複雑・ファジー小説

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アカシアな二人
日時: 2022/04/16 22:27
名前: 梶原明生 (ID: UfViuu4R)

理想的な容姿と充実した高校ライフを送っている二人の高校生。ひょんなことから回りに勧められて付き合い出したのだが・・・二人は愛し合えなかった。「何かが違う。」その違和感を拭えないでいた。そんな時互いに別の異性との出会いがあったのだが。それは悲劇の愛の始まりだった。アカシアの花を通じて知り合った、52歳の男女だったのだ。しかし世間はこれを純愛とはせず、あらゆる憶測、いじめ、引裂き、誹謗中傷の嵐に晒す。果たしてこの四人の愛は没落なのか。それとも真実の愛なのか。神々の授ける運命は愛する者達を翻弄する。

Re: アカシアな二人 ( No.53 )
日時: 2022/12/24 12:53
名前: 梶原明生 (ID: sqo3oGwV)

・・・ぐうの音も出ない小田。「さすが元バルエージェンシーの探偵さんだ。見透かされていたとはね。いいでしょう、ではお帰りください。」若い探偵が腹を押さえながら怒る。「何言ってんすか課長。折角の手掛かりを。こいつら捕まえて・・・」「バカを言うな、我々は探偵だ。調査はできるが逮捕権も捜査権もない。ただ藤堂さん、これだけはお伝えください。こんな逃避行ではなく、東京に戻ってもっと話し合われてはと。お母さんが心配しているとお伝えください。」「承知しました。必ず伝えます。」それを聞いた小田は渋る部下の尻を叩いて退散させた。藤堂も車を急がせる。「万が一を考えて空港の便を1便早めましょう。」「はい。」中山は不安そうな顔で答える。飛行機は春香達を乗せて東京上空を飛ぶ。「さようなら、東京。さようならみんな。」窓外を見て一人呟く春香。・・・別府に戻ってからは目まぐるしく時は過ぎた。いよいよバイトの面接が始まり、採用が決定。優也はトンカツ亭カツ幸に。春香は別府湾が見渡せる本格料理のファミレス、マスト・ロイヤル別府店に行くこととなる。春香は初日から教育担当となる渡瀬と言うバイト長と組んで仕事をすることになった。まだ22歳だが、バイト長ながら仕事の采配には春香も感心させられた。おまけに長身のイケメンと来てる。しかし一方で、毅ときたらなかなか理学療法士の職は決まらなかった。「うちは大分県でも有数の大病院だが、東京でも大病院に勤めてらしたんですね。何故、お辞めに。」理由を聞かれて硬直してしまい、つい事実に近い事情を。「実は若い女性と恋仲になりまして。・・・」顔を見合わせる面接官達。結局そんなことが三件も続き、いずれも不採用。初めての中途採用面接に、もう心折れる毅。求人誌面を思わずくしゃくしゃに丸める。そこへ運悪く充実したバイトライフの春香が戻ってくる。「ただいま。見て見て、これ余り物のケーキ貰ったの。たけ・・・しさん。」「あ、そう。良かったね。悪いが一人にしてくれ。」素っ気なく隣の寝室に入る毅。出会った頃とまるで違う彼に切なさを覚えた。「何コレ。」丸めた紙を開くと、求人誌なのがわかった。「ごめんなさい。私、毅さんの気持ちもわからずに・・・」「君はいいよな。可愛いし、愛想振りまけばどこだって採用されるしな。」勿論本意からではなかったが、うまくいかない再就職に辟易した彼には愚痴の一つもこぼしたくなる。「何よそれ。別に私は・・・」そんな時運悪く着信が。「渡瀬先輩からだ。もしもし。はい、森本です。え、今からですか。張本さんや明美さんも来るんですか。」それは渡瀬からの食事会の誘いだった。「ごめん、私行くね。」マンションの渡り廊下を歩いていく春香を階段の角越しに腕を組んで立つ藤堂が見ていた。跡をつけるが、そうとは知らない春香は待ち合わせの駅内シアトルベストコーヒーに急いだ。・・・続く。

Re: アカシアな二人 ( No.54 )
日時: 2022/12/25 17:13
名前: 梶原明生 (ID: mKkzEdnm)

・・・藤堂の長年の探偵として、いや、空挺団にいた時からの経験値としての勘が働いていた。「まずい。この状況だと・・・二人を今更別れさせるわけには行かない。」春香を信じないわけではなかったが、万が一と言うこともある。付かず離れずで見張る藤堂。渡瀬が来た。「やぁ、待った。」「あれ、張本さんと明美さんは。」「うーんまだやないかな。それより暑いね。何か飲む。奢るよ。」「あ、いえ、私は大丈夫です。」「遠慮せんで。あ、アイスティー二つ。」勝手に注文する渡瀬。しかし席で待てど暮らせど張本と明美は現れず。「あの、もう30分になるんですけど。」「あーごめん。いい忘れちょった。二人何か用事あるっち言うて、来んごつなった。だから、二人で行こうよ。色々語り合いたいことあるしね。車すぐ近くに停めちょんけん。」迷った。春香には毅が浮かんでいたが、彼のことも嫌いではなかった。うっかりOKしてしまう。「たくっ。・・・」呆れつつも尾行する藤堂。声をかけるタイミングを計っていたのだが。「やっぱりやめます。こんなのおかしいです。渡瀬さんと二人っきりなんて。」「今更やないん。帰さないよ。」無理矢理腕を掴む渡瀬。「何するんですか、離して。」車の後部シートに連れ込もうとする。咄嗟に藤堂から教えてもらった護身術を思い出した。「手首を掴まれたら先ず手を開き、肘を出すように切る。」意外とするりと抜けた。「待てコラッ」走り逃げる春香を追いかける渡瀬だったが。「藤堂さん。」春香は仁王立ちになった藤堂の後ろに隠れる。「何だよ、お父さんのお出ましか。」「ま、そんなもんだ。悪いが君のしようとしていたことは未成年者略取、いや強姦未遂罪と言ったところだ。」「いや、そっちが誘って・・・」「ならこれは何だ。」藤堂がスマホで動画を撮っていた。いつもの十八番だ。「貸せよそれ。」暴挙に出る渡瀬。無論いいように料理される。「このまま黙って帰ればなかったことにしてやる。それとも腕へし折られたいか。」「わかった。わかったから。」「いい子だ。」尻尾を巻いて逃げ去る渡瀬。「ちょっといいか。」「はい。」春香の腕を掴んで安全な場所まで歩いた。「俺は雇われの身だ。だから君に言える立場じゃないが、一つ言わせてもらう。さっき俺がいなかったらどうしてたんだ。何故誘いに乗った。」「え、見てたんですか。」「ああ。かろうじて最後に理性や中山さんへの気持ちが働いたようだが、あまりに無防備すぎるぞ。天真爛漫なのはいい。だが時としてそれは、言い換えれば無神経ってことだからな。君達は何のために駆け落ちした。その事を忘れるな。」その言葉に打ちひしがれる春香。翌日店長にバイトを辞める主旨を渋々伝える。「春香ちゃん、どうしたの。何かあった。君は凄く接客のセンスあったし、物覚えも抜群だし、重宝してたんだよ。」「すみません店長。」「もしかして、渡瀬のことかい。あいつ、仕事はできるが昔から女癖が悪くてね。何かしでかした。」「いえ、別に何も。短い間でしたがお世話になりました。」こうして僅か一週間の初バイトは幕を降ろした。もう、八月の夏は終わりかけている。猛暑に変わりないが、何処か秋の気配を感じていた。拗ねる毅も春香や藤堂に絆されて、気持ちを落ち着かせていた。春香とベランダに立つ二人。「見て、このオーシャンビュー。初めて来た時もこんなよく晴れた空と海を見たっけ。」「ああそうだね。」「ねぇ、夏の終わりも近いし、皆で海行かない。別府にビーチあるし。明日は優君バイト休みだし。」・・・続く。

Re: アカシアな二人 ( No.55 )
日時: 2023/01/01 17:50
名前: 梶原明生 (ID: Ze3yk/Ei)

・・・「そうだね。折角の夏だし。車を出そう。」こうして別府のビーチに繰り出す面々。流石に水着は用意していなかったから、濡れてもいい服装で出かけた。「やっぱ海だーっ。こうでないと。」久々の海に思わずはしゃぐ春香。「あ、スマホで調べたら、田ノ浦ビーチてとこもあるらしいよ。行ってみよっか。」「お前ビーチの二次会じゃないんだからさ。」優也の言葉に皆どっと笑いが込み上げる。一度ビーチバレーを楽しんだ後、藤堂が運転する毅の日産Xトレイルで別大国道をひた走った。白い車体が夏の残暑を撥ねて進む。やがて田ノ浦ビーチに到着。公園のようなビーチの先には人工出島のような更なる公園が聳え立つ。遅い昼休憩を挟んで出島も堪能した。まさに別府湾を望む完全オーシャンビューとはこのことだ。「うわーっ、夏だ海さんだーっ。」両手を広げて叫ぶ春香に呆れつつ突っ込みを入れる優也「お前小学生かよ恥ずかしい。」「まぁいいじゃないかたまには。」毅が嗜める。「そうよ優也君。もっとはしゃぎましょ。」志乃の言葉に苦笑いの優也。そんな時、毅が海の向こうをひたすら見つめる。「毅さん、どうしたの。」「あ、ああ。何でもない。」明らかに動揺している。「もしかして、信子さんなの。」「いや、何でもない。」何でもないわけではないのだが。今を壊したくなかった。気を取り直すように今度は毅から提案する。「そうだ、これからの祈願をかけて柞原八幡宮に行かないか。」「え、神社なの。」「うん。ここが珍しいのは屋内に入ってお参りする神社なんだ。」「へー凄い、行こうよ。」春香が先導して皆を促した。その話の通り、柞原八幡宮は神社にしては珍しく屋内へ靴を脱いで上がり、真っ赤な顔した大きな天狗様の面が梁にかけて祀ってある神社だ。その奥が社殿となる。霊験あらたかとはこの神社全てに言えるのではないだろうか。到着した春香達はその全てに圧倒された。「ねぇ、皆何祈ったの。」春香が皆に聞く。「言うまでもないわ。」志乃の言葉に互いのパートナーを見つめる。「藤堂観光を毎度ご利用頂き誠にありがとうございます。お客様、お楽しみのところ大変心苦しいのですが、そろそろお帰りのお時間となっております。お忘れ物ないようご注意下さいませ。」藤堂の仰々しい冗談に一堂笑いを堪えきれない。「あ、待って、最後に本当に忘れ物。花火。」「花火って、もうどこもやってないよ。」春香の発言に毅が戸惑う。「じゃなくて、花火パック。夏の終わりのハーモニーにはやっぱり線香花火ないと。」「それならすぐのところにドラッグストアコスモスがあったぜ。」優也も乗り気だ。早速コスモスで余りの花火パックを購入。別府に戻る頃にはすっかり暗くなっていた。春香はそそくさと浴衣に着替えて、近くの公園で花火を始めた。綺麗に華やぐ光。ロケット花火も堪能していよいよ線香花火数本となっていた。・・・続く。

Re: アカシアな二人 ( No.56 )
日時: 2023/01/03 07:52
名前: 梶原明生 (ID: BO2eV5at)

・・・「終わっちゃうね花火。」「そう、だね。」浴衣姿でしゃがみこむ彼女に毅は先程とは違う切なさを感じた。何かが終わりを告げるような切なさ。彼女のうなじに堪らなくそそられるものを覚える。「いかん、何を考えてる。」毅は頭を振って自分を戒めた。「どうしたの毅さん。やっぱり信子さんのこと。」急に立ち上がって立ち去る毅に疑問を投げかける。「やっぱり向き合おうよ毅さん。信子さんに向き合わないと私達、幸せになれないと思うの。だから。・・・」互いに答えは一致したようである。志乃はその毅の姿にいたたまれなくなり、懺悔を兼ねて、あの時の真実を打ち明ける。「君が、信ちゃんを・・・」それは先にも書いたが,かつて毅、志乃、そして信子との親友関係に亀裂を入れたのは転校生の立野の存在だ。暴走族絡みの不良だったが、真面目な信子は彼に惚れ込み付き合った。毅の恋心も知らずに。それは志乃も同じだった。当時彼女にとって信子は邪魔者でしかなかった。事あるごとに彼女を志乃はイジメていたのだ。「ごめんなさい。私どうかしてた。立野君が好きだったから。・・・」親友の目から怒りの目に変わる毅。「でも因果なものね。高3の秋からお父様の事業が傾きはじめ、倒産。5軒あった家のうち3軒を売ったり財産を切り崩してようやく借金はなくなったけど。私は家を追われて奥多摩の家に逃げるように母とお手伝いさん達と引っ越した。当然青川学園も転校せざるを得なくて。でもお手伝いさんが采配がうまく、隠し財産だけは死守してくれて、生活に苦しまなかった。父は過労がたたって高3の冬に死去。私は卒業後、一時期歌手も目指してたけど、今度は母が脳梗塞で倒れた。これも天罰と思い、財産を切り崩して介護に明け暮れた。」一通り聞くと、憎悪の目を向けながら毅は振り向いた。「じゃあ、あの噂本当なんだな。君が他の男子をそそのかして信ちゃんをレイプさせたのは。」「ち、違う。それだけは違う。」「嘘だ。そんなもの、信じられない。」「待ってくれ中山さん。」泣く彼女を庇う優也。しかし藤堂が割り込む。「中山さん、それだけは違う。」「何が違うんですか。イジメてたんですよ彼女。親友とばかりに信じてたのに。」嗚咽せんとばかりに声を詰まらせた。「中山さん、俺の調査能力をご存知ですよね。以前、瀬西さんのことも内密に調べていたんです。レイプの首謀者は彼女じゃなかった。立野なんですよ。」「何ですって。」「当時彼は別に付き合ってた女性がいた。同じ東京連合のレディースだった靖子って子と。疎ましくなった彼は仲間に榮倉さんをレイプするように依頼。それでも彼に尽くそうとしたら・・・」そこから先は言えなかった。彼女が風俗嬢に沈められたなど、だれが言えようか。「とにかく、彼女は卒業後も稼いだ金を彼に渡すようになり、やがて彼女を捨てた。後はご存知ですよね。」・・・続く。


Re: アカシアな二人 ( No.57 )
日時: 2023/01/05 21:48
名前: 梶原明生 (ID: LIJSamtZ)

・・・「結局・・・最も罪深いのは私か。」落胆に暮れる毅に志乃は声を掛ける。「中山君。私・・・」「もういい。」5人は一旦それぞれの部屋に戻った。優也は思いの丈を志乃にぶつける。「志乃さん。例えあなたが大罪人でも、俺の愛は変わらない。」「優也君。」涙する彼女に情熱のままにキスをする優也。そのままベッドに雪崩れ込み、激しく服を脱ぐ二人。白い濁流が志乃の中に流れ散る。春香はある決心を毅に告げる。「うん、やっぱり毅さんが亡霊を見るなら、許しを乞いにお墓に行こう。」「お墓と言っても東京にはないよ。元々信ちゃんの家族が京都に籍を持つ転勤組だったんだ。彼女が自殺した後京都に引き払われてね。お骨も京都市内の菩提寺にある。そこまで行けと。」「東京よりは近い。しかも私達を知らない土地。」春香の目を見つめる毅は、決心を固めた。「わかった。」かくして二人は京都へと向かった。お寺の名前は「総想寺」。住職に許しを乞い、お墓に案内された。ひっそりと佇む榮倉家のお墓。二人は花を手向け、必死になって冥福を祈った。「あの、どちら様で。」その聴き慣れた声にビクッとする毅。恐る恐る振り向くとそこに信子が。「はぁーっの、信ちゃん。」驚くその女性はよく見ると信子にそっくりだが、旦那さんと小学生くらいの子供と同伴した30過ぎの女性だった。「すみません。・・・ほら、毅さん、よく見て。普通の人だよ。」「え、・・・」あまりの恥ずかしさに赤面する毅。「これは、つい取り乱して。すみませんでした。」「いえ。もしかして、叔母さんのお知り合いですか。」「叔母さん。」「あ、いえ。叔母さんと言っても、信子さんは21歳の若さで自ら命を絶たれたんですから。もうし遅れました。私、道川詩信と言います。あ、今は結婚して道川ですが、旧妙は榮倉誌信です。」「榮倉っ。」毅、春香は二人とも声に出してしまった。「誌信、雅也とそこで少し遊んどくね。」「あ、うん、ありがとう。」主人らしき男性が気を利かせてくれて返事した。「はい。私は榮倉高広の娘です。父は信子叔母さんの兄になります。」「そうだったんですか。どうりで信ちゃんの面影そっくりだと思った。」「よく言われます。お前はまるで信子に生写しだって。父もお婆ちゃんもお爺ちゃんもよく言ってました。」墓前を見ながら語る誌信。郷愁の視線を向ける。「あ、こちらももうし遅れてすみません。私は彼女と同じ青川学園高校卒業生で彼女とはクラスメイトだった中山です。今まで一度もお参りに来れなかったもので、是非ともと思いまして。」「そうだったんですか。・・・あなたは、奥さんですか。」初めて言われた気がする。今までは親子のフリをするのが辛かった。堂々と互いに彼氏彼女の関係で世間に見られたかったから。「はい。春香と言います。」・・・続く。


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