複雑・ファジー小説
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- アカシアな二人
- 日時: 2022/04/16 22:27
- 名前: 梶原明生 (ID: UfViuu4R)
理想的な容姿と充実した高校ライフを送っている二人の高校生。ひょんなことから回りに勧められて付き合い出したのだが・・・二人は愛し合えなかった。「何かが違う。」その違和感を拭えないでいた。そんな時互いに別の異性との出会いがあったのだが。それは悲劇の愛の始まりだった。アカシアの花を通じて知り合った、52歳の男女だったのだ。しかし世間はこれを純愛とはせず、あらゆる憶測、いじめ、引裂き、誹謗中傷の嵐に晒す。果たしてこの四人の愛は没落なのか。それとも真実の愛なのか。神々の授ける運命は愛する者達を翻弄する。
- Re: アカシアな二人 ( No.78 )
- 日時: 2023/04/23 13:55
- 名前: 梶原明生 (ID: hr/PPTT1)
・・・週刊本話デスクで電話を受けてる内野が上げてた足を床に戻して聞き入った。「本当か。」「間違いないですよ内野さん。こりゃいいネタになりますよ。」「よし乗った。」早速電話を切る内野。「おい内野、どこ行く気だ。まさかまたあの歳の差カップル逃避行追ってんのか。あんなもん記事にはならんと言ってるだろ。」編集長が釘を刺すのだが。「まぁ、そう言わずに。」「それより今からアポあんだろ。この前の強盗殺人の。」「しまった。忘れてました。」「バカ、そっち片付けてから行けよ。」やむなく内野は今日は諦めざる終えなかった。翌日、すっかり秋めいてきた北志奈町。まだ暑さは残るものの、もう、真夏ではない雰囲気が辺り一面にひろがりを見せてきた。今日もまた夕日が差し始め、買い出し中の春香は沈みゆく太陽に手を翳して仰いだ。「夕日ってこんなに綺麗だったんだ。」「何してる春香。お腹の子に障るから、店戻るよ。」「はーい。」急いで駆け寄る春香。いつものように店を開けて、スナック街に灯りがポツリポツリと灯り始める。ククトにも何人か常連客が入りはじめた。すっかり陽が落ちてから久しい時刻。「いらっしゃいま・・・」たまたま出入り口付近で皿を片付けていた春香はドアを開けてきた人々を客と思い、つい常套句を口ずさんでしまった。しかしそれは驚愕と切なさが漂う顔つきになる原因となった。「た、毅さん。藤堂さんに志乃さんまで・・・」そして白川を加えて四人でククトに訪れていたのだ。「春香ちゃん。久しぶり。」ただ茫然と立ち尽くす彼女を察した靖子は、代わりに奥のボックス席を案内する。「とりあえず入り口で立ち話も何なんで、奥へどうぞ。」毅と藤堂に言うものの志乃と白川には無言の圧力をかけてくる。「ママ、今日は繁盛だね。」「繁盛ついでに申し訳ないけど山ちゃん。皆さん、お会計はいいから今日は帰ってくれる。ごめんなさい、貸し切りなんだ。」「ええ、ま、まぁママの立ってのご要望とあらば・・・おい皆、今日は貸し切りだとよ帰ろう帰ろう。」「えーっまさかー。仕方ないな、スナック静香で飲み直すか。」一斉にお客は退散し、七人だけとなった店内。「何だか正月とお盆とクリスマスと借金取りが同時に来たカオスよね。ね、母さん。」カウンター席に座ってタバコを蒸し始めた靖子が開口一番にそう語った。「お母さん。」春香が不思議がる。「あー、あんたはしらないよね。そっちは瀬西志乃。そうだろう。」「お、覚えてたんですか。」「当たり前さ。あたしはね、一度覚えた顔は忘れないタチでね。よりによって、何で恋敵だったあんたの家政婦があたしの母親なんだよ。」えーっと思わず叫びたくなった。「私をさぞかし恨んでるだろうね。」「は、恨む。ハハハっバカ言っちゃいけないよ。あたしもう50過ぎだよ。いい大人が母親恨んでどうすんのさ。確かに10代の頃は荒れに荒れてたよ。まさか母親がヤクザだなんてね。でも私も娘だね。結局あんたの轍を踏んでる。カエルの子はカエルの子。それに気づいてからガムシャラに働いたね。そんな時龍二に出会った。」・・・続く。
- Re: アカシアな二人 ( No.79 )
- 日時: 2024/04/05 18:01
- 名前: 梶原明生 (ID: nCjVBvXr)
・・・まだ長いタバコを灰皿に擦り付ける。「あいつも東京連合の一人でさ。入れ上がったために私、少年院を出た身でありながら再びレディースの仲間に。そんな時纏わりついてきたのが瀬西の嬢ちゃんと信子って子。」勿論藤堂は知っていた。まさかこんな運命の取り合わせがあることまでは予想外だったが。「瀬西の嬢ちゃん。あんたには一度だけ釘を刺したよね。龍二にまとわりつくから殴ったっけ。あん時は若気の至りだったもんだからさ。すまなかったね。」「いえ、もういいんです。あの頃は私もどうかしてた。」「そうかい。でもまさか私のカカァがあんたの家政婦してたとはねぇ。世間は広いようで狭いもんだ。」白川が間に入る。「そんなことがあったのかい。不束な娘に代わって謝ります志乃お嬢様。」「何してるの、大丈夫ですよ加津子さん。」そこへグラスにお通しの料理を持ってくるタイちゃんと靖子。「さ、そんな過去は忘れて。皆さん何か飲む、まずはビールかしらね。」知らぬまに瓶を開け始める靖子。「おっと、今日の主人公忘れてた。んもう、母さんのせいよ全く。・・・おたくが中山毅さん。さっきの春香の様子でピーんときたよ。ほら、お二人は夫婦水入ら・・いや、未だか。なら恋人水入らずでさ、あっちのカップル席にどうぞ。」更に奥の二つ席に案内する靖子。しかし、何を話していいものやら、春香は終始俯いている。毅もまた、何から話したらいいのかしどろもどろになる。「その、あの時は、お、驚いたよ。まさか君がいなくなるなんて。」「ごめんなさい。もしあの時会っていたら、きっと決心が揺らぐと思ったから。」「いいんだ、そんな事。君の決意は尊重するよ。でも、同じ乗り越えていくなら、一人より二人が良くないか。」「でも・・・」涙目になる彼女の傍に座る毅。手を握り、肩を摩った。「君はかつて私にこうやって支えてくれたね。」京都の公園での思い出がありありと浮かぶ。「だから、今度は私に支えさせてくれ。どんな困難も切り抜けよう。」「ダメ、そんなのダメ。」「そんなことない。」「ダメ、ダメ、あ・・・」流す涙を口付けで拭う毅。全身の力が抜けていく春香。藤堂はそんな二人を見やりながら、「勝負ありだな。」と確信した。タイちゃんが靖子に耳打ちする。「何だって、もう春香の情報が漏れた。だから今時のネット社会は嫌いなんだよ。母さん、藤堂さん、聞いて。後10分ほどで警察の手入れが入る。皆逃げて。」白川は娘の大事に立ち上がる。「私が残るよ。警察ならまかせな。」「何言ってんだい母さん。あんたには瀬西のお嬢がいるだろ。身重の体なんだし、誰が面倒見るんだい。」ぐうの音も出ない白川。春香が飛んで来る。「私を庇ったせいでこんな事に。」「勘違いすんじゃないよ。私はね、あんたといて楽しかったんだ。一人娘を思い出してね。だからむしろ礼が言いたいのはこっちさ。ほんの束の間母子ごっこできてさ。・・・」「靖子さん。」・・・続く。
- Re: アカシアな二人 ( No.80 )
- 日時: 2023/05/02 12:32
- 名前: 梶原明生 (ID: p3cEqORI)
・・・「泣くんじゃないよみっともない。せっかくの可愛い美人さんが台無しじゃないか。はい、これお駄賃。よく働いてくれたからね。」言いつつ涙ぐむ靖子。「さ、皆さんも、裏口から抜ければ表道まで近道。さ、早く逃げて。」藤堂が率先して答える。「わかりました。皆さん、さあ早く。」タイちゃんの誘導で次々出て行く面々。「靖子さん。」「わかったから早く、惚れた男と幸せになるんだよ春香。」「はい。ありがとうございます。一生忘れません。」藤堂と毅に促され、裏道を行く春香。靖子は身構えた。「来るなら来な。この靖子様が相手だ。」警察官が入り込んできたときには既に時遅し。もぬけの殻だった。そして春香が戻って来た場所は官舎でなく、菊子、春子のいる家。藤堂が引き渡し、毅の車で帰って行った。翌日、賢二は警務隊に呼ばれていた。上官の三等陸佐も一緒だ。警務官が聴取を始める。「森本三尉、君は児童虐待をしているらしいが本当かね。」「はぁ、一体何の事でしょうか。」「警察から訴えが出ていることを知らされたんだよ。君は娘さんを無理矢理掴んだり、引っ叩いたり、無理矢理中絶させようとしたそうだね。それが原因でPTSDにかかったそうだ。今娘さんは奥さんのところにいる。」「み、見つかったんですか。」「ああ。それで君は部下を使って探させたそうだね。パワハラに値するよ君。」「いや、それは。」「言い訳はやめたまえ森本三尉。君の家庭事情はだいたいは把握してるよ。下達があるまで官舎にてしばらく待機。いいね森本三尉。」「は、了解しました。」上官には逆らえるはずもなく、警務隊執務室を後にする賢二。「あいつめ、よくも。この親不孝者が。」そう思い、官舎近くの緑地で春香のスマホを叩きつけようとしたのだが、何故か思いとどまり、つい中身を見てしまう賢二。これまではSNSやTwitterのやり取りばかりを覗いていたが、写真は見ていなかった。「ふん、どうせくだらん写真ばかりだろ。消してやる。」そうは思ったのだが、何か違和感を覚えた。「こんな・・・こんな笑顔、見たことない。」削除してやろうと息巻いたが、あまりにも今まで自分に見せたことのない笑顔をして毅と写っている写真は、賢二を驚愕させた。一言で言うなら作った笑顔ではない。本当に幸せそうな笑顔をしているのだ。それは賢二のこれまでの考えを瓦解させるほどの衝撃だ。それを後ろで見ている藤堂。「森本。」「おわっ、な、何だ藤堂。お前何で駐屯地の敷地内に入り込んでんだ。」「これ、見ろよ。れっきとした見学者用の入管証。ここの三佐と懇意でね。発行してもらったのさ。」「何だと。」「さ、案内してくれよ。練馬駐屯地を。三佐からのご依頼だ。」手渡された紙には、その三佐の捺印入りで賢二に案内を任せると書かれている。「全く奇妙な話だな。わかったよ。丁度俺は仕事につけない身だしな。付き合ってやるよ。」渋々引き受ける。ひと頃駐屯地内を案内した後、最後に体育武道館に入った。・・・続く。
- Re: アカシアな二人 ( No.81 )
- 日時: 2023/05/05 17:43
- 名前: 梶原明生 (ID: p3cEqORI)
・・・「ここが武道場だ。体育と兼ねて使われ・・・城内一曹、ここで何を。」武道場に入るや否や、真ん中でポツリ、防具と道着を二組揃えて座っている、審判姿の彼女を見つけた。「俺が頼んだんだ。久々お前と拳を交えたくてな。お前言ってたよな。男なら拳で語り合うべきだって。」「お前いつの時代の話だよ。随分昔の話を持ち出しやがって。」「いいから。やるのかやらないのか。」「藤堂たっての心意気だ。かつての親友の申し出なら受けて立たんわけにはいかないだろう。」やがて二人は日本拳法の防具をつけ始めた。軽くご挨拶代わりのスパーが始まる。と言っても激しい攻防戦だが。「おい、藤堂。お前城内狙ってたよな。」「はぁ、何だよ。」「惚けるな。お前城内のこと好きだったろ。それなのにあん時もこうやって試合で勝ったら城内をもらうとか言ってたろ。」「それ今だすか。一体何年前の話だよ。確かにそんなこともあったが、あん時は格闘技でお前の右に出るやつはいなかった。はじめから無謀だったんだよ。それなのに何で二人共別れたんだよ。」藤堂の言葉に賢二は城内の取った行動を思い出していた。茨城の駐屯地に転属願いを出していた。付き合っていたのは僅か3ヶ月。あの頃の記憶が蘇る。「何故だ。何故茨城なんかに。おれが俺が嫌いになったか。」「違う。私があなたに相応しくないからよ。」「どう言う意味だ。」「聞いたの。あなたの理想は家庭にはいり、良妻賢母で従順な女だって。私にはできない。」そう言って手を振り解くと、茨城の駐屯地へ赴任していった。あれから二十数年。「はい、二人共、そんな昔話はこのへんにして、着替えて下さい。」城内が間に入り、スパーを終わらせようとしたのだが。「まだだ。真剣勝負しないか。」「は、藤堂何言い出すんだ。もう十分だろ。」「いや、こっからが本番だ。紛いなりにも元空挺団だぞ。今の俺ならお前に負けない。それとも練馬駐屯地一の格闘教官が空挺レンジャーに恐れをなして棄権する気か。」キッと睨む森本。「いいだろう、受けて立とう。で、何をかける。」「そうだな。春香ちゃんのことだ。」「何・・・」「もし俺が勝ったら中山さんを許す。二人の幸せを認める。どうだ。」「いいだろう。かかってこい。練馬駐屯地をなめるな。」互いに構えあって闘気満々にうちあった。城内ですら目で追えないほどの激しい攻防戦。「取った。」脇が空いた隙を突いて胴を取り、抱え上げて投げに移して面突き一本で極めるつもりだった。「な、何。」投げたはずが逆に肘固めを食らっていた森本。「言ったろ、もう昔の俺じゃないって。これが空挺団だ。」「ふ、何が。特戦の試験に落ちたお前が言うなよ。」「うっせーよ。」言いつつ腕を離す藤堂。「藤堂曹長、一本。」「久々聞いたよ曹長って響き。さて、後一本で俺の勝ちだな。」「させるかっ。」膝立ちで対峙していた二人は再び撃ち合う乱撃。激しい闘いなのに互いに笑顔だ。一瞬身を引いた藤堂が一瞬、後ろ回し蹴りを入れた時、「パーン」と言う音と共に頭にヒットした。「藤堂曹長、後ろ回し蹴り一本。藤堂曹長の勝ち。礼。」悔しがりながらも立ち上がる森本。「負けたよ」「それは俺に対してか。それとも春香ちゃんにか。」「両方だ。まさかお前がこれほどだったとはな。」・・・続く。
- Re: アカシアな二人 ( No.82 )
- 日時: 2023/05/05 23:37
- 名前: 梶原明生 (ID: p3cEqORI)
・・・「空挺団の底力よ。ところで、本当に中山毅を許すんだな。」「男に二言はない。」「それもだいぶ今はアウトだがな。とは言え、お前の意思は伝わった。春香ちゃんに伝えとくよ。」「それはそうとPTSDや、児童虐待の入れ知恵したのお前だろ。」「は、何のことだ。」「惚けるな。別に罪に問うつもりはない。大分県に行った春香をお前が支えて守ってくれたことに感謝してる。」「何でそれを。」「何でかな。ある情報筋から聞いた話だ。結局・・・」面を置いて背を向けて話し出した賢二。「俺はこうすることが正しいとどこかでわかっていた。わかっていながら感情がそうさせなかったのかもな。」「森本。・・・」「安心しろ。訴えは取り下げる。それがあの子の幸せに繋がるならな。」「ありがとう。じゃあ、お礼ついでにこれ渡しとく。奥さんの今勤めてるケーキ屋さんだ。まだ離婚届は出してないんだろう。行ってやれよ。お前まで俺みたいになる気か。三佐には話を通してる。」「お前まさかそれも想定内か。こいつ。」硬い胴着を拳で殴る賢二。しかし互いに笑顔だ。「わかった。行ってくる。」練馬駐屯地を後にした賢二は、一目散に走った。菊子のいるケーキ屋に。「いらっしゃいま・・・あなた。」「まだショートケーキありますか。」「は、はい。余り三個が。」「それ全部下さい。」「は、はい。」しどろもどろになりながら、あの頃みたいに懐かしく、苺ショートケーキ3個をイートスペースへ運び、賢二は貪るように平らげた。「コーヒーもごちそうさま。まだ、俺の席空いてるか。」涙しながら賢二の口に付いたクリームを指で拭う。「はい。」賢二はカウンター越しに彼女を抱きしめていた。「悪かったな。おれが間違っていた。もう二度とお前を離さない。」空になった皿だけが二人を見ている。・・・優也はと言うと、食事と勉強以外は母乙女のアパートを離れられるので、白川の車を使った志乃との逢瀬に夢中になっていた。「優也、あなたって子は。」アパートの小窓から志乃を目認した。「佐山署に電話しなくちゃ。」彼女はなりふりかまわずスマホに電源を入れた。一方佐山署では、立ちんぼの一斉摘発に沸き立っていた。「皆、必ず違法売春を摘発するぞ。」「おうっ。」一斉に生活安全課署員が動き出す。辺りはすっかり暗くなっていた。女性警察官が仕方なく電話番についていたのだが。「ミィーちゃん、君今日は早上がりじゃなかったかい。」「これは里村課長。いえ、任された以上は。」「構わん、帰りなさい。私が電話番しとくから。デートなんだろ今日。」「いや、それは・・・」「いいから。たまには早く帰りなさい。」「わ、わかりました。ではお言葉に甘えて。」里村は女性警察官と入れ替わって席に着いた。「はてさて、どんな電話がかかるやら。」噂をすれば影。早速電話が。「はい、こちら佐山署生活安全課。・・・あなたもしかして、作家の志楽乙女さん。」・・・続く。
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