ダーク・ファンタジー小説

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人魚 終焉無き白夜
日時: 2012/11/16 02:18
名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: ???)  

序章

今からお話しするのは遥か、遥か昔……
この国が、まだ中世と呼ばれる時代に始まり。
今でも続いている数多の……
そんな、物語の内の一つで御座います。



ーー その若者は決して、
交錯する事の無い流れを
ただ、ただ、見て来ました。
幾つかの戦で倒れた戦友。
度々あった流行り病や飢饉で…世の中の不条理で、
酷く痩せて、米の一粒も無く息絶えた子供達……
みんなの最後を、彼は見届けてきたのです。

彼はその度に涙をこぼしました。
その終着点おわりが見えない……
孤独と苦痛の地獄を噛み締めて…………

Re: 人魚 終焉無き白夜 ( No.20 )
日時: 2013/01/09 01:16
名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: M22.tfSC)  

幕間 記憶のるつぼ

カジキにとっての最初の記憶は物心ついたばかりの時代に
最後のマンモスを看取りし時のものであった。
たった、一種類の動物によって絶滅させられた最初の犠牲者の……

「プォ……ブオオオォ……
 (体のあちこちが痛い……
 ワシもとうとう死ぬるのか…友よ? ) 」

「しぬだなんて言うなっ!
 なぁ、早くおきてくれ! 家ぞくのかたきととるんだろっ!? 」

「(もう、いいのじゃよ……
 遠い…昔、ワシが仔どもの頃。
 あやつらに父母や兄弟姉妹を、一族全てを殺されて。
 一族最後の者になってしもうたが……
 お主がいてくれたから、決して孤独では…なかった ) 」

もし、彼がいなければ絶望と孤独に押しつぶされて
とうの昔に気が狂っていただろうと。
そう、告げるとマンモスは何も映せなくなった目を細める。

「(友達でいてくれて、有り難う……。
  いつか、また会おう…約束じゃ…よ?
 さよう ーー )」

「あ、あぁぁ……
 しんじゃいやだよ…目をあけて……
 ……う、うわわぁぁん!! 」

それは…
カジキが生まれて初めて経験した死の瞬間と
その悲しみで流した慟哭の涙であった。
人間の欲望により、最後の一頭にされた親友への。
大粒の涙がポロポロと…流れた。

ー さようなら ー

その時は、仕方ないと受け止めるしかなかったけれど、
それから、途方もない時間を此の世界で過ごす中で
それが、仕方ないで済まされない事を悟る。

人間は欲深でずる賢く、過ちから何も学ばず
その浅ましさや不条理のせいで、多くの命が涙を飲みながら消えていった事。
それを嫌と言う程に目の当たりした事でカジキは、
人間に救いの余地があるか 無いか以前に、
激しく人間を嫌い、そして憎むようになったからだ。

何千年も、人類は成長している。
今度こそ、自分こそ間違えないと。
そう言いながら結局のところは、
人間は、遠い昔と何一つ変わっていない。
故に今後も人間は変わりはしない、と……

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ーー それに…いい加減。
 ワシの名前を覚えてくれませんやろうか?
 ワシには、ちゃんと伝之助という名前がありますんで 」

「アホか、単に面倒くせーから呼ばねぇだけだ。
 んで、さっきの質問のはどうなったんだ? 」

カジキは「てめぇの名前何ぞ、どうでも良いし 」と
海坊主 伝之助の言葉を適当にスルーする。

「…………変化無し 」

「あっそ。
 七人みさきもだが、どいつもこいつも変わってねぇな 」

続く

後書き

もう一度、言います……
カジキは行動や言動からして、
長い時間を生き続けているようには到底見えません。

Re: 人魚 終焉無き白夜 ( No.21 )
日時: 2013/01/10 01:44
名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: M22.tfSC)  

幕間 海はされど笑う

この世界に生まれ出でてから、
俺が何千年くらい生きてるのかなんて、
明確な齢はいちいち数えてねぇし、大ざっぱにしか覚えてはいない。
はっきし言えば俺の場合は、
百済が滅亡したあたりで数えんのが面倒になっただけだが……

そうじゃなくても、妖怪でも生きてりゃ。
どの道、細かな記憶はどうしても抜け落ちちるんだ。
なら、いい加減でもいいんじゃねぇ? マジ?


人間? 勿論、大嫌いだ!
あ? 理由だと!?
それは、人間自身がよくわかってんだろう。
もう、あいつらの底は割れてんだ。
今更、世界に許しを請いをしたって何になるってんだ?
この数千年余り人間は、何も理解しない愚行の繰り返しだ……
いくらゴマスリをしたって、世界は許しはしねぇだろうよ。

だから、俺は人間の事を好きにはなれねぇんだよ……
まあ、利用はさせてもらってるがな。

続く

後書き
中途半端に終わらせてもらいました。
すみません!

Re: 人魚 終焉無き白夜 ( No.22 )
日時: 2013/01/27 20:30
名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: ???)  

カジキがガ●●リ君というアイスキャンデーの、最後の一口を食べ終えた。
その時であった。
二人の後ろから、尼僧の格好をした十代半ばの少女が現れ、
齢に不相応な落ち着いた静かな口調で二人に話しかけてきた。

「あのう……
 お話し中のところ申し訳御座いません…… 」

第七ノ巻 八百比丘尼

「何だ、てめぇ?
 妖怪である俺らに説法でもとく気か?
 今時、珍しい若い尼さんよぉ? 」


ハズレと書かれたアイスキャンデーの棒をゴミ箱に捨て、
尼の少女をカジキは嘲笑する。

「……いいえ、そのつもりはありませぬ。
 ただ、お話しを聴いて頂けないかと思い。
 気分を害するのを承知のうえで、お声をおかけしたのですが……
 ええと、お時間を頂けないでしょうか?」

「ふん……
 人間にしちゃあ、良くわかってんじゃねぇか?
 クククっ……いいだろう。
 面白い、特別にてめぇの話し聴いてやろう…… 」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

その昔、若狭に一人の漁師がおったそうな。
ある日、その漁師は網にかかった海の妖怪を逃がし、
その御礼に海の妖怪に貰った「肉」を家に持ち帰ったそうな。
じゃが。
不気味に思った漁師は、家族に見つからないようにと肉を隠した。
しかし……
漁師が子供の一人である娘が肉をペロリと平らげてしまったのだ。
それが、全ての悲劇の始まりでじゃった。

娘は、よその村へと輿入れをし……
何人ものややこ(赤ん坊)を産み、
やがて、成長した子供達が結婚して孫が生まれたが、
娘は何時までも十六の姿まま。
最初に夫や友人達を…
次に息子達を看取った。
それどころでは無かった!
孫も、曾孫も……皆、自分よりも年老いて
そして、死んでいったのだ。
その異常さに耐え切れず娘はフグ毒をあおり
呼吸困難で一度は死ぬるも、半刻もせぬうちに生き返ってしまった。

「自分は死にすら出来ない」

それに悲観した娘は、百二十の時に頭を丸め尼僧となるが、
それでも、娘は老いる事も死ぬる事も無く
ただただ、生き続けたそうな。
伝説では、その後……
娘は各地を放浪して説法を説いて、椿を植えてまわったと言わるる。

その悲劇の娘こそ、各地に伝わる八百比丘尼であった ーー

「つーことは、何だ?
 てめぇが例の娘って言うのかよ? 」

「はい。
 この千と数百年はまさに地獄でした…… 」

全ての切っ掛けは「肉」だった。
それが何なのかも、
何故、自分のみが生かされ続けるのかとわからない。

「死をどれだけ渇望しても、
 永遠に叶わない孤独は…本当に…… 」

尼の少女もとい、八百比丘尼は寂しそうに海を見る。

「ふーん……。
 なら何故、迂闊に得体のしれねぇもんを喰ったんだ?
 ましてや……人魚の肉なんぞ! 」

「人魚の…肉? 」

「……ああ。
 てめぇの話しは暇つぶしになったからオマケで教えてやるが……
 人魚の肉は、世界最強の凄まじい毒でな。
 喰った運が良い人間は必ず死ぬんだが、
 稀に肉と体質が合う運が悪い奴が喰ったら……
 …永遠を生き続ける人魚同然になっちまう……そういう事だ 」

カジキは人間相手にしては珍しく饒舌に、
それこそ、何億か何十億人に一人であるものの。
そのたった一つの外れクジを引いたが故に、
半分妖怪のようなものに変わったのだと言う。

「なんと……。
 何故、このようなむごい仕打ちを受けねばならないのですか……? 」

「それはいくら俺でも、預かり知らん……。
 ただ言えんのは、人間には無理って事だ 」

続く

後書き

重い……

Re: 人魚 終焉無き白夜 ( No.23 )
日時: 2013/01/31 22:33
名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: ???)  

幕間 猛炎と人魚

わたくしは途方もない時間を生きてきました。
夫や子供、孫、曾孫の家族に友人が老い
次から次に遠い世界へと旅立っていこうとも、私は何一つ変わらない。
ただ、無慈悲に時間のみが過ぎ去って……
関ヶ原の戦いの末、徳川家の世の中になって
東京が江戸と呼ばれた時代が始まり、
そして、黒船が来たかと思えば。
まるで万華鏡のように目新しい物が次々に欧州から入ってきて……
そして、多くの戦争もありました。

未だ記憶に新しい
東京大空襲の光景が鮮烈なまでに目に焼き付いて、
決して離れてはくれません。

ウーウーという不気味な空襲警報にB29のプロペラの音、
キュルルルルときりもみ状に空気を切り裂きながら、
頭上から落ちてくる夥しい数の焼い弾。
燃え盛る町中で人々は、ただ逃げ惑うしかなかった。

あの日。 偶然、居合わせた私は……
必死の消火も虚しく燃えてゆく寺を後に、
他の僧侶は作務衣、私は尼僧衣のままで逃げた。 逃げるしかなかった。


そんな、さなかでした。

「お母ちゃん!! 」

ふと、耳を済ませると悲鳴に近い少年と赤子が泣き叫ぶ声。
私は急いで、その声のする方へと向かった……

たける……いきなさい。
 善次郎とハナを連れて逃げなさい! 」

「イヤダ!
 お母ちゃん!! 一緒じゃなきゃイヤダ!!! 」
それは、爆撃で片足を失い歩けなくなった母と
初等学校の子を含む三人の子供達でした。

「行きなさい!! 」

母がげきをとばしても、少年と少女はそれでも一緒に逃げようと言う。

「大丈夫ですか!? 」

「だ…れ? 」

「私は●●寺の尼ですが、
 もしや、目を……?! 」

恐らくは爆撃で頭を強く打った事が原因の失明でした。

「尼さん……
 ……でしたら、お願いします
 子供達を連れて…逃げてください!!
 多分、私は助かないでしょう……し 」

自分よりも、子供達が生きて欲しい……
だから、私へ子供達を託す事にする。

それに戸惑いながらも、私は「はい」返事をし。
それを聞いて安心したのでしょう。
彼女は、そのまま静かに息を引き取ったのです。

そして、子供達を託された私は……
母の亡骸から離れない子供達の手を握り締め、
赤子を背負いながら猛火の中を逃げた。

あの後、私達は焼け残った寺に身を寄せて暫くして。
八月十五日をむかえ……
翌年には、兄妹はラバウルから戻ってきた父親に引き取られ別れました。

私はと言うと……
また、放浪の旅に出て
戦争で亡くなった人々への弔いの念仏を唱えて周りました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ーー 生まれて、死ぬ事の繰り返し。
 その尊さは、てめぇが良くわかっているだろう? 」


「えぇ…… 」

不老不死の虚しさ。
それは、八百比丘尼にとって身にしみて経験した
心をすり減らせ、じわりじわりと続く地獄そのものであった。
目の前の妖怪カジキは曰わく。
醜いだけでしかない人間は嫌いが故に、そぼうな態度と口調しかとらないが、
憎悪や嫌悪を吐き出すかのように淡々と言葉を続けていく。
「だのに、いつだってそれをわかっちゃいない
 始皇帝のような、つける薬も無いバカがいる。
 手に余るものなんぞ一体、何になるんだか…… 」

飽食、富、権力を得た者は
唯一、永遠が無い事に気づき。
猛烈なまでに固執して、その甘美で凄まじい毒に求めて止まない。
不老不死の妙薬「人魚の肉」……
それを喰らい 運悪く肉と適合した彼女は、
時間という。
無慈悲なるギロチンに捕らえられた
その真実を今になって、偶々声をかけた妖怪に知らされ……

絶望した。

「…………そうですわ、ね。
 しかし…何故、貴方がそれをご存知なんです?
 いくら、海の妖怪といえども…… 」

続く

後書き

伏線……ですかねぇ?
一応。

Re: 人魚 終焉無き白夜 ( No.24 )
日時: 2013/02/01 02:10
名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: ???)  

第八ノ巻 潮風は歌う

何時まで待てども、隣にいるはずの妖怪から返事は帰ってこない。
不思議に思った八百比丘尼が横を見ると、
まるで、最初からいなかったかのように忽然と消え失せていた。

「これは、これは……。
 ふぅ……
 久しぶりに化かされたわねぇ…… 」

結局、真相は不明のままだが。
妖怪はめったにものを教えはしないうえ、
多くを語らない事を知っていた八百比丘尼は残念がるようすも無く
静かにゆっくりと、どこまでも青い空を仰ぐ。

「そう言えば、今日は終戦記念日でしたね…… 」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ー 壇ノ浦の海中 ー

「よかったんですかい? 」

「んー、何がだよ? 」

カジキはつまらないさそうに返事を返す。

「さっきの娘子の事です。
 何故、真実を濁したり教えてやらなかったんで? 」

「何故、って……知るかよ。
 半分化け物みたいなものって言っても所詮は人間だ。
 だから、人間嫌いの俺が教えてやる義務はねぇ 」



いくら自身が長い歳月を生き続けているとはいえ、
許容範囲を大幅に超えし罪を犯した存在を認める広い心はカジキには無い。
たまにあるとすれば、ほんの気紛れ程度にすぎない。
それだけだ。

「殆どの妖怪は自尊心が強い。
 その自尊心を無視して教えてやってなんになる? 」

「そりゃあ……そうですが 」

「……だったら、これいじょう言うな。
 いくら、出来の悪い子分でも良し悪しくらいわかるだろう? 」

「あと今度、つまらない事を言うと殺すぞ」と。
カジキは威嚇するかのように、鋭い牙をむき出しにしてニヤリと笑う。

「す、すいやせん……!
 だ、だ、だから、こ、こ、こ、殺さんでくださ、さ、さい!! 」

「……どもりすぎだ。
 つたく……冗談も通じねぇのかよ 」

「大妖怪のしゃれは、しゃれにきこえませんよ 」

海坊主は殺意がこもったあれが、
冗談には聞こえない、とガックリとうなだれる。

「あっそう 」

カジキは素っ気なく言葉を返すと
そのまま、ジイと海上に輝く太陽を見やる。

「あっそう、じゃありやせんよ。
 こ、殺されると思った…… 」

続く

あとがき

またまた、途中で切ります。


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