複雑・ファジー小説

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アカシアな二人
日時: 2022/04/16 22:27
名前: 梶原明生 (ID: UfViuu4R)

理想的な容姿と充実した高校ライフを送っている二人の高校生。ひょんなことから回りに勧められて付き合い出したのだが・・・二人は愛し合えなかった。「何かが違う。」その違和感を拭えないでいた。そんな時互いに別の異性との出会いがあったのだが。それは悲劇の愛の始まりだった。アカシアの花を通じて知り合った、52歳の男女だったのだ。しかし世間はこれを純愛とはせず、あらゆる憶測、いじめ、引裂き、誹謗中傷の嵐に晒す。果たしてこの四人の愛は没落なのか。それとも真実の愛なのか。神々の授ける運命は愛する者達を翻弄する。

Re: アカシアな二人 ( No.63 )
日時: 2023/02/08 09:29
名前: 梶原明生 (ID: qEZ8hLzF)

「それでも愛」・・・・・・・・志楽邸に着いたらマスコミが張り付いていた。「何だよこれ。てめーまさか。」「あら、これだけのマスコミの前で暴力を振るう気。それこそ今度は暴力少年のレッテルが貼られるわね。さ、降りてくれない。私忙しいの。」わざとマスコミの前で降ろす奈央。「ちっ・・・」ヤケクソになった優也はシートベルトを激しく払って車を出た。「あ、志楽乙女さんの息子さんの優也さんですね。一言お願いします。」「週刊誌文冬です。ゴーストライターがいたって本当ですか。」「やめろ、どけよ。」マスコミをより分けながらやっと玄関に入った。「母さん。」いつもと様子が違うことに気づいた。半ば茫然自失状態の乙女にショックを隠しきれない。やがて我に戻る乙女。「あなたのせいよ、あなたが私を裏切ってあんなババアと出て行ったりするから。」拳槌で彼の胸を叩くが、途中で辞めてしまう。こんな弱い母を見るのは初めてな気がする優也。いつも強い女を地でいく人気作家と言うイメージはあるが、憔悴する母は見たことがなかった。それほどまでに追い詰められた状況とも言える。この時初めて自分に責任を感じた優也だった。春香の方は父である賢二が迎えに来ていた。「いやだ。お父さんと一緒に帰りたくない。」「何をバカなことを言ってる。刑事さん達の前で恥を掻かせるな。とにかく帰るぞ官舎に。」「ちょっと待って。どうして官舎なの。」「あの家には戻れん。母さんとは離婚するんでな。」「嘘、どう言うことよ。」「娘を犯罪者に明け渡すような家庭に置いておけるか。だから離婚するんだ。」あからさまお前のせいだと言わんばかりのセリフ。イヤイヤながら練馬駐屯地の官舎に連れられていく春香。口を聞く風もなく無視する彼女は、賢二に腕を捕まれて官舎内に入った。「いいか、見張りを付けたからな。外に出るなよ。食い物は冷蔵庫にあるから好きなようにしなさい。じゃあ父さんは仕事に行ってくる。」素っ気ない命令口調で言われても無視する春香。賢二は隣室にいる女性自衛官に声を掛けた。「すまんね城内一曹。君にしかこんな頼み事は出来なくて。」「いえ、そんな事は。それから昔と同じ美奈子って呼ばれても構いませんよ。」「いや、それはいかん。妻と出会う前にそういう仲だったとはいえ、もう君は二児の母だ。」これを盗み聞きしていた春香は驚愕した。お父さんに、お母さん以外でそんな人がいたなんて。暫くしてから部屋を抜け出そうと試みるのだが。「何してるの君。外出禁止のはずでしょ。部屋に戻りなさい。」「母に会いに行くだけです。」「駄目なものはダメ。賢二さ・・・いや、お父さんを苦しめた罰よ戻りなさい。」自衛官らしい命令口調でたしなめる城内。戻らざるおえない春香。しかし次の瞬間、意外なことを言われる。「それにしても、森本三尉にどこか似てるわ。さすが親子ね。本当はあなたがどうしようもない不良娘なら張り倒してやろうかと思ってた。でも不思議ね。あなた見てたら何ていうかその・・・清純そうと言うか憎めないと言うか。まぁいいわ。とにかく部屋に戻りなさい。」・・・続く。

Re: アカシアな二人 ( No.64 )
日時: 2023/02/18 12:18
名前: 梶原明生 (ID: HghQuPcm)

・・・春香はその言葉に驚いた。てっきり非難されるとばかり思っていたのに。その頃、毅に対する尋問は行われていた。彼曰く。「彼女との交際は愛でした。愛しあっていたからこそ認めてもらうまで駆け落ちしようとお互いに決めたことです。だから決して淫行でも未成年者略取でもありません。彼女は私の婚約者です。」「寝惚けたことぬかすなっ。」バンと机をつい叩く刑事。「本間さん、まずいですよ。」若い刑事がたしなめるものの、聞く風でもない刑事。「わかってるわいそんなもん。こう言う変態が事件起こすんだよ。・・・なら一つ聞く。そんなにプラトニックな間柄なら、一切性行為はしていないんだな。」その言葉にビクッときた。あの日の初夜が思い浮かぶ。春香と初めて結ばれたあの時。「そ、それは・・・」「はい、目が泳いだな。やっぱりそうなんだな。淫行以外の何物でもねーよ。何が愛だ笑わせんな。ただの変態オッさんじゃねーか。」唾が飛ばんばかりの勢いで捲し立てる本間。同じく志乃も取調べを受けていたが、こちらは女性精神科医が謁見していた。「あなたは、若い男性が好きですか。」「は、何のことです。」「ですから、そう言う趣向があるかと聞いてるんです。彼、イケメンですものね。身長だって180あるし、私だって誘惑したくなる容姿ですものね。それで彼を・・・」「違います。」「何がどう違うんです。さっぱりおっしゃってる意味がわかりませんが。」「私に未成年者に対する趣向があったとかじゃないんです。たまたま愛した人が未成年者だっただけです。彼とは物凄く愛しあっていました。それに彼の家庭にも問題があり、彼は悩んでいました。寄り添ううちに愛しあうようになっただけです。」話が終わるのを待たずに、わかりやすく「呆れた」と言わんばかりに溜息を大きく吐く医師。「あのね、あなた失礼だけど52でしょ。そんな年にもなって愛だの恋だのバカバカしくないんですか。これだから引きこもり子供おばさんは困るのよ。」記録係の女性刑事がいたたまれなくなり諭す。「ちょっと先生、言い過ぎじゃないですか。場合によっては・・・」「あら、私よりこんな犯罪者を庇うんですか。」「別にそう言うわけでは。」ハンカチを握りしめて必死で侮辱に耐える志乃。静かに口を開く。「あの、ご結婚はされていますか。」「え、まぁしてますけど。それが何か。」「あなたは年齢だけで旦那さんを選んだんですか。」「はぁ、何の話です。」・・・続く。

Re: アカシアな二人 ( No.65 )
日時: 2023/03/11 12:23
名前: 梶原明生 (ID: Cnpfq3rr)

・・・「もしも今の旦那さんが結婚する前、その時の条件を全て満たしていてただ一つだけ満たしていなかったら。それでもあなたは結婚しますか。」「さっぱりおっしゃっている意味がわかりませんが。」半分嘲笑気味に聞く精神科医。「もしも旦那さんが17歳だったらどうします。」「付き合わないでしょうね。」「なら一生独身を貫くわけですか。」一瞬口籠もる精神科医。「な、何を言ってるんです。」「私はたまたま愛した人が17歳だっただけです。17歳と言う年齢を愛したんじゃない。私は志楽優也と言う一人の男性を愛してしまっただけです。」真っ直ぐに真摯に見据えるその目に嘘はない。悔しいが精神科医と言う職業柄返ってそれを認めざるおえない女医は、唇を噛み締めた。「そ、それにしたって、18歳以上になるのを待てばよかったじゃないですか。」「今しかない時を生きる。それも大事でしょ。一年後じゃ遅すぎる、彼が求めていたのは今なんです。今しかない同じ運命が一年後もあるとあなたは思ってるんですか。」またもや言い返された精神科医。再び収監される志乃。その時思わぬ吐き気に見舞われた。便器に吐き終わると、お腹を摩りながら驚きと恍惚の表情になる。「優也の子供が・・・」そう、志乃は優也との子供を孕っていたのだ。春香は練馬駐屯地内の夕日をベランダから見ながら、紺野先生や樹、智美を思い出した。思わずスマホを握りしめる。自分のスマホは取り上げられていたが、藤堂から渡されていたSIMフリーのスマホは隠し仰せていた。履歴を本体から一部コピーしていて良かった。紺野のスマホにかけてみる。「もしもし、どなた・・・森本さん。」職員室でつい出た言葉を口に戻すかのように手で押さえて職員室を出る。「お久しぶりです先生。つい、電話したくなって。」「それはいいけど森本さん大丈夫。千葉さんや松本さんも心配してるけど。」「大丈夫です。今、父の勤めてる駐屯地内の官舎にいるんです。」そこから止めどなく今までの出来事や毅への思いなど、全てを担任の紺野に打ち明けた。「そう、そんなことがあったのね。わかるわ私も。同じ経験してるから。」「え、先生が。」「これを話すのは森本さんが初めてかな。元々静岡の浜松市が地元でね。高校時代、担任の先生と恋愛関係になったの。将来は結婚の約束までしてた。でも母に見つかり速別れさせられた。学校にも知れ渡り、先生は東京の公立校に転勤。もしあの時、森本さんみたいな勇気があったならって、いつの間にかあなたに自分を重ね合わせていたのかもね。」「それで先生は今・・・」「ああ、後日談聞きたいの。私教師を目指して地元の大学を出た後、先生を追って東京の高校に就職したのよ。でも・・・その先生探し当てたら、赤ちゃんと奥さん連れて公園で幸せそうにしてるとこみつけたの。悲しかったな。私の6年間は何だったんだろうってね。さぁ、私の湿っぽい話はこれくらいにして、お母さんに会いたいのよね。一度学校に来たら。私がサポートするから。」こうして春香は翌日、夏休み明けから初の青川学園登校日となった。紺野先生から連絡を受けた賢二が最低限の制服と鞄等を実家へ取りに行き、実現したのだ。「登校前に一つ聞く。あの男とはやったのか。」「やったって何を。」「惚けるな。その年ならわかるだろ。もしそうなら強姦罪が成立するな。」・・・続く。

Re: アカシアな二人 ( No.66 )
日時: 2023/02/27 05:50
名前: 梶原明生 (ID: cH43mN/a)

・・・賢二は官舎の壁を思わず殴りつけた。「よくもうちの娘を傷物にしてくれたな。中山っ許さん。」「き、傷物って何。私は私の意思で彼と結ばれただけ。無理矢理なんかじゃない。私達愛しあってただけ。」「黙れ春香。そう言えって言われたのか。なぁ答えろ春香。」やり場のない怒りを抑えながら、彼女の髪を掴むがごとく両手で頭を掴む賢二。「やめてよお父さん。そんなんじゃないから。」「どうしたんですか。」城内一曹が合鍵で駆けつけてきた。「いや、何でもない。ちょっと営内の見回りに言ってくる。」頭を冷やすつもりで陸自迷彩服のまま寮内を飛び出す賢二。翌日朝、紺野の日産ノートに乗って青川学園に向かった。途中までで降ろし、自宅から通ってる風を装うため、何気なく登校生徒の人波に合わせる春香。久々の青川学園の夏服を着た春香だったが、どこか10年も昔に着ていたような気になった。「おはよう。」力なく挨拶するものの、クラス内でも10年タイムスリップしてきたような雰囲気。「おい、見たか森本のやつ。随分見ないうちに女になったよな雰囲気が。」「そうそう、変態オヤジにやられちゃったのよ。」「言えてる。ガハハッ」あたかも聴こえる小声でまくしたてるクラスメイト達。智美は耐えかねて飛び出す。「お帰り春香。あんな奴らほっといて席に着こう。」松本も同じく駆けつけた。「や、お久しぶり。」「ひ、久しぶりだね。」「どうして連絡くれなかったんだい。僕たちに出来ることは何でもしたのに。」「ごめんなさい。スマホ使うわけにはいかなくて。」「とにかくお帰り。もう一人もお帰りしてほしいけど。」三人して優也の机を見つめた。「はい、皆静かに。ホームルーム始まるよ。」何食わぬ顔で紺野が入ってきた。チラリとアイコンタクトをとる春香。そうしつつも、窓辺に浮かぶは毅の顔。「早くあなたに会いたい。」苦しみを抑える春香であった。やがて,時間は流れ、放課後には極秘に紺野の車に乗り込み、久々の我が家を訪ねる。インターホンを鳴らすのにも躊躇する春香。ドアは菊子により放たれた。「お帰り、春香。」「お母さん。・・・」「何遠慮してんの。あなたの帰る場所でしょここは。」不意に涙が溢れる春香を菊子と春子は抱きしめていた。「ごめんなさい、私のせいで離婚なんて。」「何言ってんの。あなたのせいじゃない。あの人が選んだことよ。」「でも・・・」「でもじゃない。それにね、親友のケーキ屋さんがパティシエを募集しててね。私、昔目指してたから、久々やろうかなって。」「え、お母さんパティシエだったの。」「うん。修行時代にお父さんと会ってね。ほら、お父さん甘いもの嫌いでしょ。だから結婚を機にパティシエの自分を封印したの。」・・・続く。

Re: アカシアな二人 ( No.67 )
日時: 2023/02/28 21:46
名前: 梶原明生 (ID: wNoYLNMT)

・・・まさかのまさかにそんな母のエピソードがあったとは知らなかった。「だから、そんな悲壮感に満ちた顔なんてやめて。あ、そうだ。あなた紺野先生の車で来たのよね。」「うん、大丈夫。帰りも送ってくれるから近くで待ってもらってる。」「なら大変。待たせておくのも気の毒だわ。後でお礼言うから、早めに。」「うん、わかった。お婆ちゃんも元気で。」「春香もね。いつでもおいで。」「うん。・・・」再びお婆ちゃんに抱きつく春香。その頃、瀬西邸では、留守を預かる白川加津子がマスコミを追い払っていた。そんな彼女がスマホを取り出し、誰かに電話する。「スケジュールは空きましたよね。北川先生。それともまさか昔の恩義を忘れたとでも。」「そんなわけないじゃないですか白川さん。わかりました。うちの弁護士事務所あげての志乃お嬢さんの弁護に着かせてもらいます。」「なら結構。では弁護士料金は後ほど。」電話を切るタイミングで誰かが後ろから声を掛けてきた。「さすがは獄連島元締めだった昭和の巨大遺物と噂された白川さん。采配能力と女度胸で生きてきただけのことはありますね。」「誰ですあなた。」「これはもうし遅れました。お初にお目にかかります。藤堂聖です。」そう、現れたのは藤堂だった。「まぁ、あなたでしたか。お嬢様から兼ねてより聞き及んでおります。その節はお世話になりました。」「俺の前ではそんな芝居しなくて結構ですよ。獄連島の元締めさん。何故あなたが瀬西家のお手伝いさんに。」「これは異なことを。何のことやら。・・・そうそう、昔そんな知人がいましたっけ。あくまでその知人の話と言うことならお話しましょう。戦後の動乱期に彼女は生まれて、それは貧しい生活をしていました。やがて娘に成長し、集団就職に行かされた後、知人はあるヤクザの女になります。それからはもう破竹の勢いで知人は出世し、気がつけば獄連島の売女の元締めになっていたんです。警察長官すら手玉にとるほどの女元締めでしたが、ある日右腕の女将の策略で失脚させられましてね。信じてた配下に裏切られた女は出所後、夫と共に無一文で子供からも見捨てられ、野垂れ死に寸前だったのを、志乃お嬢様のお父様でいらっしゃる瀬西工業社長に拾われたんです。それからと言うもの心を入れ替えて夫婦で瀬西家に心骨注いで働いたものの・・・おっと、私の知人の、しがないよもやま話でした。あなた探偵でしたね。ここから先はご存知でしょ。」「ええ、まぁそう言うことにしておきましょう。実は頼みたいことがありまして。」藤堂はかいつまんで説明した。藤堂の伝手で頼んだ弁護士はことごとく協力を拒んだこと。最後に浮かんだのは白川だったこと。そして。「ものはついでと言ってはなんですが、中山毅の弁護も頼めないかと。」「そこまでの義理はないと思いますが。」「そうですかね。なら一度聞いてみてください。親友は見捨てていいかと。」・・・続く。


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