二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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薄桜鬼  ひとりぼっちの悪魔  
日時: 2012/06/10 09:00
名前: mk (ID: kI5ixjYR)

こんにちは!mkといいます!
実は前書いていた小説があまりにも気に入らなかったので新しいのを書いてみました!!

登場人物は前の薄桜鬼 Loyal −誠−とほぼ同じですが、もう一度書いておきます

−主人公−
叶 美波 (カノウ ミナミ)

黒髪、腰辺りまでの長さ。性格はやんちゃ、そして、仲間思い・・・時々沖田さん並に黒くなる
女としての自分をおし殺している

−仲間−

黎 (レイ)

銀髪、瞳は赤。性格は優しい。主人公と契約を結び、体の中に潜んでいる
戦闘時になると必要に応じて出てきたりする。


この二人と残り一人を中心にしてお話を進めていきます

薄桜鬼 ひとりぼっちの悪魔
これから頑張るので応援よろしくお願いします!





〜ご愛読者様〜
桜舞姫様
雛苺様
愛恋様
玉環様(元乙女様)
カノン様
ニョーコ★様

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Re: 薄桜鬼  ひとりぼっちの悪魔   ( No.92 )
日時: 2012/03/20 19:28
名前: mk (ID: AtgNBmF5)

久しぶりです!mkです
最近更新できませんでしたが
今から続きを更新いたします
それでは、どうぞ!

















「もうじき、京は戦場になります」

君菊の言葉に千姫は相槌を打つ、そしてゆっくりと口を開いた

「前にも誘ったけど、あの時とは状況も違うって、千鶴ちゃんにもわかってるでしょ?」

千鶴は言葉に詰まった・・・出て行くのは嫌だと無意識の内に思っていた

「あなたが、私達と来れば、この人たちも戦いに専念できるわ」

その言葉に千鶴は土方を見た

「・・・私は・・・・・・」

何かを言おうとすればするほどどうすればいいか分からなくなってしまう

「出て行きたくねぇんだろう?」

急に掛かった声に視線を向ければそこには土方の真っ直ぐな瞳があった

「だったら余計な事を考える必要はねぇ・・・ここにいりゃぁいい」

「あ、ありがとうございます!」

土方の言葉に千鶴は嬉しさに微笑む

「そうだね、千鶴ちゃんはいてもらわなくちゃ困ることがいっぱいあるからね」

叶も苦笑交じりに千姫に言った

そんな三人を見て二人は軽いため息をついた・・・・・・

Re: 薄桜鬼  ひとりぼっちの悪魔  第参拾陸話 ( No.93 )
日時: 2012/03/20 19:29
名前: mk (ID: AtgNBmF5)

——— 同時刻、伏見街道

軍議のために二条城を訪れていた近藤は伏見街道を南下し、帰路に就いていた

夕方に近い時間で、木々の間からは真っ赤な太陽の光が差し込んでいる

馬上している近藤の周りを監察方がしっかりと固めている

その中の一人、島田も時折振り返り油断なく道中の安全を確認していた

後ろに人影はなく少し安心していた瞬間・・・鋭い銃声が当たりに響き渡り、それと同時に近藤が右肩を押さえ馬の首のほうへと

うつ伏せで倒れていった・・・・・・



———————

近藤が帰ってきてすぐ美波は近藤の元へと向かった

広間の戸を開けると少し痛そうに顔を歪ませた近藤が布団に寝ていた

しばらくすると、他の幹部たちも現れた

「近藤さん、撃たれたって本当かよ・・・」

原田は驚きを隠せない様子だった

「命に別状はありません、弾は貫通はしていませんでした」

「そうか・・・・・・」

その時、近藤が目を覚ました

「近藤さん!」

近藤が目を覚ましたのに気付いた土方が声をあげた

「大丈夫だ・・・叶君、君のおかげで助かったよ」

近藤は微笑む

後ろのほうにいた美波はその言葉に頭を下げた

「ありがとうございます」

近藤は布団の脇においてあったものを美波に渡した

「これは、なんだ?」

美波は近藤から渡されたものを一瞬で消滅させた

「・・・これは、まぁ、防弾具ですね・・・弾が当たっても貫通しないようにするための道具です。あと、袋に私の血を入れて撃たれたときに
防弾着を着ているのが分からないようにしておきました・・・多分撃った相手は近藤さんの肩に貫通したと思い込んでますよ」

美波はそう言って立ち上がった

「取敢えず、しばらくは安静にしておいたほうがいいですよ」

そして、広間を出て行った・・・・・・

——————

『我と契約せし悪魔 黎・・・その名のもとに我が黒魔術の源を与えたまえ・・・・・・』

暗闇と静寂に包まれた部屋で美波は一人、そこにいた

赤黒く光る『何か』を目の前にして魔術を発動させているようだ・・・

「・・・・・・ふぅ・・・ようやく終わった・・・」

美波はため息をつくと額に浮かんだ汗を拭った

『発動せよ!』

美波がそう叫ぶと赤く光る陣が浮かびその真ん中に先程までいじっていた『何か』を置いた

すると、一瞬でそれは消え去り数秒も掛からないうちに先程と同じビンに入った液体が現れた

「・・・・・・運命を変えてしまえば・・・どうなるかはわからない・・・でも、・・・みんなを助けたい・・・・・・」


切なそうな表情を浮かべ美波は一人呟いた・・・・・・



—————

闇と静寂が支配するこの時間帯・・・

千鶴は一人井戸桶の水を替えていた

突然、静寂を破るように銃声が鳴り響く

千鶴は水を汲む手を止め耳を澄ませた・・・

その時だった・・・背後に鋭い殺気を感じ反射的に振り向いた

一瞬だったが人影が駆け抜けて行く姿を視界の端に捉えた

「沖田さん!?」

「どうした、千鶴!?」

千鶴の声を聞きつけ平助がやって来た・・・傍らには山南もいる・・・・・・

「平助君!今、沖田さんが一人で飛び出して行ったの!」

平助は訳が分からず首を傾げる

「総司が?まさか」

平助が何かを言おうとしたがそれより早く千鶴は沖田の走り去って行ったであろう方向に向かって駆け出していた

「まてよ、千鶴!」

千鶴の後を追おうとする平助の肩を山南が掴んだ

「待つのはあなたもですよ、藤堂君・・・・・・敵の狙いは我々を挑発して奉行所の守りを薄くすることです」

そんな山南の手を払いのけ平助は走りだした・・・・・・・・・

Re: 薄桜鬼  ひとりぼっちの悪魔  第参拾七話 ( No.94 )
日時: 2012/03/20 19:30
名前: mk (ID: AtgNBmF5)

月が闇を照らしている・・・

その月に照らされ、沖田は夜の街を走り抜けていた

突然、背後に気配を感じ振り向いた

視線の先には小柄な人影が沖田をじっと見つめていた

黒い洋装で全身に身に纏っているものが黒ずくめの男の顔をよく見てみると

それは千鶴と瓜二つ・・・・・・

「南雲薫・・・近藤さんを撃ったのは君?」

沖田は薫に冷たい視線を送った

「変若水・・・飲んでくれたんだ・・・・・・新選組一の剣士と謳われる沖田を羅刹に出来るなんて光栄だよ・・・」

薫は沖田の変化した姿を見て嬉しそうに微笑んだ

だが、沖田はそんな薫を気にも留めず鞘から刀を抜いた・・・

「僕の質問に答えろ」

沖田がゆっくりと薫に詰め寄る

「証拠も無いくせに俺を疑うの?」

薫は小首を傾げた

「そういえば、騙まし討ちにされた伊東の恨みを晴らしたいって言う割りに、奉行所に討ち入る勇気もない奴らがいたから
街道に張り込めばいいとは教えてあげたかな」

薫はそういうと笑った・・・それとは反対に沖田は怒りの表情を浮かべ一歩・・・また一歩と薫との間合いを詰めて行った

「やだなぁ、誤解しないでくれる?俺だって悪気があった訳じゃないんだよ?新選組局長ともあろう人間が、まさかあんなに
油断してるとはさすがの俺も思わなかったからね」

そういい指を鳴らした

それを合図に物陰から男達が現れた

男達は沖田の行く手を塞ぐかのように立った

だが、沖田はまるで邪魔だとでも言うように一人、二人と・・・一瞬で切り伏せていく

最後の一人を斬り捨てると沖田はゆっくりと口を開いた

「君の目的は何?」

間合いを詰められ、薫は油断なく距離を測りながら喋り始めた

「南雲家に引き取られてから、俺がどんな苦しみを味わったと思う?女鬼じゃないというだけで、それは酷い虐げられようだったよ」

薫は歪んだ笑みを浮かべた

「・・・・・・なのに、千鶴は俺のことなどすっかり忘れ、一族を滅ぼした人間共を仲間のように慕い、そいつらから大切に守られている・・・
大事なものを守れず、誰からも守られず、己の存在理由さえ分からない———そんな俺の苦しみを千鶴にも味わわせてやるんだよ」

そんな薫の様子を冷たい瞳で見ていた沖田だったが・・・

「かなしいね、君・・・・・・」

突然、薫の事を小馬鹿にするように鼻で笑った

「——っ!?」

一瞬憎しみの色を瞳に宿らせた薫だったが一瞬でそれを消すとまるで仕返しとでも言うように沖田を笑った

「そうだ、言い忘れてたけど・・・変若水じゃ労咳は治らないよ」

「!!」

薫は一瞬だけ見せた沖田の動揺に気が付いた

ちょうどその時だった・・・

薫は視線の先に千鶴の姿を捉えた

ニヤリと笑った薫は近くの屋根に飛び上がり軒先の看板の影に身を潜め、辻を見下ろし頷いた

沖田は薫の意味不明な行動に首を傾げながらも薫の視線の先を追った

そこには沖田に向かって銃を構えた男達がいた

弾を避けられるように沖田は油断なく刀を構えた

だが、その瞬間・・・沖田に向かっていたはずの銃口は別の方向に向けられた

銃口の先を目で追った沖田は息を呑んだ・・・

「沖田さん!!」

「千鶴ちゃん?」

真っ直ぐと沖田のほうへと向かってくる千鶴に沖田は振り返り、薫を見た

そこには歪んだ笑みがあった

そこで沖田は薫の企みを理解した・・・

助けに行こうと手を伸ばす・・・男達が銃の引き金を引こうとする・・・

全てがスローモーションのように感じた・・・・・・

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ———!!!」

突然、暗闇に叫び声が響き渡った

沖田がよ見ると銃を構えていたはずの男達が地に伏せている

そして、よく目を凝らしてみるとそこには人影が立っていた

沖田は再び薫を見た憎々しげに顔を歪め舌打ちをすると一瞬で暗闇に溶けていった

沖田は千鶴に駆け寄る・・・

「大丈夫だった?千鶴ちゃん・・・遅れてごめんね?」

暗闇の中から出てきたのは・・・紛れもない美波本人だった

「千鶴———っ!総司———っ!!」

平助は二人を見つけると慌てて駆け寄ってきた

「美波も!?ってか・・・総司・・・・・・お前・・・羅刹になったのか・・・?」

平助が驚愕を顔に浮かべる

「違う・・・・・・」

急に美波が口を開いた

「え・・・?」

三人とも驚いた表情をしている

「話は帰ってからする・・・早く帰ろう」

美波はそう言って一足早く駆け出して行った・・・・・・

—————

もうすぐ夜明けが近づいてくる

ある一室で平助、沖田、美波、千鶴の四人は集まっていた

「で、美波・・・さっき言ってた違うってどういう意味なんだ?」

平助は不思議そうな顔をしてたずねた

「・・・・・・沖田さんは羅刹になっていないって・・・そういう意味・・・」

美波が静かに答える

「でも、あれは確かに羅刹の目だった髪も白に変わってたし・・・」

平助はますます訳が分からなくなり首を傾げた

「ちょっと待ってて」

美波は懐から妖しく光る変若水を取り出した・・・

「それって・・・変若水だよな?」

「うん、そう・・・これが本来沖田さんが飲むはずだった変若水」

「僕が・・・飲むはずだった・・・・・・?」

沖田も訳が分からず困惑した表情を浮かべている

「そう・・・沖田さんがさっき飲んだのは私が魔術で作った液体・・・基本的に効果は変若水と似たようなものかな・・・違うのは羅刹化する
時間が決まっているってこと・・・後は・・・その時間の間だけ全ての痛みがなくなる・・・」

その言葉でようやく全てを理解した平助達は驚いた・・・

「す・・・すげぇじゃん・・・これなら・・・」

平助が何かを言おうとしたときだった・・・

「駄目だよ・・・駄目なの・・・・・・」

とっさに美波が口を挟んだ

平助が何を言おうとしたのかを読み取ったらしい

「何で駄目なんだよ・・・」

平助は美波に問いかける

「言ったでしょ?羅刹化できる時間は限られてるって・・・じゃあ、想像してみて・・・例えば・・・大きな戦が始まったとき・・・隊士の何人かが
羅刹化したとしても時間が経てば元に戻ってしまう・・・そしたらこっちが負けになるのは目に見えている・・・」

「じゃあ、もう一回飲めばいいんじゃないの?」

沖田は思いついたままに言ってみた

だが、美波は顔を伏せ言葉を紡いだ

「何回も飲めば副作用が起きてただの人間の体には耐え切れないほどの負担が掛かる・・・そうなれば元も子もないでしょう・・・?
魔術は・・・特殊だけど・・・完璧って訳じゃないんだよ・・・」

美波は少し悲しそうな顔をして、静かに呟いた・・・・・・

Re: 薄桜鬼  ひとりぼっちの悪魔  参拾玖話 ( No.95 )
日時: 2012/03/24 20:25
名前: mk (ID: AtgNBmF5)

お久しぶりです!mkです
しばらく更新していませんでしたが、一気に更新しちゃいます!
では、どうぞ

















慶応四年一月

近藤襲撃事件から約二週間後・・・旧幕府軍と薩長軍の間で鳥羽伏見の戦いと呼ばれる歴史的な事件が火蓋を切って落とされた

旧幕府軍一万五千に対し薩長軍は五千と数においては旧幕府軍が優勢だったが、最新兵器を用いた薩長軍の容赦ない攻撃に

旧幕府軍は苦戦していた・・・・・・

寒空に大砲の音が響き渡る

土方の指示のもと、二番隊は御香宮神社へと・・・三番隊は龍雲寺へ・・・そして、土方と残りの隊士達は一旦退却したと見せかけ

伏見街道の辻で追撃の薩長軍を待ち伏せし、兵士達が辻を通り過ぎた瞬間に彼らを挟み撃ちにした

薩長軍の混乱も大きかったが疲労の溜まっていた土方達の損害もまた、大きかった



伏見奉行所の広間ではけが人で溢れ返っていた

千鶴は遠くの大砲や銃声を聞きながらけが人の手当てをするために動き回っていた

「雪村君・・・大丈夫かい?皆のことが心配なんだね?」

怪我人の誘導をしていた井上が声をかけてきた

千鶴はこくんと頷いた

「今までも何度も危ない目に遭ったことはありますけど・・・・・・今度みたいに激しいのは初めてです・・・。皆さんが無事に戻ってきてくれる
か心配で・・・」

不安げな面持ちで話す千鶴を見て井上は千鶴の肩にそっと手を置いた

「大丈夫、彼らは武士だ・・・この劣勢の中で決死隊に志願した永倉君や島田君・・・体を張って彼らを援護する原田君・・・龍雲寺へ向かった
斎藤君や、最前線で戦うトシさん・・・そして叶君・・・みんな、今の世には珍しい本物の武士だ・・・」

井上は力強く言った

「本物の・・・武士・・・」

千鶴の言葉を肯定するように強く頷く

「彼らを信じよう」

「・・・はい・・・」

ようやく千鶴の顔に笑みが戻ってきたときだった

監察方の山崎が広間へと走りこんできた

「土方副長が戻られました!」

千鶴と井上は急いで玄関へと出た

そこには負傷した隊士を肩に担いだ土方と全身血に塗れた美波が戻っていた

「土方さん!叶君!」

千鶴は声をあげた土方達は皆疲れきった顔をし、隊服も血に汚れていた

「彼の手当てを頼む」

「はい」

山崎に負傷者を託した土方は井上に肩を貸してもらい広間へと向かった

そこで千鶴は土方の右袖の内側から血が滴っていることに気付いた

「土方さんも手当てを・・・」

「こんなのは、かすり傷だ」

土方が首を振ったのと同時に大砲の音が辺りに轟いた

「まったく、よく撃ちやがる・・・」

「斎藤さん、原田さん!」

戻ってきた斎藤も原田も負傷した隊士と一緒にいた

「ってか、美波・・・お前全身血だらけじゃねぇか大丈夫か?」

原田が気遣わしげに声をかけたが美波は少しニヤリと笑った

「大丈夫ですよ、怪我は一つもしてませんから・・・弾は一つ残らず切り落としたし・・・人間もたくさん殺しちゃったなぁ・・・
普段動いてねェから・・・あぁ・・・楽しかった・・・」

そう言って歪んだ笑みを見せた

明らかにいつもの美波とは違う・・・それにいち早く気がついた土方が問いかけた

「・・・おまえ・・・誰だ・・・?」

「やだなぁ・・・前にも俺はお前と話をしたじゃねぇか・・・」

「・・・?」

いまだ分からない土方に美波じゃない何かは口を開いた

「俺だよ・・・黎だよ・・・」

黎が名乗った瞬間その場にいた幹部達は驚愕を顔に浮かべた

「久しぶりだなァ」

黎はニヤリと笑った

「何でお前が美波の体を操ってる?」

土方は問いかけた

「まぁ、美波にも色々と考えがあるわけだから・・・まぁ、そんなことより、今は戦いに集中したほうがいい・・・」

その言葉に全員我に返る・・・

斎藤が報告を始める

「申し訳ありません・・・砲撃が激しく龍雲寺内まで斬り込むことは・・・・・・」

「・・・そうか・・・」

「・・・薩長の持っている銃は、射程が恐ろしく長い・・・かなり離れているのに二発に一発は命中している」

「あんな高い場所から一斉に狙われちゃあな・・・」

斎藤と原田がため息をついた

「よぅ!今戻ったぜ!」

明るい声が響いた

その方向に目をやると新八と島田が汚れた格好で入り口に立っていた

千鶴と原田が驚きに声をあげた

そのことに気がついた新八は目を見張った

「なんだよ、幽霊じゃないぜ?足もちゃんとついてる」

笑いながら自分の足を叩く新八を見て千鶴は安堵の溜息をついた

「いやぁ・・・参った参った・・・敵さん雨あられと鉄砲撃ってきやがってな・・・本陣に切り込むどころじゃなかったぜ・・・」

胡坐をかきそして悔しそうな表情を顔に浮かべた

「組の連中を・・・ほとんど死なせちまった・・・・・・」

新八がそう言ったときだった

今までよりも一際大きな音が響いたかと思うと地鳴りと共に煙が広間へと流れ込んできた

「火が燃え移ったか!?」

新八は外を睨みつける激しい砲撃と銃声が立て続けに聞こえてくる

「・・・トシさん」

井上が土方を見つめた

「なるほど・・・もう、刀や槍の時代じゃねぇってことだな・・・」

「・・・」

土方の発した言葉に斎藤は目を伏せた

土方の拳は強く握られ、応急処置をされた包帯には血が滲んでいる

「ここは撤退だ・・・」

土方の言葉に全員が土方を見る

「だが、まだ負けた訳じゃねぇ・・・この借りは必ず返してやるからな・・・」

その言葉に今まで俯いていた斎藤が顔を上げる

原田も新八も頷いた

「陽が落ちたら、羅刹隊を先発させて陣を移す・・・源さん・・・先に淀城へ行って援軍を頼んできてくれ・・・俺たちも後から行く」

「はいよ」

土方の指示に井上は頷く

「お前は源さんに同行して淀城へ行け此処よりは安全だ・・・」

千鶴はしっかりと頷いた

だが、それを遮るかのように美波が・・・いや、正確には黎が口を挟んだ

「行かないほうがいい・・・」

黎の言葉に誰もが息を呑んだ

「なぜだ!」

土方は声を荒げる

「行っても援軍など出してはくれない・・・すでに淀藩は寝返っている」

その言葉に土方は悔しそうに拳を握った・・・・・・

Re: 薄桜鬼  ひとりぼっちの悪魔   ( No.96 )
日時: 2012/03/24 20:28
名前: mk (ID: AtgNBmF5)

悔しそうに拳を握った土方を見て黎は一息ついた後口を開いた

「そんな寝返ったクズのような奴らの援軍よりも俺の作り出した援軍のほうがよっぽど強い」

その言葉に土方は顔を上げた

「援軍・・・」

「つくってやるよ、いくらでも・・・ちょうどやつらも血に飢えている頃だろうしな・・・大丈夫だ敵と味方の見分けくらいつくから間違って
味方を斬るなんてことはねぇ」

黎の言葉に皆は少し安心したような顔を浮かべた

「・・・そして、もう一つ・・・これは報告だ・・・京にいる各藩に朝廷からの密書が渡った・・・内容は、『薩長軍が錦の御旗を立てる・・・味方せよ
・・・・・・』と・・・」

再び発した黎の言葉に全員は怒りと驚きをあらわにした・・・

「ふざけやがって!!」

新八が拳を壁に叩きつける

「今では薩長が官軍・・・徳川が逆賊・・・そうなっているらしいな・・・」

黎は淡々と話す

「とにかく今は陣を移すんだろう?早くしたほうがいい」

黎の言葉に土方は頷き次の指示を出し始める

その指示に従って各自動き始めた・・・・・・


———————

時は経ち、数時間後

新選組はようやく大阪城へ入った・・・

広間では、近藤、土方、斎藤、新八、原田、山南、平助、そして美波(黎)が集まっていた

だが、全員厳しい顔をしていた

「将軍がいねぇとはどういうことだ?」

土方は近藤に詰め寄った

「トシたちが到着する少し前だ・・・・・・上様は会津公を伴われて、江戸に向かわれた・・・・・・」

「江戸へ?」

土方が聞き返す・・・それに続いて新八が口を開いた

「総大将が戦の真っ最中に尻尾を巻いて逃げ出しちまったってのか?大勢の仲間が幕府のために戦って死んだってのに・・・・・・
これじゃ、犬死じゃねぇか・・・・・・」

新八は悔しそうに言った

「上様を責めるな・・・きっとお考えがあってのことに相違ない・・・」

「構やしねぇ・・・俺たちだけでも残って戦う」

土方の言葉に島田が首を横に振った

「しかし、武器弾薬、兵糧共に城内にはもう残っていないとのことです」

「・・・なんだと!!」

悔しそうに唇を噛む土方を見ながら山南が続けた

「もう一つ、残念なお知らせがあります・・・我々も何度か敵に夜襲をかけたのですが、ことごとく失敗に終わりました・・・」

その言葉に疑問を持った原田が山南に問いかける

「羅刹隊が?どういうわけだ?」

「銀の弾丸だよ」

その問いに答えたのは山南ではなく平助だった

「向こうに、羅刹のことについてよく知ってる奴がいるってことさ・・・」

その言葉に山南は少し困惑した顔で言った

「我々羅刹も、銀の弾丸で受けた傷だけは癒すことが出来ません・・・」

「おかげで羅刹隊の連中はほとんどやられちまって途方に暮れてるんだ」

肩をすくめてみる藤堂を見て、美波・・・いや、黎が口を開いた

「西洋の国には吸血鬼バンパイア・・・と呼ばれる鬼が住んでいる・・・奴らの苦手なものは太陽の光とニンニク・・・そして、十字架と銀・・・
奴らは太陽の光を浴びれば一瞬で灰となって消える・・・羅刹もそうだ・・・寿命がくれば灰となる・・・変若水はバンパイアの血を
使っているから同じような症状が現れる・・・だが、羅刹隊の奴らの場合、元々は人間だったからな・・・効果はそう酷くはない・・・」

黎が説明するとその場にいた全員が納得したように頷いた・・・

「そうか・・・そういうことなのか!」

「土方君、ここは我々もひとまず江戸へ退きましょう」

山南が提案したことに土方は悔しがり拳を握り締めた

その土方の様子を見て他の幹部達も悔しそうな表情を浮かべる

「・・・・・・俺たちは元々、徳川の殿様のために戦ってきたんじゃねぇ・・・」

土方がポツリと呟く・・・その呟きを聞いた全員が土方を見つめる

「いくら上にやる気がなかろうが、俺たちには関係ねぇことだ・・・江戸には伝習隊もいるし、幕府が外国から買った軍艦だって無傷のまま
残ってる・・・」

その言葉に皆が頷き始める

仲間たちの顔を見て、土方は力強く言った

「江戸に戻ったら、喧嘩のやり直しだな・・・」

———————




大阪城を引き揚げ、江戸へ向けて出航した船の甲板に千鶴達は立っていた

夜明けの海はとても綺麗で、幻想的な姿だった・・・・・・

今、ここには、誰一人かけることなく全員が立っている

そのことに内心ほっとしながらもこれからのことに対して千鶴は不安を感じていた

これからどうなるのか、どういう運命をたどるのか、それは美波と黎しか知らない・・・

















はい、今回は此処で終了いたします!
この話が、だいたいアニメの第一期が終わった頃の話になるかと思います
次の話は第二期からの話なのですが、まだ、書き始めてないので更新はしばらくお待ちください!


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