすか……。
 今、此処でもの言わぬ骸となり。
 生者でも死者でも無いあの女に裁かれ、苦しみと激痛の責苦にのたうちまわるのかを…… 」

「てめぇらの教義で言うゲヘナでな…… 」

「!?
 き、き、貴様っ!!
 神に仕えし、神聖なる余にむかって!! 」

神に仕えし、か……。
数多の前世でも、似たような宗教や信仰はあったが……
この世界の、あの時代程…
排他的で狂気に満ちた宗教は記憶にはない。
唯一神、数多の神々、精霊
そして、我々悪魔を祀ろうと、信じようと。
それは、その人間の勝手だ……

それに…………
教義とやらで「隣人を愛せ」と言いながら。
自分の価値観を他人へ押し付け、奪い、殺戮を行うのは何故だ?
その宗教を信じぬ者は人間ではない?
我々、悪魔は性格・姿共に醜悪で人間を堕落へと陥れる?
くだらん……
ならば、汝ら人間は何なのだ?
確かに我々は残酷且つ狡猾で、数々の人間を陥れたかもしれん。
だが、それ以上に人間は残酷で狡猾……
そして、欲深く利己的な生き物だと気付きすらしない。
それをさらに輪をかけた少しばかり頭が残念な。
アンドレー神父とやらのどこが神聖で、神の使徒なのだ?

「ぶ、ぶ、ぶ、豚だとっ!? 」

「おう、そうさ。
 ひとかけらのパンも無くて。 沢山のガキんちょが、ガリガリに痩せ衰えて死んでいき。
 大人も飢えで泣いているというのにさ、
 何故…金がねぇからっていう理由で助けてやらねぇんだ?
 それが、神の使途とやらがやる事なのかい?
 それに、その樽のような体にオークよりブサイクな面……
 黒い髪があるだけの、豚そのものじゃねぇか! 」

そして、さらに兄は言った。

「悪魔は、残酷で狡猾?
 結構だっ!! 確かに俺らはワルだし、契約も取り引きもしてる。
 だが!
 金がないからって、何にもしねぇクズのてめぇよりも。
 契約でも何でも。 ちゃんと、手を差し伸べてやれる。
 あくまの俺らの方がよほど優しいだろう…豚君?
 ク、クク、クハハハっ……!!! 」

「あ、悪魔が何をほざく!?
 そうやって、子羊を…お、陥れたのだな!!
 よし、お前らかかれい!!! 」

救えない。
行き過ぎた正義、行き過ぎた信仰、行き過ぎた奢り
そして、欲望……
奴のには、何の救いなど無い塵。
そう、思った瞬間。 私は背に携えた大剣を抜き
その腐った両の腕を切り落とした。

「!?
 ぎ…ギィアアアアアぁぁっ!!!! 」

「黙れ、高慢なる暴食者グラトニー……!
 貴様には、生きている価値など塵ほどもない 」

「ば、化け物め……。
 それは、きーーー 」

もう、何も話すな……
その腐臭がする口をつぐむが良い。
そして、逝ね………

「ーー ブゲっ! 」

「あ、アンドレー様!!? 」


続く

後書き

ユーラク製菓の「ブラウニーブラウニー」
50円なのに、美味いっ!

Re: 人魚 終焉無き白夜 ( No.44 )
日時: 2013/05/10 02:33
名前: カササギ ◆rhoe5fMxhU (ID: tVCgD/M1)  

第拾六ノ巻 銀髪鬼

それは正に一瞬の出来事であった。
無感情な青年の、その抜剣は瞬ひとつよりも疾く。
太刀筋どころか、抜き身すら見えなかったのだ。

命令をくだされると共に兵士達が槍や剣を構えた瞬間。
アンドレー神父の両腕が突然、鮮血を吹き出し。
肩の付け根から、まるで木の枝のようにボトリと地面に落ちた。
己の身に何が起こったのか、理解するのにそう時間はかからず。
腕を斬られた事に気づくと同時に、凄まじい痛みがアンドレー神父を襲った。

「!?
 ぎ…ギィアアアアアぁぁっ!! 」

よもや、これほどとは。
幾らかばかり強いとは言っても、たかが二体の悪魔。
何倍もの数の兵力でおせば勝てるだろう。
そう、たかを括っていた事を
彼らを過小評価していたのだと、今になって気付いたアンドレー神父。

(この化け物が……
 何が暴食者だ! 余は神聖なる神の使途だ。
 貴様ら、悪魔ふぜいが。
 そのような口をきいて良いわけないだろうが!
 そして、何だ…
 その畜殺される豚を見るような目は……!! )
 ば、化け物め……
 それは、きーー。 ぶげっ! 」

「あ、アンドレー様!? 」

彼が罵声を浴びせるよりも先に。
一筋の光が見え、なます斬りにした弟の方は
その返り血を浴びながら、氷よりも冷たい視線を兵士らに投げかけた。

「あーあぁ……
 この豚君、てめぇで死刑台に登りやがった。
 所詮、身分に奢ってるだけはあるな 」

兄の方はやれやれとため息をつきながら、楽しそうに嘲笑う(わらう)。

「てか、死んで当然じゃね?
 飯と金とてめぇの事だけしか頭に詰まっていない
 豚以下のカスゴミなんぞ、聖職者じゃねぇしな 」

「き、貴様!
 悪魔の分際で、人間の我々に何を言う!! 」

兵士長が怒りの言葉を投げる。


「……何言ってんだてめぇ。
 人間が偉い? フザケてんのはどっちだ!?
 もう、命請いをしたって許しやしねぇ…… 」


続く

後書き

実はこのエピソードは空想で等では無く…
ルターの時代以前にも、本当に腐敗した僧侶がいました。
上辺だけなら、まだ良いと思えるほど腐った人々が……

Re: 人魚 終焉無き白夜 ( No.45 )
日時: 2013/05/10 16:19
名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: tVCgD/M1)  

第拾七ノ巻 血まみれの輪廻

生まれて、死んで
また生まれて、また死んで往く。
その生と死の境で輪廻転生という
糸車の輪ば時空を超えて、場所を超えて回り永遠の時を廻る。
全ては運命がままに……

かつて、人間であった彼らが兄弟は……
ひたすら、戦い続ける事を運命づけられていた。
それは、運命なのか。
あるいは、必然的のものなのか。
何もわからないまま、彼らは、血で血を洗う戦場にいる ーー

ーー 慟哭と憤怒、一時の安らぎと通り過ぎるものの中で彼らは戦う。


続く


後書き

いかがだったでしょうか?
数百年前から始まり、今でも続いている
ついに、プロローグで名前が明かせなかった
彼らが兄弟……。
彼らは果たして、どんな物語を紡いでゆくのでしょうか?


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