複雑・ファジー小説

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アカシアな二人
日時: 2022/04/16 22:27
名前: 梶原明生 (ID: UfViuu4R)

理想的な容姿と充実した高校ライフを送っている二人の高校生。ひょんなことから回りに勧められて付き合い出したのだが・・・二人は愛し合えなかった。「何かが違う。」その違和感を拭えないでいた。そんな時互いに別の異性との出会いがあったのだが。それは悲劇の愛の始まりだった。アカシアの花を通じて知り合った、52歳の男女だったのだ。しかし世間はこれを純愛とはせず、あらゆる憶測、いじめ、引裂き、誹謗中傷の嵐に晒す。果たしてこの四人の愛は没落なのか。それとも真実の愛なのか。神々の授ける運命は愛する者達を翻弄する。

Re: アカシアな二人 ( No.28 )
日時: 2022/09/14 12:45
名前: 梶原明生 (ID: 9nuUP99I)

・・・「まさか、辞めさせられるんですか。」「いや、そうすぐには・・・」「嘘。私院長に掛け合ってきます。」「やめてください。」中山は一ノ瀬の腕を掴む。「あ、すみません。でももういいんです。色々お世話になりました。」頭を下げて立ち去る中山。そんな時、一ノ瀬の娘の幼稚園に身長186センチの大柄な銀行員が営業に訪れていた。「私共秋の葉銀行は色んなオプションをご用意できます。・・・お、渚。」銀行員は娘を発見した。「パパ。」「覚えていてくれたか。よしよし。」園長が驚く。「あら、渚ちゃんのお父さんだったんですか。」「ええ、妻が浮気して出て行ったもので。」銀行員お得意の小芝居が始まる。一方、三時で早上がりさせられた中山は、ロッカーを整理してから自宅へと戻った。「ん、メールきてたのか。気づかなかった。」スマホを手にとれば一通のお知らせがあった。「近くのカフェにいます。来てください。」とある。早速そのカフェを訪れた。「春香ちゃん。瀬西、何で君が。」驚いた。親友だった彼女が今ここにいるのだから。「不思議な縁ね。まさかあなたが春香ちゃんの恋しい人で、私とあなたがかつての級友で。そして。」「お初にお目にかかります。志乃さんと交際してます志楽優也と言います。」何がなんだかと言った感じで席に着く中山だったが、瀬西と春香のこれまでの経緯を話すと、彼は納得した。「そこで提案があります。勝手ではありますが、僕たちと、ダブル駆け落ちしませんか。」「何だって。」普通なら断るのが関の山だろう。しかし幸か不幸か、中山にある現象が起こり始めていた。「信ちゃん・・・」「え。」森本に榮倉信子が重なってしまった。「ごめんよ。あの時助けられなくて。もう後悔したくない。行こう、君とどこまでも。」春香は信ちゃんと言う名前が気になったが、今は時間との勝負。中山が切り出した。「四分くれ。出て行く荷物を取ってくる。」優也は承諾した。「わかりました。」早速マンションに取りに行く中山。夕日が差し掛かる中、自家用車のXトレイルを出して春香達を乗せる。途中藤堂とも合流し、あくなき逃避行の旅は始まった。「瀬西さんと優也君ははじめましてでしたね。藤堂聖です。よろしく。」「こちらこそよろしくお願いします。」「皆さんのボディガードを務めさせていただきます。」頼もしい味方ができて尚更テンション上がる皆。しかしこの事実を乙女が知ったのは随分後からだった。「何言ってんのあんた、そんな大事なこと何で黙ってたの。」ヒステリーな剣幕で叱る乙女。「申し訳ありません。うっかりしていました。」「もう、あの子は何考えてるの。」ソファに倒れ込む彼女を尻目にほくそ笑む乾。無論、わざと報告を遅らせたのは言うまでもない。乙女は響探偵事務所に連絡した。警察では返って事を大きくすることを恐れたからだ。その頃関越自動車道から上信越へと入ろうとしていた中山達だったが。「ん、優也君。何処へ行きたいんだ。」藤堂が不審に思い聞いた。「とりあえず僕の計画ではうちが所有してる別荘に向かおうと思います。」「それは危険だ。恐らく警察だろうと、お母さんが雇ってる探偵事務所にしても君の関わる場所には網を張るはず。別荘なら尚更だ。」「えー。」意外にもそこまで考えが回っていなかった。「中山さん、南に向かってください。上信越自動車道は避けましょう。」「わかりました。」藤堂の指示に従い、道路を変えて潜行した。春香達の楽園への、短くも熱い夏休みが始まった。・・・次回「私達の楽園」に続く。

Re: アカシアな二人 ( No.29 )
日時: 2022/09/25 11:12
名前: 梶原明生 (ID: UMqw536o)

「私達の楽園」・・・「んーっ気持ちいい青空だねー。」サービスエリアで翌日、春香は車から降りて背伸びした。「春香ちゃん、ちょっとお金下ろしてくる。」「うん。行ってらっしゃい。」中山はATMに急いだ。これからは現金払いがいいと藤堂に指導されたためだ。キャッシュカードだと使った場所を特定されるから。響探偵事務所くらいなら朝飯前だろう。彼は退職金と給料を一部引き出した。利用している銀行は秋の葉銀行。戻ってみると皆いない。鍵もしている。「どこへ。ん。」メールが届いた。今サービスエリアのショップにいると。「名古屋名物のソフトクリームになります。」店員が春香に手渡す。「わー、美味しそう。」すっかり旅行気分の春香に藤堂も癒される。「ああ、すみません出てきてしまって。メール見ましたか。」「ええ、見ましたよ。すっかり旅行気分ですね。」「こうして見ると、これまでの悲壮感が嘘のようです。」春香は次に優也と志乃を従えて隣のお土産屋に興味惹かれる。「見て、美味しそう。」「本当ね。」志乃がそう言った矢先、店員がつい心ないことを。「あ、お母さんですか。家族でご旅行ですか。」「え、・・・ま、まぁそうね。長男と長女でして。」機転を利かせてそう言ったものの春香の顔色は曇った。優也は春香を気にかける。「大丈夫か。」「う、うん、大丈夫。」いくつか土産品を買った三人は毅と合流し、車に戻るのだが。「やっぱり世間て年齢で人を見るんだ。」今度は毅の助手席に乗った春香が呟く。「し、仕方ないさ。ある程度は芝居しないと。それにその方が潜伏しやすいし。ねぇ、藤堂さん。」「はい、その通りです。しばらくの辛抱です。落ち着くまで。」それでも窓外を見て景色ばかり見る春香。一方その頃、一ノ瀬は非番で休みだったのだが。彼女のコーポに女性が訪ねてくる。「すみません。区役所の者ですが。」「はーい。」一ノ瀬はついドアを開ける。「何の御用ですか、・・・はっ」いきなりドアは放たれて大きな壁が入ってきた。「はい、約束の金。」男は女に金を握らせて帰した。「浩二、あなた。」「久しぶりだな、え、随分探したぜ静香。この落とし前どうつけるんだ、あ、このクソアマ。」殴る蹴るの暴行が始まった。「やめてー。」「はぁ、じゃあ何だこの男は。わざわざ写真盾に自分と載った男の写真入れやがって。誰だこいつは。」さらにエスカレートする浩二の暴行に耐えられず、口走る静香。「そ、その男は、確かに付き合ってた人だけど、渚に性的な悪戯する男だったのよ。」「何、渚本当か。」キョトンとそばにいた彼女は、母のアイコンタクトに答える。「うん。」「畜生、ぶっ殺してやる。」「おまけに今、女子高生連れて失踪してるの。確か秋の葉銀行を利用してたはず。名前は中山毅。」怒りの矛先は静香から毅に変わりつつある浩二だった。・・・続く。

Re: アカシアな二人 ( No.30 )
日時: 2022/09/23 16:30
名前: 梶原明生 (ID: UMqw536o)

・・・銀行に電話する浩二。「みっちゃん。調べてほしいことがあるんだが。」「何よ。私との関係は切れたはずでしょ。」「そう言うなって。中山毅って人の最近の利用データ調べてくれないか。」「いいけど。また破産者なの。」「いや、ある意味俺が破産させたい相手でね。」ほくそ笑む浩二。「ちょっと待って。・・・あー、その人なら、名古屋市近郊のサービスエリアから50万円の引き出しがあったみたい。ついさっきよ。」「何、わかった。みっちゃんありがとう。」電話を切る浩二。「待ってろよ。」車に乗り込む浩二。そんなことも知らずに日産Xトレイルを走らせている毅。助手席の春香が場の空気を変えようと藤堂に話しかける。「藤堂さんて、車の免許持ってるんですか。」「まぁ、そうだね。」「なら、毅さんと交代してもらえたら・・」「春香ちゃん。」毅は彼女を牽制したのだが。「いいですよ中山さん。気にかけなくても大丈夫です。・・・あれは確か10年前。」これまでの経緯をかい摘んで話した。「以来、運転恐怖症に苛まれてね。だから自衛隊を首になった。車両運転できない自衛隊員なんて話にならないからね。おまけに妻からも首になった。元々自衛隊合コンで知り合った仲でね。妻にとって、空挺部隊員の妻というステータスが欲しかっただけだから。自衛隊を辞めた俺なんかに興味はなくなったんだろう。ただ・・・」「ただ。」「一人娘だけが気掛かりでね。もう随分と会ってないんだ。7歳の時に別れたから丁度17歳・・・君と同い年かな。」「え、そんな年の娘さんいたんですか。」「ああ。それでしばらくふらついてたら、先輩自衛官から電話があってな。その人が自衛隊を辞めてから主宰したバルエージェンシーって大手探偵会社に就職した。そして2年前に独立したってわけ。」「へー、そうだったんですか。」関心する春香。そんな中、志乃が毅に頼み込んでくる。「あ、中山君守山区の幸先町2の4に向かって。」「幸先町ってまさか。」「そのまさかよ。狭間先生の家。覚えてるでしょ。」「ああ忘れないよ。僕たちの青川学園の恩師なんだから。」・・・続く。

Re: アカシアな二人 ( No.31 )
日時: 2022/09/26 12:38
名前: 梶原明生 (ID: UMqw536o)

・・・「え、狭間先生って方が青川学園にいたんですか。」春香が驚く。「そうよ。まさに才色兼備な先生でね。それでいて生徒に情が熱い先生だった。男子の憧れでもあったのよ。」「へー、そんな先生が。」一瞬紺野先生を思い出した。今どうしているだろう。「着いたよ。」毅が言うとそこには立派なペンションが建っていた。名古屋市内近郊の丘の上にそれはあった。幸先町は市内と山間の中間に位置し、便利さと癒しの空間がテーマの町だ。狭間葉子先生は高校教師定年退職後、主人の実家である名古屋市幸先町に越してきた。元々洋館宿泊所を代々経営していたが、息子夫婦がそれを叔父から受け継いだため、居抜き改装を経てペンションを開いた。言わばそこに入って、今では息子夫婦を手伝っている状態。五人は車を降りてペンションに入った。「いらっしゃいませ。お泊まりで・・・瀬西さん、中山君まで。」初老過ぎの老婦人に紅潮が差した。「わかるんですか先生。」「わかりますとも。私の大事な教え子ですもの。」「よかった。今日ここに泊まっても。」「ええ、見ての通りのガラ空きだし、大歓迎よ。アレ、お子さん。二人結婚してたかしらね。」「その事なんですが。」志乃の不安気な表情に何かを悟る狭間。「母さん、お客さん。」そこへ年の頃30代半ばの精悍な男性が仕入れ食材を抱えて奥から現れた。その傍らには瀬西と変わらない年齢の女性と子供二人。「ああ、紹介するね。この子は息子の拓司。それからお嫁さんと孫達よ。」「こんにちは。」軽く挨拶を交わして、青川学園卒業生の教え子だということも話した後、部屋に通された。怪しまれないよう、三部屋借りて、毅、志乃の部屋。優也、春香の部屋、そして藤堂のシングル部屋という形にした。折を見て志乃と春香が入れ替わる算段だ。「お部屋の具合はいかがです・・・瀬西さん、ちょっと。」部屋の様子を尋ねるフリで志乃を呼び出す狭間。空き部屋を相談所代わりにして入った。「瀬西さん。もしかして何か深刻な事抱えてないかしら。失礼だけど、二人のお子さん二人のどちらにも似ていないものだから。」もう隠していられないと腹を括った志乃は、狭間先生だからこそ真実を全て打ち明けた。「そう、そんな事があったの。因果かもね。」「え、・・・」「いやね、うちの息子も年の差婚でね。しかもお相手さんは子連れで再婚だったのよ。それはそれはお父さんが生きてた頃は大反対で。半ば駆け落ち同然で結婚。ああ、今のおチビちゃん二人はその連れ子さんじゃなくて、後で生まれた子供。連れ子さんはもう独立して働いてるんだけど。でもね。不思議なものね。孫が産まれて見せられたら何も言えなくて。幸せそうな二人を見て思ったの。世間体や体裁よりも、息子が誰といて幸せなのかってね。おかしいでしょ、教師のくせにそんな事も忘れてたのよ。それで許したのよ。・・・四人共二人でいて幸せなの。」「はい。それはだれが何を言おうとも変わりません。」「それを聞いて安心した。アカシアの花言葉知ってるかしら。」

Re: アカシアな二人 ( No.32 )
日時: 2022/09/27 11:59
名前: 梶原明生 (ID: hamvuQpq)

・・・狭間は花瓶に刺したままのアカシアの花を見てそう言った。「ええ。覚えてますとも。うちのクラスのシンボルマーク。友情の証。そして・・・花言葉は秘密の恋。」「その通り。でもね、秘密と言うと何やら後ろめたい恋と書いてるみたいに聞こえる。でもね瀬西さん、私は違う意味を込められているんじゃないかなって思うの。秘密とは、『己に素直な真実の恋』を意味してるんじゃないかしら。」切実な眼差しに変わる志乃。黄色いアカシアを見つめる。「本来なら、あの子達が未成年者である以上、諦めなさいと言うところね。教師としては。」「えっ・・・」恐れる志乃。「でもね、私は元教師。しかも年寄りよ。最近・・記憶にボヤがかかってるから、さ〜て、あなたが教え子だったか違ったか。皆目見当がつきません。・・・ウフ、ハハハッ」思わぬ笑いにつられて志乃まで笑ってしまう。「うちの息子家族なら心配ないわ。あの子達は狭間家の一員よ。私と一連托生。まぁ宿泊した事実は消せないけど、貴方達が何者であるかは、伺い知れないこと。だってここはペンションですもの。」「すみません。ご迷惑をおかけします。」「迷惑なんて言葉は使っちゃダメ。私は迷惑なんてこれっぽっちも思ったことはない。あなたの担任になってから。」「先生・・・」泣き出す志乃を優しく肩を掴む狭間だった。その後事情を皆に話す志乃。毅が口を開く。「そうか。そう先生は言ってくれたのか。でも、明日の朝には出よう。九州方面なら何とかなるかも知れないから。」春香が何かを思いつく。「九州とくれば、私宛があるよ。以前お世話になった美沙おばちゃんがいるし。あ、藤堂さん。また追跡されるとか言うんでしょ。大丈夫。美沙おばちゃんは九州中を行ったり来たりしてる人だから。」顔を見合わせる毅と藤堂。「藤堂さん。ここは春香ちゃんに賭けよう。」「そうですね。わかりました。」夜の会合は終わり、皆それぞれの部屋に帰っていく。春香は毅に身を委ねる覚悟はできていた。経験はないものの、愛する人の求めに応じないわけにはいかない。しかし、前日のビジネスホテルでもそうだが、傍らに抱いて寝ることはあっても、男女の営みに移そうとはしない。今日もそうだ。・・・続く。


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