ダーク・ファンタジー小説

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人魚 終焉無き白夜
日時: 2012/11/16 02:18
名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: ???)  

序章

今からお話しするのは遥か、遥か昔……
この国が、まだ中世と呼ばれる時代に始まり。
今でも続いている数多の……
そんな、物語の内の一つで御座います。



ーー その若者は決して、
交錯する事の無い流れを
ただ、ただ、見て来ました。
幾つかの戦で倒れた戦友。
度々あった流行り病や飢饉で…世の中の不条理で、
酷く痩せて、米の一粒も無く息絶えた子供達……
みんなの最後を、彼は見届けてきたのです。

彼はその度に涙をこぼしました。
その終着点おわりが見えない……
孤独と苦痛の地獄を噛み締めて…………

Re: 人魚 終焉無き白夜 ( No.30 )
日時: 2013/03/04 16:43
名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: Kw9a5dyG)  

第拾弐ノ巻 千年の夢

顔や髪までもが敵の返り血で染まりきった長髪の青年は、
血と腐敗の激臭や入り混じった風が頬をなぜる事に表情一つ変えず。
少し前まで生きていた敵の魂を、死者を悼む素振りも無く
青年は、その折り重なりあう死体の山の上に座り込み。
まるで、血のように赤い夕日に染まった戦場を見やる。

(化け物…か…… )

彼の視線の先にあるのは夥しい死体の山と
それが放つ“死”の臭い。
その、いつか否…いつも、見てきた戦場の光景には常に。
絶望や恐怖に歪む顔。 憎悪がこもった顔。
そして、自分に何が起こったかさえ理解しないままの顔がそこにあった。
その、それぞれの死の瞬間を捉えた死体の表情が、
全て、その命を絶った者に向けられた怨唆の叫びだ。

その彼らを殺したのは、常に血で血を洗う戦いの中に身を置き。
常に相手の命を、いとも容易く奪ってきた自分。
そして、自らの兄……

その業の深さや殺戮の虚しさは、
どこかしら、戦場を染め上げる夕日のものかなしさに似ていた。

(あれから千年…千年も経ったのか……。
 相変わらず…人は何も変わらん…な )

それは、あまりに虚しかった。
あまりに哀かった。 そして、あまりに酷薄過ぎた。
例え、いずれ死ぬるとしても……
来世も、現世の記憶を含めた
前世の記憶を引き継いで生れ出でるだろう。
呪われた輪廻転生と
その運命への深い憎しみと悲しみのように……

(人はいつも、わからぬものを否定し。
 いつも、排除しようとするのは…… )
続く

後書き

多分、そのうち名前をだしますが。
誰だか、わかりますかねぇ……

Re: 人魚 終焉無き白夜 ( No.31 )
日時: 2013/03/27 04:43
名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: bzx3l0Dz)  

第拾弐ノ巻 虚空の心臓

輪廻を挟んだ千年分の人生は、その全てが絶え間ない戦いにあった。
まるで死神のように、かかって来る敵を何の躊躇いも無く。
手にした大剣や魔法で千切っては投げ、千切っては投げて
その命を花を摘むよりも容易く刈り取っていくのだ。
あまりに強く、あまりに孤高…
そして、あまりに殺したが故に人は彼をこう呼んだ。
静謐せいひつ 」の魔人…
「銀髪の処刑者 」……
そして、「殲滅」………と。

しかしながら彼は、これといって努力をした事は殆どなく。
大抵の事は基礎と技術さえどうにかなれば、
まるで渇いた砂が水を吸うかのように、それを力に出来る。
まさに、天才であった。

それ故に、幾つもの生に何の張り合いも無かった。
あるのは、千年という……
膨大な時間と記憶の蓄積が横たわっている事のみであり。
何度、終焉を迎えようとも。 何度、新しい生が始まろうとも。
前世の記憶が残り続ける彼にとって、その全てが虚しかった。

に虚しいものだ…… 」

「ん? 何か言ったか? 」

「………いや、何も。
 特には…… 」

兄の問いに表情一つ変えずに、感情が無い声で答える。


続く

後書き

お久しぶりです。

Re: 人魚 終焉無き白夜 ( No.32 )
日時: 2013/03/27 22:47
名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: bzx3l0Dz)  

幕間 炎の残滓

輪廻転生リインカネーションを知っているか?
宗教によっては、色んな話しがあるが……
平たく言えば……
輪廻転生とは無限に生と死を繰り返し続ける輪…
つまり、馬車の車輪のようなもんだ。

何? 曖昧で適当すぎるって!?
そんなめん…詳しい事まで知るか!
ようは、生きる事と死ぬ事の繰り返しだって事だ!!

……で、何故そんな話しをするのかって?

てめぇで言うのも難だが、んー……
つまりだ……
所謂いわゆる…前世の記憶があるクチでさ……
ある時は馬。 ある時は鷹。 ある時はトンボだった時代を覚えてるんだ。 俺は。
ま。 それらは、あんまり覚えてなくて精々
「あぁ、そうだったな 」って言う程度だがな……

ただ……
そんな中で唯一、多分千年くらい昔だと思うんだが…
強烈なまでに鮮明な記憶がある。

中世の傭兵だか、騎士だか知らねぇが…
その遠い時代でも俺は……
今と大して変わんねぇ場所…
剣戟の響きが聴こえ、血で血を洗う修羅場にいてな……
大概は本気を出さなくても、余裕で勝てていた事。
今日の、血みてぇに赤い夕日を見ていた事。
そして……
その記憶にはなんと、現世の弟とそっくりなツラと性格の弟がいるんだ。

必要ある時以外は無口
石像みてぇに嬉楽哀怒の無いツラと無愛想さ
面白みのねぇ。 どこから、どこまでも良く似た弟が……。


ん? もしかしたら、いや、まさかな……
そんな、偶然がある訳ねぇだろうし……
まさかな。


続く


後書き

本日、二本目です……

Re: 人魚 終焉無き白夜 ( No.33 )
日時: 2013/04/05 04:10
名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: NTjRWWeg)  

神々の使徒と名乗りあげたはずの彼らが死んだのは、
あの兄弟に関わった事だろうか?
もしかしたら、多くの人間を火刑に追いやった彼らの業の深さなのかもしれない……

幕間 祈り人と血喰い

まるで、天が血を流しているのように思える
その酷く赤い夕日は……
つい、昨日までは笑っていたか。
あるいは泣いていたであろう。
色鮮やかな戦いの衣装を纏った
兵士達の折り重なりあう屍の山を朱色に染めあげている。

いずれも、おおよそ人の原形を留めて無いか。
一刀のもとで両断された…
呆気にとられたままや怒号や苦悶。
あるいは絶望や恐怖の表情を、瞬間を保ったまま
自分の死を知るか、否かで息絶えたものばかりで、
この場所には、彼と兄弟以外の生者は無かった。

「ぐっ……、おえぇぇ……!! 」

漆黒の衣装とクロスを携えた老人は。
その、定規を逸脱したあまりの陰惨な光景と、
血と腐敗の二つが入り混じった臭気にあてられ
今までこらえていた吐き気を我慢できず
ぐっ、と胃から内容物を吐き出す。

(あ、あまりに惨い…
 これじゃあ、誰も…… )

むしろ、これ程にまで圧倒的な存在を相手取って生きている方がおかしい。
そう、思いかけた時だ。

「何だ…
 えげつない豚君の次は、しょぼい爺が戦うか? 」

にぃ、と血の気が多そうな青年が老人を嘲笑い。
そのすぐ側でまるで興味なさそうに、無言で老人を見つめる涼しげな青年。

「豚く…ん? 」

「おう。 その豚君はな……
 「死を運ぶ悪魔め!
 我らが主たる神の光が、お前達を慘たらしく裁くだろう! 」て、キテレツな事を言って
 勝てもしねぇ戦いを挑んで来たんだ 」

「…………付ける薬も、知恵も無かった 」

「そう! あんまりに馬鹿でさ。
 死体むごんで帰るか、生還かって訊いたら…… 」

ー き、き、貴様っ!!
  神に仕えたりし、神聖なる余にむかって!! ー

ー 神に仕える神聖なる者ぉ?
  プッ!
  信者を騙くらかして私ふくを肥やして、ブクブク太った豚君の間違いじゃね?! ー

ー ぶ、ぶ、ぶ、豚だとっ!!!? ー


「あれはある意味、最強だったぜ。
 なぁ? クククっ…… 」

まるで。
喜劇を鑑賞したかのような軽口で、
額を抑えて笑いながら親指で後ろを指す。

「あ、あの方はもしや!? 」

「確か、アンドレー
 何ちゃらかんちゃらと言ってたっけ? 」

詰まらないものを見たかのような白けた目で、
血の気が多そうで乱暴な口調の青年は、その“豚君”と蔑称されるを見やる。

「…………神父です兄上 」

「そう、自称な!
 暗愚できょう楽としゃしを貪る奴が
 よくもまぁ、いけしゃあしゃあと言えたもんだ 」

「そ、それでも…このお方は…… 」

「ま、今となっては。
 もの言わねぇ薄汚い骸だがな…… 」

続く

後書き

え、エグい……

Re: 人魚 終焉無き白夜 ( No.34 )
日時: 2013/04/06 22:52
名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: NTjRWWeg)  

「ーー ほんのちょっと、撫でただけであっさりと壊れちまった……
 これなら、兵士どもの方がもう少し遊べたぜ 」


老人が彼らの後ろを見やると……
そこには、常識では有り得ない凄まじい速さで…
まるで、革命時に見たギロチンで裁かれたかのように
切り口に一切の淀みが無く肉が、四肢が切断され
そして、頭以外の他の部分は人間の原形を留めていない。
これ以上無いといえる程、慘たらしく惨殺された
腐敗と暗愚の神父アンドレーの屍が無惨な姿を晒していた。

第拾参ノ巻 美しくも残酷な強者

「いくら、腐敗した者だからと言っても
 何て…酷い仕打ちを……!? 」

前々からアンドレー神父は、小物ながらも黒い噂が絶えなかったが。
それが虚偽だろうと、真実だろうと
曲がりなりにも神職に身を置き、
偽善とはいえ、最低の慈善行動はやっていたはず。
それに、幾ら救いのない人間だったとしても
その殺戮は、老人の倫理観からしても実に許し難い行為である。

「……何故、皆殺しにしたんですか? 」

「…………翁よ。
 ……何故、基方はそう思うのだ? 」

「何故?
 それは、当たり前の事でしょう。
 倫理的にも、道理的にも…… 」

「うむ……
 確かに、倫理的には許し難い所は多々あるやもしれん。
 だが、それは我々に言わせれば……
 それもまた、偽善に過ぎん………… 」

それはただ、己に降りかかる火の粉を振り払うだけに過ぎなかった。
これが、単なる此の“狂気の時代”故の所業ならば、
話し合いや交渉。
或いは、二度とそのような“愚かな行為”をしないよう
その戦力を削いで、恐怖を植え付けて穏便返すつもりだった。
しかし、それはあくまで
その神父がアンドレーで…
腐敗した暗愚なる者でなければの話し。

アンドレー神父は金銭がある者だけを救い。 無い者は見捨て。

何かしらの理由で告発された女性や異端者に、
致死量ギリギリの水を無理やり飲ませたりの
凄まじい拷問の末、むりやり自らを魔女告白せる。
全身のいたるところを差して、痛がら無い所があれば…
あるいは、先が引っ込む仕組みの針で刺し血が出ないから。
煮え湯に落とした石を拾わせ、
火傷をしたからだ、という。
でたらめな理由で“魔女”に仕立て上げ、
魔力の欠片も無い沢山の“普通の人間”を虐殺した。
そして、自身はその処刑した人間から徴収した金品で懐を潤し
しゃしときょう楽を貪っていた文字通りの腐った豚だった。
だから、殺したのだと血の気の多そうな青年は語る。

「それに……
 あの豚君。
 “アレ”の事をすっかり頭ん中から消えちまってたし。
 今後、こっちの都合上にも悪かったしな 」

「?? 」

「……翁が知らなくて良い事だ。
 ただ、言えるのは……
 我々は、もとより命を奪う事に造作も躊躇いもない。
 …………それだけだ 」

続く

後書き

今回は短めです。


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