ダーク・ファンタジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 人魚 終焉無き白夜
- 日時: 2012/11/16 02:18
- 名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: ???)
序章
今からお話しするのは遥か、遥か昔……
この国が、まだ中世と呼ばれる時代に始まり。
今でも続いている数多の……
そんな、物語の内の一つで御座います。
ーー その若者は決して、
交錯する事の無い流れを
ただ、ただ、見て来ました。
幾つかの戦で倒れた戦友。
度々あった流行り病や飢饉で…世の中の不条理で、
酷く痩せて、米の一粒も無く息絶えた子供達……
みんなの最後を、彼は見届けてきたのです。
彼はその度に涙をこぼしました。
その終着点が見えない……
孤独と苦痛の地獄を噛み締めて…………
- Re: 人魚 終焉無き白夜 ( No.101 )
- 日時: 2014/02/06 23:55
- 名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: Ee54ZFC1)
第弐拾参ノ巻 森羅万象
倭と呼ばるる東の終わる場所にあるという小さな国では。
大陸の神々とは、また違った神々がいるといわれる。
その神々ときたら、他のどの大陸や国の神々とは違って。
高天原の神々のように人間に近い心と姿を持つ者もいれば、
狼やナマズ等、獣や魚の動物のような姿の者もいたり。
中には、様々な動物が合体したかのような異形の姿の者や
あるいは、九十九神のようなガラクタのような姿の者さえいるのだ。
その美しくも残酷で、異質なる姿の、全てのものを司る八百万の神々のいる国に。
勝利をもたらし、戦死者を神々のもとへ導く女神はいた。
ー 1185年4月25日 壇の浦 海上 ー
終焉だ。
そう思った一人の尼僧は、唇を噛み締めながら悲しみと屈辱に満ちた顔で周囲を見やる。
目に映るは、かつて赤く翻っていた己が一族と旗と
頭や心の臓を矢で射抜かれ息絶えた漕ぎ手の骸に、
死に際してもなお、誇りだけを戦い続ける一門のもののふ達の姿。
そして、誇り高き自分らを追い詰めし。
白い旗を掲げる憎い、憎い怨敵「源氏」らが進撃してくる姿があった。
「尼御前、どこにゆくのか? 」
何故、自分が都ではなくて母や祖母。
一族と共に見知らない遠い海の上で、怖い思いをせねばならないのか理解出来ない。
幼い天皇は、祖母であるニ位の尼を訊ねる。
ニ位の尼は、その問いに涙をこぼしながら幼い孫に言う。
「浪の下にも都はございます 」
短い言葉を孫へ伝えたニ位の尼は、孫と共に都から持ち出した神器を抱え込んで。
船のへりへと身を乗り出し、そして躊躇なく飛び降りた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「やはり、死を選んだか……。
しかし、よもや幼い孫を道連れにするとは…な… 」
戦乙女は壇の浦を一望出来る山から、残念そうな表情で呟く。
すると、ふいに横から若い青年が皮肉を込めた声で彼女に話しかける
「哀れってか? はっ! くだらねぇ。
侍どもにしてみれば、石にかじりついて惨めに漠然と生きるよりも。
名誉ある死を選んで、潔く散るのが亡びの美学。
てめぇら西の人間と、こっちの人間の価値観は違う 」
それが武士道だと。
これが、彼らのあり方なのだと切っ先のような鋭い目つきの青年は言う。
「そうか……。
…それで、お前は新参者と呼ぶ。
“あのお方”の子孫を助けるという話しはどうなった? 」
「アマテラスのか? ちぃ!
あの三人決めた運命から逃げられない以上は、
不本意だが、やるしかねぇだろ 」
舌打ちをし、乱暴な口調で返事を返す。
「全く、どっちが年上なんだか……。
お前の人間嫌いは今に始まった事ではないが、
少しは柔軟に合理的考えたらどうだ。
……カジキ? 」
続く
あとがき
コメント返し
>>珈琲猿さん
はい、よろしくお願いします!
- Re: 人魚 終焉無き白夜 ( No.102 )
- 日時: 2014/02/07 17:10
- 名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: 2bESk3K2)
「ふん……。
てめぇこそ、ブリなんとかつー姉きみてぇになるんじゃねぇぞ? 」
カジキは鼻を鳴らしながら憎まれ口を叩きながら踵を返す。
「……曲がりなりとはいえ、私は神だ。
お前に言われるまでもなく判かっているさ 」
第弐拾四ノ巻 生き残った少年
何故、その運命を背負ったのかを理解出来なかった。
元服した大人か、よほど利口な子供ならいざならず。
普通の、齢八の少年であった彼には。
自らの一門と、源氏が政で争っている理由も、
互いに心底、憎みあい殺し合ってきた過去も、
そして、今どうして都から離れて怖いめにあわねばならない理由も。
何もかも、何一つ、わからない。
ただわかるのは……
怖い大人達が刀や薙刀を振るって、互いに血を流しあいながら争っている事。
さっきまで、船を漕いでいた人々が何本もの矢を受けて動かなくなった事。
そして、自分の祖母と母。
周りの大人達が慟哭の涙を流している事であった。
「おお、口惜しや……
おのれ、源氏どもめぇ……! 」
憎しみと怒りの屈辱が入り混じった声で、少年の祖母は遠くに見える白い旗を見やる。
尋常ではない祖母の声色と表情を見て、不安になった少年は訊ねる。
「……尼御前、どこへゆくのか? 」
その可愛い孫の言葉をきいた二位の尼は、
さっきの険しいそれとは打って変わって優しい声色と面持ちで
孫を抱きかかえて、こう答えた。
「浪の下にも都はございます 」
ー 浪の下にも都はございます ー
ー あなた、今逝きます…… ー
(……尼御前? )
ー おう、可愛いのう。
孫は可愛いというが、これほどとは…… ー
(おじいさま!? )
ー さあ、行きますよ
私のかわいい言仁…… ー
(ははうえ! )
気がつけば、自分は都でも怖い海の上でもなく。
夜よりも暗い、暗い闇の中にある花畑にいて
まるで、篝火のように大好きな家族が現れて。
彼に語りかけてくれるのだが、何かがおかしい。
おかしい気がする、と少年は気づく。
すると、同時に家族は後ろを振り返り歩き始めた。
(足がうごかないっ……!?
イヤダ、イヤダ!
イカナイデ、ワタシをオイテイカナイデ!!! )
続く
あとがき
寒っ!
- Re: 人魚 終焉無き白夜 ( No.103 )
- 日時: 2014/02/15 15:52
- 名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: 2bESk3K2)
幕間 季節を送るもの
一つの季節が終わり。
新しい季節が巡る此の国の歴史の一番大事な下りの時期に。
どこだかわからない場所で、古い神が一柱のいる山へ
知恵と戦の神が娘で使者たる戦乙女が訪れた。
彼…その古い海神は一万近くの歳月を経ているというのに。
数えで十八か、十九の齢の人間くらいの風貌そのままの精神年齢らしく。
舌打ち混じりの面倒くさそうな雰囲気を纏いながら姿をあらわすやいなや、
露骨に嫌そうな%9
- Re: 人魚 終焉無き白夜 ( No.104 )
- 日時: 2014/02/15 15:53
- 名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: 2bESk3K2)
幕間 季節を送るもの
一つの季節が終わり。
新しい季節が巡る此の国の歴史の一番大事な下りの時期に。
どこだかわからない場所で、古い神が一柱のいる山へ
知恵と戦の神が娘で使者たる戦乙女が訪れた。
彼…その古い海神は一万近くの歳月を経ているというのに。
数えで十八か、十九の齢の人間くらいの風貌そのままの精神年齢らしく。
舌打ち混じりの面倒くさそうな雰囲気を纏いながら姿をあらわすやいなや、
露骨に嫌そうな目で見、女神が口を開くよりも先に、
これまた、ぶっきらぼうな態度と口調で言った。
「あ”、誰だてめーは?
バルドルの発光体野郎に似た感じがすると思って来て見りゃあ。
いるのはあいつじゃなくて、見た事もねージャリ戦乙女…… 」
そういうと彼の古い神は不機嫌そうに、じぃと戦乙女を見る。
「それなりの使者ならともかくも。
大した時を経てねー、ジャリを送って来るとは…
あの髯爺ついにモウロクしたか? 」
「……いや。
おま…貴方は此の倭国に住まう古い産土神が一柱とお見受けするが…しますが?
如何なほどに…… 」
戦乙女は幾ら他国の者だとはいえ、
神格も、年も上の神に対してだというのに。
つい、いつもの戦士としての口調で話しそうになりながら挨拶をかわす。
「……如何にも。
天照率いる高天原の連中よりも古く、原始の巨人ユミルより新しい。
水と海の産土神が一柱…それが俺だ 」
「それで、お名前は……? 」
「……カジキだ。
ただし、お前に教えてる真名は無いが…な 」
真名とは読んで字の如く通名とは別にある本名の意で。
真名は、称号と共に上に立つ神や親。
あるいは、それに等しい神から与えられるのだが。
元々神の言葉で真を名付けられているが故。
人間の言葉で発音出来る真名もあれば、不可能に等しい真名を持つ神もある。
その為、神々の柱数だけ真名が存在しているのだが、
その神の自尊心やある理由から、
その殆どが通りの名前しか名乗らず真名を語る事はないのだという。
「そうか…いや、そうでござ…いますか… 」
「…で、てめーは?
まさか、神に名乗らせておいて
自分だけが、“言わん”なんて事は無いよな?
つか、その馬鹿丁寧な口調はもう止めろ。
言葉つっかえ、つっかえでちっとも進みやしねー 」
続く
あとがき
すみません!
また、切ります!!!
- Re: 人魚 終焉無き白夜 ( No.105 )
- 日時: 2014/02/19 00:38
- 名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: 2bESk3K2)
幕間2 季節を送る者2
「わかり…った 」
「それで……
ジャリ…新入り戦乙女が、この俺に何のようだ? 」
カジキは、まだ戦乙女の事を怪しんでいるらしく。
獲物を射抜くかのような目つきで睨みつけながら、
神力を解放して、空気中にある水分や近くの海から水を自分の周囲に集めていく。
神気で集められた水の塊は。
まるで、命があるかのように宙に浮かびながら刃状に形を成して戦乙女に狙いを定める。
「ことの返答によっちゃあ、どうなるか…分かるな?
オレら古の神が、その気になれば。
神々の中でも、下位に属するてめーら戦乙女など簡単に手を下せるんだからな 」
「!?
そのような暴挙、許されるとでも思っているのか? 」
始めから友好的では無く気難しい事は、わかっていたが。
まさか、殺意を覚えられる等とは思ってもみなかった戦乙女は思わず。
自分より格上の神に対して強気な姿勢で言葉を発した。
それをきいたカジキは、喉の奥で笑いながら平然と言葉を返す。
「……別に、かまわねぇよ。
許し請いをする気なんぞ微塵もねぇし、する必要も端から無ぇんだからな 」
「……くっ。
つまり、そういう事であり、お前は“そのような存在”という訳か……? 」
「……そうだ。
あの時みてーによっぽどの事が無い限り。
戦準備で忙しいアイツが例え部下だろうと、実子だろうと顧みる事はまずない。
それに、あいつは…… 」
続く
あとがき
前の切れた部分です。
相変わらずグダグタですみません。
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20