複雑・ファジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 当たる馬には鹿が足りない【更新停止】
- 日時: 2019/04/09 23:57
- 名前: 羅知 (ID: miRX51tZ)
こんにちは、初めまして。羅知と言うものです。
普段はシリアス板に生息していますが、名前を変えてここでは書かせて頂きます。
注意
・過激な描写あり
・定期更新でない
・ちょっと特殊嗜好のキャラがいる(注意とページの一番上に載せます)
・↑以上のことを踏まえた上でどうぞ。
当て馬体質の主人公と、そんな彼の周りの人間達が、主人公の事を語っていく物語。
【報告】
コメディライト板で、『当たる馬には鹿が足りない』のスピンオフ『天から授けられし彩を笑え!!』を掲載しています。
髪の毛と名前が色にまつわる彼らの過去のお話になっております。
こちらと同じく、あちらも不定期更新にはなりますが宜しくお願いします。
一気読み用
>>1-
分割して読む用
>>1-15
>>16-30
>>31-45
>>46-60
>>61-75
>>76-90
>>91-115
- Re: 当たる馬には鹿が足りない≪更新再開≫ ( No.27 )
- 日時: 2016/08/11 04:39
- 名前: 羅知 (ID: kTX6Wi1C)
大和田がそう言うと同時に聞き覚えのあるメロディーが店内に鳴り響く。僕の携帯の着信音だった。
宛先はーーーー馬場満月。
「…もしもし」
ーー少し、緊張した。ここ最近全然、喋ってなかったから。
『濃尾君、朗報だ』
いつものーーいつもの”馬場満月”の声の筈なのに体全身が愉悦で震える。悦んでる。久しぶりの”あの感じ”に。
(ああ…笑っちゃいそう……)
皆、いるのに。こんな所で”こんな顔”したらいけないのに。
どうしても抑えきれないーー”衝動”
だってーーだって”お前”は知ってるから。僕の一番”好き”なコト。僕が嬉しいコト、僕が悦ぶコト。
”あんなコト”出来るのは”お前”だけだから。
『−−−−今から君は殺される』
ーー低い、感情の抜け落ちた声。
その通話が切れると同時に入口のドアが乱暴に開けられた音と、誰かがこちらに向かってくる足音を聞いた。
********************************
「−−−−×××ッ!!」
獣の咆哮のような叫びと共に、僕の真後ろで止まる足音。
聞き取れなかったけれど何と言ったかは、目の前の椎名の顔を見れば一目瞭然だった。
彼は名前を呼んだのだ。ーーシーナと。
そうなれば必然的に僕の後ろにいるのは”尾田慶斗”なのだろう。ーーこの殺意を振りまいてる人物は。
…あはは。ねえシーナ。君と尾田慶斗はお似合いだと思うよ。君達は本当に似た者同士だ。
僕、振り向いたら多分眼球抉られるよ?
互い以外の害する者にここまで殺意をぶつけられるんだ。君達は絶対仲直りできるって。
だからさ。
「……痴話喧嘩に巻き込んでんじゃねえよ、糞が」
- Re: 当たる馬には鹿が足りない≪濃尾が空気≫ ( No.28 )
- 日時: 2016/08/11 07:26
- 名前: 羅知 (ID: kTX6Wi1C)
僕がそう言うのと同時に、何かが僕の頭に振りかぶられるのを感じた。…殴ったら頭の方がへこむ系の”何か”だろう。
しかし僕の頭はへこまなかった。
「……ケート」
椎名が尾田慶斗の腕を掴んでいたーーーその手は細かく、弱々し気に震えている。
「…ケート、はさ。とっても優しいんだから…その手をこんなコトに使っちゃダメだよッ…この手はね」
腕をゆっくりと自分の頭に乗せる椎名。
「………ボクを撫でるためにあるんだから、ね?」
後ろからすすり泣くような声が聞こえる。僕を殴ろうとした”何か”が床に落ちた音がした。…あ、鉄製バット。
「…シーナ、ごめんなあ…俺があの時、考えなしにあんなコトになっちゃって…シーナの人生台無しにしちゃって……でも、限界なんだ……俺やっぱり」
「シーナ無しじゃ生きてけな「ケート!!!」
抱擁を交わす二人。…そしてその間には存在が空気となった僕が挟まっていたのだった。
+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*
『どうだったか?……放置プレイを食らわされた気分は』
「どうもこうも。…ったく馬場は僕を誤解してるよ、僕が欲しいのは”純粋な嫌悪”だよ?…これじゃ僕が痴話喧嘩に巻き込まれて殺されかけただけじゃないか」
『巨大な愛の前では、人は時に空気になる……”存在感”は明らかにあの二人に”殺されて”たな』
全てが終わった後、馬場に電話を掛けなおすとのっぺんくらりとそう言われた。
どうやら僕は馬場の策略に知らぬ間にまんまと嵌っていたらしい。
「……どうやって、僕の動向を知ってたの?この二週間ほとんど会ってなかったのに」
『ああそれは。……ほら、濃尾君毎日着てるインナーあるだろう?それにちょっと…”仕掛け”を。濃尾君が尾田君のコトを聞きに来たときに』
「…盗聴器か。…馬場、情報屋の才能あるよ」
『それほどでも』
尾田慶斗には僕から説明をし、さっき馬場が言ってたことは冗談で、今回の事は僕と馬場が企てたことだ…ということにしておいた。
疑わし気な目で見られたが、そう説明するしかない。
「一番の疑問……どうして馬場は尾田慶斗の”異常性”に気付けたの?…僕ですら気が付かなかったのに」
尾田慶斗は学校では只の平凡な一般生徒でしかなかった。
普通に生きて、普通に遊んで、普通に勉強してるーーそんな普通で、普通の生徒だ。椎名葵と関連性なんて見当たらない。
幼馴染であることすら、ほとんどの生徒は知らないのだ。
『それはーーー』
ごくりと息をのむ。
『−−−禁則事項だ。”約束”はーー覚えてるよな?』
「…なんだよソレ。どこぞの未来人じゃないんだから」
まあ今はいいや。…僕の憂鬱も驚愕も消失も全てはこの男に懸かっているんだ。もう少しくらいこの”日常”が続いても問題はないだろう。
そう言って僕は静かに電話を切った。
+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*
騒動も終わり、『星ーsutera-』の閉店時刻になり、店主の金月星は小さく息を吐いた。
「…今日も忙しい日だったわねー」
そうぼやきながら金月はダイヤルを打つ。…今日の最後のお勤めだ。
「…ああ、もしもし。先生。…星(せい)ですよ。今日はとても騒がしい日でしてね、ヒナ君もとても楽しそうでしたよ」
「……”記憶の兆候”?なかったですね…まあ、あんなコトがあったんですし、思い出せなくて当然ですよ、ゆっくり戻ればいいんです」
「そんなに心配なら……”僕”としては会いにいけばいいと思うんですけどね、だって貴方は」
「−−−−ヒナ君の”父親代わり”なんですから」
*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+
【重い愛】→【想い合い】
一人で持つには重すぎた想い。…けれどその想いの天秤が釣り合ったときその想いは”愛”となって、彼らを幸せにするだろう。
…一人じゃダメでも、二人ならきっと運べる。
+馬場満月+ばば みずき
貴氏高校一年B組(この時点)に属す。驚異の当て馬。頭は働く。”当て馬”になってる理由は不明。身長180で体格はいい。濃尾日向が親友。
*濃尾日向*のうび ひなた
貴氏高校一年B組(この時点)に属す。学校有数の情報屋。身長自称151だが本当は150切っている。かなり細く、女装が似合う。インナーを愛用してる理由は首の跡を隠すため。一人暮らし。馬場満月が親友。何かの記憶を忘れてるらしい。
+椎名葵+しいな あおい
貴氏高校一年B組(この時点)に属す。男の娘。ヤンデレ。怪我の治りが異常に早い。あだ名はシーナ。濃尾曰く「危険地帯にある落とし穴」みたいな人。尾田慶斗が幼馴染。白菜ッ!様投下キャラ。
*尾田慶斗*おだ けいと
貴氏高校一年B組(この時点)に属す。茶髪で軽い雰囲気。優しいらしい。あだ名はケート。馬場曰く「一般道にある落とし穴」みたいな人。椎名葵が幼馴染。白菜ッ!様投下キャラだが、投下時点で彼のヤンデレストーカー的設定は無かった。作者が思った以上にこのキャラに嵌ってしまったため設定が追加された。ごめんなさい。
+菜種知+なたね とも
貴氏高校一年B組(この時点)に属す。肩くらいまである黒髪。けだるげな雰囲気。ウソと本当をいり交ぜて喋る(直後ばらす)椎名葵と仲が良い。河童様投下キャラ。
*岸波小鳥*きしなみ ことり
貴氏高校一年B組(この時点)に属す。死ぬほど忘れっぽいボクっ子。勘は良い。クラスメイトの事はそれなりに大切に思っている。日織様投下キャラ。
+大和田雪+おおわだ ゆき
貴氏高校一年B組(この時点)に属す。女神ちゃん。神視点は本当に持ってる。金髪グラマー。この中で唯一濃尾より背が低い。高坂 桜様投下キャラ。
*金月星*かなつき すてら
喫茶店店主。二次元イケメン。白髪に黒マスク。オネエ喋りだけど恋愛対象は女性。本名は星(せい)こちらの名前を名乗ってる時は普通に喋って一人称は僕。濃尾日向の育ての親。
+先生+
金月がそう呼ぶ。正体は不明。濃尾日向の父親代わりらしい。
- Re: 当たる馬には鹿が足りない≪更新再開≫ ( No.29 )
- 日時: 2016/08/12 04:28
- 名前: 羅知 (ID: kTX6Wi1C)
○二話のまとめ&三話について
No,24からノリノリだったのは、皆気付かれてましたよねww
今回はこんな感じだったけど、次回からは割かし普通な感じになります…。普通な人は普通な感じで、おかしい人はおかしくて。
三話前に、一旦別の話書きます。
二話の後日談…?みたいなものを。
>>26 小説内へのコメント感謝です!!頑張りたいと思います!!
では。
- Re: 当たる馬には鹿が足りない≪更新再開≫ ( No.30 )
- 日時: 2016/09/10 08:00
- 名前: 羅知 (ID: bs11P6Cd)
閑話休題【もしも願いが叶うなら】
*********************************
目を開けると闇の中でぷかぷかと浮いていた。僕ーー濃尾日向にとってこのことは初めてではなかったのですぐに分かった。
ああ、此処はいつも見ている”夢の中”だーーと。
いつも朝が来るまで、こうやって浮いてたり泳いだりして過ごすのだーー誰もいない闇の中で。僕以外誰もいない闇の中で。
”此処”にいる時間は僕にとって安息の時間だ。誰にも邪魔されず、何も考えず、ぼーっとしていられる。
しかし今回はいつもと少し違った。
「あ、ねえっ…?…えっと…久しぶり?だね……”僕”」
『……チッ』
「ひっ!!?」
後ろから、遠慮がちに弱々しくかけられた声に思わず舌打ちしてしまう。聞きなれた声ーーーー当たり前だ。
後ろにいる少年ーーーーこれは。
(なんで”此処”にいるんだよ……中学時代の僕!!)
********************************
「な、なんでって言われても……えと、あの…っていうか僕だけじゃないよ…”ボク”もいるし、”あの子”もね…」
「”あの子”?」
「…あ、今の君は知らなかった、か。ごめん……忘れて。と、ともかくさ!!僕、話したいことがあるから…!!…”アイツ”呼んでくるから、待ってて!!」
そう言って、僕の後ろから気配を消す”僕”。数秒後、目の前からニヤニヤした”ボク”と、相変わらずおどおどした表情の”僕”が現れる。
同じ顔が目の前にあるのを見るのは不快だ。ましてや”こんな奴ら”の顔なんて。
吐き気がする。
「お久しぶり、僕」
そう言って”ボク”はにたりと笑った。
********************************
「「…気持ち悪いよ、”ボク”」」
僕と”僕”が、心底そう思いながらそう言うと、彼は気持ち良さそうに身をよじらせながら、じとじとした湿っぽい目をこちらに向ける。
「うふふふふふ、相変わらずボクには辛辣なんだね二人ともッ…いいよいいよ気持ちいいよ本当に興ッ奮するようん本当にいやいやいつも思ってた亊なんだけどさ君達二人に共通してるのは”ボク”だけのハズなのにどうして君達はボクには冷たいんだろうなーってまあ本当はどうでもいいから別に答えなくてもいいんだけどさあッもしかしてあれかな?自分たち二人ともに共通するからこそ自己嫌悪?とか?とか?しちゃったりしてんの?図星かな?いやーそんな顔しないでよまた興奮しちゃ」
本格的にムカついてきたので殴った。僕と”僕”のダブルパンチだ。ちなみに殴られた本人とはいうと、陸に揚げられた魚みたいに遠くの方でぴちぴち蠢いていた。顔はよだれをたらしながら白目をむいてしまっていて、やっぱり気持ち悪かった。
殴っても、こんな気持ちになるなら殴らなければ良かったと後悔した。
横に立つ”僕”も僕と同じような表情を浮かべているーーーーそして、気が付いたようにこちらを見た。
「…えーと、まだ僕の事、思い、出せない?かな…」
「残念ながらね」
「……そう。まあ無理に思い出すことはないよ。…思い出したい記憶があったらまた”あそこ”に来ていいから、さ。今日はそれだけ伝えたかったんだ…。まあ…君は僕達になんか会いたくないだろうけど……」
そう言って、ポリポリと頭をかく”僕”。
その表情はまだまだ何やら言いたげそうだったが、今回は言わないつもりらしいので、最後の言葉は僕から言わせてもらった。
「君らが何考えてるかなんて、全然わかんないけどさ……僕は今現在でそれなりに幸せなんだ…馬場みたいな面白い奴もいるしね」
「……………馬場、くん、ね」
”僕”が息を飲んでそう言うのと同時に、僕の意識は目覚めへと向かっていった。
++++++++++++++++++++++++++++++++
明朝。
目をこすりながら、一言。
「鏡は見たくねーなー………」
そう、呟いた。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
少し今回の話は分かりにくかったかもなので補足。
僕…現在の濃尾日向
”僕”…中学時代の濃尾日向
ボク…ご存じヒナタさん
【もしも願いが叶うなら】→【望まない夢】
- Re: 当たる馬には鹿が足りない≪更新再開≫ ( No.31 )
- 日時: 2016/09/10 21:43
- 名前: 羅知 (ID: CXVRcwYu)
第三話【Aliceinwonderland】
僕と馬場が椎名葵と尾田慶斗の痴話喧嘩に巻き込まれている間にも、早くも季節は十二月になっていた。しかし凍えてしまいそうな風が吹くなか、貴氏高校の生徒達の表情は妙に浮足立っている。
まあ理由は明確だ。
貴氏高校の文化祭ーー通称、貴氏祭ーーは、十二月半ばに行われる。だから皆浮かれているのだーーこれが終わったら、クリスマス、冬休み、正月ーーまさに盆と正月がいっぺんに来た気分、いやそれ以上の気分だろう。
文化祭なので、当然クラスでも出し物などが行われる。くじ引きの結果僕達のクラスは演劇とクラスの出し物が併行して行われることになった。
「カフェ!!カフェがいいよ、絶対ッ!!」
「わらわもカフェがいいぞ!!神もそれを望んでおる!!」
椎名と大和田の謎のカフェ推しにより、クラスの出し物はカフェをすることに決まった。お前ら自分が食べたいだけだろ。
「濃尾クンの親戚のお兄さんって喫茶店やってるんだよッ!!きっと手伝ってくれるってッ!ちなみにイケメン、だよッ…?」
椎名のこの発言により、女子の圧倒的支持を得たのだ。…くそ、椎名葵許すまじ。星さんに迷惑かけたらただじゃおかないからな。
(…うわ)
僕がそう考えた瞬間、背中に突き刺さるような視線を感じ、振り返ると尾田慶斗が人殺しみたいな目でこちらを睨んでいた。思考を盗み見るなんてお前はどこの国の暗殺者だ。
”あの出来事”以来、尾田慶斗は己を隠すことをやめた。
要するに、学校でも人の目を気にせず椎名とくっつくようになり、椎名葵のセコムと化したーー今現在も、席順など気にすることなく、椎名を膝に乗せ満悦そうな顔をしているーーご愁傷様、尾田慶斗もこの学校の変人リストの仲間入りだ。
なんて考えながら、ぼうっとしていると馬場がちょいちょいと僕の肩をシャーペンでつついた。
凄く今更な気がするが、実は馬場の席は僕の真後ろである。……別に前回の席替えの時にくじ引きをいじってなんかいない。運命が僕に味方してくれただけだ。
「……なに?馬場?」
「随分と考え込んでるみたいだが……”アレ”いいのか?」
珍しくニヤニヤとした笑い方をした馬場を気持ち悪く感じ、馬場がシャーペンで指した方を見てみると、そこには驚くべきことが書いてあった。
黒板に、赤と白の目立つ色で書かれた文字。
『劇は”不思議の国のアリス”に決定!!
↑カフェはその設定に則ったもので!!
濃尾日向君は”赤の女王”役で、確定!! 』
そこに書かれた文字を見て、肩がわなわなと震える。どうしてどうしてどうしてーーーーいつの間に!!
「濃尾君が考え込んでいる間に決まったんだ」
「ど、どうして教えてくれなかったんだよっ!!」
「勿論ーーーーそちらの方が”楽しそう”だったからに決まってるじゃないか」
そう言いながら、馬場はおもむろに僕の頭を撫でる。そしてこう言ったのだーーーーそれはもう優しい顔で!!心底楽しそうに!!
「楽しみにしてるぞーーーー”女王様”?」
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22