複雑・ファジー小説

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アカシアな二人
日時: 2022/04/16 22:27
名前: 梶原明生 (ID: UfViuu4R)

理想的な容姿と充実した高校ライフを送っている二人の高校生。ひょんなことから回りに勧められて付き合い出したのだが・・・二人は愛し合えなかった。「何かが違う。」その違和感を拭えないでいた。そんな時互いに別の異性との出会いがあったのだが。それは悲劇の愛の始まりだった。アカシアの花を通じて知り合った、52歳の男女だったのだ。しかし世間はこれを純愛とはせず、あらゆる憶測、いじめ、引裂き、誹謗中傷の嵐に晒す。果たしてこの四人の愛は没落なのか。それとも真実の愛なのか。神々の授ける運命は愛する者達を翻弄する。

Re: アカシアな二人 ( No.37 )
日時: 2022/10/18 19:32
名前: 梶原明生 (ID: KIugb2Tf)

・・・それから三日経った八月の暑さが近づいた頃。「思いの外回復が早いね。そろそろ薬を減らそう。鎮痛剤は痛くなったら飲む程度でいいよ。」植木が毅を診察しながら喋る。「ありがとうございます。おかげで助かりました。」「いやいやどういたしまして。ただ、胸バンドは外さないで下さいよ。まだ安静が必要なのは変わりないですからね。」一通り終わると優也が何か頼み込む。「ちょっといいですか。」「いいよ、何。」二人は別室で話し合った。「あの、先生は昔生き別れになった息子さんがいるそうですね。」「そうだけど、それが何。」「いや、その、父親として、息子さんをどう思ってるのかなって。」窓から照りつく太陽を見上げながら語る植木。「可愛いよ。そりゃ自分の分身みたいなもんだもん。可愛いくないなんてありえないよ。そしてできれば会いたい。何の柵もなくね。大概の子供と生き別れた父親はそう思うんじゃないかな。」「やはり、そうですか。」「何、もしかして君の事。聞いたよ藤堂から。君、志楽乙女の息子さんなんだって。お父さんが出版界の大物らしいが。会いたくなったか。」「いえ、そういうわけでは。ただ、話が聞きたくて。」「会いに行けばいいじゃないか。何の遠慮がいるんだよ。さ、瀬西さんとこに行きな。」「はい。」彼は満面の笑みを見せて部屋を後にした。暫くしてコンビニから藤堂が帰ってくるのだが。「中山さん、皆。早く荷物をまとめて。ヤバいことになった。さっき警察の気配がしたんだが、どうやらこのビルを包囲してるらしい。」「ええ、そんな。私達連れ戻されるの。」春香が頭を抱える。「いや、だとしたら君達じゃないな。」「植木、やはりか。」「おう、やはりも何も、俺しかないだろ。モグリの医者もここまでだな。」メガネを拭いてかけ直す。「もとは外科医だが、整形外科は独学だった。この名古屋は東京とは違う街、昭和と新しい令和とが入り混じった団塊世代の終焉地。北は北海道から南は九州まで、まだ年端も行かない15歳が集団就職と言う名の徴兵にかりだされ、薄給でも馬車馬のように働かされた人々が集う街。まるで使い捨てのように老後を過ごす夫婦が多いこの街にこそ、俺の医療は必要だと始めたクリニックだったが。・・・ここまでのようだ。藤堂、それから中山さん達。この奥に俺とオーナーしか知らない地下道に出る非常階段がある。そこから逃げてくれ。なーに、警察の狙いは俺だ。誰も君達を捕らえたりしないさ。さ、早く。」植木は彼等を非常階段に向かわせてカーテンを閉めた。・・・続く。

Re: アカシアな二人 ( No.38 )
日時: 2022/10/27 10:46
名前: 梶原明生 (ID: wNoYLNMT)

・・・非常階段を降りていく面々。最後藤堂が扉を閉めようとしたのだが。「待ってください藤堂さん。」優也が彼の腕を引き止める。「優也君、何で。」「聞き届けたいんです。この植木クリニックの最後を。」仕方なくしばらく扉を半開きにした。「植木真司だな。医師法違反並びに薬剤供与の疑いで逮捕する。今現在2時45分。」逮捕令状を翳しながら捜査員達が彼に手錠を掛ける。「刑事さん、罪状は全て認めます。その代わり少し天国の優也君にお別れを言ってもいいですか。」天井を指差して懇願する植木。こいつ頭がおかしいのかと顔を見合わせる捜査員達だったが、巡査部長が認める。「いいだろう。別に逃げられるわけでもないんだしな。3分だけ待ってやる。」顔が綻ぶ植木。天に向かって叫んだ。「天国の優也君。聞こえるか。聞こえても返事はしなくていいからね。」笑い合う捜査員達。植木は続ける。「私の医師としての最後の患者が君達で良かった。きっと君達なら楽園と言う名の天国へ行ける。私はそう信じてる。そして、優也君。君は決して愛人の子供なんかじゃない。天から祝福されてこの世に生を受けた存在だと言うことを、忘れないでくれ。お父さんはきっと、君のことを大事に思っているよ。愛ある思いの中、君が生まれたんだから。」「植木さん。」扉を開けて行こうとする優也を藤堂が止める。「シーッ、彼の気持ちを無駄にする気か。耐えるんだ。」唇を噛み締め、涙ながらに非常階段を降りていった。志乃もまたもらい泣きしながらガード下をくぐり、ようやく貸しビルの駐車場に辿り着く。パトカーで過ぎ去った植木と入れ替わりのタイミングで車に着いた。「植木さん。」まどろむ優也の肩を優しく掴む藤堂。こうして五人はいざ名古屋港のフェリー乗場を目指した。その頃、警察署の前では植木の逮捕を知ってか、大勢のお年寄りが抗議に集まっていた。「先生はな、俺たちの命を救ってくれたんだ。」「医師免許がなんだ。人の命よりそんなに法律が大事かっ。」「私たちの先生を返して欲しいわ。」「そうだそうだ。」まさかこんなに集まるとは予想だにしなかった植木。思わず堪えていた涙が溢れた。「皆さんありがとう。俺、生きてて良かった。」「なーに先生がみっともない。ワシらといつもやりとりしとる先生はどこ行った。」「そうだな。そうだよね。・・・あー、殿方の皆さん、何で来なかった。惜しいな、今日まで三日間、女子高生いたのに。」「本当か。何だよ先生、知らせてくれたら腰の痛み忘れて飛んでったのに。」「あんた。」「こりゃやべえ。上さんいたんだった。」どっと団塊世代のお年寄りに笑いが広まった。青く澄み渡る空を見上げながら暑い太陽を見上げた。その頃、毅達は名古屋港太平洋フェリー乗り場に到着していた。藤堂が車の搭乗手続きを済ませると、チケットを買ってフェリーに入った。「中山さん、九州への直通便はありませんので、一旦大阪南港に寄港してから乗り換えで小倉の港行きのフェリーに乗ります。」「わかりました。よろしくおねがいします。」五人は二等室に入る。・・・続く。

Re: アカシアな二人 ( No.39 )
日時: 2022/11/05 15:52
名前: 梶原明生 (ID: yyWFfh9m)

・・・「わーっ凄い部屋。見て見て、一面海。」部屋に入るや否や、天真爛漫な春香は思わずはしゃいだ。「デッキに行こう、ねぇ毅さん。」「いやー、まぁその。」出不精気味の彼はやむなくデッキに赴く。外は見渡す限りの海。「名古屋港の海で感動するの森本ぐらいだよ。澄んでる海でもないのに。」柵に両手を預けながら優也が呆れる。」「えー、だって海は海だもん。」少しふてくされて柵に背中を預けようとしたのだが。思わず滑り転けそうになる。「危ない」毅が手を差し伸べて助ける。「ありがとう。大丈夫。アレ・・・この感触、この記憶。どこかで。はっ。」遠い過去の記憶が呼び覚まされる。「間違いない。滋賀県大津市に家族旅行に行った際、ミシガン船から落ちた私を救ってくれた人。あなただったの。」「まさか、あの一人旅で偶然船に居合わせたのは、君だったのか。」互いに驚愕する二人。「あの時は泳げもしないで無我夢中で琵琶湖に飛び込んでた。まさかあの時助けた子供が君だったとは。」「やっぱり運命の赤い糸はあるんだね。あの時渡してくれた花はアカシア。」花屋で買ったアカシアの花を吸う春香。思わず抱き合おうとしたのだが。「感動的なシーンに水を差すようで申し訳ないんだが。・・・ここは他の人も多い。怪しまれると不味いので、親子という設定を忘れないでください。」藤堂の合いの手に思わず離れる二人。「フェリーをご利用頂きありがとうございます。これより当フェリーは出航いたしますので・・・」アナウンスに従い、二等室に戻る毅達。こうして、船旅による逃避行の旅第二弾は始まった。船旅は途中経由地を跨いで二日後、ようやく小倉港に着いた。少々疲れ気味の一行だったものの、春香だけはテンション上がりっぱなしだった。「やったーっ。九州だーっ、帰ってきたー。」背伸びしながら思わず叫ぶ。車に乗り、フェリーを出て小倉の街より東に向かう一行。藤堂が運転しながら毅に聞く。「中山さん。きついようなら今日はどこかホテルを取って明日大分県に向かいますか。」「いえ、だいぶ肋骨もよくなりましたし、このまま。春香ちゃんの言う所へ。」「わかりました。では高速にはいります。」東九州自動車道のETCを通って中津市へと直走った。「懐かしい。中津唐揚げだ。」春香は看板が見えるなり感嘆の言葉を漏らす。「ねぇ、皆。そろそろお腹空かない。私いい店知ってるから、腹ごしらえしてから美沙おばちゃん家行こう。」「そうね、折角中津唐揚げで有名な場所に来たんだし。」「さすが、志乃さん。話がわかるう。」しばし車内が笑いに包まれる。「あった看板。国上から揚げ食堂。」春香の指差しでその国上から揚げ食堂にハンドルを切る藤堂。早速店内に入り、皆、中津市名産の「中津から揚げ」を堪能した。一行は平らげると再び中津の道路をひた走る。平地の住宅街に入るが、何故か春香の顔が曇ってきた。「嘘嘘嘘、何で。美沙おばちゃん家。もう空き家になってる。」嫌な予感は的中。1日違いで引っ越したとのこと。ご近所のおばちゃんが話してくれた。・・・続く。

Re: アカシアな二人 ( No.40 )
日時: 2022/11/06 18:28
名前: 梶原明生 (ID: yyWFfh9m)

・・・「そうだよね。旦那さんと九州観光の会社勤めで、美沙おばちゃんは元アイドルだもんね。九州各地の魅力を伝えなきゃいけないものね。」「あーら春香ちゃん。それでも中津で粘った方やけん。10年もおっちょったからね。でも、別府観光ならやっぱり別府がいいっち言いよったけん。」「別府、別府にいるんですか。」「そうよ。待って、住所書くから。・・・ところで、あん氏ら誰なん。」メモ紙に書きながら不審がるおばちゃん。「あ、いや、その、親戚のおじちゃんおばちゃんで、大分県旅行したいから私が案内役を。」「そうやったん。初めまして、大分の魅力を楽しんで行ってくださいね。あんね、温泉ならいい所しってますから・・」「ああ、あ、おばちゃん、私達これから行くとこあって早く行かないと。」「そうやったね。」おばちゃんから解放された春香達は早速別府市を目指した。再び東九州自動車道高速道路、中津ICを抜けて別府ICを目指した。ゴルフ場ネットの屋根を抜けると湯気があちこち立ち上る温泉街にたどり着いた。山の傾斜に作った湯の街らしく、別府ICを抜ければ、下り坂を走ることになる。そして見渡すばかりの別府湾の海。「まさに街と山と海が融合した場所だね。気に入った。ここを俺たちの楽園にしよう。」「優也君。」志乃が感動して優也を見つめる。そして手を握り、彼も握り返した。「なら、賃貸物件が必要になりますね。任せてください、別際興産という地元不動産の中でもトップの会社に知り合いがいます。彼に探させますから安心して下さい。」「藤堂さんどれだけ人脈がいるんですか。」毅が苦笑いで藤堂な聞く。「ハハハッ、ま、それほどでもないですよ。たまたま自衛隊時代に別府駐屯地勤務になった経験があっただけです。自衛隊をやめて別際不動産に再就職したやつがいましてね。」笑いながら別府の街を下り、的ヶ浜公園駐車場で車を停める。車を降りて別大国道を渡り、美沙おばちゃんの家を探す一行。甘味処でカキ氷休憩をはさみ、ようやく見つける春香。「ここだ。」閑静な一軒家を見つける。「言っとくが、俺は反対したからな。いくら元近所の親切だったおばちゃんだからと言って、本当のこと話して協力してくれるはずがないとな。」「大丈夫ですよ藤堂さん。」呼び鈴を鳴らす春香。「はーい。」美沙おばちゃんが玄関のドアを開けてくる。「あらー、春香ちゃんお久しぶり。まーこげん大きくなって。電話もらった時はうちに来るって聞いてたまがったわよ。一体何があったん。」・・・続く。

Re: アカシアな二人 ( No.41 )
日時: 2022/11/10 11:55
名前: 梶原明生 (ID: EjFgzOZO)

・・・「話せば長くなるけど。・・・」「話して。立ち話もなんですから、皆さんも是非、中に入ってください。」気さくに迎え入れる美沙。「大丈夫。二人はもう家出て大学寮に入っちゃってるから。旦那と二人っきり。」毅をしきりに気にしつつリビングに案内すると、台所でお茶を用意する美沙。「それで、長い話って。もしかして駆け落ちしたとか。」「どうしてわかるの。まだ話してないのに、おばちゃん。」「ん、なーんとなくね。中山さんでしたよね。あなたと春香ちゃんとの雰囲気みたらピーンと来たんよ。それに、久々菊子さんから電話あったし。元気なふりしちょんけど、何となく雰囲気暗かったし。殊更春香ちゃんの話題は避けてたし。」「え、お母さんから電話あったんですか。」「うん。菊子さん、ああ見えてあなたの行きそうなとこ、わかってたんやないかな。」菊子に酷い態度取ったことを後悔していた春香。尚更懺悔の念は強まるばかり。さらに彼女はこれまでの経緯を事細かに話した。「わかった。私もお人好しだなぁー。あなたの話聞いてたら何だか応援したくなってきた。何か困ったことがあったらいつでも頼って。力になるから。」感極まる春香。「ありがとうございます。」「でもね、一つ聞いてほしいことがあるの。」「え、・・・」俄に顔が曇る春香。「逃げてばかりじゃ解決できないこともあるわ。やっぱり春香ちゃん、いや皆さんも、祝福されて幸せになってもらいたいです。」身につまされる事を言われ、四人共悩む姿を露にする。その後しばしの別れを告げ、車に戻る皆。藤堂のスマホが鳴る。「ちょっと待ってください。・・・おお、羽野。久しぶり元気だったか。おお、例の内見の件。おお、わかった今すぐ行く。あ、中山さん。別際不動産の物件の内見決まりました。今すぐいきましょう。」早速その羽野とか言う不動産社員に会う面々。場所は別府市内と海を見渡せる絶好のマンション。春香は部屋に入るなり、子供のようにはしゃいだ。「わーっ、ここが私達の楽園になるのね。あー、見て見て志乃さん、絶景のオーシャンビュー。」「わー、本当にね。」毅は微笑みながら春香を見つめる。「そんなわけで藤堂さん。二つの物件両隣確保しておきました。二つ合わせて家賃は月12万円。敷金礼金ゼロ。即入居可とありますが、普通は今から契約手続きしても早くて三日後。・・・なんですが、私の特別特権で今から入って構いません。」「お、大丈夫なのか羽野。」「ええ。ただし、三日間は大人しくしてて下さい。一応入居はまだって体ですから。陸曹時代にお世話になった謝礼と思って下さい。」「ありがてー。感謝するよ。」羽野の肩を軽く叩く藤堂。無論皆喜んだのだが。翌日、買い出しに別府のトキハ百貨店に訪れた春香と毅は人目を憚ることなく腕を組んで歩いた。そんな時、ふと帰り道で別府青木学園の女子高生とすれ違った。振り返って見つめる春香。「女子高生にまだ未練あるの。」「あ、ううん。私どうしちゃったんだろう。つい懐かしんじゃって。暑いね、どこかでアイス食べよう。」誤魔化しては見せたものの、毅にはわかった。やはりまだ高校で学びたいんだと。しかしそれと愛を天秤にかけるわけにはいかない。そんな春香の姿が妙に愛おしく感じられた。春香に美沙おばちゃんから電話が。「あ、春香ちゃん、明日金曜日に大分市で七夕祭りって言う、大規模な街挙げてのお祭りがあるんよ、見に行かない。私さ、娘が出来たら私の浴衣着せたいっち夢があってね。残念ながら二人の息子は出来ても娘は出来なかった。そやけん昔からあなたのことを実の娘のように思っちょってね。」「はい、是非。ありがとうございます。おばちゃんにそんな風に思われてたなんて正直うれしい。浴衣、絶対着ますね。」こんなに幸せに恵まれていいのだろうかと春香は通常以上に毅の手を握りこんだ。この幸せの楽園がいつまでも続きますようにと願いながら。・・・「私達の楽園」終 次回「冷獄と絶望」に続く。


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