ダーク・ファンタジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

人魚 終焉無き白夜
日時: 2012/11/16 02:18
名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: ???)  

序章

今からお話しするのは遥か、遥か昔……
この国が、まだ中世と呼ばれる時代に始まり。
今でも続いている数多の……
そんな、物語の内の一つで御座います。



ーー その若者は決して、
交錯する事の無い流れを
ただ、ただ、見て来ました。
幾つかの戦で倒れた戦友。
度々あった流行り病や飢饉で…世の中の不条理で、
酷く痩せて、米の一粒も無く息絶えた子供達……
みんなの最後を、彼は見届けてきたのです。

彼はその度に涙をこぼしました。
その終着点おわりが見えない……
孤独と苦痛の地獄を噛み締めて…………

Re: 人魚 終焉無き白夜 ( No.15 )
日時: 2012/12/25 03:34
名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: M22.tfSC)  

幕間 時代と犠牲者

かつて欧州に一つの時代が存在した ーー

魔法とそれに連なるものを法で禁じた。
それが、全ての始まりだった。
最も陰惨だったのは、今から数百年前の十七世紀から十八世紀……
あるいは、一人暮らしの老婆や若く美しい魅力的な女性。
あるいは、稀に生まれてくるオッドアイやアルビノの人間。
あるいは、猫を飼っているか
家やその近くに鼠、蜘蛛、ゴキブリ、熊、梟などがいる。
そして、異民族や他宗教等異端者と認識された者……

そういった“普通の人々”が、時代の狂気によって告訴され。
言葉に出来ない程むごたらしい拷問を受けた末に死ぬるか、
「白状すれば命は助ける 」という甘い囁きで自らを“魔女”と言わされ、
そして、生きたまま燃やされるという最後を遂げた。
大人も、子供も皆、そんな迷信のせいで……

後世の人々は、その恐怖の時代をこう呼ぶ。
魔女狩り…と ー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

イタリア人の青年は、老夫人の言葉に苦笑まじりに笑う。

「ーー 今は曾祖父も、祖父も。
 自分が生まれる前に、遠い世界へと旅立ってしまいましたが…… 」

「え?
 ごめんなさい…悪い事をきいてしまったわ…… 」

既に世を去った事を知らなかったのだと、老夫人は慌てた様子で謝る。
しかし、青年は「いいんですよ。
もう、気にしてはおりませんから…… 」と寂しそうに答える。

「そう……
 貴方は強いのね…ゲオルグちゃん? 」

「……アジミさん。
 自分…僕はもう、子供と呼ばれる年齢ではないですし、
 …恥ずかしいので“ちゃん”付けは止めてくださいませんか? 」

「ほほほほ……。
 齢八十を過ぎた私にしてみれば、
 十代くらいの貴方は、まだまだ子供なのよ? ね、ゲオルグちゃん? 」

まるで幼い子供を相手にしているかのように、
老夫人はコロコロと鈴を鳴らすような声でゲオルグに微笑みかける。

「…佐様ですか……? 」

「えぇ。 最盛期に比べると魔力は衰えましたけれど……
 まだまだ、若い方々には負けませんのよ? 」

続く

後書き

バカみたいに寒い。

Re: 人魚 終焉無き白夜 ( No.16 )
日時: 2013/01/05 01:37
名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: M22.tfSC)  

幕間 眼鏡の奥底

魔法の歴史は、科学のものよりも遥かに深く長い。
故に東西南北様々な魔法文化や伝統の違いあれど、
大元の流れは同じで、多様な錬金術や魔法の種類が存在し、
その長い、長い時間の中で様々な魔法の研究がなされ
技術を切磋琢磨し、ひたすら知識や歴史を積み重ねて来ました。
“魔女狩り”を作り上げた当時の欧州の宗教観は、
その歴史と伝統を真っ向から否定して、無かった事にしようとした。

そんな世が世で無くなった現在……
世間一般では空想の産物と認識されているものの……
その現在でも、本物の魔法使いや魔女は現存していて、
普通に生活し、普通に魔法を使います。

ただし一般人には、それを知る術は殆どありませんがね……
まあ、大ざっぱに言いますとそんなところでしょう。

あ、テレビに出演している方々は…
自分達とは、別の意味での魔法使いや魔女ですよ?

まあ、最近は……
俳優や女優として映画に出演している方々もおられまして、
ファンタジー映画の魔法シーンがCGでは無い場合もありますが……。

もっと、詳しいお話しは今度にいたしましょう……
何せ、魔法の歴史はとても古うございますから。

続く

後書き
明けまして、おめでとう御座います。

Re: 人魚 終焉無き白夜 ( No.17 )
日時: 2013/01/05 21:52
名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: M22.tfSC)  

第伍ノ巻 霧の浅瀬

それは、彼に取って濁流のようなものであった。
波打ち際のさざ波のように静かに囁き、それでいて嵐の荒波のように叫びながら
それらは、とめどなく現れては消えて行き。
また現れて、また消えて行く……
ただ、それだけでしかないのだ。
人間よりも遥かに、膨大な時間を持つ妖怪である彼にとっては……

ー 山口県下関市 壇ノ浦 ー

今からおよそ八百年前の寿永四年三月二十四日
その日、この場所で源氏と平氏の一族の雌雄を決する戦があった。
午後には、もはや一族の運命は知れたものと悟った平氏の一門は、
ある者は、自らの屍が浮かばぬように錨を体に巻きつけ。
ある者は、まだ幼い孫と草薙の剣を抱えて……
冷たい海へと身を投げて、その命の花を散らせていった。

「おーおぉ? また、アフリカらへんで戦かよ?
 何故、人間ってのはいつだって下らねぇ事してんだ 」

檀ノ浦の青い海を眺めながら少年とも青年とも言える男は、
近くのコンビニで買った幕の内弁当を食べながら
切っ先のように鋭い目で新聞の記事をジィっと睨みつける。

「全く……
 精々、短い命を精一杯生きりゃ良いのによ。
 こないだまで、織田のうつけが暴れてた時とも、
 大陸で三国が争った時とも、ちっとも変わってやしねぇ。
 だから、人間は嫌いなんだ…… 」

男は、まるで苦虫を噛んだような表情で舌打ちをする。
それは…彼が上手く化けた齢を重ねし妖怪であると同時に、
人間の浅ましさや醜くさを嫌と言う程に目の当たりしてきた。
歴史の生き証人故の反応である事に他ならないからだ。

「江戸の頃と同じで政治家は腐ってて、無能だしよ……
 人間方がよほど、化け物だよな…海坊主? 」

男は唐突に海の方に話しかけると、
突然、ザバリと。
海草のように豊かな髯を持ち、海とは別の眩しい輝きをしたハゲ頭の壮年男が浮かび上がって来た。

「おんやまぁ。
 カジキの旦那、気づいていたんですかい?
 さあ?
 わしゃ、バカだから人間の世の中はさっぱりなんや 」

「だろうな 」

カジキと呼ばれた男は新聞を折りたたみながら、
当然のように辛辣な口調で海坊主をバッサリと切り捨てる。

「ひでぇ。
 旦那、古い知り合いにも容赦なんいやな…… 」

「はあ? 
 たかが暗算とそろばんを覚えるのに、百年かけた奴がいうか? 」

海坊主はグッ、と。
カジキの手厳しい言葉に息を詰まらせうなだれる。

続く

Re: 人魚 終焉無き白夜 ( No.18 )
日時: 2013/01/07 03:17
名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: M22.tfSC)  

第六ノ巻 凪のまどろみ

五分もしない内に幕の内弁当を食べ終えたカジキは、
空の弁当箱をゴミ箱に放り投げ捨て、
ついでのデザートに買った●リ●リ君の袋を開封する。
普通、この夏の炎天下では既にドロドロに溶けているはずの
アイスキャンディーには、未だにうっすら霜が付いていて。
頭がキィンとする程、冷たい状態のままである。

「そういや、海坊主のオッサン。
 最近、伊豆の海難法師ジジイや船幽霊の連中はどうしてんだ? 」

海難法師かいなんほうし
それは伊豆七島に伝えらるる妖怪であり。
世の中が徳川の時代だった頃に溺死したとある者の怨霊とも言われ、
見た人間は全員、一瞬にして命を失い。
その屍は濡れていて、溺死体特有のものだと言う。
その為、伊豆の人々は一月二十四日の大まが刻には、
外につながる穴という穴を塞ぎ、絶対に出歩く事は無い。

船幽霊。
彼らは遠い昔から海難事故で命を落とした船乗りや漁師等の魂のなれの果て。
彼らは生きている人間が羨ましくて、心を満たす仲間をふやすべく。
凪の日に長く停船している人間の船の周りにおびただしい手として現れ、
柄杓ひしゃくくれぇ、柄杓くれぇ 」と言うのだが、
底がある柄杓をそのまま渡せば……
たちまち、その柄杓で海水を汲み取って船に注ぎ込み沈めてしまうのだという。
故に万が一、彼らに出くわした時に船乗り達は
底が抜けた柄杓か、何か食料を投げるのだという。
まるで自分の言葉を気にする様子も無く
シャクシャクとアイスキャンディーを食べるカジキの言葉に
海坊主は、いかつく強面の外見に似合わない呆れた表情を浮かべる。

そして、溜め息を吐いた次の瞬間には
人間の一流漫才師に匹敵する鋭いツッコミを入れる。

「オッサンとジジイって!
 カジキの旦那は、わしやあの新参者らよりも何倍も生きてて、
 年下にそりゃあ、無いでしょうっ!!! 」

「マジ、そのままの事を言っただけじゃん。
 そりゃあ、大阪のハゲネズミが針を売ってた時。
 てめぇは、鼻ったれのガキだったがよぉ 」

「何を当たり前の事を 」と言わんばかりに、
つまらさそうにカジキは、残りのガ●ガ●君を豪快にかじる。

「つーかよぉ……
 そんな、下らなくつまんねぇ事を訊いてる暇があるのなら、
 東京五輪ん時からやってる分数の掛け算と割り算。
 あれをいい加減、覚えろよなぁ? 」

「で、でもあれは……
 この、米粒みたいな頭が煮えてしまうんで…
 何卒、勘弁してくれませんやろう……か? 」

「嫌だよ、バァカ!
 大体、てめぇが頭下げて頼まなかったら。
 こんな人間のガキでも出来る簡単な事を覚えれねぇ、
 鷄頭の大馬鹿野郎なんて、とうに匙投げてるところだぞ 」

ショックを受ける海坊主を嘲笑しつつも、呆れた口調でカジキは言う。

「ーー だから、てめぇは河童にコケにされるんだろうが…… 」

「ぐ、ぐぬぅ…… 」

続く

後書き

哀れなり、海坊主。
まだ、名前すら無いのに……

そして、一方、カジキは歳は三桁より上でありつつ
言動やする事が現代の若者(それでも、精神年齢は、それなりに高いけれど )。
うーん……
個性的キャラが増えていますね………

Re: 人魚 終焉無き白夜 ( No.19 )
日時: 2013/01/07 17:40
名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: M22.tfSC)  

追伸
主人公キャラクターと世界設定は、
序章が終わったのちに書く予定です。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。