複雑・ファジー小説
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- アカシアな二人
- 日時: 2022/04/16 22:27
- 名前: 梶原明生 (ID: UfViuu4R)
理想的な容姿と充実した高校ライフを送っている二人の高校生。ひょんなことから回りに勧められて付き合い出したのだが・・・二人は愛し合えなかった。「何かが違う。」その違和感を拭えないでいた。そんな時互いに別の異性との出会いがあったのだが。それは悲劇の愛の始まりだった。アカシアの花を通じて知り合った、52歳の男女だったのだ。しかし世間はこれを純愛とはせず、あらゆる憶測、いじめ、引裂き、誹謗中傷の嵐に晒す。果たしてこの四人の愛は没落なのか。それとも真実の愛なのか。神々の授ける運命は愛する者達を翻弄する。
- Re: アカシアな二人 ( No.8 )
- 日時: 2022/07/08 20:54
- 名前: 梶原明生 (ID: InHnLhpT)
・・・「あ、俺図書館寄らなきゃ行けなかったんだ。悪い、引き返そう。」「うん、でもありがとう。なんだかスッキリした。マブダチっていいもんだね。」「ああ。」楽しそうに歩く後ろ姿を物陰に隠れて見ていた仁美が舌打ちする。火の見櫓でキスしていたと勘違いしていた。遠くで会話まで聴こえていないから尚更だ。「あいつ。」逆方向へ歩き去る仁美。優也は読みたい本があった。図書館に入ると、早速お目当ての書棚に手を伸ばした。「あった。あ、・・・」タイミングが良かったのか悪かったのか。中年女性らしき人と手がぶつかる。「あ、あら、ごめんなさい。どうぞ。」「いえ、とんでもない、僕なら大丈夫ですよ。まだ読みたい本あるし。」「あら、あなたも青川学園の生徒さん。」「はい、そうですけど、あなたもって俺以外に誰か会ったんですか。」「ああ、いや。お宅の学校の女生徒さんにとてもいい子がいてね。最近親しくなったものだからつい。」「へー、うちの高校も捨てたもんじゃないな。あ、そうだ。この本俺が借ります。その代わり、明日のこの時間に図書館に来てもらえませんか。二人で一緒に読むって言うのは。」ドキッとする志乃。普通ならありえない申し出だが、優也だと自然に入ってくる。「あ、ごめんなさい。旦那さんやお子さんに悪いですよね。」「いいわ、大丈夫。それじゃ明日。」「明日ですね。はい。」年若いイケメン高校生に胸高鳴るなんて何年ぶりだろうか。しばし年齢を忘れてしまう志乃だった。優也もまた、彼女の不思議な魅力に取り憑かれてしまった。今まで出会ったどの同年代の女の子にも志乃の魅力に勝てる者はいなかった。翌日、放課後に優也と春香はそれぞれ別々に目的地に向かった。拳を合わせる二人。「頑張ってこいよ。」「うん、優くんも図書館での出会い頑張って。」「おう。」まさか中年女性とまでは言えず。女子大生と出会ったことにしていた。春香はかつて互いの住所を手紙にしたためていたことが幸いした。電車に30分揺られて東京にしては閑静な街の駅にたどり着いた。「確か、三丁目ミラクルマンション305号室だったよね。」数分歩いただけで見つかった。「あっあった。ここだ。」Googleマップで探し出した。でもどうしたらいいかわからず、とりあえずマンション前で待ちぼうけになるしかなかった。一方、中山は今日は珍しく早上がりとなった。「あ、一ノ瀬さん、お疲れ様です。」「おつかれ様です。女には気を付けた方がいいですよ。」「え、・・・・」気がついた時には彼女は立ち去った後だった。日産XトレイルのSUVに乗り込み、一路自宅へ戻った。ミラクルマンション前で待ちぼうけの春香とすれ違う。「あ、あの子は。」駐車場まで走ってくる春香。「どうして君がここへ。はっ。」今になって自分の住所を手紙に書いていた事を思い出した。「改めて謝りたくて。本当に、すみませんでした。」誠心誠意頭を下げる春香。「もういいよその事は。わざわざ来てくれただけでも凄いことなのに。気にはしていない。」「じゃあ許して頂けるんですか。」「許しはするが、付き合えはしない。勘違いしないでくれ。」「そんな。いけませんか。私、中山さんのことが好きです。中山さんは私のことは嫌いになりましたか。」「そんなことはないっ。あ・・・」続く。
- Re: アカシアな二人 ( No.9 )
- 日時: 2022/07/08 21:41
- 名前: 梶原明生 (ID: InHnLhpT)
・・・思わず口に出して後悔した。彼女を否定しなければならないのに、裏腹に春香を愛し始めていたからだ。しかし二つの障壁がある。一つは年齢的な障壁。二つ目は相手の幸せを思えばこその障壁。誰もが恋すれば自分が相手に相応しいと叫ぶ。しかし、愛しているのなら、自分が相応しいかどうか見極めて、相応しくないなら潔く身を引く。この二つ目ができない人が多すぎる。「俺が俺が、私が私が」とつきまとい、その人の命すら脅かす。それを愛と言えるのか甚だ疑問だ。中山は前者だった。「じゃあ、好きなんですね。私のこと。」「頼むわかってくれ。君と私は会うべきじゃなかった。」西日も陰りはじめ、七月の暑い最中、夕立に雷が発生した。外は激しい雨に見舞われる。「こりゃ酷い。君、電車できたとか言ってたね。もうこんな時間だし、この雨に雷じゃ親御さんも心配だろう。仕方ない。近所まで私の車で送って行こう。」春香の目が輝く。「勘違いしないでくれ。別にドライブするわけじゃないんだ。」釘を刺すつもりで言ったのだが、春香には効かなかった。「本当に、本当にそれでいいんですか。これは運命の赤い糸だと思いませんか。女子高生の戯言と思うかも知れません。でも、将来は私が決めるものです。まだ17歳じゃない。もう17歳なんです。」「わかったから。早く乗りなさい。」Xトレイルのドアを開けて促した。その頃、図書館で待ちぼうけを食っていた優也は、急いで来る志乃の姿を見つけた。「瀬西さん。」「あ、志楽くん・・・だったわね。ごめんね遅くなって。子供の面倒でね。」「いいんです。さて、読みましょうか。」「ありがとう。」早速読み進める二人だが優也は今、彼女の嘘を見抜いていた。「薬指。」「え、何、志楽君。」「薬指に指輪の跡がないですね。本当に結婚したことあるんですか。」頭が真っ白になる志乃。「あ、いや、その、うちはそう言う風習はないから。」「そうですか。それにお子さんがいる主婦の方にしては生活感がまるでないバッグ、雰囲気。」しまった、この子にもう嘘は付けないと、本当のことを打ち明ける。「ごめんなさいね。つい嘘ついてしまって。そのなんて言うか。こんな50過ぎのオバさんでしょ。バツが悪いと言うか、何と言うか。」「別にいいですよ。」「え・・・」「僕に気を遣ってついてくれた優しい嘘なんでしょ。だったらいいじゃないですか。50歳で独身だろうとなんだろと、瀬西さんは瀬西さん。凄く魅力的ですよ。」「志楽君。・・・」火照る気持ちにさらに火が付いた。「ごめんなさい。お手洗いに行ってきていいかしら。」「どうぞ。」そそくさと女子トイレに入る志乃。水道で顔に水を当てる。鏡に映る自分を見つめる。「本当にいいのこれで。私。」志乃も何となく感じ取っていた。彼に惹かれるものを。やがて落ち着き、優也のところに戻る。「どこからだったかしら。」「ああ、えーと、9ページの3行からですよ。」二人は仲睦まじく読書に勤しんだ。「あ、ここよく読んだら・・・」腰をずらして、よく説明しようとしたのだが、席の後ろに置いていたバッグを床に落とす。「あちゃーしまった。」バラけた中身を取る優也。志乃も手伝うのだが。「あれ、これ。」親しいクラスメイトと撮ってプリントした記念写真ケースを見てしまった志乃。「春香ちゃん。」「え、どうして森本のことを。」・・・続く。
- Re: アカシアな二人 ( No.10 )
- 日時: 2022/07/13 11:24
- 名前: 梶原明生 (ID: nj0cflBm)
・・・「え、じゃあこの子はあなたのクラスの・・・」「そうですよ。奇遇だなぁ、森本と瀬西さん知り合いだっただなんて。」「よかったら春香ちゃん達といつでも遊びにきなさいよ。洋食飯屋ルボアの隣に家あるし。」「ルボアって、こっちに転校してきて最初に入った飯屋ですよ。カツ定食が美味い。へー、こんな偶然あるんだな。」志乃は微笑んで優也を見つめる。その頃、中山のSUVに乗って家の近くまで来ていた春香は、暫く路肩に停めた車の中で雨が止むのを待っていた。ほとんどその雨も上がっていたのだが。「もういいだろう。人目もあるかも知れないし、帰った方がいい。」「この車を出たら、最後なんですよね。そんなの嫌。また会えるって約束してください。」「何度も言わせないでくれ。頼むから。」春香の目を見て固まってしまった。今にも泣きそうな瞳。そして好きになった人の顔。そのどれもが愛おしい。そしてそれは突然接近する。「うぐ・・・。」唇を交わしていたのだ。春香がいきなり唇を重ねてきた。抵抗すべきなのに。胸の奥から湧き出る熱い思いに敵わなかった。もうどうにでもなれ、そう考えている中山だ。実は先ほどから春香も同じような心境だった。自分でも「私何言ってんだろ」と呟きたくなるくらいに顔から火が出るほど恥ずかしいメロドラマを展開してしまったなと、内心後悔していた。しかしそんな後悔、彼を失う虚しさに比べたら。「ね、これが中山さんの本音でしょ。ありがとう。」そう言って車から降りる春香。「日曜にまた駅のモニュメントで。」微笑んで家に帰る。夜はふけて遅くに家に帰る優也。「どこ行ってたの。随分遅かったけど。」乙女がワイングラス片手にソファで呼び止める。「どこだろうといいだろ。小学生じゃあるまいし。」「何その口の聞き方。あんたがクラスメイト殴って怪我させた時、揉み消してやったのは誰よ。」「恩着せがましくするなよ。あれは勝手にあんたが金握らせただけだろ。退学でも良かった。」本当は母親のことで詰られたからと言いたかったが、何故か言えない優也。「何言ってるの。あなたのためを思えばこそ。」「いや、違うな。あんたの世間体のためだろ。」「優也っ」彼は背中を向けて二階に上がる。「失礼します。先生」「ああ、あなたいたのね。帰っていいわ。」乾は一礼しつつ、微笑んでリビングを後にした。乙女はある違和感に気付く。「香水・・・あの子の匂いじゃない。大人の女性・・・」・・・続く。
- Re: アカシアな二人 ( No.11 )
- 日時: 2022/07/26 12:34
- 名前: 梶原明生 (ID: 5AipYU/y)
・・・母親の勘は恐ろしいと言うが、付いた匂いまで誤魔化せない。「オードパルファム。女子高生が付ける香水じゃない。春香ちゃんじゃないわね。すると30歳以上の女性。」ボルドーワインを一気に飲み干した。翌日マックで待ち合わせしていた春香と優也は、早速報告会を開始した。「で、どうだった志楽少佐殿。」「なんだよそれ。ま、いい感じ。かな。」「イェーイやるじゃんやるじゃん。」「その前に謝っとくよ。」「へ、何を。」「女子大生って言ってただろ。あれ、嘘だったんだ。」「え、どういうこと。」「森本がよく知ってる瀬西さん」「ぶっっ。」一瞬コカコーラを吹いた。「汚いなもう。」「いやだって、嘘冗談でしょ。」「嘘なもんか。でもただの偶然だよ。不思議だなー。お前と俺がまさかスッゲー歳の差カップルになるなんてな。天文学的数字だぜこれ。」「ほ、本当だよね。」自分はさておき、春香は一抹の不安を感じていた。「いよいよ明日だよな初デート。」「うん、優君も頑張って来て。瀬西さんなら私知ってる。あの人なら優君にピッタリだよ。」「おう、サンクス。そう言うお前もな。」その場は別れて互いに翌日の日曜日を迎えた。モニュメントに向かって走る春香。「中山さん早ーい。さすがは理学療法士。」「そうでもないさ。で、どこに行こうか。」「それは勿論、ディズニーランド。」「デ、ディズニーランドっ。」予想外の展開だった。まさかそんな斜め上に来るとは。「でもその前に確認したいんです。」「何を・・・」「て言うか、中山さんからそれを聞きたいな、何て。」もじもじしている彼女を見て何となく悟った。それは言いたくても言えなかった言葉だ。「君の事を愛してる。私と付き合ってくれないか。」「はい。喜んで。」時を同じくして優也も図書館デートに漕ぎ着けたことをキッカケに、瀬西に思いの丈を打ち明ける。「瀬西さん、ぼくはあなたのことが好きだ。付き合ってください。お願いします。」深々と頭を下げる優也。「ちょっとやめてよ志楽君。揶揄ってんの。」「揶揄いだなんてそんな。俺は真面目です。真剣です。」「私を遊びにするつもりはないのね。」「とんでもない。俺、志乃さんほどの人に会ったことありません。ですから。」「わかったわ。・・・でも本当に私みたいなおばさんでいいの。」「僕は志乃さんが好きなんです。」その一言で決まった。瀬西は頷いてみせた。「私も、志楽君のこと、好きよ。」優也は愛おしくなり、彼女を抱きしめていた。一方、春香はと言うと。感染症予防対策のとったディズニーランドのアトラクションを回っていた。中山は振り回されるばかり。慣れないテーマパークに圧倒されまくりだ。係員のお姉さんが中山に声をかける。「お父さんと娘さんですか。」苦笑いしながら答える。「は、はい。」・・・続く。
- Re: アカシアな二人 ( No.12 )
- 日時: 2022/07/29 21:08
- 名前: 梶原明生 (ID: C/YHgPFP)
・・・その時春香の顔色が曇った。「只今父と娘でディズニーランドキャンペーンやってまして、ミッキーと記念写真を撮りましたら指定レストラン半額チケットを差し上げております。いかがでしょう。」春香は顔色を抑えて答える。「はい、やります。」かくして、記念写真を撮り、チケットを手に入れたのだが。「私、娘だったんだ。せめて中山さんには年の差カップルって言ってほしかった。そうすれば後四歳サバ読んで21歳ですとか言ってたのに・・・」力なくベンチに座る春香を宥める中山。「すまなかった。あそこではつい。」「わかってます。あーあ、早く私大人にならないかな。そうすれば堂々としてられるのに。」無言で困惑気味になる中山。そこへ、聞き慣れた声が聞こえてきた。「あれ、中山さん。」「い、一ノ瀬さん。」そう、あの同じ病院勤務の看護師が、5歳の娘を連れて来ていたのだ。「中山さんがディズニーランドなんて珍しい。そちらの方は。」ドキっとする二人。「いや、その、親戚の子で、ディズニーランド一人で行くのは怖いからって。」「ああそれで付き添いでご一緒に。初めまして。中山さんと同じ病院勤務の一ノ瀬です。」半ば強引に,自己紹介する一ノ瀬。「ところでお名前は。」「な、中山春香です。」「そう、妹さんの娘さんかしら。そんな話は聞いてませんよね中山さん。確か男の子二人とか聞いてたんですが。」「そうだったかな。いや、娘もいたんだよ。」詮索してくる一ノ瀬に春香はある感覚を覚えた。「もしかして、嫉妬。・・・」心で呟く春香。「あらそう、なら私達とご一緒にまわりませんか。娘もお姉ちゃんができたみたいで喜ぶし。」なかば春香に向けてわざとらしく提案してくる一ノ瀬。「いや、一ノ瀬さん。それは・・・彼女、シャイなものだから。」「あら、姪っ子さんに彼女て言い方おかしくないですか。」「あ、いや、その、私の口癖でね。」誤魔化したものの、仕方なく一緒にアトラクションを回ることに。小休憩でカフェに寄るのだが。「中山さん、すみませんが注文頼めるかしら。」「あ、うん。わかったよ。」メニューを聞いて屋台へ行く中山。それは作戦だった。「ところでお住まいはどこかしら。春香ちゃん。」「え・・・」しどろもどろになる春香。「答えられないはずよね。だってあなた、姪っ子さんじゃないものね。」核心をついてきた。「何を言うんだ一ノ瀬さん。」中山が早く帰ってきた。「あらごめんなさい。ちょっとした冗談よ。間に受けちゃって、ハハハッ。」笑って誤魔化す一ノ瀬。・・・続く。
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