二次創作小説(紙ほか)
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- Princess Teens
- 日時: 2018/06/10 22:27
- 名前: まるき (ID: Mm9jHYga)
輝く10代になれる
- Re: Princess Teens ( No.5 )
- 日時: 2018/06/11 00:35
- 名前: まるき (ID: Mm9jHYga)
「ここで、代入して…というわけだ」
やば、寝てた。俺のいっぱいちゅき(真逆)な数学Ⅱの時間。数学教師と目があったので平常点引かれてそう。それにしても、昨日は不思議な夜だった。突然川にスマホケースを投げ込んだ女子高生らしき女。肩くらいまでの黒髪をびしょ濡れに濡らしてでも大笑いしていた。なんだか底抜けに明るくて、笑顔が可愛い。どこの制服なんだ、あのリボンとスカート。体に張り付いたスカートと透けたシャツは意識的に思い出さないようにしていた。
もう一度会ってみたい。名前と学校を知りたい。
それだけは確か、と思ったところで四限のチャイムが鳴った。昼練に行くために机に突っ伏して寝ている慈郎を半ば叩き起した。
- Re: Princess Teens ( No.6 )
- 日時: 2018/06/13 05:10
- 名前: まるき (ID: Mm9jHYga)
私はもう自分でお金を稼ぐしかないのか、意を決してコンビニか本屋でバイトをしたい。けど、私みたいなまともじゃないの雇って貰えるかどうか。とりあえずバイトを探すとして…逢花は用事を思い出した。あの彼にパーカーを返さなきゃ。でっかい通りを抜けて下町のコインランドリーへ。やはり誰もいないであろう、逢花はパーカーを高い位置にある洗濯機に放り込んだ。しばらくぼーっとしているが、することがなく椅子に座っているだけであった。お兄さんが入ってきた。
「学校はどないしちょん」
「へ?」
「ワレのことやろ」
…何言ってんだこのお兄さん。赤髪のチリチリした髪の毛で身長も高い。DQNかヤンキーかな?
「は、はい」
「はー、標準語やな。学校は?」
「や、休みです」
「俺大学サボっちゃった」
意外と笑うと可愛いんだな。と逢花は内心思った。
「なんか…暇やな」
「そうですね」
「今から時間ある?」
あ、荒手のナンパ。怖い。でも断れないなと感じつつ、躊躇なく断るのが逢花である。
「お兄さん怖いんでいいです」
「ぎょうさん言われんで俺!あ、僕ねこれでも慶応ボーイなんですよ」
「本当ですか?」
「理学部の物理専攻です」
まだ信じてない。大人というか年上の人を信じないのが逢花にとっては必然だし、信用ある大人を見分けるのが逢花の特技でもある。いい人か悪い人か見極めたい。これでついてって変なことされたら自業自得だし、ご飯奢ってもらったりするにしても男の人がただ単純に優しいわけがない。
「それでも行きません私」
「そうですか、僕下心とかないんですけど」
地味に訛ってる標準語で悲しさを表現している。こう言う奴に限って…と逢花は心の中で呟いた。
「まぁおにぎりとジュースでも飲み食いしたらいいんじゃないですか」
「え、いいんですか?」
「あげます、コンビニがそこにあるので」
今日の食費が浮く!!差し出されたコンビニの袋を受け取り、ありがとうございますと頭を下げた。
「あ、あの、名前教えてもらっても…」
「毛里寿三郎です」
「じゅさぶろうさん…ありがとうございます」
「僕どこの人間か分かります?」
「関西ですか?」
「姫路です」
兵庫か…上京してきたんだ。
「何かあれば向かいのおんぼろアパートにぜひ」
ガラス張りの入口のドアの向こうを指さした寿三郎の指先を追って逢花は、木造の、八百屋の隣にある古いアパートに目線をやった。
「上にね、カップルが同棲してるんで殺意湧いてますね、死ねやダホが!」
「ダホって変」
「播州弁でアホとかバカって意味です」
ちょっと面白い。ダホって使ってみよう。ビーっと洗濯を終えた音がした。乾いたパーカーを洗濯機から取り出そうとするも、手が届かない。さっきは投げいれれば入るからよかったものの。
「はい」
「ありがとうございます」
「ちっこいなぁ」
上から手が伸びて、いとも簡単にパーカーを取ってくれた。頭の上にパーカーを丸めて乗せられてしまった。
「身長はしょうがないですよ」
「せや」
「お昼もらってもいいんですか?」
「おう」
「ありがとうございます」
逢花は寿三郎に頭を下げて、コインランドリーを出た。あの制服…大学の近くにある。今朝も登校しとる生徒よーさんおったから多分学校休みなんは嘘やな。あんなん普通に友達もいそうやし、なんかいけないワケでもあるんかな。考えごとをしてたら、あ!名前聞くの忘れたん!と同時に洗濯が終わった。
- Re: Princess Teens ( No.7 )
- 日時: 2018/06/13 23:44
- 名前: まるき (ID: Mm9jHYga)
「亮ちゃん!」
それほど遠くない距離を小走りでやってきた。部活に行く途中に通せんぼと言った形でふざけて手を広げてくる。
「どうした?」
「何でもなーぃ」
「じゃあな」
放課後は忙しい、つってもテニスしてるだけなんだけど。河原井咲季とは幼稚舎以前から知り合い。幼稚舎から一緒にいればみんな幼なじみみたいなもんなんだろうけど。
咲季は立ち去る亮を見て、ちょっとムッと頬を膨らませて眉間にシワを寄せた。でもなんだか顔面が崩れるぐらいの形相でなく「怒ってて可愛い」の方が言われるだろう。女の子慣れしてなくて、高校生なのに今まで彼女がいなくて、でも顔がかっこよくて、体格が良くて、竹を割ったような好青年な男子は中々いない。たしかに咲季の見解は間違いではないのだが、問題は亮本人が彼女をつくらないことである。
「ふざけんなよー」
「ばーか!」
廊下で男子と取っ組み合いをして、大笑いしている亮を見ると幻滅してしまうのだが、やはりかっこいい人はかっこいい。亮ちゃんを彼氏にしたらそれこそ氷帝学園一のお似合いカップルのハズ。咲季も可愛らしい顔立ちで、小動物のような雰囲気である。
「なぁ、藍色?青?かな?あれ?そう、チェックでそんな感じのスカートでさ、同じような色のリボンの制服の学校わかる?」
「わかんねーよバカ」
「あんだろ、普通に」
「知らねー」
岳人は頭にはてなマークを浮かべ、度々たまに出てくる亮の天然だか適当な発言に悩まされている。
「普通にいるんだよなぁ高校の名前がわかんねぇ」
「柳台高校じゃないですか?」
部活のロッカールームで、ウェアに着替えていると、後輩の日吉若がしれっと話に入ってきた。
「あ!そーだぜ、柳台高校」
「2週間前に練習試合しましたよね?」
「お、おう」
忘れてた。まあとりあえずあのスマホぶん投げ女は柳台高校だな。柳台高校は偏差値は氷帝の普通科と大体同じくらい(55前後)。あまり頭は良くないが、就職先に長けスポーツも強い。
- Re: Princess Teens ( No.8 )
- 日時: 2018/06/14 17:57
- 名前: まるき (ID: Mm9jHYga)
部活を終え午後8時、忍足侑士とラーメン屋に入る。
「なぁ、大学どないするん」
「考えてねーわ」
「岳人と慈郎と農学部行ったらええやん」
「ネタだろんなモン」
チェーン店なのでいつものチャーシュー大盛りを頼む。替え玉でも足りねー。すかした顔で俺より食う忍足は、医学部受験を約束されたような秀才である。
「お前さぁなんで頭いいんだよ?」
「良くあらへん」
「あー今度赤点取ったら俺激ダサすぎて、試合出れねぇかも」
「俺から話つけとこか」
「いや、それも激ダサ」
「はよ食えポンコツ」
俺は部内で「ポンコツ」と呼ばれている。最近自分自身でもわからなく無いなぁ、と思い始めた。
「どうなったん、スマホぶん投げ女は」
「名前も分からない。柳台高校ってだけだ」
「可愛いんか」
「俺そういうのあんまわかんねーけど…可愛いんじゃね」
「頑張って探し出したらええのに」
「学校まで張りにいくのかよ?」
「可愛い子に会いたいやろ」
「俺は別に」
忍足はたまに本気で宍戸がホモなのでは…と思うことがある。
- Re: Princess Teens ( No.9 )
- 日時: 2018/06/14 18:57
- 名前: まるき (ID: Mm9jHYga)
ただいま、と最後に自分が言ったのはいつだろう。弟は帰ってこない。家であるアパートは真っ暗で、自炊を知らない母親が立つ台所はインスタントラーメンや弁当のカスや、袋が散らばっている。
「なに、あんた帰ってきたの」
「…君が、逢花ちゃんだね?」
部屋の電気がバチンっといきなりついた。暗闇から声がすると思ったら目の前にヤクザみたいな知らないおっさんがいて、肩が震えて身動きが取れなくなった。母親は、私を見ると舌打ちをしてボサボサの頭を掻いた。2人でソファーにいたのだろうか。
「挨拶しなさいよ」
「…」
逢花は身動きが取れないまま頭だけ下げた。おっさんは逢花を舐め回すように見ると、母親の隣に座った。
「こっちへ来なさい」
「…やだ」
「は?」
「やだぁ!」
逢花はそばにあったガラスのコップを勢いよく床に投げつけ、またローファーを履き玄関を出た。気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。
「あの糞女!」
「大丈夫だよ、高校生だからもっと夜には帰ってくる」
おっさんは割れたコップを拾いながら、叫び続ける母親をなだめていた。
逢花はしばらく走った。夜のセンター街に来てしまった。息が切れている。
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