ダーク・ファンタジー小説

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人魚 終焉無き白夜
日時: 2012/11/16 02:18
名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: ???)  

序章

今からお話しするのは遥か、遥か昔……
この国が、まだ中世と呼ばれる時代に始まり。
今でも続いている数多の……
そんな、物語の内の一つで御座います。



ーー その若者は決して、
交錯する事の無い流れを
ただ、ただ、見て来ました。
幾つかの戦で倒れた戦友。
度々あった流行り病や飢饉で…世の中の不条理で、
酷く痩せて、米の一粒も無く息絶えた子供達……
みんなの最後を、彼は見届けてきたのです。

彼はその度に涙をこぼしました。
その終着点おわりが見えない……
孤独と苦痛の地獄を噛み締めて…………

Re: 人魚 終焉無き白夜 ( No.10 )
日時: 2012/12/08 15:12
名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: ???)  

第弐ノ巻 変化するもの

「……帰ろう 」

過ぎ去った過去は、
消えていった命は、悔やみ悲しんだところで戻ってはこない。
それにいつまでもここにいれば、
自分を不審に思った警察官に職務質問をされるかもしれない。
そう、考え思った“男”はすっかり冷めてしまった
Mバーガーの袋を片手にゆっくりときびすをかえし、
街頭テレビがある場所を離れて、そのまま帰路についた。

タタン…タタン…
エアコンが入っているものの、
帰宅ラッシュが重なって寿司詰め状態の為に人肌の温度で蒸し暑く、
つぅんと、女性の香水や様々な人々の汗の入り混じった臭いが立ち込めている。

「次は○○駅。 ○○駅です。
 お忘れ物が無いよう ご注意ください 」

男を乗せた電車はゆっくりと停車し、
扉を開くと、まるで水が流れるように人々は急ぎ足で階段やエスカレーター
もしくはエレベーターに各々向かってゆく。
勿論、男も電車を降りて改札口に
ペンギンのマークのICカードをタッチして通過していく。

(……江戸も随分と変わってしまった。
 横浜に黒船が来たのも、坂本龍馬がいたのも。
 つい、最近の事に思えるのにな…仕方ないか…… )

続く

後書き
寒い。 寒くてヤバいですよ!!

Re: 人魚 終焉無き白夜 ( No.11 )
日時: 2012/12/13 01:56
名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: ???)  

第参ノ巻 Rosso Residenza(赤の屋敷)

都内のどこかにある欧風の広い庭園のある屋敷。
江戸のにおいが色濃かった時代にイタリアの貴族が建て、
百数十年の時間を経た歴史ある建物にもかかわらず。
この屋敷は、まるで時を止めたかのように十九世紀の洋館の趣きを残しつつ佇んでいた。

しかし、その当時とは違い。
先の太平洋戦争でイタリアが敗れて降伏。さらに、その後の混乱が理由で100ヘクタールあった敷地は、
もはや、今では2分の1の面積しか無い。

……ツクツクボーシ ツクツクボーシ
ウイヨース ウイヨース ウイヨース ジー………

「ねぇ、安心院あじみさん。
 この古く立派な御屋敷…洋館の事を何かご存知? 」

浅葱色の着物を着こなし、白い日傘をさした品の良さそうな女性は。
慎み深い色合いのハイカラな服を着た老夫人に丁寧に静かな声で尋ねる。

「えぇ、知っていますとも西園寺さん。
 私のおじい様が生まれた頃にイタリアの貴族が建てたのだと、
 私のおじい様はおっしっておりましたわ…… 」

「まぁ……。
 では、幕末か明治の始めに……? 」

「……大東亜戦争のすぐ後。
 私が娘だった頃までは、今の敷地の倍は広かったですのよ…… 」

老夫人はラバウル等で戦死した兄達との思い出と共に、
この屋敷庭園の、昔の姿を思い出し静かに微笑む。

「ーー 当時の若い当主が土地をお売りになり。
 その土地を買い取った相手が、あのドイツ貴族ヴァーデルハイト家でしたから…… 」

戦後、敷地を売った理由は定かでは無いけれど。
それでも、手入れをされた庭には夏の青々とした木々や季節の花々が
風で静かにゆれて夕日で赤く染まっていて庭は美しく趣きがある。
赤の屋敷という名前 そのままに……。

「そんなに御古い敷地の半分を、お売りに……? 」

「えぇ……
 理由は存じませんが、そういう事ですの。
 まあ、最近はお若い方が……。
 当時の御当主にそっくりお孫さんが住んでおられるようです…… 」

「そうなんですか…… 」


続く

後書き

話しに関係はありますが、主人公は日本人です。
あと、どうでも良いでしょうけれど
私は寒いのキライ。

Re: 人魚 終焉無き白夜 ( No.12 )
日時: 2012/12/14 17:39
名前: 珈琲猿 (ID: jF5f2bDU)

オニムバス式ですかwww

てか、歴史の生き証人っぽいですな主人公。
妖怪ものっぽいきもするけど。
カササギ様は自分の斜め上いってるのでSFk

Re: 人魚 終焉無き白夜 ( No.13 )
日時: 2012/12/15 14:17
名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: ???)  

コメント返し

珈琲猿さん
多分、序章だけです。
あと、ストーリーは秘密ですよ?

Re: 人魚 終焉無き白夜 ( No.14 )
日時: 2012/12/16 04:30
名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: ???)  

第四ノ巻 知られざるもの

ツクツクボーシ ツクツクボーシ ツクツクボーシ
ツクツクボーシ ツクツクボーシ ウイヨース ウイヨース

今年もお盆の時期になった事を知らせるかのように、
ツクツクボウシのオス達は、命の火を燃やして力強く鳴いている。
全ては次の世代へと命をつなげるが為に。

「お孫さんは、そんなにそっくりなのですか? 」

「えぇ、何度かお見かけしましたが……。
 とても、よく似ているますわ…… 」

老夫人は言う。
遠い記憶の人物とその孫であろう人物は、まるで鏡で映したかのように、仕草も何もかもが似ていた事や
それが、まるで時が巻き戻したかのようだと。

「……いやね。
 こ年をとると、どうしても過去を振り返ってしまいますのね 」

安心院あじみさん…… 」

死んだ命は、時間は戻ってはこないのだと……
何度も、何度も自分に言い聞かせてきたのだろう。
今から約七十年前の昼過ぎにラジオで放送された
今はお隠れになられた陛下の声が老夫人の耳の中で蘇り。
老夫人は、そのシワの深い顔に影を落とす。

その時。
自転車のキィィというブレーキ音が近くから聞こえ
自転車から一人の青年が慣れた様子でゆっくりと降りた。
そして、二人に気づいた青年は。
眼鏡越しに、にこりと愛想良く笑い流暢で丁寧な口調で声をかけてきた。

「今晩は、アジミさんと…えっと? 」

「こ、今晩は……。
 私は近所に住む西園寺さいおんじです 」

「はい、サイオンジさん今晩は……。
 何故、お二人とも。
 自分…僕の家の前で何のお話をなさっていたのですか? 」

青年は、こんなに暑いのにと。
とても不思議がりながら首を傾げる

「いえいえ、大した事じゃありませんの。
 ただ、戦前に此の屋敷に住んでいらした貴方のおじい様か……
 ひいおじい様に貴方が、よく似ているとお話ししていたのですよ 」

「へぇ……そうなんですか? 」

「えぇ、非常によく似ていらしてますわ。
 そのお顔も、眼鏡を直す時の癖も…… 」

「はははっ……
 故郷の国でも。
 お年寄りの皆様におじいさん似だと、よく言われています 」

続く

後書き

肩が……痛いです。


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