複雑・ファジー小説

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アカシアな二人
日時: 2022/04/16 22:27
名前: 梶原明生 (ID: UfViuu4R)

理想的な容姿と充実した高校ライフを送っている二人の高校生。ひょんなことから回りに勧められて付き合い出したのだが・・・二人は愛し合えなかった。「何かが違う。」その違和感を拭えないでいた。そんな時互いに別の異性との出会いがあったのだが。それは悲劇の愛の始まりだった。アカシアの花を通じて知り合った、52歳の男女だったのだ。しかし世間はこれを純愛とはせず、あらゆる憶測、いじめ、引裂き、誹謗中傷の嵐に晒す。果たしてこの四人の愛は没落なのか。それとも真実の愛なのか。神々の授ける運命は愛する者達を翻弄する。

Re: アカシアな二人 ( No.18 )
日時: 2022/08/17 12:48
名前: 梶原明生 (ID: djZseB/4)

・・・春香は菊子に促され、中山にメールする。経緯と同時に仕事終わりに某喫茶店で待ち合わせの約束も取り付けた。とにかく話し合わねばと、菊子はそればかり考えていた。春香は先ほどの光景もまた心に焼きついて離れない。自分と入れ違いで優也とその関係者が呼ばれた姿だ。「挫けんなよ。」優也のその一言が春香の今や灯台になりかけている。関係者と言ったのは、母親ではなかったからだ。マネージャーの乾奈央が代わりに来ていた。「そっか。お母さん作家さんなんだよね。それにしても。」マネージャーが代わりに来るだけが異様ではなかった。乾のどこか暗い闇を感じる容姿。勿論顔スタイルは申し分ない美しさだが。「何かが違う。」そう感じざる終えなかった。やがて陽は落ち、喫茶店に姿を現した中山が神妙な面持ちで二人の席に歩み寄る。「初めまして。中山毅ともうします。この度は娘さんのことで・・・」「それは追々お話しましょう。とにかく立ってらっしゃらないで、椅子へどうぞ。」落ち着き払って席に着く。「中山さん。」春香は水を得た魚のように目を輝かせた。菊子は冷静に中山に問い正した。これまでの事、娘をどう思っているか等。「そうですか。わかりました。あなたが春香をどう思っているかは伝わりました。でも、春香はまだ17歳です。この先受験だってある身。娘の将来に傷をつけたくないと言う親の気持ちも汲んでいただけますよね中山さん。」「はい、おっしゃる通りです。私が至らなかったせいで皆を傷つけてしまったようなものです。」春香が弁護に入る。「違う。悪いのは私。私が彼の制止を振り切って付き合いたいなんて無理強いしたから。」「わかったわ。そう互いを庇わなくてもいい。実を言うとね、春香にはまだ話していなかったけど、丁度あなたと同じ17歳の頃、学校の先生を好きになって駆け落ちしかかったことあったの。」「えっ・・・」「お爺ちゃんお婆ちゃんに止められてね。でもおかげでお父さんにも、春香にも、あなたのお兄ちゃんお姉ちゃんにも会えた。今はそれで幸せよ。中山さん。あなたのお気持ちはわかりました。ですから、これから先、私が春香との仲介役になろうと思います。交際して構いません。ただし、これからは私を通しての秘密の交際でお願いします。できますか。」その答えを聞いて驚いた。先の駆け落ちの件も去ることながら、半ば菊子が味方になってくれるとは思わなかったからだ。「勿論。構いません。どうか今後ともよろしくお願いします。」深々と頭を下げる中山。つられて春香も改まって菊子に一礼する。しかしそんな和やかなムードも長くは続かなかった。「春香ーーーっ」まだ着替えもせずに迷彩服のまま怒鳴りこんできた父、賢二が居場所を突き止めてきたのだ。パーンと平手打ちの音が喫茶店中に響く。「何てことしてくれたんだこのバカ娘が。お前をそんな娘に育てた覚えはないぞ、この恥晒しが。」「お父さんやめてこんな所で。」「うるさいっ、第一おまえがいながら何だこの始末は。それに、おまえかっ、俺の娘を唆したのは。いい年して何考えてんだ。」「いいから暴力はやめて。」菊子が制止しようとしても聞く相手ではない。中山は勢いよく賢二の拳を受けて床に倒れ込む。「お客様、いかがされました。」ウェイトレスが心配そうに声を掛ける。「何でもない。一万円置いとく。残りは迷惑料だと思ってくれ。春香、菊子、帰るぞ。」「いや、はなして、いやーっ。」抵抗する春香を手刀で喉責めして腕を捻り、リストロックして連行する賢二。彼にとって赤子の手を捻るようなものだが、まさか娘相手に技を使うことになろうとは。やがて家に帰るなり部屋に春香を放り込み、外からブービートラップ用のワイヤーで施錠する。「いいか、俺がいいと言うまで出すなよ。」「こんなの横暴よ。少しは話を・・・」「うるさい。あんな中年男に、現を抜かすような娘にはこれぐらいの方がいいお灸になる。今までが甘すぎたんだ。」「賢二、何の騒ぎかね。」菊子には姑となる春子が寄ってきた。この家庭では珍しく三世帯で住んでいた。たまたま菊子と春子の相性が良く、春子が賢二の父である夫を亡くしてから、老人ホームに入れるのは可哀想と菊子が言い出し、一緒に住むことになった。九州に転属になった時も皆と引っ越したが、春香がホームシックにかかったため、今一度練馬駐屯地にと賢二が願い出たために、再び東京の地に戻ってきたのだ。「母さん、心配しなくていい。ちょっとしたお仕置きだ。」その一言だけ言うと、下のリビングに行き、冷蔵庫からビール缶を取り出した。「あの野郎。」一気に飲み干す賢二。春香はベッドで膝を抱え込んでひたすら泣いた。「毅さん。毅さんに会いたい・・・」親、社会、学校、そして父親。今部屋の壁は何重にも重なってできた「障害壁」にしか思えなかった・・・次回「逃避行」に続く。

Re: アカシアな二人 ( No.19 )
日時: 2022/08/19 17:40
名前: 梶原明生 (ID: f9c/TndF)

「逃避行」・・・・・持つべきは親友。そう思えた春香はスマホで仁美とコンタクトを取る。幸い、監禁することばかり考えていた賢二はスマホまで没収することは忘れていたからだ。仁美から返信が来る。「大変だったね。どうして私に打ち明けてくれなかったの。とにかく出られるように手配するから待ってて。」「ごめんね。ありがとう仁ちゃん。」そう返信したが、仁美が手配していたのは柄の悪い男子高校生。「て、バカ春香から返信きたんだけど。本当にやってくれる。」「ああ、任せろよ。金貰えて、ただでパパ活女子レイプできるんだろ。安いもんだよ。」「動画撮るの忘れないでよ。」「任せな。」デジカメを手渡す仁美。その頃、ようやく講演会から帰ってきた乙女が、2階の部屋に閉じこもる優也を呼び出した。「ちょっと、聞いたわよあなた、中年女性と付き合ってるんだって。おまけに美人局にかかってるらしいじゃない。」「ああもう、クソ。」気怠くベッドから起き上がり、階段に向かう優也。母と対峙した。「だから何。誰を愛してようが、誰を好きになろうが俺の自由だろ。」「気は確かなの。あなたまだ17歳の高校生なのよ。もしこんな噂が瞬く間に広がれば、私の作家人生は終わりよ。」「ほら本音が出た。結局あんたは自分の地位や名誉が大事なんだ。金ばっか渡して、母親らしいところなんか微塵もなかった。」「優也っ。」乙女の平手打ちが部屋中に響く。「いい加減にしなさい。誰のために私が苦労してあなたのために今までの地位を手に入れたか、わかってんの。」小競り合い続く中、乾はほくそ笑む顔を隠せないくらい喜ばしかった。その頃である。春香が優也にメールを送ったのは。「おかしいな。返信してこない。」ベッドで三角座りになりながらスマホを握る春香。待てど暮らせど返信はない。夜は更け、翌日の朝を迎えた。乙女は乾から今日の予定を聞いていたが。「その取材キャンセルして。」「いや、しかし、この雑誌社にはお世話になってますし、今断れば今後の新作発表に悪影響が・・・」「いいから、何度も言わせないで。後日取材は受けるから、スケジュール空けといて。わかるでしょこの状況。あの子の未来と、私の作家人生かかってんのよ。何年マネージャーやってんの、それぐらいわかりなさい。」「すみませんでした。」深々と頭を下げるフリで不敵な笑みを零す乾。森本家では、朝食を部屋まで運ぶ菊子の姿があった。「春香。昨日から何も食べてないでしょ。朝ごはん持ってきたわよ。」「いらない。食べる気しない。ほっといて。」「そんな事言ってたら、体に悪いから。ねぇ、あなたの好きな中津唐揚げもあるから。九州の美沙おばちゃん、覚えてるでしょ。」「いらないったらいらない。」あくまで拒否する春香。仕方なく一階に戻る菊子であった。「毅さん。・・・」彼からのメールでのやりとりは朝まで続いていた。それだけが唯一彼女の癒しでもあった。優也も軟禁状態ではあったが、隙を見て抜け出した。「いちいち大人の制約なんか受けるかよ。志乃さんに会うんだ。」颯爽と歩く優也。しかし、乙女はある人物に会っていた。優也の父である。「わかった。しかし私も暇ではないしな。」「何言ってるの。あなたの子供でもあるのよ。」「わかったわかった。知り合いの探偵会社に連絡しとく。その中年女性を探し出せばいいんだな。」「そう。それ以上は望まないから。」「うむ、約束だぞ。」庭園豊かな店を後にする優也の父親。クラスでは紺野が春香と優也の欠席を伝えた。ざわつく教室。「はーい静かにしなさい。ホームルーム中でしょ。」「先生、やっぱ森本って、パパ活してたビッチなんすか。」「おおーっヒューッ。」一人の男子生徒が冷やかすと、瞬く間にクラス中が湧き立つ。「何てこと言うの。騒がない。いい加減にしなさい。」紺野の制止を聞きそうにないクラス。樹と智美だけが心配そうな顔つきで二人の空になってる机を見る。幸いなのか、今日は紺野達が職員会議なので、生徒は13時前後で帰らされた。「樹君。春香のこと。」「わかってる。互いに好きな人を交換してことに当たる約束だったよね。代わりに優也君を頼んだよ。」「うん」二人は分かれてそれぞれの家を目指した。・・・続く。

Re: アカシアな二人 ( No.20 )
日時: 2022/08/21 15:04
名前: 梶原明生 (ID: 8MLsWoCW)

・・・春香の家のインターホンを鳴らす樹。「誰かな。」出てきたのは賢二だった。」「あ、春香さんのお父さん。」「ああ君は春香が一年生の時に忘れ物を届けに来てくれた、確か・・・」「松本です。」「そうそう松本君。どうしたのかね。」「はい、実は・・・」最もらしい言い訳と、松本の親が警察関係者であることから、その筋の情報もあり、賢二は春香を連れ出す許可を松本に与えた。「しかし君は姿勢といい、声といい、溌剌としとるな。どうかね、将来は自衛官にならないか。」「ええ、実はそう思っておりました。」「そうか、それはいいことだ。君が春香と付き合ってくれてれば良かったな。ハハハッ。」意外と気に入られる樹。勿論嘘ではあるが。樹にとって自衛官になりたいなんてこれっぽっちもない。それでも春香から優也の情報が何か聞き出せないかが重要だった。昨日以来から外に出ていない春香には、太陽の照り付ける暑さが身に染みる。「それではしばらく娘さんをお借りします。」「うむ、気をつけてな。」こうして樹は春香を連れ出すのに成功した。これまでのこと、優也は親友だと言うこと、そして互いに愛する人がいること等、ファミレスで夕方までつらつらと話した。樹がスマホを取り出した。「待って、今森本が会いたがってた金子からだよ。もしもし。うん、今森本と一緒。公園で。わかった。すぐ行くね。・・・じゃあ行こうか。」「うん。」用事で来れなかった親友の仁美にようやく会える。春香は意気揚々と人気のない、日暮れの公園に樹と共に訪れた。「あ、仁ちゃーん。アレ・・・」勢いよく走ったものの、途中で違和感に気づいた。5、6人の男子生徒も一緒だ。しかも学内であまりいい噂のない少年ばかり。「仁ちゃん、これ、どういうこと。」「どうって、パパ活してたんでしょ。だからいい思いさせてやろうと思って。ヤリたい男子をわざわざ連れてきてやったの。」樹が前に出る。「どういうこと。話が違うじゃないか。春香の味方になるって・・・」言うなり男子生徒二人が樹を抑える。「黙ってろよナヨナヨ。今からがお楽しみなんだからさ。」腹を殴られて悶絶する樹。「やめて、ねぇどうしちゃったの仁ちゃん。どうしてこんな・・・」「どうして、はっ、何言ってんのそっちこそ。あんたはいつもそうやって無邪気な笑顔で私から大事なものを奪ってきた。中学の時もそう。バスケ部エースの先輩ね、私も好きだった。なのにしゃしゃり出てきて、仕方なく恋のお手伝いしたら、あんたがモタモタしてる内に彼女出来てた。え、春香、あんたが好きとか言わなかったら、モタモタする時間に私が告白してたら、バスケ部の先輩の傍にいたのは私かもしれなかったんだよ。そして今度は優也まで。しかも付き合ってなくて互いに親友で、愛する人を見つけたですって。ふざけんなっ。あんたなんか滅茶苦茶になればいい。」アイコンタクトで一斉に男子が春香に襲いかかる。「やめろー。やめて、私も女だからわかる。こんな体験したくない。」「はぁ・・・」まさかのカミングアウトに唖然とする皆。「は、あんた、 LGBTQだったの。」・・・続く。

Re: アカシアな二人 ( No.21 )
日時: 2022/08/26 23:43
名前: 梶原明生 (ID: PCEaloq6)

・・・青川学園ではそれら性の多様性を認めているはずなのだが。「あんた、何でわざわざ隠してた。別に隠さないとイジメに会う学園じゃないでしょ。」「金子達にはわからないさ。この世の中、当たり前になってもカミングアウトできない子は沢山いる。社会が受け入れてくれることと、家庭のコネクションは必ずしも一致しないわ。」「は、別にどうでもいいわ。とにかくやって。」「おう、お楽しみは。これからだ。へへ。」リーダー格の男子が春香のTシャツを破き始める。「いやーっ助けて毅さーん。」「誰も来ないって。」叫んでも夜の帷に包まれた公園には響かない。ただ一人を除いては。・・・「さて、一番乗りは俺だ。早くパンツ脱がせよノロマ。」後少しでレイプが実行されるや否や、リーダー格の頭に衝撃が走った。「何、何だ、事故か、石でもぶつかってきたか。」意識がなくなるまでそれが男の前蹴りとは思わなかった。「な、何だよおっさん。」言ってる間に当身を食らう男子。「森本春香さんだね。一緒に行こう。」「どうして私の名前を。はっ、」胸がブラジャーまで見えるほどTシャツを破られていたことを思い出した春香。「これ着て。」男は夏用のジャケットを脱ぎ捨て、春香に着せる。中山に似た匂いを感じた。「何だオッさん死にてーのか。」残りの男子が取り掛かるも簡単に制圧されてしまう。殴る腕を掴んで顎に掌底。後ろからくる男子に後ろ蹴り。もう二人には睨みつけた。あっさり逃げ走る男子。仁美はコッソリ姿を消した。「さぁ早く。」ものはついでに樹も抱えて公園を後にした。「近くの店に入ろう。人気の多い所なら、奴らも迂闊に手は出さないしな。」春香達と共に男は有名喫茶店に入る。「ブレンドでミルク多め。彼女達にはアイスティーを。」「わかりました。どうぞごゆっくり。」ウェイトレスに告げると、二人に向き直る。「いきなりですまなかったな。中山さんから居場所を聞いてて、駆けつけてみたらあんなことが。」多少端折っている。本当はしばらく尾行していたのだが。「あの、あなたは一体。」「俺か。ああ、自己紹介まだだったな。俺の名は藤堂聖。私立探偵をやってる。」名刺を差し出す藤堂。「私立探偵。」「ああ。いきなりで状況は飲み込めんだろうな。かいつまんで言うと、中山さんに雇われたんだ。正確には君と、中山さんと、その関係者に対してのボディガードとしてね。」「ボディガード。・・・」「ああ、話せば長くなるが。」その話は賢二に中山が殴られた所から始まっている。たまたま仕事帰りに居合わせた喫茶店に中山が入ってきた。そして殴られてから菊子がいなくなるまで話しかけなかったのだが。「中山さん大丈夫ですか。」「あ、ありがとうございます。ん、あなたは確か。」「お久しぶりです。藤堂です。空挺団時代、リハビリしてもらったご恩、忘れてませんよ。」「あの大事故の。」忘れもしない。いまから10年前、首都高6号線でトラックを含めた衝突事故が発生し、死者4名を出す大事故になった。それに巻き込まれていたのが藤堂だった。奇跡的に助かり、本来なら自衛隊病院で治療、リハビリを受けるべきだった。しかし、休暇だったことと、駐屯地内での事故でもなく、また本人が希望したこともあって、一般病院での治療リハビリとなった。その時担当だったのが中山だった。彼の献身的なリハビリで見る見る内に回復し、ほぼ完治して病院を後にした。「先生のおかげで立ち直りました。医師、看護師の方も含め、中山さんも私の命の恩人だ。何かあったら私に連絡ください。恩返しさせてもらいますよ。」中山にとってそれはどうでもいいことだったが、まさか本気だったとは。「あなたの御恩は忘れていませんよ。すみませんが、だいたいの話は聞かせてもらいました。私を一年間雇ってもらえませんか。勿論お代はタダです。一年くらい無給で働いてもお釣りがくるくらいの貯蓄はあります。ですから。」こうして藤堂は中山や春香の味方になることを決めたのだ。「ショックだったろうね。まさか親友のクラスメイトが裏切ってたなんて。」「聞いてたんですか。」しまった俺としたことがと後悔する藤堂。「ん、まぁ、話半分に。すぐに助けても知らぬ存ぜぬ冗談でしたで済まされては困るからね。動画を撮らせてもらった。これで奴らはもう君に手は出せない。しかし、その仁美と言う娘。少々問題だな。」そこに触れられると春香自身どう捌いていいものやら戸惑う。これが全く見知らぬ女子からの仕打ちなら憎みもしよう。しかし相手は仁美だ。中学の入学式で、席を教えてくれたのが彼女との出会いだった。以来、泣く時も笑う時も勉強の時も、いつも隣にいたのは仁美だった。そう簡単に割り切れるものではない。「わかってます。わかってますけど。」・・・続く。

Re: アカシアな二人 ( No.22 )
日時: 2022/09/01 21:05
名前: 梶原明生 (ID: sqo3oGwV)

・・・「いずれにしろ、彼女にも何らかの圧力をかけないとね。」「やめてください。」藤堂の一言に即答する春香。「仁美とは大の親友だったんです。私から彼女に話してみます。」「そうかね。ま、君は依頼人関係者だからね。意思は尊重するが。ところで松本君とか言ったね。大丈夫かな。」「はい。アイスティー飲んだら落ち着きました。」その後春香は間髪入れずに頼み込む。「あの、藤堂さん。もう一人、親友がいるんですが。助けてもらえませんか。」無論それは優也だ。「と、言うと。」「昨日から連絡ができないんです。私と同じで年上の彼女が出来ただけで退学させられそうなんです。名前は志楽優也と言います。」「志楽。・・・もしかして、志楽乙女の息子か。」「ご存知なんですか。」「彼女の小説は最近読み始めたもんでね。それでもしかしてと思ったもんだから。そうか作家の志楽乙女。わかった、それとなく探りを入れてみる。君達を無事送り届けたらな。」しばらく二人を落ち着かせた後、春香を松本に送らせてから、松本自身も送っていった。その頃優也はと言うと。・・・その前に時間を少し遡る必要があるだろう。優也はあの後、瀬西の家に向かった。洋食飯屋ルボアの隣に一軒の大きな家がある。セキュリティも万全で、お手伝いさんもいるようだ。チャイムを鳴らすと最初に出たのは白川さんと言う女性だったからだ。シャキッとしてお淑やかな老婦人。「お嬢様に。かしこまりました。」「お嬢様。」若干その言葉に違和感はあった。瀬西はもう52歳の女性だったからだ。やがて瀬西が勢い込んで門に駆けてくる。「優也君。どうして急に」「志乃さん。スマホ見た。」「あ、ごめんなさい。私そう言うの持ってなくて。」「あ、ごめん忘れてた。とにかく聞いて。」かいつまんで今までの経緯を説明する優也。「まさか、そんなことが。」思わず口を手で塞ぐ瀬西。「・・・だから仕方なく俺もある程度軟禁になるのを条件にスマホを母さんに担保として渡して来たんだ。あなたに会うために。」「優也君。」瀬西は困惑の色を隠せずにいた。しかしそこへ。「瀬西志乃さんですね。志楽乙女氏に雇われてる者です。我々と来てもらえますか。」黒のSUV二台が瀬西邸の前に停まる。半ば強引に連行される二人。お手伝いさんが警察を呼ぶと叫ぶと「呼べばいい。ただし、瀬西さんの素行不良が世間にバレますよ。」「加津子さん。」志乃は首を横に振った。「大丈夫。私を信じて。」「お嬢様。」SUVに入れられる二人。男達は車で走り去った。半ば監禁状態で志楽邸に閉じ込められた二人。やがて仕事を切り上げた乙女が、マネージャーと共に帰ってきた。「あんたなの、うちの息子をたぶらかしたババアは。」「母さん。」「優也は黙ってなさい。」剣幕にも落ち着き払って瀬西は挨拶する。「はじめまして、優也君のお母さん。瀬西志乃と申します。息子さんとは・・・」パンッと平手打ちの音が響く。「あんたどの面下げて挨拶してんの。聞いたわよ、52歳なんですって。いい歳して恥ずかしくないの。それに、色々調べさせてわかったんだけど。あんた。高校生の時、クラスメイトで親友だった榮倉信子を自殺に追い込んだんだって。」「え・・」時が止まるとはまさにこのこと。優也は驚愕の表情を隠せない。「嘘だよな、志乃さん。嘘って言ってくれ。」何も言えず顔を下に向ける瀬西。「何で。」「信子とは親友だった。中山君とも。」「中山って、まさか、森本の。」「どういうこと。」「確か話半分に聞いた内容だと、森本が付き合ってる男性は、青川学園卒で中山毅って人。しかも年も同じ。」「間違いないわ。中山君。そう、中山君が春香ちゃんと。」乙女が割り込む。「どうでもいいわ、そんな与太話。で、あんたはその信子って子が立野って不良と付き合いだしたことが気に入らなかった。何故なら、あんたも立野が好きだったから。で、彼女を他の男子にレイプさせた。」またもやショッキングな告発。しかし瀬西は真っ向否定した。「ち、違います。私はそんなこと指示した覚えはありません。」「複数の元クラスメイトの証言があるんだよ。」「そんな。・・・信じて優也君。私はそんな事してない。」そう信じたかった彼だったが、やはり疑惑が頭を支配し始めていた。無言になる優也。「ね、わかったでしょ優也。お母さんの言う事を聞きなさい。この人と別れなさい。」そっぽを向いて無視する優也。瀬西に向き直る乙女。「て、事で別れて諦めてくれない。この子には将来があるの。あんたみたいなババアを真剣に愛するわけないでしょ。」・・・続く。


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