ダーク・ファンタジー小説
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- 人魚 終焉無き白夜
- 日時: 2012/11/16 02:18
- 名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: ???)
序章
今からお話しするのは遥か、遥か昔……
この国が、まだ中世と呼ばれる時代に始まり。
今でも続いている数多の……
そんな、物語の内の一つで御座います。
ーー その若者は決して、
交錯する事の無い流れを
ただ、ただ、見て来ました。
幾つかの戦で倒れた戦友。
度々あった流行り病や飢饉で…世の中の不条理で、
酷く痩せて、米の一粒も無く息絶えた子供達……
みんなの最後を、彼は見届けてきたのです。
彼はその度に涙をこぼしました。
その終着点が見えない……
孤独と苦痛の地獄を噛み締めて…………
- Re: 人魚 終焉無き白夜 ( No.94 )
- 日時: 2013/11/25 15:45
- 名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: 3JA2YsPn)
番外編 坂本龍馬と…2
昔、鍛冶屋の老婆に化けた白く大きな狼が妊婦を襲い。
ひきゃくによって一度は退けられ、
再び戦いを挑むも退治さるるという逸話が南路志にある。
しかし、真実は伝承と違っていた。
狼が老婆に化けていたのではなくて、
人と狼のいずれの姿も真のもの、そういう妖怪だったからだ。
鍛冶屋は、自らの種族の存在と真実をひた隠しにした。
妻は人間だったが、「大白毛の狼」の特性故に、
その間に生まれた子は、半妖と呼ばれる混血ではなく純粋な妖怪。
人間、半妖は決して生まれないからだ。
そんな異質な存在を、物怪を人間は認めるわけがない。
正体が知れれば、きっと母のように……
そう思った鍛冶屋は、妻子を連れて母の故郷たる隠し郷に移った。
しかしながら、とうに嫁に行った妹らは人里にて暮らした。
二つに別れた血族は各々、
子供をどっさりと産み、その子供らも子を産み。
二つの鍛冶屋の婆の血縁は、伝説を語り継いだ。
自らの祖母の最期を、種族の誇りを守らんが為に……。
しかし、それから百の星霜が経ち江戸も終わりに差し掛かった頃。
その鍛冶屋の婆のひ孫は、昆吉という名の友に無理やり連れられて。
彼は活気に満ちた人里にいた。
人里におりてはならない、という掟を破ってしまった事に不安に思った彼は。
本当に、本当に大丈夫なのかと。
行商人から買ったヨシの茎が持ち手の棒付き飴を呑気に舐める友人に尋ねる。
「なあ、昆吉。
まっことに、人間はなんちゃあないき?
お父は、人間はわしらを嫌うとるという話しじゃけえ 」
「へっ!
おまん、齢五十にもなって危ないがってるんき?
さっきから何度も、なんちゃあないと言うとるじゃろうが! 」
昆吉は、もう片手に持っている飴を未だに警戒心を緩めない友に強引に渡す。
「そりゃあもう随分、昔の話しじゃき。
ほれ! 」
その様子は端から。
霊感の無い人間から見れば、幼い童がたわいも無く
ワアワアと騒いでいるだけにしか見えなかった。
しかし、偶然。
横をすれ違った切っ先のような目の若人は違った。
「………? 」
続く
後書き
今回、坂本龍馬出番無し…………
- Re: 人魚 終焉無き白夜 ( No.95 )
- 日時: 2013/11/30 20:09
- 名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: 3JA2YsPn)
第弐拾弐ノ巻 戦乙女の騎行
その女性は酷く人間離れをした美貌であった。
膝まである太陽の光のような柔らかい金髪に。
凛とした勇ましさすら見える目は、丹念に磨いてカットされた上質なエメラルドのように鮮やか。
肌はきめ細かで透けるように白く、シミやほくろ一つ無く
小さい花のような整った唇に通った鼻すじの顔立ちは勿論。
しなやかで華奢な手足に、女性らしい体躯等の容姿が。
全てが流麗というに相応しい程に美しかったのだ。
「お…お前は……?
これ程、美しい女は見た事がな…い…… 」
堅く岩だらけな地面に横たわるは。
赤銅の髪の、まるで牛のようにいかついヴァイキング。
如何にも歴戦を感じさする風貌だが、彼は死にかけていた。
最近、徐々に勢力を増してきた。
自分らの信仰を異端者だの、邪教だのと罵る異教徒との戦いで。
大切な仲間を守る為に先陣を切り、勇敢に戦った。
腹を矢で射抜かれようと、腕をきられようとも。
彼は決して、動じず怯まなかった。
そして、勝利した。
したけれども、あまりに血を流しすぎたが為に命を失う事となったが。
彼は、その女神と出会った。
「夢を見ているのか……。
にしては、あまりに現実っぽいような…? 」
痛みと苦しみが消えたと思ったら突然と、現れた。
その女性に不思議な感覚を彼は覚えた。
その身に纏うのは綺麗な服や宝石ではなくて、
戦人の羽がついた兜と動き易さと防御を兼ねた鎧に、
細いが非常に丈夫なロングソードという出で立ち。
華奢な背中には白く大きな鳥の翼がはえている……
これはもしかしたら、戦と勝利を司る「ヴァルキリー」という女神ではないかと彼は尋ねた。
「そうだ。
私は、お前達がヴァルキリーと呼ぶ者…
そして、選定者の一人でもある 」
「は、はは……。
おれはてっきり、筋肉が隆々とした牛女と思ってたぜ…… 」
信じられないと驚愕の表情で彼は言う。
「…………選ぶが良い。
私についてきて、神々のしもべとなるか…
あるいは、死の国にゆき裁かれ。
そして、再びこの世界に生まれ落ちるかを…… 」
「付いてゆくさ。
あんたらに選ばれるなんて名誉はそうそうあるもんじゃないしな 」
「そうか……
ならば、来い。
我々の城に、ヴァルハラへ…… 」
続く
後書き
ついに、平成25年も残り1ヶ月となりました。
来年こそは、まともな年だと良いですね
- Re: 人魚 終焉無き白夜 ( No.96 )
- 日時: 2013/12/03 16:22
- 名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: 3JA2YsPn)
番外編 坂本龍馬と…3
昔、光と闇の境が曖昧で…
今ほど、天と地が離れていなかった頃。
大和朝廷の世の中よりも古い、古い時代。
今日では妖怪や物ノ怪と呼ばるる異形なる者どもは、
倭の民から、産土神として畏敬と畏怖の両方で崇められていた。
“ そんな時代 ”があった……
それは時代が下り、新たな信仰が生まれても。
大陸から仏教が伝来しても、あまり変わらなかった。
共に生きて、共に暮らす事が当たり前な日本人にしてみれば、
自然そのものと言える美しくも残酷な神々への信仰を守りつつも。
後から生まれ、あるいは来た信仰だろうと受け入れ。
西洋では悪とさるる狼も、
火伏せや魔除け、田畑を守る等の獣神として崇める珍しい民族だ。
しかし、それは……
忘れられたりや祟り神や妖怪となり果てた者を除いてのもの。
もはや、原始黎明の世のも。
スサノオが母親にあいたいと、仕事を放棄した古代も、
何もかもが遠い過去となり、全てが同じではなくなってしまった事で。
時と共に信仰が薄れた地域で、
人が彼らの境界線を破った事で人と神々との衝突が増えたり。
あるいは、信仰していた者達が戦や流行り病や飢饉で全滅したり等して。
その存在を忘れられたり。
領域を侵す人間に憎悪を募らせたり、我が子を殺されたり。
あるいは、よがめらるる等の理由で。
ある神は祟り神や悪神
ある神は、物ノ怪や妖怪となりはてた……。
“ 鍛冶屋の婆 ”
彼女も、またそうだった。
人間を慈しみ、守る優しい神だった。
しかし、鶏泥棒と勘違いされた幼い末の子供が一人の男に
一匹の野狐と勘違いされて…
白い毛が真っ赤に染まる程に無惨に僕殺された。
食べられるか、毛皮にされるのなら。
まだ諦めはついたが、それは叶わずゴミのように我が子はうちすてられた。
とめどない慟哭、憤怒、憎悪の
幾つもの感情が彼女の中で渦巻き、支配した。
「何故、我が子が狐なんぞと間違われた……? 」
「許さない…… 」
そして、一人の農夫への復讐を誓った。
農夫が我が子を殺したように、その男の子孫も。
無惨にこの牙と爪で引き裂いて、一人残らず殺しやろう。
そう誓った彼女は、祟り神へと堕ちた。
そして、南路志に記されたままに。
農夫の子孫である妊婦を、本州から呼び寄せた日本狼に襲わせたのだった。
それが、全ての始まりだった。
続く
後書き
また……
- Re: 人魚 終焉無き白夜 ( No.97 )
- 日時: 2013/12/06 21:55
- 名前: 珈琲猿 (ID: jF5f2bDU)
本編かんそー
ついにヒロイン登場www
てゆーかほんと、いろんな宗教や神話の神々が出ててはりますねwww
番外編カンソウ
これは、何かのフラグ?
- Re: 人魚 終焉無き白夜 ( No.98 )
- 日時: 2014/02/03 19:31
- 名前: 珈琲猿 (ID: jF5f2bDU)
かなり遅いdすが・・・
新年あけおめ!!
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