二次創作小説(紙ほか)

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

Princess Teens
日時: 2018/06/10 22:27
名前: まるき (ID: Mm9jHYga)

輝く10代になれる

Re: Princess Teens ( No.81 )
日時: 2018/08/13 23:48
名前: まるき (ID: RO./bkAh)

亮くんと2週間会えてない。仕方ないか、忙しいし。逢花は商品の棚に缶詰を並べていた。手が滑った、ちょっと派手な音を立てて缶詰は床に散らばった。やっちゃった…逢花はため息をついて、拾い集める。ダメだ。寂しいとか思ったら、限られた時間一緒にいるのが普通なんだから。逢花が1人に慣れてしまった辛さと、誰かといることによる新たな不安は自身でよく分かっている。最近陽也が家で勉強するようになったので、逢花は夜ご飯を予め作ってから家を出るし、陽也に勉強を教えたりしている。なんだか、以前より丸くなった気がする。

「すいません、サフランあります?」
「サフラン…ですか?」

地味に高級な香辛料を尋ねてきたのは、氷帝の制服の女子生徒だった。そっぽを向いて、腕を組んでいるが買い物かごを抱えている。

「こちらになります」
「あ、ありがとう」

逢花は思い出した。たしか、クリスマスにスーパーで会った子…お弁当も捨てられたり、亮くんのことが好きな子だ。

「もう、亮ちゃんのこと諦めたから安心して」
「…はい」
「私、もっといい男見つけたから」

ちっちゃいガラス瓶で1000円するサフランを3つ買い物かごに入れた。

「今まで、悪かったわね。邪魔ばかりして」
「お気になさらず…」

逢花にも、咲季自身の精一杯の謝罪だと伝わったようだ。咲季は、何故自分が悪いのに逢花の方が頭を下げているのか不思議だったがその場をそそくさとさっていってしまった。

Re: Princess Teens ( No.82 )
日時: 2018/08/14 23:35
名前: まるき (ID: RO./bkAh)

陽也に勉強教えてあげてくれない?

俺が?

うん、オフ日とか暇なときでいいから

逢花と遊びたいんやけど

わかった

少ない文面が羅列してあるだけ。部活前にしていたLINEの内容である。逢花はバイトが終わったのだろうか、亮はこっそりバイト先のスーパーまでいってみた。チャリを駐車場に止めると、スーパーに入る。7時半、逢花がもうすぐ出てくる時間である。適当に店内をぶらついていると、逢花がいた。が、若い男と何やら話している。亮は棚の影に隠れた。買い物かごを持った相手は大学生だろうか、高身長で亮とは違い愛想よくイケメンである。逢花は笑った。2人は話を終え、逢花は出口の方へ向かっている。初めて見た、逢花が他人の男と話すところ。

「あ」

スーパーを出て、駐輪場のスペースには亮くんの自転車。キャップがかかっている。店内にいるのかわからないが、逢花はスーパーから出たところでまた入店し、当たりを見回してみた。いない。

「逢花」

声がしたら、亮がいつの間にか逢花の目の前にいた。髪が短くなってる!?逢花はちょっと面白かった。

「今までで1番短いかも」
「短い方が好き」

亮は今までより短髪の自分の髪を撫でながら、切ったことを良いと思った。逢花を見て、おもわず小走り(高速)になってしまった。しかし亮には気がかりである、あの男が。帰り道にその事が気になって仕方がない。誰なんだよー、知らねーし、激ダサだし。俺は一体何を模索してこんなにネガティブになってんだ。逢花は亮が自転車を押しているのを見てか、亮のブレザーに片手を突っ込んでいる。

「どうしたの?」
「いや、別に」

忍足が言ってた。男の嫉妬はマジきもい。宍戸が駄々こねてたら普通にきもいか、殺されるんかって女の子恐怖やで。って。

「なぁ、俺って怖い?」
「ちょっと怖い」
「そうか…」
「でもぽんこつだから怖くないよ」
「最近はぽんこつじゃねぇよ」

少し笑い声が響くくらい橋を抜けた住宅街は静かである。

「さっき…逢花と話してた男って誰?」
「え?」

逢花が前を歩いていて振り返る。さっきっていつ?あ、寿三郎さんのこと?

「寿三郎さん?」
「わかんねーけど」
「スーパーで話してた男の人でしょ」

もしかして亮くん気になってる?久しぶりに見かけたから私から声をかけた。最近どうですか、とか。また突拍子もない説教みたいな迷言みたいなことを言われた。「人間らしくなってん、よかったよかった」と笑っていた。

「コインランドリーで初めて会ったの。私にご飯くれた。そのあと教育実習で私の学校に来て、私にすごいズケズケ家族のこととか聞いてきてウザかったんだけどね、お前は人より早く大人にならないといけないって言われたの。やっと自分のやることが見えてきた。今では寿三郎さんに感謝してる」

ふーん、と亮はそれだけ言った。そんなことがあったなんて知らなかった。

「俺もお前に感謝されるようになるわ」

逢花の足が止まった。

「亮くんはそのままでいいよ」
「…なんだよ、それ」

いじけないでよーと言わんばかりに逢花は亮の顔を見て笑っている。亮はイマイチよく分からなかった。やっぱり逢花みたいに頭が切れる奴は頭良い奴とくっつくんじゃないのか、そんな心配もあったが

「亮くん、変わらないで。ずっと私と一緒にいて」

何故か逢花が俺に抱きついて顔を埋めてきた。体がちょっと震えているので、亮はたまらず抱きしめ返す。自転車が倒れたがそんなことは気にならなかった。

「当たり前だろ」

亮はもっと言いたいことがあったが、真っ先にそれが出た。変わらないもの。それから逢花は亮をアパートに連れてドアを開けた。陽也が襖を隔てて勉強していた。今朝作った牛丼と炊いたご飯は減っている。

「兄さん!こんばんは」
「おう」
「あ、姉貴ここの図形の証明教えてよ」
「数学は亮くんに聞いて」
「は?んなもんわかんねーよ」

亮は数分間模索しているが、恐ろしい程に解き方がわからない。逢花はその間に亮の分まで牛丼を装っている。

「俺、地理だったらできる」
「いいんですか?教えてください!」

亮は地理だけは得意だ。


Re: Princess Teens ( No.83 )
日時: 2018/08/17 22:24
名前: まるき (ID: RO./bkAh)

看護婦に案内されてスーツ姿の男が病室を訪ねてきた。病室は個室である。病室の机にはウィスキーやビール瓶が転がっていた。

「神島さん、ダメでしょう。また隠れて飲んで」

看護婦はやれやれといった表情で床に落ちたビール瓶とウィスキーの瓶を拾い集めて退室した。男はため息を吐いた。何しに来たの、と言わんばかりの眼光で男を睨んだが話す気力はないようだ。

「娘と息子をお前から解放してやってくれ」
「あんた…」

元夫婦。神島逢花と陽也の父親と母親である。

「クリスマスプレゼントが3000円の現金だと、笑わせるな」

もはや言い返す言葉もなかった。自分が男と少し家を空けただけなのに、帰宅したら2人がいないのだ。「少し家を空ける」というのはこの母親にとってよくあることだが、子供にとっては2日、3日、1週間でも長いのは言うまでもない。しかし連絡もつかず1人になった挙句、結局は酒に逃げて意識を失った状態で病室に運び込まれた。アルコール中毒であった。

「私はあいつらの父親なんだ…」

父親が曇ったような真剣な顔になると、母親は鼻で笑った。

「今更、何よ。あんた、子供たちと一緒にご飯も食べたことなかったじゃない。あたしはね、毎日毎日」

人が変わったように捲し立てるように止まらず話し出したところだ。

「しょうがないじゃないか!だから今こうやって…」
「それに、逢花は私たちのこと親だなんて思ってないわ」

母親は全てわかっている。分かったのは2人の子供が出ていったあとだった。

「そんな、ことはない!」
「そんなこともわからないのね」
「じゃあお前何故自分が最低な親だと分かってて何もしないんだ」

「死んで償う」

父親は目を丸くした。すぐにふざけるな、と吐き捨てた。

「あの子たちは生きるのにすら必死だったの、私はそれにも気がつかなかった。だから…あの子たちのこれからの人生を邪魔したくないの、当然の報いよ。痛くも痒くもない」

母親の頬には涙が伝っていた。そして充電が切れたのか、また死にそうな眼光に戻った。

「それがわかるはずよね?あなたにも」
「…わかってたまるか」

病室を出ていってしまった。大きくドアの音を荒立てていった。母親は焦点は合わないがただ窓を見つめているだけであった。

Re: Princess Teens ( No.84 )
日時: 2018/08/17 22:54
名前: まるき (ID: RO./bkAh)

あの男が帰ってきた。唐突に家のドアを開けて、何か私の作った晩飯が食いたいとやってきた。今日も亮くんが陽也の家庭教師をしに来てくれていた。午後9時頃。

「父さんどうしたの?」
「昼間な、お前たちの母親に会ってきた」
「え?」
「もっと逢花と陽也に歩み寄らなきゃな、と思ったんだ」

なにかに取り憑かれたようだ。亮は無表情な逢花の顔を久しぶりに見た。何か言いたげで口をかすかに動かしているが、一体何を思っているのだろうか。亮にはとうてい分からなかった。椅子に座ってただ食事を待っている男の背中をただ呆然と見ているだけである。

「あ、さっきさ晩飯俺らで平らげちゃったんだよ!またの機会ってことで」
「父さんが…父さんは、ダメなのか?」
「父さん?」

背中が小刻みに震えている。

「いいアパートだなぁ。父さんもこれからここに住みたい」

「帰って」

逢花はポツリと呟いた。

「お願い、帰って」

逢花はまた繰り返した。父親は勢いよく立ち上がり、逢花に向かって顔真っ赤にして近寄った。亮はすかさず、父親の前に塞がり逢花を自身の後ろにやった。

「誰がこの家の金払ってやってると思ってんだ!出てけ!」
「じゃあ俺ん家で…逢花暮らしてもいいですか?」

亮はニヤッと笑ってみせた。

「逢花、逢花は嫌だよな?これからは父さんとまた仲良く暮らせるよな?」
「…」

逢花は顔色は変えず下を向いている。返事がない逢花に、取り乱したような狂った笑顔で父親は尋ねた。

「ダメだ。埒が明かねぇ。一旦出ようぜ」

亮は逢花の手を引いて玄関に行った。逢花は亮に手を引かれるままに外に出た。部屋に残された父親は膝を付いて崩れて、泣き始めた。陽也は見てもいられない様子で襖を閉めて自室にこもった。

「陽也、お前は違うよな?」
「…今日は急だったからさ、会うなら今度にしよ」

今度、いつになるだろう。

Re: Princess Teens ( No.85 )
日時: 2018/08/17 23:11
名前: まるき (ID: RO./bkAh)

「見苦しいところ見せてごめん」
「なんで謝るんだよ」

凄く逢花の父親をぶん殴りたい。河原の上の斜面になっている部分に2人は座った。

「逢花のあの顔久々に見た」
「あの顔って?」
「ただ呆然としてんだ。真顔なんだけど、気が抜けてるんだけど、どっか苦しくて重い感じの」

言われても想像がつかない。私は無意識にそんな暗い顔をしてたのか…きがつかなかった。

「でも、亮くんと会ってから明るくなったねって言われるようになったよ」
「俺も思う」
「ありがと」

前は逢花のことひねくれてる奴だて思ってたけど、違った。ただ単に辛いのを隠してただけなんだ。

「じゃあ俺ん家来るかー」
「今からは遅いよ」
「いや、今日から兄貴のとこ行ってるから、逢花来てもバレない」

いいの?逢花が聞いたところで、逢花の携帯が鳴った。

「陽也?どうしたの?」
「あ、姉貴。父さん帰ったよ」
「本当に?」
「うん」
「本当に帰ったの?」
「マジで。俺が追い返しといた」
「あ、ありがとう」
「兄貴とゆっくりしてきなよ」
「わかった」

じゃあねと言って切れた。陽也は深呼吸をして机に向かった。今まで母親と父親より一緒にいる時間が長かった。俺は毎日喧嘩するわチャリで補導されるわ、姉貴の財布から金抜くわでいっぱい迷惑をかけた。だからこそ、父親とのやりとりは俺がするし絶対に高校に受かってみせる。

「今夜は寝かせないからなー」
「何言ってんの」

あ、笑った。よかった。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。