二次創作小説(紙ほか)
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- Princess Teens
- 日時: 2018/06/10 22:27
- 名前: まるき (ID: Mm9jHYga)
輝く10代になれる
- Re: Princess Teens ( No.36 )
- 日時: 2018/07/08 00:02
- 名前: まるき (ID: RO./bkAh)
「亮ちゃん」
ドリンクを抱えた咲季が立っていた。部活の集合場所である新田賀谷のテニスコート場。アップに向かうところで呼び止められた。
「景吾くんがね、1日マネージャーやってもいいって言うから、今日だけ」
「頑張れよ」
「ありがと」
今日こそ、頑張らねば。私は昨日初めてサランラップを触った。そこにお米を乗せて手のひらで包んで丸める作業をして、あとは自分で野菜を切った。お肉も炒めた。お昼時、亮ちゃんに私が作った弁当を渡してみる。でも、問題はあの女。私の方が可愛いし、愛想がいい。友達も私の方が多い。幸薄そうなあの女と私、何が、なんの差があるのか。
「もうすぐで他校が来るな。樺地、コートの入口で案内しろ」
「ウス」
樺地が走って行った。咲季はちょっと不満そうな顔をしている、すぐ読み取れる。
「あの女、亮ちゃんに弁当私に来るんでしょ」
「らしいな」
「景吾くん…私最低かな」
ちょっと潤んだ大きな瞳で景吾を見上げる。景吾は柔らかく口角を緩めて、咲季の後頭部を撫でた。
「それほど、宍戸が好きなんだろ」
「恥ずかしいよっ」
「宍戸がお前の魅力に気が付かないわけない」
咲季は照れたように視線を下に向けてしまった。亮ちゃん、亮ちゃんにも頭撫でて欲しい。景吾は合わない視線にもどかしさを感じて、手を離した。
- Re: Princess Teens ( No.37 )
- 日時: 2018/07/08 00:49
- 名前: まるき (ID: RO./bkAh)
バイト先であるスーパーのエプロンと三角巾を外して、カゴに突っ込んで、自分のロッカーから素早く荷物と弁当を取り出す。おばちゃんたちに「あらぁ早いわねえ」「お疲れ様」「気をつけて」なんて口々に言われたけど、聞こえてない振りをして頭だけ下げて裏から出た。もうすぐで12時半。1時半から練習試合で、地下鉄を3駅ずつ2本乗り継いで15分徒歩。亮くんが食べる時間を考えて1時に着きたい。
「今から昼休憩とする」
跡部が指示を出すと各自散っていく。忍足が軽い膝蹴りを釜してきた。何のことだかわかっている。
「いつ来んのや」
「わかんねぇ」
「最寄りの駅まで迎えに行ってやったら?」
「行き違いになるかもしれへんやろ」
「あーな、来るまで辛抱だな」
岳人に背中を叩かれた。
「はい!」
咲季が目の前に飛び出てきた。亮に巾着袋…弁当を両手で差し出している。
「お、俺かよ?」
「り、亮ちゃんしかいないでしょ」
どうすりゃいいんだ…まさか咲季が俺に弁当作ってくるなんて思いもしなかった。
とりあえず一本目の地下鉄に乗れた。あと1駅で乗り換えである。ホームからエレベーターに乗って、乗り換える地下鉄のホームを見つけてまたエレベーターで下る。携帯の画面は1時になりそうだ。スーパーから最寄り駅が若干遠くて、走ったら息が切れた。でも亮くんの方が疲れてるはず。
「とりあえず貰っとき?」
「おう、ありがとな」
「食べてね?」
「わかった」
咲季は俺たちに背を向けて走って行ってしまった。渡せた!渡せた!亮ちゃんが後は亮ちゃんが美味しいっていうだけ!
ここから15分走れば間に合いそう、改札を抜けて新田賀谷のテニスコート…場所は確か、昨日調べた。逢花は走り出した、黒髪が靡いて大きな弁当箱は揺さぶられている。
「亮、あんまり深く考えんなよ」
「日吉お前弁当忘れたんか」
「ただの痛恨のミスですよ」
「これ食ったらええ」
「忍足先輩!…うるさいですよ」
日吉の前の観客席にならんで座る先輩たち。一番背中を丸めているのは宍戸先輩である。忍足先輩のブラックジョークに珍しく突っかかった日吉である。腹減ったわ、咲季から弁当貰ったけど、まず逢花のを完食しないといけねぇ。どうしよう。昼休憩はもう終わる。
「腹になんか貯めといたらぁ?」
慈郎が日吉の横で観客席に体を倒している。それには亮も賛成である。
「だな」
亮は咲季の弁当箱を開けた。
あと10分で試合が始まる。やっと試合上である新田賀谷のコートの入り口に入った。奥の方にテニスコートと、集団が小さく見えた。
- Re: Princess Teens ( No.38 )
- 日時: 2018/07/08 01:24
- 名前: まるき (ID: RO./bkAh)
コートに向かう途中前方からポニーテールでジャージを着た女の子が歩いてきた。視界に入ったくらいで、逢花はまた走り続ける。
「ちょっと」
すれ違ったところで逢花は声で止まる。
「それ、なに?」
逢花の片手に持っている弁当用の保冷バッグに目をつけた。
「うちの部員に何か用ですか?」
逢花は振り返ってわかった。文化祭の時の子だ、私が煽って怒っちゃった人。マネージャーだったのか。
「…お弁当を渡しにきたんです」
「私が渡しておいてあげます」
逢花の手から乱暴にバックを取り上げる。抵抗する暇もなかった。
「よかったら会っていったらどう?亮ちゃんに」
「…わかった」
逢花の返事を聞く間もなく、咲季は逢花の作った弁当を抱えて去ってしまった。どうしよう、絶対弁当亮くんに渡らない気がする。でも亮くん本人に言ったところでめんどくさくなるだけだし、適当に忘れたことにするか。逢花は背伸びをして、今度はゆっくりと歩き始めた。なんか体力使い切った気がする。
「なによ」
草むらに入ったところで、咲季は弁当箱を開けてみた。そこそこ大きな容量の弁当箱。1番目にはオムライス、2段目にはフルーツや唐揚げ、アスパラガスを生ハムで器用に包んだものや、可愛いウィンナーなんかが盛りだくさん。色とりどり綺麗に詰め込まれている。でも、咲季にはただの汚らしいものに見えたので、弁当箱をひっくり返して中身を全て地面に返してしまった。息が何故か苦しいうちに、弁当箱とバックと包を一緒に投げ捨てた。
「あ、亮くん…」
「逢花っ」
逢花を見つけて一目散に駆けてくる亮に、逢花は笑いかけた。
「ごめん、お弁当忘れた」
「…そうか」
「本当にごめんね」
意外とショックだった。意外っていうのは、思ったより俺は逢花の作った弁当がすげー食いたかったってことだ。だから、逢花が忘れたって言った時にめちゃくちゃ悲しい顔したんだな、俺。あー女々しい。
「また作ってくれよ」
「うん…お腹すいてるよね?」
「あ?いや、あいつらからわけてもらった」
観客席でタオルやドリンクを手に取り移動している岳人、慈郎、日吉あたりを指さした。
「今度は…あったかいオムライス食べてほしい」
「出来たてのな!」
亮がまた歯を見せて逢花に笑顔を向けた。逢花も釣られて笑顔になった。
「試合見てっても大丈夫だから、俺の活躍見てろよ」
「うん」
無意識だったのか、亮は逢花の横を通るとき頭に手を置いた。それから小走りで部員の元に寄ってく。冷やかしを受けてまた亮は武力行使で抵抗している。
「亮ちゃん、私のお弁当完食してくれたの。おなかいっぱいみたい」
「そうだね」
逢花はコートに入った亮の姿を見ながら頷いた。咲季は逢花の表情が何故か柔らかいことに、さらに腹を立てた。どこまで挑発してきたら気が済むわけ?咲季は逢花の背中を睨みつけている。
- Re: Princess Teens ( No.39 )
- 日時: 2018/07/08 01:28
- 名前: まるき (ID: RO./bkAh)
あかん。便所から出たら、咲季が…まぁ分かっとったことな。神島逢花、亮になんて説明したんやろ。これは亮に言った方がええんか。また尿意が襲って来そうやもん。
- Re: Princess Teens ( No.40 )
- 日時: 2018/07/08 02:12
- 名前: まるき (ID: RO./bkAh)
勝った、めちゃくちゃ勝ってる。でももう11月だからすぐ寒くなる。
「今日調子いいな」
「いつもだろ」
今のところファイナルセットに持ち込んでいない。今日は岳人と組んでいる。この試合が終わるとレギュラーは少し休憩が入って休める。忍足はシングルで出ているし、日吉は何故か跡部と組んでいる。慈郎もシングル。完全に監督と跡部におもちゃにされてる。
「ゲームセット」
岳人とハイタッチした後、ベンチで汗を拭う。咲季がドリンクを差し出してきた。
大体予想は付いてる。私はここで察しが悪ければ「そんなの知らなかった…」って泣くんだろうけど。生憎、耐性というか感情が湧き上がってこないのでしょうがない。よくも悪くも私の予想は弁当が亮に渡らないということ。逢花は亮の試合を見ながらぼんやり考えていた。横にはマネージャーの子、人一倍声がでかいのが亮くん。なんか私のいるところじゃない、皆キラキラしてる。本当になんて言ったらいいのかわからないけど。
帰ろうかな。
逢花は観客席から立ち上がって、最前列から登って道に出た。風が冷たくなってきた。来た道を戻る。半ば公園みたいな感じでもある、草木がちょこちょこ生えている。
「あ、」
私の、弁当箱とか箸とか全部。全部、地面に散らばっている。もう飛び出たケチャップライスは砂まみれ。ほかの具材も。憤り…憤りって、怒るってことかな。ふいに浮かんできた感情なので、私は今ちょっとイライラしているんだろう。
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